公開日 2017/09/26 20:09
東京インターナショナルオーディオショウ スペシャルライブ出演
ジャズピアニスト 桑原あいインタビュー −「来てよかったな」と思えるライヴを
季刊analog編集部
■最先端のハイエンドオーディオは「ピアノを弾いている時と同じように聴こえた」
ジャズ・ピアニスト、桑原あいをご存じだろうか。幼い頃から鍵盤奏者としての頭角を表し、ヤマハエレクトーンコンクール全日本大会金賞をはじめとした多数の入賞実績などから「天才エレクトーン少女」として日本のメディアをおおいに賑わしたことを記憶している方も多いことだろう。
その後ピアノへと転向した彼女は2011年、ドイツでの演奏活動を経て、2012年にアルバム『from here to there』でデビュー。その後もジャズチャートを賑わせ続け、最新アルバムとなる『Somehow, Someday, Somewhere』では、スティーヴ・ガット、ウィル・リーという巨匠と張り合うプレイを収録し、大きな話題を集めている。
今週末9月29日(金)より開催される「2017東京インターナショナルオーディオショウ」では、開催2日目にあたる9月30日(土)、同日にコットンクラブで開催される桑原あいのライヴへ、来場者を先着で招待するという企画が行われる。
桑原あいのプレイは、実に表情豊かかつテクニカル。また彼女の作品はハイファイシステムとの相性も高く、試聴のレファレンスとして使用されるケースも多い。
そんな彼女自身に、現在最先端のハイエンドオーディオで自身の作品を聴いていただいたのだが、どのような感想を持ったのだろうか。
「聴いてまず一番びっくりしたのが、ピアノのレンジです。今回の作品で、私が何を一番気にしたかというと、ピアノの録り方。ここにいると、実際に弾いているみたいに聴こえました。一方で、ローズ(エレクトリック・ピアノ)を弾いた時は、奥行きというか、ピアノの椅子に座っている感覚はなかったんですよね。それはラインで録っているから、ラインらしく両方のチャンネルから綺麗に聴こえてくる。ピアノに関しては、ちゃんとマイクを3本以上立てて録っていることもあって、ピアノ椅子に座ってるように聴こえるんです。それが一番びっくりした点ですね」
この日、彼女が聴いた『Somehow, Someday, Somewhere』の収録を行ったのは、ニューヨークのSear Sound。本作で桑原あいと共にレコーディングしたスティーヴ・ガットはもちろんのこと、ロン・カーターやノラ・ジョーンズ、ディアンジェロ、さらにはデヴィッド・ボウイといった超大物まで、数々の名作を手がけてきたスタジオだ。海外でのレコーディングは日本のスタジオとはまた違うことは想像に難くないが、この「違い」について桑原あいはこう語る。
「(日本とニューヨークでは)スタジオも違うし、空気も、ものすごく乾燥しているので、ピアノの状態もカラッとしています。あと、いい意味で適当で、整備され過ぎていないと言うか。スタジオも吸音板がすごい貼ってあるとかでもなく。普通に窓もあるような広い部屋で私は録ったんですけど、良い感じでフランクなんですよね、空気感もスタッフも。やっぱり自分の感情も全然違ってきますよね」
■ピアニストとしてさらに成長した姿
実際に本作を聴くと、これまでの彼女の作品からひと皮剥けた印象を受けた。もちろんテクニックは第一級であることに変わりはないのだが、それに加えて日本人ピアニストとは思えないグルーヴが感じられるのである。それには、二人のジャズ・ジャイアントとの関係性が大きく影響しているようだ。
「レコーディング中、よく二人に言われてたのは、『あなたがハッピーでナチュラルな時のピアノの音が一番いい。だから常に気持ちのよい状態にしなさい。緊張はしちゃだめだ。僕たちをヒーローと思うな。僕たちはただのボーイだから』ということ。私なんてジャズ界では彼らから見たらまだまだ赤ちゃんみたいな存在なのに、ずっと同じ目線で見てくれていたというのが本当にありがたかった。『I trust you』って言われた時は、泣きそうになるくらい。私も信じることの勇気を二人から学びました。ようやく自分でも聴けるアルバムができたと思います」
