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公開日 2016/08/08 14:55
香港ハイエンドでもハイレゾへの注目度が急上昇

<香港AVショウ>ワイス、ボルダーなどが最先端のハイエンド・デジタルオーディオを披露

オーディオ編集部:浅田陽介
8月5日(金)〜7日(日)まで香港コンベンション&エキシビジョンセンターにて開催された「2016 Hong Kong High-End Audio Visual Show」(通称:香港AVショウ)。

同ショウで行われる各社のデモンストレーションのメインはCD。次いでアナログレコードという具合で、まだまだハイレゾ音源を用いたデモンストレーションは少ない印象だ。ハイレゾ音源を用いる場合も、送り出しにはパソコンを使用するケースが多い。

しかしながら確実にハイレゾ再生への関心は高まりつつあるようで、デモンストレーションの際はブースに入りきれないほどの多くの来場者がそのサウンドを聴こうと押し寄せている。

本稿では、なかでもとりわけ注目度の高かったデジタル関連の製品をご紹介する。

ワイス「DAC501」

独自のDSP上でさまざまな音声処理を行うユニークな機能を搭載したワイスのネットワークプレーヤー「DAC501」

プロオーディオをルーツに持ち、世界的なエンジニア達から圧倒的な支持を獲得するスイスのワイスは、香港AVショウにて同社の最新モデルとなるDAコンバーター兼ネットワークプレーヤー「DAC501」を発表した。

DAC501は、これまで先鋭的なオーディオファイル達の間で高い評価を獲得してきたDAC202と同サイズとなるコンパクトなモデル。同様の仕様でDAC502という型番のモデルも用意される予定となっており、こちらは同社のハイエンドミュージックサーバーMAN 301 DSDと同様のサイズとなるとのことだ。

デジタル入力はAES/EBU、RCA同軸デジタル、光TOS、USB(Aタイプ、外付けHDD等に仕様)、USB(Bタイプ)、Ethernetと豊富。これらから入力されたデジタル信号は、XLR、RCA、そしてヘッドホンといったアナログ端子に出力される。

最大の特徴となるのが、DSP上で行われる信号処理だ。ローブースト/カット、ハイブースト/カット、ミッドブースト/カットといった処理を行うクリエイティブイコライザー処理はもちろんのこと、人の声の歯擦音を抑制するディエッサー、再生するトラックの音量を一律に調整するコンスタントボリューム、レコードが持つ再生特性を再現するヴィニールエミュレーション、ライヴ録音等で使用することを想定したクロストーク・キャンセリング、ヘッドホンリスニング時に頭外定位させるアウト・オブ・ヘッド・ローカライゼーションといった、実に豊富な機能をDSPにて実装する。
これらはXLR、RCA、ヘッドホンといった各出力へ個別に割り当てることが可能で、スピーカーでもヘッドフォンでも理想的なサウンドを手に入れるための手段をとして非常に有効な機能となっている。

なお、ネットワーク機能はUPnP/DLNAに対応。特に専用のアプリを用意する予定はないそうで、これまでと同様にCreation 5 + DLNA Media Playerがコントロールアプリとして推奨されている。

ワイスはプロオーディオの分野でも極めて高い評価を獲得するブランドだが、DAC501/502に秘められた機能性とサウンドは、まさにその真骨頂ともいえるデジタル時代だからこその機器ということができるだろう。

BOULDER「2120 DAC」

全部で4つのシャーシ構成とするなど、徹底的な物量投入のもと開発されたボルダーの2120

アメリカのボルダーから登場したネットワークプレーヤー2120。電源部も含めれば全部で4つのシャーシで構成されることが特徴で、デジタル部と左右独立のアナログ部など考えられる信号干渉の要因を徹底的に排除した構造となっている。

型番がDACとなっていることからも分かるとおり、本機はUPnP/DLNAによるネットワーク再生に特化したモデルというわけではなく、AES/EBUやUSB(Bタイプ)、光TOS、HDMIなどさまざまなデジタル入力に対応。対応するサンプルレートは最大でPCM 384kHz/32bitとDSD 11.2MHz。
とりわけ特徴的なのは、入力したPCM信号を768kHz/32bitへとアップコンバートしたうえで処理するデジタルボリュームを備えることで、パワーアンプとの直結も想定された作りとなっていること。ボルダーらしい徹底した物量投入とデジタル時代ならではのコントロールセンターとしての機能を盛り込んだ仕様となっている。

フルカラーLCDで構成されたディスプレイにはメタデータやアルバムアート、サンプル・レートが大画面で表示されることも注目で、ユーザーは2120本体のみで直感的な操作が行えることも特徴だ。

EMM Labs「DA2」「TX2」

デジタル・オーディオ、取り分けDSD再生において極めて重要なブランドとなるEMMラボ。今年のCESで発表したDAコンバーター「DA2」、そしてSACD/CDトランスポート「TX2」は今回の香港AVショウでも高い注目を集めていた。

MDAT2をはじめとした独自の技術で入力信号をDSD45.2MHzへとアップサンプリングしての再生を可能としたEMMラボのDA2

DA2はUSBやS/PDIF、光TOS、AES/EBUのデジタル入力のほか、同社CDトランスポートと接続する際に使用するEMM Optlinkを搭載したDAコンバーターだ。

最大の特徴は、世界初となるDSD 45.2MHzの信号処理を可能としたディスクリートDAC「MDAC2」を搭載したこと。また、同時に、「MDAT2」というこれまで世界各地のオーディオ専門誌でも絶賛されたDSP技術をアップデートして搭載。これにより、内部のオーディオ信号をPCMからDSD 45.2MHzへ変換し、前述のMDAC2へ送り込む仕組みを採用している。

また、USB入力に対してもアップデートを施し、UBS入力から回り込むノイズにたいしての対策も徹底的に行っている。そのなかの技術の一つが「MFAST」と呼ばれるもの。こちらはハイスピード伝送におけるアシンクロナス伝送プロセスを行うUSBインターフェースとなっている。
さらに「MCLK2」というクロック技術を用いてDAC部でDSD 45.2MHzへアップコンバートした信号に対して最適な動作を行う技術を投入。長年にわたりDSDを追求してきたEMMラボらしい技術が満載された仕様となっている。
なお、DA2で対応する音源のサンプルレートは、最大PCM 384kHz/24bit、DSD 5.6MHzとなっている。

同社DA2とのペアリングで、SACD/CDをDSD45.2MHzへとアップサンプルして再生できるTX2

このDA2とペアになるトランスポートTX2は、AES/EBUとEMM Optlinkの2系統の出力のみを持つ極めてシンプルなSACD/CDトランスポートだ。CDドライブメカニズムはエソテリック製を採用するなど、注目点は多いが、中でも最も注目したいのはDA2にも搭載されたDSP技術MDAT2を採用している点だ。
これにより、CDやSACDの再生時でも全ての信号をDSD 45.2MHzへとアップコンバートした上で、DA2のDAC部へと伝送。これにより、ノイズフロアの驚異的なまでの低減など、従来のディスクメディアからは考えられないほどの高いS/Nやchセパレーション等を優れた特性を実現することに成功した。

こうした最先端のデジタル・オーディオ機器の普及度はまだまだ発展途上と各ディストリビューターは口を揃えていたが、会場の様子を見る限り着実にその注目度は上昇しているようだ。

デジタルオーディオブランドにとって香港や中国をはじめとしたアジアの市場は、今後さらに重要な意味を持つことになるとみていいだろう。

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