公開日 2022/07/14 12:00
ハイレベルにリペアされたリユース商品が店内にズラリと揃う、オーディオファンも一目置くオーディオ専門店「ハードオフ オーディオサロン」。2014年5月に誕生した1号店の新潟紫竹山店に続き、2016年9月16日にオープンしたのがここ吉祥寺店。コロナ禍のハイファイオーディオへの回帰も追い風に、現在、業界を悩ます品不足にも影響されることなく、足しげく通うファンがますます増えているという。
「オープンからまもなく6年になります。多くのお客様に信頼を寄せていただき、スタッフ一人一人とのつながりもさらに太く、力強くなっています」と語る宮澤康久店長。知名度も着実に高まり、同店にて初めて商品を購入してオーディオを始めたり、昔やっていたオーディオを再開させたり、また、グレードアップを重ねていくお客様など、ハードオフ オーディオサロン吉祥寺店のファンの輪が大きく広がっている。
コロナ禍でお客様との距離が遠のくなか、存在感を示したのは「OFFモール(オフモール)」。ハードオフコーポレーションが展開する公式総合中古通販サイトだ。オーディオファンにとって“オーディオサロン”がひとつの見逃せないブランドとして定着し、同店からの出品を毎日のようにチェックするお客様の存在は依然より知られていた。そうした動きにさらに拍車がかかり、“オフモール効果”を実感するという。目に留まる商品が出品されるや「待っていました!」と言わんがばかりに来店されるお客様も珍しくない。
2021年度のオフモールの店舗別売上げでは、ハードオフオーディオサロン吉祥寺店が堂々の1位。現在、売上げの3〜4割をオフモールからのルートが占め、小型ブックシェルフスピーカーのようなオフモール向けに意識した商品も用意している。オフモールへの出品はスムーズに進めば約5分で完了。ストレスのないシステムで店側の負担も少ない。「商品によっては『これは是非、聴いてみたい』と店まで足を運んでいただけるように、お客様の琴線に触れるようにコメントにも工夫を凝らしています」と力を入れる。ちなみに店舗別売上げの2位は“楽器のオーディオサロン”とも言える、同じ建物の階下2階に店を構える「ハードオフ楽器STUDIO吉祥寺店」がランクインする。
さらに、ここに来てリユース市場への追い風となるのが、かつて経験したことがない品不足。「新品が購入できないからと中古に手を伸ばすケースが増えています。驚かされるのは、これまで中古に見向きもしなかったような高所得者層の方も目を向け始めていること。やはり、何カ月も待っていられないんですよ」と取り巻く環境の変化を指摘する。
もちろんその背景には、ハードオフオーディオサロンが築き上げたオーディオリユース商品に対する信頼感があってこそ。リペアの方法や部品の調達先などノウハウと技術を積み重ね、2018年4月にはオーディオと楽器専門のリペアセンターを新潟紫竹山にオープン。全国のハードオフで取り扱う商品のさらなる付加価値向上が図られている。
吉祥寺店においてはリペアを自店でほぼ完結する。主に任されているのは、電子機器の設計・製造会社を自らも長年運営する、元制御系エンジニアの神野氏。中古製品に新しい命を吹き込む手腕はまさに“神”業で、神野氏を指名して修理や整備を依頼されるお客様もいるそうだ。
作業スペースが入り口カウンター奥に設けられているため、来店したお客様は誰でも見ることができるし、自ずと気になり目が行くことだろう。「実際に作業風景を目にすることで安心してもらうことができます。販売している商品にどのようなリペアが施されたのか。スタッフも接客の際に必要なら、すぐに神野さんに確認できますし、神野さん直々にお客様へ説明することもあります」。
リユース商品を安心して購入するための裏付けとなる、元の状態やそれに対してどのようなリペアが施されたのかについて、同店では来店されたお客様に対してきちんと説明を行っている。それはすなわち、リペアに対する自信の裏返しとも言えるだろう。
先日、通常のハードオフなら5万円前後で販売されるカセットデッキを、同店では徹底してリペアを施し、18万円の値付けで販売した。もっともカセットデッキは全盛期が今から40年以上も前になる品物で、「直す人も商品も高齢化が進み、10年前ならベルト交換だけで済んだ作業も、今ではピンチローラーや基盤のコンデンサーなど随所にわたります。数万円で済んだ代金も、今では10万円を超えることは珍しくありません」と説明する。18万円の商品に目を止め、価値を見抜いたのは、“動態保存”をポリシーとするコレクターのお客様。「この店は仕事がしっかりしている」と惚れ込み、以来、リピーターとなり店に通っているそうだ。
