PR 公開日 2025/01/10 06:30
透明感がさらに向上。DELAの旗艦ネットワークスイッチ「S1」でネットワーク再生の “究極” を目指す
未使用のLANポートオフも効果あり
ピュアオーディオ向けのミュージックサーバーを確立させたDELAは、オーディオ用ネットワークハブの世界も切り拓いてきた。そのDELAが、2024年11月、初のフルサイズ筐体採用のネットワークハブ「S1」を発売。最高峰のネットワークオーディオ機器による試聴レビューをお届けしよう。
ネットワークオーディオは黎明期から数えてもまだ20年ほどしか歴史を重ねていないが、その間に遂げた進化は極めて大きい。しかもその進化はいまも勢いを失っておらず、新しい発見や革新的技術に基づいたステップアップがリスナーに良い意味で刺激を与え続けている。
ネットワークスイッチもその典型的な例のひとつだ。ネットワークに接続された機器を識別して信号のやり取りを整理する役割を担い、パソコン周辺機器としてはスイッチングハブと呼ばれることも多い。それがネットワークオーディオの視点で注目されるようになったのはこの10年ほどのことで、以前はそこまで注目されることはなく、音質を左右する重要な機器のひとつとして認識されるようになったのはこの5年ほどのことにすぎない。
5年前にオーディオファンがネットワークスイッチに注目するきっかけを作ったのが、DELAの「S100」である。家庭用ネットワークに導入し、ルーターとサーバー、プレーヤーをS100を介して接続するだけで、ノイズフロアが下がる、空間情報の精度が上がるなど、著しい音質改善が実現することが明らかになり、ネットオーディオのリスナーの間に衝撃が走った。
映像機器やゲーム機など、ネットワークに繋ぐ機器が飛躍的に増え、予測し得ない経路でオーディオシステムにノイズが混入する例が頻発している中、音質対策を吟味したネットワークスイッチはオーディオ機器のネットワークを他の機器から遮断し、ノイズの影響を受けにくい環境作りに大きく貢献することが分かったのである。
2020年にはS100の電源回路にリニア電源を採用した「S10」を投入し、オーディオコンポーネントの設計ノウハウがネットワーク機器の音質改善に貢献することを実証した。一方、S10は限定モデルで限られた台数のみの販売だったこともあり、その後継となるフルサイズのネットワークスイッチを望む声が聞かれるようになった。
2022年にサーバーの最上位モデルである「N1」を投入したことを受けて、N1開発時に得たノウハウを投入したネットワークスイッチの開発に着手。その成果として生まれたのが、今回紹介する「S1」である。
LANポートは1GbpsのRJ45端子を7系統、10Gbps対応のSFP+端子を4系統装備し、前者は100Mbpsまたは10Mbpsに速度を切り替えることもできる。さらに10MHzの外部クロック信号での制御に対応したり、各ポートのオン・オフを独立して切り替える機能も備わる。フロントに並ぶ11個のスイッチは各ポートごとに速度切り替えやオン・オフを切り替えるための装備で、動作状態はスイッチ上のLEDの色で判別することができる。ディマー機能を利用し、リアも含めて全てのLEDを消灯することも可能だ。
S100の導入以来、機能や使い勝手に関するユーザーからのさまざまな要望を聞き、それをフィードバックする形でS1に採用したのだという。
シャーシの設計はN1との共通点が多い。ステンレス製ベースとアルミを組み合わせ、コーナー部に配置した肉厚のアルミブロック材は振動対策も兼ねる。N1と同じく専用設計のリニア電源を採用し、安定した電源供給に寄与する整流回路もN1と同様に重要な役割を演じる。
筐体設計、振動対策、高品位なリニア電源など、N1とS1に採用された技術はいずれもハイエンドオーディオ機器の設計ノウハウにヒントを得ており、それぞれが確実な成果を上げている。N1が登場した時と同様、S1の登場によって、ネットワークスイッチが高品位なネットワークオーディオに欠かせないコンポーネントであることが実証されたのだ。
S1の音質改善効果は、サーバーに保存したローカル音源とQobuzに代表される高音質ストリーミングの両方で聴き取ることができる。最初にRJ45端子に一般的なLANケーブル(CAT6)をつなぎ、通信速度を切り替えながら音質の変化を確認した。ネットワークプレーヤーはリンの「KLIMAX DSM/3」、サーバーはDELAのN1という組み合わせで検証する。
