公開日 2019/08/08 11:00
サウンドマネージャーの理想を追求
デノン、“コストや開発期間を度外視” のフラグシップSACD&プリメイン「SX1 LIMITED」
編集部:小澤貴信
デノンは、新世代のフラグシップモデルに位置付けられるSACDプレーヤー「DCD-SX1 LIMITED」とプリメインアンプ「PMA-SX1 LIMITED」を9月中旬より発売する。価格はそれぞれ「DCD-SX1 LIMITED」が750,000円、「PMA-SX1 LIMITED」が780,000円(いずれも税抜)。
従来のフラグシップSACDプレーヤー「DCD-SX1」(2013年発売・55万円/税抜、関連ニュース)とプリメインアンプ「PMA-SX1」(2014年発売・58万円/税抜、関連ニュース)は、前サウンドマネージャーが音質検討を手がけたモデル。この2モデルをベースに、現在のデノン・サウンドマネージャーである山内慎一氏が、開発コスト/期間を度外視して理想のサウンドを追求してブラッシュアップを行った新世代フラグシップがDCD-SX1 LIMITED/ LIMITEDとなる。
山内氏はサウンドマネージャー就任以来、「Vivid & Spacious(ビビッド&スペーシャス)」をデノンのサウンドフィロソフィーとして掲げてきた。SX1 LIMITEDでは、フラグシップモデルでこの思想を体現することを目指したという。また、山内氏は「音楽の持つ美しさやスリル、これが何より先に浮かび上がってくるようなモデルを作りたかった」と述べた。
開発期間には4年を要したとのこと。両モデルともに従来モデルをプラットフォームとしつつ、コンデンサーや抵抗、オペアンプ、天板、フットなど約400箇所のパーツの変更が行われた。特にコンデンサーは、山内氏が音質を左右する部品として重視するポイントで、山内氏がエンジニア時代から10年にわたって手がけてきたカスタムコンデンサー 計37種類が随所に用いられている。また、一方で不要パーツの削減を行い、回路構成のシンプル&ストレート化をさらに押し進めた。
本機はそもそも「Model X」として、製品化を前提としない開発リファレンスという位置付けで、山内氏が開発を行っていた。本機を聴いた経営陣がその突出したサウンドに興味を示し、最終的に製品化にゴー・サインを出したとのこと。
山内氏は、既存のフラグシップモデルをプラットフォームとしつつゼロベースで洗い直して、自身の音質チューニングを反映させていくというSX1 LIMITEDの開発過程を、「デノンの歴史を遡って検証していくというような作業だった」とも語っていた。デノンが長年培ってきた技術やノウハウの集大成であったSX1を、ビビッド&スペーシャスという言葉で表現される山内氏の思想によって再構築したのがSX1 LIMITEDと言えるだろう。
■DCD-SX1 LIMITED
DCD-SX1 LIMITEDは、アルミ砂型鋳物ベース採用の超重量級ドライブメカニズムやDACチップにTI製「PCM1795」をL/R独立で2基用いたDAC部など基幹部分は従来モデルから継承する(これらの詳細についてはベースモデルとなったDCD-SX1の記事で詳しく紹介している)。
一方で約400ヶ所にもおよぶパーツの変更や回路見直しを実施。オーディオ基板の見直しを行い、アナログ回路ブロックにおける主要コンデンサーと抵抗の約90%を変更。オペアンプも全て交換し、10ヶ所のパーツが削減された。また、フィルター回路の見直しも行われた。
デジタル回路ブロックについても主要なコンデンサーの約30%を変更。マスタークロックの変更も行われた。アナログ電源ブロックは全てのコンデンサーが、デジタル電源ブロックについても主要なコンデンサーの約90%が変更された。さらに、筐体の天板には新たにA7075超々ジェラルミンによる天板を採用。フットもA7075を素材として新規設計された。
機能面の仕様はDCD-SX1と同様だ。SACD、CDの再生に対応(データディスク再生はMP3・WMAに対応)。USB-DACを内蔵し、最大192kHz/24bitのPCM、5.6MHz DSDに対応。USB-A端子からはiPhoneの接続やUSBメモリー再生が可能で、対応ファイルは48kHzまでのWAV/AAC/WMA/MP3となる。