この言葉のとおり、『Somehow, Someday, Somewhere』は、桑原あい自身にとっても、非常に大きな意味を持つ作品となったようだ。
ハイエンドオーディオで自身の作品を聴いたことを受け、オーディオファンに何かメッセージがないかと訪ねてみた。
「ここまで良いとライヴに来てもらえなくなっちゃうのが少し怖いですね。でも、ライヴは生もの。ライヴをする時は、レコーディングとはまた違う使命があるんですよね。いい音がするだけじゃダメだって。それこそMCもだし、その空間を共有してるということが一番大事で。お金もだけど、なにより時間。その人の寿命の一部をいただいてるということは、来てよかったなって思えるライヴをするのがアーティストの使命だと思っています。オーディオだったら“機械対人”になるけど、“人対人”になるのがライヴとの一番の違い。だからそれを体感するためにライヴに来て欲しいと思います」
東京インターナショナルオーディオショウの日は、ベースに鳥越啓介、ドラムスに千住宗臣を迎えて行われる。スティーヴ・ガット、ウィル・リーという二人の巨匠とのレコーディング/ライヴを経てさらなる進化を遂げた桑原あいのプレイを、ぜひ彼女と同じ空間で体験して欲しい。音源とはまた異なるパッションを感じることができるはずだ。
桑原あい
プロフィール:1991年生まれ。洗足学園高等学校音楽科ジャズピアノ専攻を卒業。これまでに5枚のアルバムをリリースし、JAZZ JAPAN AWARD2013アルバム・オブ・ザ・イヤー、第26回ミュージック・ペンクラブ音楽賞、JAPAN TIMES上半期ベストアルバムなど受賞多数。モントルージャズフェスティバルや東京JAZZなど国内外を問わずライブ活動を行う。
2017東京インターナショナルオーディオショウ スペシャルコンサート
●出演:【ai kuwabara the project】
桑原あい(ピアノ)、鳥越啓介(ベース)、千住宗臣(ドラムス)
●日時:2017年9月30日(土)開場19:00/開演20:00
●場所:コットンクラブ
(〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2F)
※ご招待券の配布方法は、IASJオフィシャルサイトおよび公式Facebookにて案内中
ジャズ・ピアニスト、桑原あいをご存じだろうか。幼い頃から鍵盤奏者としての頭角を表し、ヤマハエレクトーンコンクール全日本大会金賞をはじめとした多数の入賞実績などから「天才エレクトーン少女」として日本のメディアをおおいに賑わしたことを記憶している方も多いことだろう。
その後ピアノへと転向した彼女は2011年、ドイツでの演奏活動を経て、2012年にアルバム『from here to there』でデビュー。その後もジャズチャートを賑わせ続け、最新アルバムとなる『Somehow, Someday, Somewhere』では、スティーヴ・ガット、ウィル・リーという巨匠と張り合うプレイを収録し、大きな話題を集めている。
今週末9月29日(金)より開催される「2017東京インターナショナルオーディオショウ」では、開催2日目にあたる9月30日(土)、同日にコットンクラブで開催される桑原あいのライヴへ、来場者を先着で招待するという企画が行われる。
桑原あいのプレイは、実に表情豊かかつテクニカル。また彼女の作品はハイファイシステムとの相性も高く、試聴のレファレンスとして使用されるケースも多い。
そんな彼女自身に、現在最先端のハイエンドオーディオで自身の作品を聴いていただいたのだが、どのような感想を持ったのだろうか。
「聴いてまず一番びっくりしたのが、ピアノのレンジです。今回の作品で、私が何を一番気にしたかというと、ピアノの録り方。ここにいると、実際に弾いているみたいに聴こえました。一方で、ローズ(エレクトリック・ピアノ)を弾いた時は、奥行きというか、ピアノの椅子に座っている感覚はなかったんですよね。それはラインで録っているから、ラインらしく両方のチャンネルから綺麗に聴こえてくる。ピアノに関しては、ちゃんとマイクを3本以上立てて録っていることもあって、ピアノ椅子に座ってるように聴こえるんです。それが一番びっくりした点ですね」