ハイファイオーディオ市場で課題とされる若い世代へのアプローチには、趣味でDJを楽しむ高野雄輔副店長が手腕を発揮する。同年代としての話しかけやすさも武器にお客様との距離感を縮め、「決して安いパワードスピーカーで満足している人ばかりではありませんから」とオーディオへの興味に火をつける。2階の「ハードオフ楽器STUDIO吉祥寺店」が目的で来店し、ちょっと関心があるからと3階のオーディオサロンまで足を延ばしたお客様をオーディオの世界へ引き込んでしまうことも。
1階に構える「ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店」の存在も見逃せない。オーディオ、AV機器、家電、パソコン、ゲーム機&ゲームソフト、カメラ、腕時計、スマホ、工具、ジャンクなど多彩なアイテムが顔を揃える。「敷居が低いですから、そこから2階の楽器や3階のオーディオをもう少し深掘りしてみようかとお客様が上がってらっしゃるケースも少なくありません」とリアル店舗間でシナジーを発揮する。
しかし、若い世代のお客様獲得が、オーディオ業界にとっての最優先課題でありながら、「残念な光景を目にすることもあります」と嘆く。
聞かせていただいたのは、コレクションしたレコードとプレーヤーを売りにきた若い女性客の話。せっかくそこまで集めたのにもったいない。なぜだろうと理由を尋ねた宮澤店長。答えは「音が悪いから」。持参したのが数千円のレコードプレーヤーだったため、「きちんとしたシステムで、お持ちになったレコードを聴いていただいたんです。すると、『レコードってこんないい音がするんですか!』と目を丸くされ、結局、レコードは売らずにそのままお持ち帰りになられました」。
レコードを聴くための手段を単に安価に提供するにとどまり、趣味としての奥深さが同時に伝えられていなかったのだろう。「以前勤務していた店舗で、毎日のようにこうした安価なレコードプレーヤーが持ち込まれ、店頭に山積み状態になったこともありました」と行き場のない気持ちを訴えた。
「中古で始めるときにも、趣味として楽しめる最低限のグレードにはこだわってほしいと必ず説明しています。たとえば『5万円でレコードを始めたい』と話すお客様には、お客様のためを思い、『それならばやらない方がいいですよ』と正直にお話しします。しかし、わざわざ店まで足を運んでいただいたのは、きちんとした目的意識を持っている証拠。わかりやすく説明をして、実際に音を聴いていただくと、10万円、15万円と予算を膨らまされるケースが少なくありません。がっかりした想いはさせたくありませんからね」。
ハードオフでは、新規出店やリニューアルをした店舗を中心に、オーディオサロンのエッセンスを注ぎ込み、ハイファイオーディオ機器を試聴できる態勢を整えた「オーディオセレクションコーナー」の設置を進めている。
コロナ禍で断捨離が進み、リユース市場が活発化している。ハードオフコーポレーションでは「好きを仕事に」を謳い、社員の個性を活かし、専門性を高める人材育成を実践してきたが、新たにZoomを活用した研修体制を幅広いジャンルを対象に強化している。オーディオでもいろいろな取り組みが行われているが、関東地区では先頃、宮澤店長を講師に「レコードプレーヤー」をテーマにした研修会が、統括店長8名を集めてオーディオサロン吉祥寺店で行われた。
レコードプレーヤーのいろはから、買い取りの際の値段の付け方に至るまでをレクチャー。「オーディオセレクションコーナーもきちんとしたノウハウがなければ維持していくことはむずかしい。オーディオサロンで日頃当たり前に行っていることを、こうした研修を通してどんどん横展開しくことで、不安や疑問を払拭していきたい。それがひいてはお客様のためにもなります」と次なるステージへ目を向ける。
「約6年にわたる時間の積み重ねのなかで、バリエーションあるサービスを提供し、また、さまざまな趣味を持つ幅広い世代のお客様の要望にきちんと応えられるメンバーが揃っていることは、ハードオフオーディオサロン吉祥寺店の何より大きな強みです。さらにそこへオフモール、オファー買い取りという新しい武器も加わり、これからがますます楽しみです」と腕を鳴らす宮澤店長。
「withコロナ」「製品供給不足」「SDGs」など、世の中の流れも後押しして、リユース市場に対する関心はますます高まっている。ハードオフオーディオサロンは前記のように、2014年5月に1号店として新潟紫竹山店が、2016年9月にここ吉祥寺店がオープンした。コロナ禍で各方面においていろいろな取り組みが延期・中断を余儀なくされたが、両店の躍進に、オーディオサロン3号店の出店を待ち望む声もますます大きくなっている。
宮澤康久店長に聞く
「ハードオフオーディオサロン吉祥寺店」、6年の月日を積み重ねオーディオファンの輪が大きく拡がる
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純■コロナ禍に通販サイト「オフモール」と大きなシナジー