アナログ出力はバランスXLRを1系統、アンバランスRCAを1系統備える。そのほか、同軸/光デジタル出力を各1系統、同軸/光デジタル入力を各1系統備えている。外形寸法は434W×149H×406Dmm、質量は23.5kg(従来モデルの質量は25.0kg)。
■PMA-SX1 LIMITED
PMA-SX1 LIMITEDのベースモデルとなるPMA-SX1は、全段バランスアンプ構成、Advanced UHC-MOS FETを用いたシングルプッシュプル構成の増幅部、CR型フォノイコライザーの搭載などを特徴とするプリメインアンプ(ベースモデルと共通する基幹技術の詳細はPMA-SX1の記事で紹介している)。
これらの基幹技術はやはり継承しつつ、本機も約400ヶ所のパーツ変更や回路見直しを実施。パワーアンプ部のコンデンサーの約80%を変更し、一方で10ヶ所のパーツ削減を実現。プリアンプ部も全ての主要コンデンサーの変更が行われた。ボリューム等の制御基板についてもコンデンサーの約50%を変更。入力回路およびフォノ回路部の主要コンデンサーは約90%が変更された。
本機もDCD-SX1 LIMITEDと同様に、天板には新たにA7075超々ジェラルミンによる天板を採用し、フットもA7075採用の新規設計品が用いられた。
出力などは従来モデルと同様で、定格出力は50W+50W(8Ω)/100W+100W(4Ω)となる。スピーカー負荷は4Ω-16Ω。
入力端子はバランスXLR×1、アンバランスRCA×5、フォノ(MM)×1、フォノ(MC)×1、パワーアンプ直接入力×1となる。外形寸法は434W×181H×504Dmm、質量は29.5kg(従来モデルの質量は30.4kg)。
■山内氏の手によるカスタムコンデンサーを惜しみなく投入
山内氏はサウンドマネージャーに就任する以前のエンジニア時代から、カスタムパーツ、特にカスタムコンデンサーが音質設計における重要な位置を占めるとして、その開発に注力していた。サウンドマネージャー就任後もカスタムコンデンサーの開発には力を入れており、SX1 LIMITEDシリーズに投入されたカスタムコンデンサーは37種類におよぶ。もちろんその中には、SX1 LIMITEDのために開発されたものも含まれている。
カスタムコンデンサーの開発にあたっては、用いる素材の指定はおちろん、スリーブの素材や有無、加熱工程における温度指定、プレス工程の圧力調整など、経験やノウハウ、さらには厳格な試聴テストに基づいて選択。SX1 LIMITEDにおいては37種類のコンデンサーを適材適所で巧みに使い分けている。
ちなみにこれらカスタムコンデンサーの中にはSYコンデンサーと名付けられているものが7種類あるが、これはエンジニア時代に開発したもので、その愛着から自身のイニシャルSYを冠しているという。それが、当時の上司からは不興を買ったものの、それでも山内氏はカスタムコンデンサーを開発し続けたというエピソードも披露された。
■A7075超超ジェラルミン製のトップカバー&フットを採用
トップカバー(天板)とフットにはA7075超超ジェラルミンを使用。この素材を選択するためには、様々な材質を用いて試作・試聴を繰り返したという。A7075はアルミに亜鉛とマグネシウムが添加された合金で、アルミ合金の中では最も強度に優れ、航空機などにも用いられている素材となる。
なお、デザイン上の観点から当初は天板はサウンドブラスト加工による仕上げを予定していたが、ヘアライン加工のトップカバーのほうがサウンドステージの透明感や細部の表現力に優れていたことから、ヘアライン加工が最終的に選択されたのだという。山内氏はこの天板による音の変化について「高域が冴えるのだが、それはワインに例えると、上質なシャブリのような感触」と説明していた。
近年のデノンは「シンプル&ストレート」の思想を掲げ、信号経路の最短化・シンプル化を徹底して音楽信号の純度を追求してきた。SX1 LIMITEDにおいてはコンデンサーやオペアンプをより高性能なものに変更したことで、新たな不要部分が見えてきたとのこと。結果として、上述のような不要パーツの削減も各所で行われた。
SX1 LIMITEDシリーズは福島県白河市の自社工場にて製造。いわゆるライン生産方式ではなくセル生産方式として、高い品質を実現しているという。
