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PR 公開日 2024/11/20 06:30

新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く

低音エネルギーを重視するオーディオファンは必聴
生形三郎
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手頃な価格でダイナミックなサウンドを楽しめる、ELAC “Debutシリーズ” がリニューアルを遂げた。同社のエントリーラインとして2015年に登場してから約10年、今回も着実な進化を果たし、第3世代 “Debut 3.0シリーズ” へとアップデートされた。

ELAC “Debut 3.0シリーズ” ブックシェルフ型「Debut B5.3」(82,500円/ペア・税込)、フロア型「Debut F5.3」(181,500円/ペア・税込)

■ハードタイプ採用の新開発25mmアルミドーム・トゥイーターを投入


その進化ポイントはやはりなんと言っても、スピーカーユニットの刷新にある。かねてより “Debutシリーズ” は、ソフトドーム・トゥイーターとアラミド・ファイバーコーンを組み合わせた仕様だったが、“Debut 3.0シリーズ” ではトゥイーターにハードドーム・タイプを採用し、本シリーズのために新開発された25mmアルミドーム・トゥイーターを搭載する。

ハードドームを採用した新開発の25mmアルミドーム・トゥイーターに注目が高まる

加えて、周囲には音響エネルギーを効果的に放射させるためのなだらかで面積の広いウェーブガイドを設け、振動板の上には位相や指向特性改善のための独自形状のフェイズプラグを備えていることも特徴だ。これらの存在は、音質はもちろん、デザイン面でも最新世代であることを象徴するものと言える。

■大型化された磁気回路と38mmボイスコイルで正確さとインパクトを追求


ウーファーユニットにもアップデートを実施。アラミドファイバーによる振動板や、“Debut 2.0シリーズ” でも搭載していたボイスコイルの冷却とウーファーダクト内からの空気排出をスムーズ化させるベント構造ポールピースを継承しつつ、磁気回路を大型化したり、38mmボイスコイルを採用することで、より正確でインパクトのある低音再生を追求したという。

アラミド・ファイバーを採用した135mmウーファー。大型化した磁気回路と38mmボイスコイルを導入


フロア型Debut F5.3のバスレフポート。ツインで搭載

ブックシェルフ型Debut B5.3のバスレフポート

ほかにも、筐体剛性を高めて不要振動を抑える内部ブレーシングを施し、金メッキ処理されたスピーカー・ターミナルを装備。さらに、マグネット式のグリルを採用したことで凹凸のないフロントバッフルが実現されたことも、スマートな佇まいに寄与している。

スピーカーターミナルはフロア型/ブックシェルフ型の双方ともシングルワイヤリングとなっている

キャビネットは、フロント部がマット加工、天面やサイド部分は木目調のデザインを採用する

“Debut 3.0シリーズ” は、3ウェイ・フロア型「Debut F5.3」、2ウェイ・ブックシェルフ型「Debut B5.3」、センタースピーカー「Debut C5.3」、イネーブルドスピーカー「Debut A4.3」をラインナップ。本稿では、ステレオ再生の主要ラインアップである「Debut F5.3」と「Debut B5.3」のクオリティをチェックした。

■「Debut B5.3」〜ボトムの充足感が高く、歌や楽器の明瞭度もハイレベル



ブックシェルフ型Debut B5.3のクオリティをチェック

Debut B5.3は、一聴して低域方向にエネルギーが振られた暖色な音色が展開する。バスドラムやエレクトリック・ベースの存在が分厚く展開され、濃度の高い低音域を楽しめる。とにかくボトムの充足感、ボリューム感が高いものの、歌声や楽器の存在それぞれは明瞭度が高いことが注目に値する。

女性ボーカルの音源では、低音楽器の存在が重厚に出ながらも、あくまでボーカルは明瞭な存在感で描かれる様が快いのだ。バッキングのギターやコーラス、ピアノ伴奏なども適切な分離をもって描かれる。声楽を含むバロックオーケストラでも、低音にエネルギーがあり、通奏低音のチェロが厚みを持って再現されるとともに、コーラス・ラインやチェンバロはやはり旋律線が明瞭ながらも決して耳障りになったり金属質にならずにスムーズな聴き心地である。ステージに鳴り渡る残響は充分な広さを感じさせるものの、無闇に響きが明るくなりすぎないため、快適な響きで聴き手を包んでくれるようだ。

ジャズのピアノ・トリオの音源でも、低域方向に重心がありながら、耳につきがちな帯域が抑えられており耳当たりが良好。ドラムスのシンバルレガートは、鞣された質感でありつつも快活な律動はスポイルされておらず、ピアノの鍵盤さばきとともに、粒立ちあるタッチが小気味よい表現だ。

■小型ブックシェルフ型ながら低域の情報量が多く、高域のピーク感も抑える


最後に、低音域の音圧が大きめなEDM音源を再生してみた。重心の低いエレクトリックなキックドラムが断続的に入る曲は、少し低音の量感や余韻が過多気味になるものの、中域以上の明瞭度や音楽の快活さが楽しめる再生であった。

全体的に、ひとつひとつの楽器の存在をしっかりと描き出しながらも、ボトムの充実度が高く温かみ溢れる聴き心地で、小型ブックシェルフとは思えない充足感に満ちている。推察するにこれらは、強化されたウーファーユニットによる低域再現力を活かしながら、両ユニットを巧みに音圧バランス調整することによって、アルミドーム・トゥイーターにありがちな高域方向のピーク感を抑えつつ、ハードドームならではの明瞭感を引き出しているのだろう。

また、クロスオーバーが1.9kHzと低めなことも、低域の充足感と情報力の両立に寄与しているのかもしれない。そのバランス故に、小音量でも音痩せがないため、大きな音量が出せない場合でも使い易く、さらに、組み合わせるアンプも選ばないと言えるだろう。

次ページフロア型「Debut F5.3」の音質をチェック

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