公開日 2023/09/15 17:00
全モデルにチタンドームトゥイーターを搭載
Bowers&Wilkins、スピーカー600シリーズを「S3」に刷新。これまでで最も包括的なアップグレード
編集部:松永達矢
ディーアンドエムホールディングスは、英・Bowers&Wilkins(B&W)のスピーカー「600シリーズ」をアップデートし、新世代モデル「600 S3」シリーズとして9月下旬から順次発売する。ラインナップと価格(税込)は下記の通り。
・フロアスタンディング型「603 S3」:191,400円(1台)
・ブックシェルフ型「606 S3」:165,000円(ペア)
・ブックシェルフ型「607 S3」:132,000円(ペア)
・センタースピーカー「HTM6 S3」:118,000円(1台)
・スピーカースタンド「FS-600 S3」:57,200円(ペア)
2014年発売の「600 S2」シリーズ、2020年発売の「600 S2 Anniversary Edition」シリーズからラインナップが刷新される。スピーカーのカラーバリエーションはオーク、レッドチェリー、ホワイト、ブラックの4種を用意。フロアスタンドはシルバーとブラックの2色展開となる。
600シリーズではこれまでアルミドームトゥイーターを搭載していたが、600 S3シリーズではチタンドームトゥイーターをシリーズで初採用。構造自体はこれまで同様のダブルドームの形状を踏襲し、非常に薄く軽量でありながら高い剛性を備える25ミクロンのメインドームと、最も大きな力が加わる外周部を補強する30ミクロンのチタニウム・リングによって構成される。
チタン素材採用の背景として、D&Mシニアサウンドマスター澤田龍一氏は、数年前に欧州で発売されたPhilipsのテレビに搭載する内蔵スピーカーを手掛けた際、ブランドとして初めてチタンドームを導入したのが設計士の印象を深めたのではないかと語る。
Hi-Fiスピーカーへの採用事例も多いチタン素材は、強度はアルミの2倍を誇るが、その分質量も倍となるため、重さあたりの強度はアルミと変わらない。以前も同社のスピーカーで採用の動きがあったというが「音はいいが、重すぎて必要な能率が取れない」とのことから不採用に至ったという。
今回のチタン素材採用に伴うウェイトコントロールとして、ダブルドーム構造を採用するトゥイーターの周辺補強部位の厚さと寸法の見直しが行われた。チタンに適したスパンを選ぶことで、従来のアルミダブルドームと同特性を獲得し、能率的な問題をクリア。これまでのモデルと同様に使えて、チタン特有の洗練された音を楽しむことができると澤田氏はアピールした。
素材変更によるサウンドキャラクターを活かすために、「700 S3シリーズ」と同様に大きく延長されたチューブ・ローディング・システムを装着。前モデル比では倍近いサイズとなる。延長されたチューブ内では、共振周波数の減衰と振動板への背圧抑制を行うことでよりオープンなサウンドを提供する。
トゥイーターユニットは前モデルよりも約5mmほど、ミッドレンジないしバス/ミッドレンジ・ドライブ・ユニットとの間隔を狭めた位置にマウント。物理的な音源を近くして定位を改善する。さらに、メッシュグリルには「801 D4 Signature」「805 D4 Signature」で初採用された開口率の高い形状を取り入れ、ワイドかつオープンなサウンドの拡散を実現させている。
中音域までの再生を担うコンティニュアムコーンの構造はほぼ変わっていないとのことだが、磁気回路に手を加え、キャップとポールピースの間に設けられた空気抜きの穴の径を拡大。従来モデルの約5.5mmから約8mm径へと拡大したことで、エアフローの向上と磁束密度に変化に伴う歪の低下に寄与すると説明している。
なお、穴の径を大きくすればより効率化するわけではなく、メインの磁界が通る部分が減少してしまい、本来必要なエネルギーは下がってしまうとのこと。以前は穴径の違う試作機を一つ一つ作ってチェックを行っていたが、現在はコンピューターシミュレーションを介して最適な穴径を選んでいるという。
ウーファーについても従来機との変更点はホール径の変更に留まっており、従来の6mm径から11mm径に拡大した。ウーファーは中域をカバーしないため、構造上ショートニングが含まれておらず、ポールピースの断面積が異なる。その構造上の余裕から穴径をより大きくすることができたとのことだ。
キャビネット内部はブレーシングの木材をアップグレードすることでさらなる剛性を獲得。ケーブルターミナル部も従来機からの変更が加えられており、バスレフダクトとの一体成型からセパレート構造に変更。レイアウトも縦に上下一組ずつのバイワイヤから、上級モデル同様に横並びのバイワイヤ構造へ変更した。
ネットワーク部も回路そのものや主たる部品のグレードの変更は行わず、コンデンサーに付随する音質補正用のバイパスコンデンサーの個数を調整。603 S2 Anniversary Editionではコンデンサー1つに対して2個の搭載だったが、本モデルでは4個を搭載。メインコンデンサーと比較してかなり小さい容量となっているため、個数を増やしても特性の変更は「誤差の範囲」とのことだが、聴感的な差が表れるという。