RJ45端子での切り替え試聴で一番大きな音質改善を実感したのは、未使用のLANポートをオフにした時のノイズフロアの低下である。オーケストラ伴奏のアリアでソプラノとピアノの掛け合いの部分を主に聴いたのだが、オフにした瞬間、声と楽器それぞれの直接音と余韻の関係が視覚的に見えるほどホールトーンの動きが鮮明になったのだ。
室内楽では同じ音量で聴いているのに未使用ポートをオフにした時の方が音色がなめらかになり、ピアノとヴァイオリンの余韻が溶け合う描写も一層立体的に描き出す。最上位クラスのコンポーネントを組み合わせているので音質の変化はいずれも次元の高いレベルでの違いなのだが、微妙だが本質的な変化として聴き取ることができた。
通信速度の切り替えた時の音質変化は、ネットワーク環境や使用するネットオーディオ機器によって変わり方に違いがある。筆者が自宅でS1を試聴した時よりも、今回の取材で切り替えた場合の方が変化の幅が大きく、ソロ楽器の楽器イメージの立体感やピアノのアタックなど、複数の要素で100Mbpsに設定した状態がベストに感じられた。10Mbpsも空間の3次元表現にメリットが感じられたが、192kHzを超えるハイレゾ音源では音が途切れる恐れがあるため、あまりお薦めはできない。
次にS1の最も注目すべき装備のひとつであるSFPポートの再生音を確認した。今回は光ケーブルと変換アダプターではなく、DELAがSFP接続用に開発したSFPダイレクトアタッチケーブル「C1」を使ってKLIMAX DSM/3への接続をSFPに変更して音質の違いを確かめる。
この状態で未使用ポートを全てオフにすると、先ほど聴いた室内楽の音源でヴァイオリンとピアノの位置関係がさらに明瞭に把握できるようになり、ピアノの低音のハーモニーは明らかに透明感が向上。平行弦ピアノならではの混濁のない和音の美しさが際立ち、伴奏の純度が上がることでヴァイオリンの音色にも一層の瑞々しさが実感できるようになった。
大編成のオーケストラ作品を聴くと、SFP接続のもうひとつのメリットである時間軸解像度の高さを楽器の音の変化として聴き取ることができた。具体的には、大太鼓やティンパニの俊敏なアタックなど、トランジェント特性の優れたシステムで聴いた時に初めて気づく反応の良さ、そして金管の楽器ごとの音色の違いを正確に鳴らし分ける描写能力の高さ。この2つの要素がとても大きい。
ネットワークスイッチは脇役に過ぎないといえばその通りなのだが、同じ脇役でも主役に迫るほどの存在感を垣間見せる名脇役である。
(提供:メルコシンクレッツ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です
■スイッチングハブもオーディオ再生に欠かせないコンポーネント
ネットワークオーディオは黎明期から数えてもまだ20年ほどしか歴史を重ねていないが、その間に遂げた進化は極めて大きい。しかもその進化はいまも勢いを失っておらず、新しい発見や革新的技術に基づいたステップアップがリスナーに良い意味で刺激を与え続けている。
ネットワークスイッチもその典型的な例のひとつだ。ネットワークに接続された機器を識別して信号のやり取りを整理する役割を担い、パソコン周辺機器としてはスイッチングハブと呼ばれることも多い。それがネットワークオーディオの視点で注目されるようになったのはこの10年ほどのことで、以前はそこまで注目されることはなく、音質を左右する重要な機器のひとつとして認識されるようになったのはこの5年ほどのことにすぎない。
5年前にオーディオファンがネットワークスイッチに注目するきっかけを作ったのが、DELAの「S100」である。家庭用ネットワークに導入し、ルーターとサーバー、プレーヤーをS100を介して接続するだけで、ノイズフロアが下がる、空間情報の精度が上がるなど、著しい音質改善が実現することが明らかになり、ネットオーディオのリスナーの間に衝撃が走った。
映像機器やゲーム機など、ネットワークに繋ぐ機器が飛躍的に増え、予測し得ない経路でオーディオシステムにノイズが混入する例が頻発している中、音質対策を吟味したネットワークスイッチはオーディオ機器のネットワークを他の機器から遮断し、ノイズの影響を受けにくい環境作りに大きく貢献することが分かったのである。
2020年にはS100の電源回路にリニア電源を採用した「S10」を投入し、オーディオコンポーネントの設計ノウハウがネットワーク機器の音質改善に貢献することを実証した。一方、S10は限定モデルで限られた台数のみの販売だったこともあり、その後継となるフルサイズのネットワークスイッチを望む声が聞かれるようになった。
2022年にサーバーの最上位モデルである「N1」を投入したことを受けて、N1開発時に得たノウハウを投入したネットワークスイッチの開発に着手。その成果として生まれたのが、今回紹介する「S1」である。
