公開日 2017/08/07 11:00
セルロースナノファイバーを配合した振動板を採用
オンキヨー、和楽器技術を用いた“桐”スピーカーをクラウドファンディングで発売 ー 120万円/ペア
編集部:小澤貴信
オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンは、オンキヨーブランドより、桐材を用いたスピーカーシステム、および専用スタンドを開発。クラウドファンディング(実行確約型)にて先行販売する。
本スピーカーは、セルロースナノファイバーを用いた振動板によるウーファー、和楽器にヒントを得た天然の桐素材の単板を組み合わせた積層構造キャビネットなどを採用。さらにキャビネットの内部には和楽器で用いられる“彫り”(網状鱗彫り)を施して、響きをコントロールしている。スピーカーはブックシェルフタイプのバスレフ型で、サイズは153W×274H×289Dmmとかなりコンパクトだ。
クラウドファンディングは(株)日本経済新聞社が運営するチケット購入型クラウドファンディングサイト「未来ショッピング」で実施される。プランは以下の2種類が用意される。募集期間は2017年8月8日〜9月30日。
【プラン1】
桐スピーカー単体(スタンド含む)+アンプ/プレーヤー+オンキヨースタッフによる設置・接続
セット価格:¥1,300,000(税抜) 限定5セット
【プラン2】
桐スピーカー単体(スタンド含む)
価格:¥1,200,000(税抜) 限定5セット
プラン1、プラン2ともに専用スタンドがセットされる。上述の通り、プラン1ではオンキヨーのスタッフが実際に購入者の自宅を訪問してセッティングを行うことも特徴だ。プラン1に付属されるアンプ/CDプレーヤーは、オンキヨーブランド・“INTEC”シリーズの「C-755」「R-N855」となる。プラン1にはスピーカーケーブルも付属しており、セッティングを含めて購入すれば音が出るところまで全てがそろうプランとなっている。
今回のクラウドファンディングは実行確約型なので、限定数の範囲内ならば、申し込みを行えば必ず製品を購入することができる。なお、東京・八重洲の「Gibson Brands Showroom TOKYO」にて、本機の試聴も行える。
発表に先行して、プレス向けに説明会を実施。この桐スピーカーにコスト度外視で投入されたという技術や物量の詳細について説明が行われた。
プレゼンテーションは同社の八重口能孝氏が行った。この桐スピーカーは、市場のニーズに応えるという一般的な製品企画に基づいたものではなく、オンキヨーがこれまでに築いてきたスピーカーのノウハウや最新技術をコスト度外視で投入して、理想的なスピーカーを実現することを目指して開発が行われたとのこと。
目指したのは「日本人の五感に響く音」。それを実現するために参考にしたのが、「和楽器」だった。結果、通常ではスピーカー作りにおいては「エンクロージャーの不要な響きを抑える」ことを狙うのに対して、この桐スピーカーでは「いかに美しく響かせるか」をテーマにしたという。
八重口氏はこういった点も踏まえて、本機を「マーケティングもコストも度外視した、異端のスピーカー」と表現する。結果として設定すべき価格も跳ね上がり、通常では発売することが難しいとのことだが、今回はクラウドファンディングというかたちでこれを実現した。
和楽器をモチーフとして作り上げられた本機だが、開発の出発点となったのは、セルロースナノファイバーを用いた振動板を採用した100mm径ノンプレス・ONFコーンウーファーだったという。
オンキヨーは、2015年にセルロースナノファイバー(CNF)を用いたスピーカー振動板を世界で初めて開発したと発表。以降、CNFを用いた振動板の研究・開発を続け、昨年発売された「SC-3」(関連ニュース)でもCNFを配合した振動板が採用された。
そして今回の桐スピーカーのウーファーには、このCNFと、和紙の原料となる「楮(こうぞ)」、そして高緯度地域の針葉樹パルプを配合した新しい振動板を開発して採用。オンキヨー伝統のノンプレス製法も用いられた。音響的な“クセ”のない自然由来の素材を用い、さらなる軽量化・高剛性化、高い内部ロスを実現したという。
さらにこのウーファーは、振動板の表面を天然素材である「にかわ」でコーティング。物理特性を適正化した。さらにボイスコイルとの接着部には桐油煙墨(桐をいぶして作った高級墨)をグラデーション含浸させ、微小振動の伝達を適正化。SC-3でも用いられた墨がここでもまた利用されている。また、ウーファー中央の砲弾型イコライザーも木製で、ローズウッドが用いられている。
高域用には30mm径のリングトゥイーターを搭載。90kHzまでのの高域再生を可能としている。なお、ウーファー、トゥイーター共に、最新のコンピューター解析およびシュミレーションを用いて、超低歪設計を実施。これまで改善が難しかった動的な歪みも大幅に改善させた。
新開発のウーファーユニットの性能を最大限活かすためにエンクロージャーの素材として選ばれたのが、桐素材だった。桐は軽量かつ多孔質なので、適度にエネルギーを吸収することができ、高域に著しいエネルギー・ピークのない、自然な振動・響きを可能にするという。