いずれのモデルもバスレフ型、ポートは後ろ側に抜ける設計となっている。ダクトチューニングは低域側を拡張する格好で設計されている。例として、607の場合は50Hzのチューニングを44Hzにて実施。これに伴い、バスレフのダクトが延長され、607のみストレート設計ではなくカーブを持たせて長さを稼いだとのことだ。各モデルのスペック詳細は下記の通り。
<603 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、150mm Continuum コーン FST ミッドレンジ、165mm ペーパー・コーン・バス×2基(3ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 29Hz - 33kHz(−6dB)、感度 90dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小3.0Ω)、外形寸法 260W×1,020H×402Dmm(台座を含む)、質量 27.5kg。
<606 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、165mm Continuum コーン・バス ミッドレンジ(2ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 40Hz - 33kHz(−6dB)、感度 88dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小3.7Ω)、外形寸法 189W×344H×328Dmm(グリルおよび端子を含む)、質量 7.05kg。
<607 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、130mm Continuum コーン・バス ミッドレンジ(2ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 40Hz - 33kHz(−6dB)、感度 84dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小3.0Ω)、外形寸法が165W×300H×235Dmm(グリルおよび端子を含む)、質量 4.65kg。
<HTM6 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、130mm Continuum コーン・バス ミッドレンジ×2基(2ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 42Hz - 33kHz(−6dB)、感度 87dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小4.3Ω)、外形寸法 480W×160H×283Dmm(グリルおよび端子を含む)、質量が7.7kg。
・フロアスタンディング型「603 S3」:191,400円(1台)
・ブックシェルフ型「606 S3」:165,000円(ペア)
・ブックシェルフ型「607 S3」:132,000円(ペア)
・センタースピーカー「HTM6 S3」:118,000円(1台)
・スピーカースタンド「FS-600 S3」:57,200円(ペア)
2014年発売の「600 S2」シリーズ、2020年発売の「600 S2 Anniversary Edition」シリーズからラインナップが刷新される。スピーカーのカラーバリエーションはオーク、レッドチェリー、ホワイト、ブラックの4種を用意。フロアスタンドはシルバーとブラックの2色展開となる。
600シリーズではこれまでアルミドームトゥイーターを搭載していたが、600 S3シリーズではチタンドームトゥイーターをシリーズで初採用。構造自体はこれまで同様のダブルドームの形状を踏襲し、非常に薄く軽量でありながら高い剛性を備える25ミクロンのメインドームと、最も大きな力が加わる外周部を補強する30ミクロンのチタニウム・リングによって構成される。
チタン素材採用の背景として、D&Mシニアサウンドマスター澤田龍一氏は、数年前に欧州で発売されたPhilipsのテレビに搭載する内蔵スピーカーを手掛けた際、ブランドとして初めてチタンドームを導入したのが設計士の印象を深めたのではないかと語る。
Hi-Fiスピーカーへの採用事例も多いチタン素材は、強度はアルミの2倍を誇るが、その分質量も倍となるため、重さあたりの強度はアルミと変わらない。以前も同社のスピーカーで採用の動きがあったというが「音はいいが、重すぎて必要な能率が取れない」とのことから不採用に至ったという。
今回のチタン素材採用に伴うウェイトコントロールとして、ダブルドーム構造を採用するトゥイーターの周辺補強部位の厚さと寸法の見直しが行われた。チタンに適したスパンを選ぶことで、従来のアルミダブルドームと同特性を獲得し、能率的な問題をクリア。これまでのモデルと同様に使えて、チタン特有の洗練された音を楽しむことができると澤田氏はアピールした。
