公開日 2023/06/05 06:40
ネットワークオーディオはアクセサリー追加でもっと楽しめる! 最新7アイテムをトコトン聴き比べ
ティアックの「NT-505-X」にアクセサリーを追加しよう
ティアックのネットワークプレーヤーで、最新アクセサリー7モデルをテスト!
CD登場前夜、「デジタルは1と0の信号だけだから、どのプレーヤーも同じ音がする」なんていわれたのも今は昔。デジタルでもインシュレーターやケーブルで大きく音が違うというのは、実験でどんどん明らかにされていった。
そして現代、往時とは、いやほんの数年前とすら比べ物にならないくらい、デジタルオーディオのアクセサリーは音質向上に貢献する度合いが高くなってきている。ネットワークオーディオについても、国内外のオーディオブランドからさまざまなアクセサリーが投入され、遥かな高みを目指すことができるようになっている。
一口にネットワークオーディオのアクセサリーといっても大変に幅の広いジャンルを有し、ものによっては相応に金のかかる世界ともなるが、廉価で驚くほど有効なグッズがあるのもアクセサリー業界の面白いところ。そこで今回は、比較的求めやすい価格帯のネットワークプレーヤー、ティアック「NT-505-X」を基点として、1ジャンル1製品という感じでアクセサリーの効き目を吟味してみることとした。
また、今回の試聴にあたっては以下の楽曲をリファレンスとして使用している。
ポップス:ダグ・マクロード「A Soul to Claim」(『A Soul To Claim』より)
ジャズ:猪俣武・荒川康男「ザ ダイアログ ウィズ バス」(『ザ・ダイアログ』より)
クラシック(オーケストラ):マルチン・ズドゥニク(チェロ)「Fantasia for Cello & Orchestra」(『Polish Music for Cello&Orchestra』より)
クラシック(歌物):吉川真澄「武満徹:ソングス - 翼(鷹羽弘晃編)」(『日本語の夢と目醒め』より)
iFi audio LANアイソレーター 「LAN iSilencer」
一番手には、英iFi audioのLANアイソレーター「LAN iSilencer」を起用した。空きLAN端子へ挿すだけでも効き目があり、またケーブルのプラグと機器のジャックの間へ入れることによっても大きな効果を得ることができる装置である。
製品資料には「デジタル歪みを根絶するため、ゼロ・ジッター・メモリー・バッファとガルバニック・アイソレーション(ガルバニック絶縁)された入力を持ちます」とある。非常に精密かつ整然としたデジタル信号をそのまま通しつつ、高周波障害を遮断するとともに微小なDC成分の排除やAC誘導の抑制、アース電位の整合まで行ってくれるというから、手指ほどの小さなスティックの内部にどれほどの技術が収められているのか、気が遠くなりそうな製品である。
まずプレーヤーとハブの間のケーブルに1個挿入して音を聴く。クラシックのオーケストラはスケールが数段アップ、分解能が上がって広大な音場の中に浮かぶオケの音像がしっかり分解され、聴き心地が良いだけではなく細かな抑揚や奏者の息遣いなどをしっかりと伝える。
歌物はまず伴奏ピアノにどことなく感じていたキツさが取れてサラリと流れるようになり、歌もザラつきが収まってどんどん伸びるようになる。ジャズは切れ味大幅向上、生で聴くドラムスとウッドベースの音へ数段近づいた。この手の音源はこうでなくちゃいけない。
ポップスは低域方向の分解能が激増、デフォルトで聴いた際には声の帯域とベース帯域が若干混濁気味だったのが気になっていたのだが、本品はその曖昧さ、解像度の悪さをきれいさっぱり解決してしまった。
LAN iSilencerにはお得なバンドルセットも用意されている。今回もたくさん入った箱が届いているから、早速2個目を挿してみる。ジャズを改めて聴いたら、低域のパワーがどんどん増してくる。しかしほんの僅かにスピード感が下がる傾向もあり、悩ましいところだ。