なお、SX1 LIMITEDシリーズを購入して、購入後2年以内に延長保証サービスに申し込むと、全員が3年保証に延長される。
また、SX1 LIMITEDシリーズを購入して、年内に申込みを行った方全員に、Audio Quest製のデノンオリジナルケーブルがプレゼントされる(プレゼントが万が一なくなった場合は、同等品のプレゼントとなる)。
■集大成「SX1」を解体/再構築して実現したデノンの新しい最高峰
発表会ではDCD-SX1 LIMITEDとPMA-SX1 LIMITEDの組み合わせをデノンの開発試聴室で実際に聴くことができた。スピーカーにはB&W「802 D3」が組み合わされていたのだが、そこで聴いた音は、山内氏がサウンドマネージャーに就任した以降のデノンの理想を具現化したといえるようなサウンドだった。
軽やかさと実在感が同居する色彩豊かな音は、ある意味で記者が国産ブランドのサウンドとしてイメージしてきたものとは趣きを異にしていると感じた。山内氏自身が音楽性を何より大事にして音質設計を行ったと語っていたが、SX1 LIMITEDの音を聴くと納得させられる。ワイドレンジで情報量は圧倒的なのだが、聴き疲れするような押しつけがましさは皆無。広大で立体的なサウンドステージは、SX11や2500NEで山内氏が追求してきたそれを極限まで押し進めたものと言える。
現代音楽やポップミュージックにも造詣の深い山内氏らしく、テクノからエレクトロなサウンドを織り交ぜたポップスなども聴かせてくれたのだが、こうした音楽特有の低音を見事に再現して、多彩な音色も描き分ける。分析的で、ややもすると神経質な音になりがちな802 D3を、ここまで音楽的に鳴らすことにも驚かされた。
こういった開発スタイルが今後できるかはわからない、と語る山内氏だが、開発期間やコストを度外視したストイックな音質追求は、SX1 LIMITEDが実際に再生する音になにより現れている。特にDCD-SX1 LIMITEDはベースモデルが発売から時間が立っており、対応フォーマットだけを見ると最新機種に譲る部分もあるし、DACチップも最新のものではない。しかし、そこにはデノンの集大成として作り上げられたSX1を、さらに山内氏が最新の潮流も踏まえた独自の視点でいったん解体して再構築するという、気の遠くなるようなプロセスがあってこそ実現できる唯一無二のサウンドを聴くことができた。
従来のフラグシップSACDプレーヤー「DCD-SX1」(2013年発売・55万円/税抜、関連ニュース)とプリメインアンプ「PMA-SX1」(2014年発売・58万円/税抜、関連ニュース)は、前サウンドマネージャーが音質検討を手がけたモデル。この2モデルをベースに、現在のデノン・サウンドマネージャーである山内慎一氏が、開発コスト/期間を度外視して理想のサウンドを追求してブラッシュアップを行った新世代フラグシップがDCD-SX1 LIMITED/ LIMITEDとなる。
山内氏はサウンドマネージャー就任以来、「Vivid & Spacious(ビビッド&スペーシャス)」をデノンのサウンドフィロソフィーとして掲げてきた。SX1 LIMITEDでは、フラグシップモデルでこの思想を体現することを目指したという。また、山内氏は「音楽の持つ美しさやスリル、これが何より先に浮かび上がってくるようなモデルを作りたかった」と述べた。
開発期間には4年を要したとのこと。両モデルともに従来モデルをプラットフォームとしつつ、コンデンサーや抵抗、オペアンプ、天板、フットなど約400箇所のパーツの変更が行われた。特にコンデンサーは、山内氏が音質を左右する部品として重視するポイントで、山内氏がエンジニア時代から10年にわたって手がけてきたカスタムコンデンサー 計37種類が随所に用いられている。また、一方で不要パーツの削減を行い、回路構成のシンプル&ストレート化をさらに押し進めた。
本機はそもそも「Model X」として、製品化を前提としない開発リファレンスという位置付けで、山内氏が開発を行っていた。本機を聴いた経営陣がその突出したサウンドに興味を示し、最終的に製品化にゴー・サインを出したとのこと。