この日、彼女が聴いた『Somehow, Someday, Somewhere』の収録を行ったのは、ニューヨークのSear Sound。本作で桑原あいと共にレコーディングしたスティーヴ・ガットはもちろんのこと、ロン・カーターやノラ・ジョーンズ、ディアンジェロ、さらにはデヴィッド・ボウイといった超大物まで、数々の名作を手がけてきたスタジオだ。海外でのレコーディングは日本のスタジオとはまた違うことは想像に難くないが、この「違い」について桑原あいはこう語る。
「(日本とニューヨークでは)スタジオも違うし、空気も、ものすごく乾燥しているので、ピアノの状態もカラッとしています。あと、いい意味で適当で、整備され過ぎていないと言うか。スタジオも吸音板がすごい貼ってあるとかでもなく。普通に窓もあるような広い部屋で私は録ったんですけど、良い感じでフランクなんですよね、空気感もスタッフも。やっぱり自分の感情も全然違ってきますよね」
■ピアニストとしてさらに成長した姿
実際に本作を聴くと、これまでの彼女の作品からひと皮剥けた印象を受けた。もちろんテクニックは第一級であることに変わりはないのだが、それに加えて日本人ピアニストとは思えないグルーヴが感じられるのである。それには、二人のジャズ・ジャイアントとの関係性が大きく影響しているようだ。
「レコーディング中、よく二人に言われてたのは、『あなたがハッピーでナチュラルな時のピアノの音が一番いい。だから常に気持ちのよい状態にしなさい。緊張はしちゃだめだ。僕たちをヒーローと思うな。僕たちはただのボーイだから』ということ。私なんてジャズ界では彼らから見たらまだまだ赤ちゃんみたいな存在なのに、ずっと同じ目線で見てくれていたというのが本当にありがたかった。『I trust you』って言われた時は、泣きそうになるくらい。私も信じることの勇気を二人から学びました。ようやく自分でも聴けるアルバムができたと思います」
この言葉のとおり、『Somehow, Someday, Somewhere』は、桑原あい自身にとっても、非常に大きな意味を持つ作品となったようだ。
ハイエンドオーディオで自身の作品を聴いたことを受け、オーディオファンに何かメッセージがないかと訪ねてみた。
「ここまで良いとライヴに来てもらえなくなっちゃうのが少し怖いですね。でも、ライヴは生もの。ライヴをする時は、レコーディングとはまた違う使命があるんですよね。いい音がするだけじゃダメだって。それこそMCもだし、その空間を共有してるということが一番大事で。お金もだけど、なにより時間。その人の寿命の一部をいただいてるということは、来てよかったなって思えるライヴをするのがアーティストの使命だと思っています。オーディオだったら“機械対人”になるけど、“人対人”になるのがライヴとの一番の違い。だからそれを体感するためにライヴに来て欲しいと思います」
東京インターナショナルオーディオショウの日は、ベースに鳥越啓介、ドラムスに千住宗臣を迎えて行われる。スティーヴ・ガット、ウィル・リーという二人の巨匠とのレコーディング/ライヴを経てさらなる進化を遂げた桑原あいのプレイを、ぜひ彼女と同じ空間で体験して欲しい。音源とはまた異なるパッションを感じることができるはずだ。
桑原あい
プロフィール:1991年生まれ。洗足学園高等学校音楽科ジャズピアノ専攻を卒業。これまでに5枚のアルバムをリリースし、JAZZ JAPAN AWARD2013アルバム・オブ・ザ・イヤー、第26回ミュージック・ペンクラブ音楽賞、JAPAN TIMES上半期ベストアルバムなど受賞多数。モントルージャズフェスティバルや東京JAZZなど国内外を問わずライブ活動を行う。
2017東京インターナショナルオーディオショウ スペシャルコンサート
●出演:【ai kuwabara the project】
桑原あい(ピアノ)、鳥越啓介(ベース)、千住宗臣(ドラムス)
●日時:2017年9月30日(土)開場19:00/開演20:00
●場所:コットンクラブ
(〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2F)
※ご招待券の配布方法は、IASJオフィシャルサイトおよび公式Facebookにて案内中
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