このようにして桐を素材としたエンクロージャーには、筐体で発生する複雑な分割振動や内部定在波の発生、およびそれらによる付帯音の発生を避けるため、「Resonance Sculpting Control」と呼ばれる技術を適用した積層構造を採用した。具体的には、エンクロージャーとなるフレームとなる部分を3種類・7層の桐板で構成。内部を立体的に成形することで、剛性や響きの最適化している。
なお、本機ではあえて国産ではない桐材を用いているという。理由は「響きを最適化するために、あえて木の目が詰まっていないものを選んでいるため」とのことだった。
エンクロージャーの側板内側には和楽器などで用いられる「網状鱗彫り」を採用。厚みを連続的変化させることで筐体内部の反射音を避け、音の濁りを排除している。和楽器の彫りには様々な種類があるが、複数の彫りを試した結果、一番優れた効果を示したのが和太鼓などに使われるこの網状鱗彫りだったのだという。オンキヨーは、イヤーカップ内側にこのような楽器の彫りを用いたヘッドホンの試作をこれまでイベントなどで参考出展していたが、こうしたノウハウも活かされたようだ。
ちなみに、彫りの加工は機械で行うのだが、やわらかい素材である桐をこのように加工するのは非常に難しく、国内でも限られた業者のみが加工を行えるとのこと。
このように、まさに楽器の思想およびアプローチで、エンクロージャーの響きを最適化している。なお、吸音材には真綿を用い、ここでも天然素材へのこだわりを見せている。
ユニットの音色を活かすためにネットワークには、空芯コイル、低歪ケイ素鋼板コアコイル、Mundorf社製コンデンサーなど厳選したパーツを使用。さらに誘導電流を低減する構造を採用する。
専用のスピーカースタンドも用意。やはり木製で、タモ材を使用。一部には黒檀を用いている、タモ材の表面はオイルフィニッシュとしている。また、重心支持構造を採用。スピーカー自体の振動モードを解析して、スピーカーの特性を最大限活かせるように設計されている。
発表会では、この桐スピーカーの開発者であるオンキヨー(株) 開発技術課の井上岳氏の「音に魂が宿っている、と感じるくらい、音を自然に、ありのままに感じられるスピーカーをつくりたかった」という言葉が紹介された。またこのスピーカーの随所に自然素材が用いられている理由は、それは「自然素材を用いることで、自然の音が出せる」という思想に基づいているとした。
スピーカー本体の付属品として、油箪(ゆたん、保護カバー)、コルクスペーサー(8個)が付属する。
インピーダンスは4Ω、最大入力は70W、出力音圧レベルは85dB/W/m、再生周波数帯域は65Hz〜90kHz、クロスオーバー周波数は4kHz。外形寸法は153W×274H×289Dmm、質量は3.4kg。
本スピーカーは、セルロースナノファイバーを用いた振動板によるウーファー、和楽器にヒントを得た天然の桐素材の単板を組み合わせた積層構造キャビネットなどを採用。さらにキャビネットの内部には和楽器で用いられる“彫り”(網状鱗彫り)を施して、響きをコントロールしている。スピーカーはブックシェルフタイプのバスレフ型で、サイズは153W×274H×289Dmmとかなりコンパクトだ。
クラウドファンディングは(株)日本経済新聞社が運営するチケット購入型クラウドファンディングサイト「未来ショッピング」で実施される。プランは以下の2種類が用意される。募集期間は2017年8月8日〜9月30日。
【プラン1】
桐スピーカー単体(スタンド含む)+アンプ/プレーヤー+オンキヨースタッフによる設置・接続
セット価格:¥1,300,000(税抜) 限定5セット
【プラン2】
桐スピーカー単体(スタンド含む)
価格:¥1,200,000(税抜) 限定5セット
プラン1、プラン2ともに専用スタンドがセットされる。上述の通り、プラン1ではオンキヨーのスタッフが実際に購入者の自宅を訪問してセッティングを行うことも特徴だ。プラン1に付属されるアンプ/CDプレーヤーは、オンキヨーブランド・“INTEC”シリーズの「C-755」「R-N855」となる。プラン1にはスピーカーケーブルも付属しており、セッティングを含めて購入すれば音が出るところまで全てがそろうプランとなっている。
今回のクラウドファンディングは実行確約型なので、限定数の範囲内ならば、申し込みを行えば必ず製品を購入することができる。なお、東京・八重洲の「Gibson Brands Showroom TOKYO」にて、本機の試聴も行える。
発表に先行して、プレス向けに説明会を実施。この桐スピーカーにコスト度外視で投入されたという技術や物量の詳細について説明が行われた。
プレゼンテーションは同社の八重口能孝氏が行った。この桐スピーカーは、市場のニーズに応えるという一般的な製品企画に基づいたものではなく、オンキヨーがこれまでに築いてきたスピーカーのノウハウや最新技術をコスト度外視で投入して、理想的なスピーカーを実現することを目指して開発が行われたとのこと。