ハイレベルにリペアされたリユース商品が店内にズラリと揃う、オーディオファンも一目置くオーディオ専門店「ハードオフ オーディオサロン」。2014年5月に誕生した1号店の新潟紫竹山店に続き、2016年9月16日にオープンしたのがここ吉祥寺店。コロナ禍のハイファイオーディオへの回帰も追い風に、現在、業界を悩ます品不足にも影響されることなく、足しげく通うファンがますます増えているという。
「オープンからまもなく6年になります。多くのお客様に信頼を寄せていただき、スタッフ一人一人とのつながりもさらに太く、力強くなっています」と語る宮澤康久店長。知名度も着実に高まり、同店にて初めて商品を購入してオーディオを始めたり、昔やっていたオーディオを再開させたり、また、グレードアップを重ねていくお客様など、ハードオフ オーディオサロン吉祥寺店のファンの輪が大きく広がっている。
コロナ禍でお客様との距離が遠のくなか、存在感を示したのは「OFFモール(オフモール)」。ハードオフコーポレーションが展開する公式総合中古通販サイトだ。オーディオファンにとって“オーディオサロン”がひとつの見逃せないブランドとして定着し、同店からの出品を毎日のようにチェックするお客様の存在は依然より知られていた。そうした動きにさらに拍車がかかり、“オフモール効果”を実感するという。目に留まる商品が出品されるや「待っていました!」と言わんがばかりに来店されるお客様も珍しくない。
2021年度のオフモールの店舗別売上げでは、ハードオフオーディオサロン吉祥寺店が堂々の1位。現在、売上げの3〜4割をオフモールからのルートが占め、小型ブックシェルフスピーカーのようなオフモール向けに意識した商品も用意している。オフモールへの出品はスムーズに進めば約5分で完了。ストレスのないシステムで店側の負担も少ない。「商品によっては『これは是非、聴いてみたい』と店まで足を運んでいただけるように、お客様の琴線に触れるようにコメントにも工夫を凝らしています」と力を入れる。ちなみに店舗別売上げの2位は“楽器のオーディオサロン”とも言える、同じ建物の階下2階に店を構える「ハードオフ楽器STUDIO吉祥寺店」がランクインする。
■商品に新たな命を吹き込むリペアの達人
さらに、ここに来てリユース市場への追い風となるのが、かつて経験したことがない品不足。「新品が購入できないからと中古に手を伸ばすケースが増えています。驚かされるのは、これまで中古に見向きもしなかったような高所得者層の方も目を向け始めていること。やはり、何カ月も待っていられないんですよ」と取り巻く環境の変化を指摘する。
もちろんその背景には、ハードオフオーディオサロンが築き上げたオーディオリユース商品に対する信頼感があってこそ。リペアの方法や部品の調達先などノウハウと技術を積み重ね、2018年4月にはオーディオと楽器専門のリペアセンターを新潟紫竹山にオープン。全国のハードオフで取り扱う商品のさらなる付加価値向上が図られている。
吉祥寺店においてはリペアを自店でほぼ完結する。主に任されているのは、電子機器の設計・製造会社を自らも長年運営する、元制御系エンジニアの神野氏。中古製品に新しい命を吹き込む手腕はまさに“神”業で、神野氏を指名して修理や整備を依頼されるお客様もいるそうだ。
作業スペースが入り口カウンター奥に設けられているため、来店したお客様は誰でも見ることができるし、自ずと気になり目が行くことだろう。「実際に作業風景を目にすることで安心してもらうことができます。販売している商品にどのようなリペアが施されたのか。スタッフも接客の際に必要なら、すぐに神野さんに確認できますし、神野さん直々にお客様へ説明することもあります」。
リユース商品を安心して購入するための裏付けとなる、元の状態やそれに対してどのようなリペアが施されたのかについて、同店では来店されたお客様に対してきちんと説明を行っている。それはすなわち、リペアに対する自信の裏返しとも言えるだろう。
先日、通常のハードオフなら5万円前後で販売されるカセットデッキを、同店では徹底してリペアを施し、18万円の値付けで販売した。もっともカセットデッキは全盛期が今から40年以上も前になる品物で、「直す人も商品も高齢化が進み、10年前ならベルト交換だけで済んだ作業も、今ではピンチローラーや基盤のコンデンサーなど随所にわたります。数万円で済んだ代金も、今では10万円を超えることは珍しくありません」と説明する。18万円の商品に目を止め、価値を見抜いたのは、“動態保存”をポリシーとするコレクターのお客様。「この店は仕事がしっかりしている」と惚れ込み、以来、リピーターとなり店に通っているそうだ。
■レコードの真の姿に目覚めた若い女性客