LANポートは1GbpsのRJ45端子を7系統、10Gbps対応のSFP+端子を4系統装備し、前者は100Mbpsまたは10Mbpsに速度を切り替えることもできる。さらに10MHzの外部クロック信号での制御に対応したり、各ポートのオン・オフを独立して切り替える機能も備わる。フロントに並ぶ11個のスイッチは各ポートごとに速度切り替えやオン・オフを切り替えるための装備で、動作状態はスイッチ上のLEDの色で判別することができる。ディマー機能を利用し、リアも含めて全てのLEDを消灯することも可能だ。
S100の導入以来、機能や使い勝手に関するユーザーからのさまざまな要望を聞き、それをフィードバックする形でS1に採用したのだという。
シャーシの設計はN1との共通点が多い。ステンレス製ベースとアルミを組み合わせ、コーナー部に配置した肉厚のアルミブロック材は振動対策も兼ねる。N1と同じく専用設計のリニア電源を採用し、安定した電源供給に寄与する整流回路もN1と同様に重要な役割を演じる。
筐体設計、振動対策、高品位なリニア電源など、N1とS1に採用された技術はいずれもハイエンドオーディオ機器の設計ノウハウにヒントを得ており、それぞれが確実な成果を上げている。N1が登場した時と同様、S1の登場によって、ネットワークスイッチが高品位なネットワークオーディオに欠かせないコンポーネントであることが実証されたのだ。
■ネットワークオーディオ再生の主役に迫るほどの音質向上
S1の音質改善効果は、サーバーに保存したローカル音源とQobuzに代表される高音質ストリーミングの両方で聴き取ることができる。最初にRJ45端子に一般的なLANケーブル(CAT6)をつなぎ、通信速度を切り替えながら音質の変化を確認した。ネットワークプレーヤーはリンの「KLIMAX DSM/3」、サーバーはDELAのN1という組み合わせで検証する。
RJ45端子での切り替え試聴で一番大きな音質改善を実感したのは、未使用のLANポートをオフにした時のノイズフロアの低下である。オーケストラ伴奏のアリアでソプラノとピアノの掛け合いの部分を主に聴いたのだが、オフにした瞬間、声と楽器それぞれの直接音と余韻の関係が視覚的に見えるほどホールトーンの動きが鮮明になったのだ。
室内楽では同じ音量で聴いているのに未使用ポートをオフにした時の方が音色がなめらかになり、ピアノとヴァイオリンの余韻が溶け合う描写も一層立体的に描き出す。最上位クラスのコンポーネントを組み合わせているので音質の変化はいずれも次元の高いレベルでの違いなのだが、微妙だが本質的な変化として聴き取ることができた。
通信速度の切り替えた時の音質変化は、ネットワーク環境や使用するネットオーディオ機器によって変わり方に違いがある。筆者が自宅でS1を試聴した時よりも、今回の取材で切り替えた場合の方が変化の幅が大きく、ソロ楽器の楽器イメージの立体感やピアノのアタックなど、複数の要素で100Mbpsに設定した状態がベストに感じられた。10Mbpsも空間の3次元表現にメリットが感じられたが、192kHzを超えるハイレゾ音源では音が途切れる恐れがあるため、あまりお薦めはできない。
次にS1の最も注目すべき装備のひとつであるSFPポートの再生音を確認した。今回は光ケーブルと変換アダプターではなく、DELAがSFP接続用に開発したSFPダイレクトアタッチケーブル「C1」を使ってKLIMAX DSM/3への接続をSFPに変更して音質の違いを確かめる。
この状態で未使用ポートを全てオフにすると、先ほど聴いた室内楽の音源でヴァイオリンとピアノの位置関係がさらに明瞭に把握できるようになり、ピアノの低音のハーモニーは明らかに透明感が向上。平行弦ピアノならではの混濁のない和音の美しさが際立ち、伴奏の純度が上がることでヴァイオリンの音色にも一層の瑞々しさが実感できるようになった。
大編成のオーケストラ作品を聴くと、SFP接続のもうひとつのメリットである時間軸解像度の高さを楽器の音の変化として聴き取ることができた。具体的には、大太鼓やティンパニの俊敏なアタックなど、トランジェント特性の優れたシステムで聴いた時に初めて気づく反応の良さ、そして金管の楽器ごとの音色の違いを正確に鳴らし分ける描写能力の高さ。この2つの要素がとても大きい。
ネットワークスイッチは脇役に過ぎないといえばその通りなのだが、同じ脇役でも主役に迫るほどの存在感を垣間見せる名脇役である。
(提供:メルコシンクレッツ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です