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公開日 2017/09/01 10:50
IFA 2017会場でインタビュー

<IFA>ソニーのウォークマン開発者が語る、「NW-ZX300」で目指した“フラグシップ級の音”

山本 敦

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ソニーの“ウォークマン”に、ハイレゾ対応のスタンダードクラス「ZXシリーズ」のニューフェイス「NW-ZX300」が加わる。日本での発売も期待される本機の特徴や、現行機種である「NW-ZX100」と比べてどこが進化しているのか。ウォークマンの設計担当者である大庭 亮氏にIFAの会場で詳しく聞いてきた。

IFA2017の会場で、ウォークマンの設計を担当する大庭 亮氏に新製品を紹介していただいた

新製品NW-ZX300(以下、ZX300)の概要についてはすでにPHILE WEBニュースでお伝えした通り。欧州での発売は10月以降順次に始まる予定で、販売価格は700ユーロ前後になる見込みだ。

新しいプレミアムモデルの「NW-ZX300」

フラグシップのWM1シリーズを目指した音質へのこだわり

まずは新しいハイレゾ対応プレミアムモデルの「音質」へのこだわりから切り込んでいこう。2015年のIFAで発表されたNW-ZX100(以下、ZX100)と同等の価格をキープしながら、音質はフラグシップの“Signature”シリーズ「NW-WM1」のエッセンスを受け継いでいる。

4.4mm/5極の“ペンタコン”端子によるバランス出力にも対応しており、同価格帯のハイレゾプレーヤーをラインナップに持つライバルブランドは脅威を感じざるを得ない製品となるはずだ。

4.4mm/5極のペンタコン端子を搭載した

ZX300の音質をチューニングする上で重点を置いたポイントについて大庭氏は、「ウォークマンとしてはボーカルのブレス音やスタジオの空気感など微少なニュアンスの再現性を高めることを目指しました。音場の広がりや低域のパフォーマンスも重視しながら、フラグシップのNW-WM1シリーズと同等の高音質を追求しています」と説いている。

本体のリアシャーシをステンレスからアルミニウムに変更したことで、シャーシ自体の抵抗を下げて歪みの少ないクリアなサウンドに仕上げている。アルミを使うことで板厚も薄くできるうえ、必要な強度も確保できるメリットがあるという。

ブラックとシルバーの2色展開

シルバーは背面が黒とツートンカラーになる

アンプ部は特に電源まわりを強化している。新開発のフィルムコンデンサーとその特性を深いところから引き出すために、端子部のメッキ厚を上げ、熱処理時間やフィルム自体の材質にも手を加えている。これらの取り組みの効果のトータルによって、よりいっそう透き通った伸びやかなボーカルや、豊かな楽器の音色再現につながっているのだろう。展示されていた実機でハイレゾ再生をチェックしてみたところ、低音はZX100の厚みに透明感とシルキーな滑らかさが加わった印象を受けた。

フルデジタルアンプ「S-Master HX」も徹底チューニング

WM1シリーズのために開発したフルデジタルアンプ「S-Master HX(CXD3778GF)」を乗せて、さらにZX300のために最新の高音質化技術を加え、音質に磨きをかけた点も見逃せない。

中でも最も音質向上に大きな役割を果たしているのが、ソニーが独自に材料の配分などを調合して完成させた「はんだ」である。ソニーオリジナルの高音質はんだは、ソニーのホームオーディオ製品に展開してきたものがフラグシップのWM1に採用され、ZX300に継承された格好だ。WM1では基板に各部品を接続するところにこのはんだを使っていたが、ZX300ではさらにS-Master HXの半導体と基板をつなぐための「はんだボール」にも使用範囲を広げたところが新しい。

大庭氏によれば、外部の半導体メーカーとソニーが連携して、ウォークマンのためにカスタマイズしたICチップを使うため、特にはんだの熱や経年変化に対する耐久性は厳しくチェックしてきたと振り返る。この高音質はんだが音像定位の向上や、より艶っぽいボーカルの再現性につながっている。

なお、今回のIFAで発表されたハイレゾ対応ウォークマンのエントリーモデルであるNW-A40シリーズも、S-Master HXの半導体を基板につなぐはんだボールに高音質はんだを使っている。

44.1kHz系・48kHz系のそれぞれ個別に乗せているクロックには小型の100MHz対応低位相ノイズ水晶発振器を採用。WM1のクロックと同等スペックを持ちながら、ICの基板面積をよりコンパクトに抑えたことで手のひらサイズのZX300にも実装可能とした。S/Nと豊かな情報量の再現性を高める効果を生んでいるという。