目指したのは「日本人の五感に響く音」。それを実現するために参考にしたのが、「和楽器」だった。結果、通常ではスピーカー作りにおいては「エンクロージャーの不要な響きを抑える」ことを狙うのに対して、この桐スピーカーでは「いかに美しく響かせるか」をテーマにしたという。
八重口氏はこういった点も踏まえて、本機を「マーケティングもコストも度外視した、異端のスピーカー」と表現する。結果として設定すべき価格も跳ね上がり、通常では発売することが難しいとのことだが、今回はクラウドファンディングというかたちでこれを実現した。
和楽器をモチーフとして作り上げられた本機だが、開発の出発点となったのは、セルロースナノファイバーを用いた振動板を採用した100mm径ノンプレス・ONFコーンウーファーだったという。
オンキヨーは、2015年にセルロースナノファイバー(CNF)を用いたスピーカー振動板を世界で初めて開発したと発表。以降、CNFを用いた振動板の研究・開発を続け、昨年発売された「SC-3」(関連ニュース)でもCNFを配合した振動板が採用された。
そして今回の桐スピーカーのウーファーには、このCNFと、和紙の原料となる「楮(こうぞ)」、そして高緯度地域の針葉樹パルプを配合した新しい振動板を開発して採用。オンキヨー伝統のノンプレス製法も用いられた。音響的な“クセ”のない自然由来の素材を用い、さらなる軽量化・高剛性化、高い内部ロスを実現したという。
さらにこのウーファーは、振動板の表面を天然素材である「にかわ」でコーティング。物理特性を適正化した。さらにボイスコイルとの接着部には桐油煙墨(桐をいぶして作った高級墨)をグラデーション含浸させ、微小振動の伝達を適正化。SC-3でも用いられた墨がここでもまた利用されている。また、ウーファー中央の砲弾型イコライザーも木製で、ローズウッドが用いられている。
高域用には30mm径のリングトゥイーターを搭載。90kHzまでのの高域再生を可能としている。なお、ウーファー、トゥイーター共に、最新のコンピューター解析およびシュミレーションを用いて、超低歪設計を実施。これまで改善が難しかった動的な歪みも大幅に改善させた。
新開発のウーファーユニットの性能を最大限活かすためにエンクロージャーの素材として選ばれたのが、桐素材だった。桐は軽量かつ多孔質なので、適度にエネルギーを吸収することができ、高域に著しいエネルギー・ピークのない、自然な振動・響きを可能にするという。
このようにして桐を素材としたエンクロージャーには、筐体で発生する複雑な分割振動や内部定在波の発生、およびそれらによる付帯音の発生を避けるため、「Resonance Sculpting Control」と呼ばれる技術を適用した積層構造を採用した。具体的には、エンクロージャーとなるフレームとなる部分を3種類・7層の桐板で構成。内部を立体的に成形することで、剛性や響きの最適化している。
なお、本機ではあえて国産ではない桐材を用いているという。理由は「響きを最適化するために、あえて木の目が詰まっていないものを選んでいるため」とのことだった。
エンクロージャーの側板内側には和楽器などで用いられる「網状鱗彫り」を採用。厚みを連続的変化させることで筐体内部の反射音を避け、音の濁りを排除している。和楽器の彫りには様々な種類があるが、複数の彫りを試した結果、一番優れた効果を示したのが和太鼓などに使われるこの網状鱗彫りだったのだという。オンキヨーは、イヤーカップ内側にこのような楽器の彫りを用いたヘッドホンの試作をこれまでイベントなどで参考出展していたが、こうしたノウハウも活かされたようだ。
ちなみに、彫りの加工は機械で行うのだが、やわらかい素材である桐をこのように加工するのは非常に難しく、国内でも限られた業者のみが加工を行えるとのこと。
このように、まさに楽器の思想およびアプローチで、エンクロージャーの響きを最適化している。なお、吸音材には真綿を用い、ここでも天然素材へのこだわりを見せている。
ユニットの音色を活かすためにネットワークには、空芯コイル、低歪ケイ素鋼板コアコイル、Mundorf社製コンデンサーなど厳選したパーツを使用。さらに誘導電流を低減する構造を採用する。
専用のスピーカースタンドも用意。やはり木製で、タモ材を使用。一部には黒檀を用いている、タモ材の表面はオイルフィニッシュとしている。また、重心支持構造を採用。スピーカー自体の振動モードを解析して、スピーカーの特性を最大限活かせるように設計されている。
発表会では、この桐スピーカーの開発者であるオンキヨー(株) 開発技術課の井上岳氏の「音に魂が宿っている、と感じるくらい、音を自然に、ありのままに感じられるスピーカーをつくりたかった」という言葉が紹介された。またこのスピーカーの随所に自然素材が用いられている理由は、それは「自然素材を用いることで、自然の音が出せる」という思想に基づいているとした。
スピーカー本体の付属品として、油箪(ゆたん、保護カバー)、コルクスペーサー(8個)が付属する。
インピーダンスは4Ω、最大入力は70W、出力音圧レベルは85dB/W/m、再生周波数帯域は65Hz〜90kHz、クロスオーバー周波数は4kHz。外形寸法は153W×274H×289Dmm、質量は3.4kg。