当初は2本ともケーブルの中継に使用していたが、接続を改めて空き端子を埋める方向で使ったら、うむ、こちらの方が若干いいように感ずる。副作用が少なくパワー感の向上のみが際立つようになった。
楽しくなっていろいろ音楽を聴き始める。オーケストラはノイズフロアがさらに下がり、弱奏時のクリアさが印象に残る。ソロの音像は引き締まっていながらトゥッティとよく融け込み、コンサートホールで聴くイメージにどんどん近づいてくる。歌ものはピアノが控えめながら力強く響き、声は太く肉質感が増す。ポップスはボーカルのダミ声にドスが加わり、うん、これが本来の歌い方なのではないかと強く思わせる。これまで地に足の着いた力が足りなかったのであろう。
KOJO TECHNOLOGY 仮想アース「Crystal Ep」
お次はネットワーク専門アクセサリーというわけではないが、デジタル関連にも大変な効果を発揮することで知られる光城精工の仮想アース「Crystal Ep」を試してみよう。LAN iSilencerは一度すべて取り外し、素の状態で今度はCrystal Epを装着してみる。
「遠くのアースより近くのアース」というのが同社のスローガンだ。地面に導体の杭を打って構築する大地アースは確かに素晴らしいが、長いケーブルを引く間に副作用を生じる恐れが多分にある。しかし、最小の距離でつなぐことのできる仮想アースにその心配はない、という意味合いであろうと個人的に推測している。
このCrystal Epはその究極、さまざまな端子へ直接接続できるスティックタイプのもの。中はエッチング処理されたアルミの薄膜で、極めて広い面積で余分な電位を引き受けることができる。
ひとまずNT-505-XのS/PDIFデジタル入力端子へ挿入し、音を聴き比べる。クラシックのオケ物は若干固くこわばり気味だった音像が適度にほぐれ、音楽が朗々と響き出す感がある。ソロの音色は艶やかで、しかし人工的な感じがなくトゥッティと自然な対比を聴かせる。歌物はやはりピアノが朗々と響き始め、歌もザラつきが消え失せて肩の力が抜けたような伸びやかな歌唱となった。うん、やはり「近くのアース」はよく効く。
ジャズは俊敏に切れ上がり、低域がよりピンポイントに決まる。ギュッと締まった音像からあふれ出すパワーとスピードが快感だ。例えば声の質感は肌触りの良さが加わったのに、ドラムスはヒリヒリとするような緊張感が一層強まってくるのだから面白い。おそらく何らかの要素を付加しているのではなく、どちらも音源の本質を明らかにする方向ということなのであろう。
ポップスは歌手が少し前へ出て、つぶやきのようなダミ声の実体感が高まった。伴奏もパワーと切れ味がアップする。音場も広がったが、ある種の濁りまで含めて広げてくるのが面白い。人生の悲しみや暗部を歌うブルースには、むしろこういう要素があった方が好ましく感じられるのは筆者だけだろうか。
光城精工の製品は、電源ボックスも仮想アースも「つなげて使える」というのがポイントで、もちろんCrystal Epもそれが可能だ。接続箇所は同じくNT-505-Xのデジタル入力端子として聴き比べる。
クラシックのオケ物はとろけ出しそうな艶やかさと、そこを1本グッと引き締める端正さがともに備わり、絶妙の聴き心地だ。ソファへ寝そべってもスピーカーと対峙しても、しっかりと魅力が味わえそうな表現に驚嘆した。歌物も行き過ぎない程度に艶がついて聴きやすく、歌もピアノもDレンジが大きく広がった感じで、優しいのにどこまでも伸びるという離れ業を聴かせてくれた。こりゃ凄いなと、思わず声が漏れた。
ジャズは楽器の実体感が大幅増、ウッドベースの解像度は上がっているが、余分な音がついた感じはなくごく自然かつ大迫力の音だ。ドラムスは身の詰まったパワフルさを聴かせる。ポップスはダミ声が艶っぽく響き、しかし全然違和感がないのはどうしたわけか。伴奏はスケール感向上、しかしボーカルを全然邪魔しない。楽器の格が上がったかのような響き方である。掛け値なしに “2倍どころではない” 向上ぶりである。