会場に持参したAKGのイヤホン「N30」で、ZX300のデモ機を試聴したインプレッションについても報告しておこう。デモ機に収録されたハイレゾ音源からファレル・ウィリアムス「happy」を聴くと、ボーカルの質感が明瞭に浮かび上がってくる。鋭く打ち込むリズムのスピード感と奥行きの深さが一皮むけた印象だ。

持参したAKGのハイレゾ対応イヤホン「N30」でZX300のサウンドをチェックしてみた

4.4mm/5極のバランス接続端子が搭載された

機能面では、ZX100には搭載されていなかったバランス接続がZX300で新たに加わっている。端子はソニーが中心となって普及に力を入れるペンタコン(4.4mm/5極)を採用。本体の天面にバランス/アンバランス接続の端子を1基ずつ備えている。ヘッドホン出力のパワーそのものが大きく飛躍を遂げて、アンバランス接続時はZX100の15mWに対してZX300は50mW、バランス接続時では200mWとWM1シリーズ(アンバランス60mW/バランス250mW)に迫る実力を備えている。

バランス接続のヘッドホン・イヤホンをプラグにつなぐと、内部でアンバランス回路がミュートされバランス回路にスイッチする。バランス接続ケーブルに交換した「MDR-1A」で、バランス接続の音もチェックした。音場の立体感がまた一段と高まりS/Nも向上する。ボーカルの細かなニュアンスがグンと引き立ってきた。滑らかな質感ながら切れ味の豊かな低音再生も気持ちがいい。

なおDSD音源は5.6MHzから11.2MHzのネイティブ再生にまで対応の幅を広げたほか、リニアPCM系の音源も384kHz/32bitまでネイティブ再生が可能になっている。

ZXシリーズにタッチパネル液晶が復活した

ZX300が飛躍を遂げたポイントは音質だけではない。現行モデルのZX100で好評を博した高いポータビリティをそのままに、操作性にもまた一段と磨きをかけた。

約3.1インチのタッチパネル液晶を搭載。UIのレイアウトはWM1シリーズとほぼ共通だ

ZXシリーズのオリジンであるNW-ZX1が採用していたタッチパネル液晶が復活を遂げた。サイズは3.1型で、しかもウォークマンとして初めての試みになる、さらさらとしたタッチが特徴の「マットガラス」が搭載されている。これなら指紋も目立たないだろう。タッチパネルの操作感も現行のWM1シリーズやA30シリーズと同等にキビキビと反応してくれて気持ちがいい。思わず物欲が刺激されてしまう。

画面内のアイコンのデザインや機能の配置はWM1シリーズと同等だ。液晶の解像度がWQVGA(240×400画素)からWVGA(800×480画素)にわずかながら上がっているので、アイコンや文字の表示もシャープに感じられる。

ZX100はボトム側に十時キーとセンターキーを設けていたが、タッチパネル液晶の採用によりZX300は本体前面がフラットなデザインになっている。ボリュームや曲送り操作のための物理ボタンは本体右サイドを中心に搭載した点はともに同じだが、ZX300はさらにC面カットの緩やかにカーブしたサイドパネルのリア側近くにボタンを寄せることで、本体を正面から見た時にボタンの出っ張りを目立たせないシームレスなルックスに仕上げている。

側面のボタンは表から見たときに目立ちにくいよう、やや後ろ側に寄せて配置した

ボディは前面と側面をマット加工に仕上げて、さらに天面と底面はヘアライン加工とした。金属素材の多彩な処理を組み合わせて外観にリズミカルなテンポを与えている。

ウォークマンとして初めてマットガラスを採用。タッチ操作が快適で指紋も目立ちにくい

リア側をチェックしてみると、ZX1からZX100まで継承してきたボトム側がやや張り出した凹凸形状が解消されている。表側・裏側ともにフラットで凹凸のないデザインとなっているが、実は本体の厚みはZX100の“厚い方”のサイズ感に揃っているのだという。ただ質量はZX100の約145gから、ZX300では約157gと12gのボリュームアップに止めている。

背面はフラットな形状に。NFCによるペアリングにも対応する

ZX300でスペックダウンしたところとその理由

本体内蔵ストレージは128GBから64GBにサイズダウンしているが、側面にmicroSDカード端子を搭載して容量不足には対応を図っている。気になるのは音楽再生時のスタミナがZX100よりも落ちていること。96kHz/24bitのFLAC音源は連続再生時間が最大55時間から、ZX300では最大26時間になっている。その理由についても、具体的に話をきくことができた。

もう方側のサイドにmicroSDカードスロットがある

MQAやWi-Fiへの対応は?

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