山内氏は、既存のフラグシップモデルをプラットフォームとしつつゼロベースで洗い直して、自身の音質チューニングを反映させていくというSX1 LIMITEDの開発過程を、「デノンの歴史を遡って検証していくというような作業だった」とも語っていた。デノンが長年培ってきた技術やノウハウの集大成であったSX1を、ビビッド&スペーシャスという言葉で表現される山内氏の思想によって再構築したのがSX1 LIMITEDと言えるだろう。
■DCD-SX1 LIMITED
DCD-SX1 LIMITEDは、アルミ砂型鋳物ベース採用の超重量級ドライブメカニズムやDACチップにTI製「PCM1795」をL/R独立で2基用いたDAC部など基幹部分は従来モデルから継承する(これらの詳細についてはベースモデルとなったDCD-SX1の記事で詳しく紹介している)。
一方で約400ヶ所にもおよぶパーツの変更や回路見直しを実施。オーディオ基板の見直しを行い、アナログ回路ブロックにおける主要コンデンサーと抵抗の約90%を変更。オペアンプも全て交換し、10ヶ所のパーツが削減された。また、フィルター回路の見直しも行われた。
デジタル回路ブロックについても主要なコンデンサーの約30%を変更。マスタークロックの変更も行われた。アナログ電源ブロックは全てのコンデンサーが、デジタル電源ブロックについても主要なコンデンサーの約90%が変更された。さらに、筐体の天板には新たにA7075超々ジェラルミンによる天板を採用。フットもA7075を素材として新規設計された。
機能面の仕様はDCD-SX1と同様だ。SACD、CDの再生に対応(データディスク再生はMP3・WMAに対応)。USB-DACを内蔵し、最大192kHz/24bitのPCM、5.6MHz DSDに対応。USB-A端子からはiPhoneの接続やUSBメモリー再生が可能で、対応ファイルは48kHzまでのWAV/AAC/WMA/MP3となる。
アナログ出力はバランスXLRを1系統、アンバランスRCAを1系統備える。そのほか、同軸/光デジタル出力を各1系統、同軸/光デジタル入力を各1系統備えている。外形寸法は434W×149H×406Dmm、質量は23.5kg(従来モデルの質量は25.0kg)。
■PMA-SX1 LIMITED
PMA-SX1 LIMITEDのベースモデルとなるPMA-SX1は、全段バランスアンプ構成、Advanced UHC-MOS FETを用いたシングルプッシュプル構成の増幅部、CR型フォノイコライザーの搭載などを特徴とするプリメインアンプ(ベースモデルと共通する基幹技術の詳細はPMA-SX1の記事で紹介している)。
これらの基幹技術はやはり継承しつつ、本機も約400ヶ所のパーツ変更や回路見直しを実施。パワーアンプ部のコンデンサーの約80%を変更し、一方で10ヶ所のパーツ削減を実現。プリアンプ部も全ての主要コンデンサーの変更が行われた。ボリューム等の制御基板についてもコンデンサーの約50%を変更。入力回路およびフォノ回路部の主要コンデンサーは約90%が変更された。
本機もDCD-SX1 LIMITEDと同様に、天板には新たにA7075超々ジェラルミンによる天板を採用し、フットもA7075採用の新規設計品が用いられた。
出力などは従来モデルと同様で、定格出力は50W+50W(8Ω)/100W+100W(4Ω)となる。スピーカー負荷は4Ω-16Ω。
入力端子はバランスXLR×1、アンバランスRCA×5、フォノ(MM)×1、フォノ(MC)×1、パワーアンプ直接入力×1となる。外形寸法は434W×181H×504Dmm、質量は29.5kg(従来モデルの質量は30.4kg)。
■山内氏の手によるカスタムコンデンサーを惜しみなく投入
山内氏はサウンドマネージャーに就任する以前のエンジニア時代から、カスタムパーツ、特にカスタムコンデンサーが音質設計における重要な位置を占めるとして、その開発に注力していた。サウンドマネージャー就任後もカスタムコンデンサーの開発には力を入れており、SX1 LIMITEDシリーズに投入されたカスタムコンデンサーは37種類におよぶ。もちろんその中には、SX1 LIMITEDのために開発されたものも含まれている。
カスタムコンデンサーの開発にあたっては、用いる素材の指定はおちろん、スリーブの素材や有無、加熱工程における温度指定、プレス工程の圧力調整など、経験やノウハウ、さらには厳格な試聴テストに基づいて選択。SX1 LIMITEDにおいては37種類のコンデンサーを適材適所で巧みに使い分けている。