ハイファイオーディオ市場で課題とされる若い世代へのアプローチには、趣味でDJを楽しむ高野雄輔副店長が手腕を発揮する。同年代としての話しかけやすさも武器にお客様との距離感を縮め、「決して安いパワードスピーカーで満足している人ばかりではありませんから」とオーディオへの興味に火をつける。2階の「ハードオフ楽器STUDIO吉祥寺店」が目的で来店し、ちょっと関心があるからと3階のオーディオサロンまで足を延ばしたお客様をオーディオの世界へ引き込んでしまうことも。
1階に構える「ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店」の存在も見逃せない。オーディオ、AV機器、家電、パソコン、ゲーム機&ゲームソフト、カメラ、腕時計、スマホ、工具、ジャンクなど多彩なアイテムが顔を揃える。「敷居が低いですから、そこから2階の楽器や3階のオーディオをもう少し深掘りしてみようかとお客様が上がってらっしゃるケースも少なくありません」とリアル店舗間でシナジーを発揮する。
しかし、若い世代のお客様獲得が、オーディオ業界にとっての最優先課題でありながら、「残念な光景を目にすることもあります」と嘆く。
聞かせていただいたのは、コレクションしたレコードとプレーヤーを売りにきた若い女性客の話。せっかくそこまで集めたのにもったいない。なぜだろうと理由を尋ねた宮澤店長。答えは「音が悪いから」。持参したのが数千円のレコードプレーヤーだったため、「きちんとしたシステムで、お持ちになったレコードを聴いていただいたんです。すると、『レコードってこんないい音がするんですか!』と目を丸くされ、結局、レコードは売らずにそのままお持ち帰りになられました」。
レコードを聴くための手段を単に安価に提供するにとどまり、趣味としての奥深さが同時に伝えられていなかったのだろう。「以前勤務していた店舗で、毎日のようにこうした安価なレコードプレーヤーが持ち込まれ、店頭に山積み状態になったこともありました」と行き場のない気持ちを訴えた。
「中古で始めるときにも、趣味として楽しめる最低限のグレードにはこだわってほしいと必ず説明しています。たとえば『5万円でレコードを始めたい』と話すお客様には、お客様のためを思い、『それならばやらない方がいいですよ』と正直にお話しします。しかし、わざわざ店まで足を運んでいただいたのは、きちんとした目的意識を持っている証拠。わかりやすく説明をして、実際に音を聴いていただくと、10万円、15万円と予算を膨らまされるケースが少なくありません。がっかりした想いはさせたくありませんからね」。
■各地に展開するオーディオセレクションコーナーに注目
ハードオフでは、新規出店やリニューアルをした店舗を中心に、オーディオサロンのエッセンスを注ぎ込み、ハイファイオーディオ機器を試聴できる態勢を整えた「オーディオセレクションコーナー」の設置を進めている。
コロナ禍で断捨離が進み、リユース市場が活発化している。ハードオフコーポレーションでは「好きを仕事に」を謳い、社員の個性を活かし、専門性を高める人材育成を実践してきたが、新たにZoomを活用した研修体制を幅広いジャンルを対象に強化している。オーディオでもいろいろな取り組みが行われているが、関東地区では先頃、宮澤店長を講師に「レコードプレーヤー」をテーマにした研修会が、統括店長8名を集めてオーディオサロン吉祥寺店で行われた。
レコードプレーヤーのいろはから、買い取りの際の値段の付け方に至るまでをレクチャー。「オーディオセレクションコーナーもきちんとしたノウハウがなければ維持していくことはむずかしい。オーディオサロンで日頃当たり前に行っていることを、こうした研修を通してどんどん横展開しくことで、不安や疑問を払拭していきたい。それがひいてはお客様のためにもなります」と次なるステージへ目を向ける。
「約6年にわたる時間の積み重ねのなかで、バリエーションあるサービスを提供し、また、さまざまな趣味を持つ幅広い世代のお客様の要望にきちんと応えられるメンバーが揃っていることは、ハードオフオーディオサロン吉祥寺店の何より大きな強みです。さらにそこへオフモール、オファー買い取りという新しい武器も加わり、これからがますます楽しみです」と腕を鳴らす宮澤店長。
「withコロナ」「製品供給不足」「SDGs」など、世の中の流れも後押しして、リユース市場に対する関心はますます高まっている。ハードオフオーディオサロンは前記のように、2014年5月に1号店として新潟紫竹山店が、2016年9月にここ吉祥寺店がオープンした。コロナ禍で各方面においていろいろな取り組みが延期・中断を余儀なくされたが、両店の躍進に、オーディオサロン3号店の出店を待ち望む声もますます大きくなっている。
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