素材変更によるサウンドキャラクターを活かすために、「700 S3シリーズ」と同様に大きく延長されたチューブ・ローディング・システムを装着。前モデル比では倍近いサイズとなる。延長されたチューブ内では、共振周波数の減衰と振動板への背圧抑制を行うことでよりオープンなサウンドを提供する。
トゥイーターユニットは前モデルよりも約5mmほど、ミッドレンジないしバス/ミッドレンジ・ドライブ・ユニットとの間隔を狭めた位置にマウント。物理的な音源を近くして定位を改善する。さらに、メッシュグリルには「801 D4 Signature」「805 D4 Signature」で初採用された開口率の高い形状を取り入れ、ワイドかつオープンなサウンドの拡散を実現させている。
中音域までの再生を担うコンティニュアムコーンの構造はほぼ変わっていないとのことだが、磁気回路に手を加え、キャップとポールピースの間に設けられた空気抜きの穴の径を拡大。従来モデルの約5.5mmから約8mm径へと拡大したことで、エアフローの向上と磁束密度に変化に伴う歪の低下に寄与すると説明している。
なお、穴の径を大きくすればより効率化するわけではなく、メインの磁界が通る部分が減少してしまい、本来必要なエネルギーは下がってしまうとのこと。以前は穴径の違う試作機を一つ一つ作ってチェックを行っていたが、現在はコンピューターシミュレーションを介して最適な穴径を選んでいるという。
ウーファーについても従来機との変更点はホール径の変更に留まっており、従来の6mm径から11mm径に拡大した。ウーファーは中域をカバーしないため、構造上ショートニングが含まれておらず、ポールピースの断面積が異なる。その構造上の余裕から穴径をより大きくすることができたとのことだ。
キャビネット内部はブレーシングの木材をアップグレードすることでさらなる剛性を獲得。ケーブルターミナル部も従来機からの変更が加えられており、バスレフダクトとの一体成型からセパレート構造に変更。レイアウトも縦に上下一組ずつのバイワイヤから、上級モデル同様に横並びのバイワイヤ構造へ変更した。
ネットワーク部も回路そのものや主たる部品のグレードの変更は行わず、コンデンサーに付随する音質補正用のバイパスコンデンサーの個数を調整。603 S2 Anniversary Editionではコンデンサー1つに対して2個の搭載だったが、本モデルでは4個を搭載。メインコンデンサーと比較してかなり小さい容量となっているため、個数を増やしても特性の変更は「誤差の範囲」とのことだが、聴感的な差が表れるという。
いずれのモデルもバスレフ型、ポートは後ろ側に抜ける設計となっている。ダクトチューニングは低域側を拡張する格好で設計されている。例として、607の場合は50Hzのチューニングを44Hzにて実施。これに伴い、バスレフのダクトが延長され、607のみストレート設計ではなくカーブを持たせて長さを稼いだとのことだ。各モデルのスペック詳細は下記の通り。
<603 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、150mm Continuum コーン FST ミッドレンジ、165mm ペーパー・コーン・バス×2基(3ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 29Hz - 33kHz(−6dB)、感度 90dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小3.0Ω)、外形寸法 260W×1,020H×402Dmm(台座を含む)、質量 27.5kg。
<606 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、165mm Continuum コーン・バス ミッドレンジ(2ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 40Hz - 33kHz(−6dB)、感度 88dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小3.7Ω)、外形寸法 189W×344H×328Dmm(グリルおよび端子を含む)、質量 7.05kg。
<607 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、130mm Continuum コーン・バス ミッドレンジ(2ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 40Hz - 33kHz(−6dB)、感度 84dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小3.0Ω)、外形寸法が165W×300H×235Dmm(グリルおよび端子を含む)、質量 4.65kg。
<HTM6 S3>25mm チタニウム・ドーム・トゥイーター、130mm Continuum コーン・バス ミッドレンジ×2基(2ウェイ・バスレフ型)
周波数レンジ 42Hz - 33kHz(−6dB)、感度 87dB(軸上 1m 2.83Vrms)、インピーダンス 8Ω(最小4.3Ω)、外形寸法 480W×160H×283Dmm(グリルおよび端子を含む)、質量が7.7kg。