ちなみにこれらカスタムコンデンサーの中にはSYコンデンサーと名付けられているものが7種類あるが、これはエンジニア時代に開発したもので、その愛着から自身のイニシャルSYを冠しているという。それが、当時の上司からは不興を買ったものの、それでも山内氏はカスタムコンデンサーを開発し続けたというエピソードも披露された。
■A7075超超ジェラルミン製のトップカバー&フットを採用
トップカバー(天板)とフットにはA7075超超ジェラルミンを使用。この素材を選択するためには、様々な材質を用いて試作・試聴を繰り返したという。A7075はアルミに亜鉛とマグネシウムが添加された合金で、アルミ合金の中では最も強度に優れ、航空機などにも用いられている素材となる。
なお、デザイン上の観点から当初は天板はサウンドブラスト加工による仕上げを予定していたが、ヘアライン加工のトップカバーのほうがサウンドステージの透明感や細部の表現力に優れていたことから、ヘアライン加工が最終的に選択されたのだという。山内氏はこの天板による音の変化について「高域が冴えるのだが、それはワインに例えると、上質なシャブリのような感触」と説明していた。
近年のデノンは「シンプル&ストレート」の思想を掲げ、信号経路の最短化・シンプル化を徹底して音楽信号の純度を追求してきた。SX1 LIMITEDにおいてはコンデンサーやオペアンプをより高性能なものに変更したことで、新たな不要部分が見えてきたとのこと。結果として、上述のような不要パーツの削減も各所で行われた。
SX1 LIMITEDシリーズは福島県白河市の自社工場にて製造。いわゆるライン生産方式ではなくセル生産方式として、高い品質を実現しているという。
なお、SX1 LIMITEDシリーズを購入して、購入後2年以内に延長保証サービスに申し込むと、全員が3年保証に延長される。
また、SX1 LIMITEDシリーズを購入して、年内に申込みを行った方全員に、Audio Quest製のデノンオリジナルケーブルがプレゼントされる(プレゼントが万が一なくなった場合は、同等品のプレゼントとなる)。
■集大成「SX1」を解体/再構築して実現したデノンの新しい最高峰
発表会ではDCD-SX1 LIMITEDとPMA-SX1 LIMITEDの組み合わせをデノンの開発試聴室で実際に聴くことができた。スピーカーにはB&W「802 D3」が組み合わされていたのだが、そこで聴いた音は、山内氏がサウンドマネージャーに就任した以降のデノンの理想を具現化したといえるようなサウンドだった。
軽やかさと実在感が同居する色彩豊かな音は、ある意味で記者が国産ブランドのサウンドとしてイメージしてきたものとは趣きを異にしていると感じた。山内氏自身が音楽性を何より大事にして音質設計を行ったと語っていたが、SX1 LIMITEDの音を聴くと納得させられる。ワイドレンジで情報量は圧倒的なのだが、聴き疲れするような押しつけがましさは皆無。広大で立体的なサウンドステージは、SX11や2500NEで山内氏が追求してきたそれを極限まで押し進めたものと言える。
現代音楽やポップミュージックにも造詣の深い山内氏らしく、テクノからエレクトロなサウンドを織り交ぜたポップスなども聴かせてくれたのだが、こうした音楽特有の低音を見事に再現して、多彩な音色も描き分ける。分析的で、ややもすると神経質な音になりがちな802 D3を、ここまで音楽的に鳴らすことにも驚かされた。
こういった開発スタイルが今後できるかはわからない、と語る山内氏だが、開発期間やコストを度外視したストイックな音質追求は、SX1 LIMITEDが実際に再生する音になにより現れている。特にDCD-SX1 LIMITEDはベースモデルが発売から時間が立っており、対応フォーマットだけを見ると最新機種に譲る部分もあるし、DACチップも最新のものではない。しかし、そこにはデノンの集大成として作り上げられたSX1を、さらに山内氏が最新の潮流も踏まえた独自の視点でいったん解体して再構築するという、気の遠くなるようなプロセスがあってこそ実現できる唯一無二のサウンドを聴くことができた。
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