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公開日 2017/02/28 19:54
最新放送技術/機器や、放送用の様々な取り組みを紹介
NHK、番組技術展にて4K/8K実用放送に向けた最新技術を披露 ー VRを用いた緊急報道システムも
編集部:川田菜月
NHKは、放送技術局や全国の放送局が開発した最新放送機器、番組制作および緊急報道への取り組みを紹介する「第46回 番組技術展」を、NHK渋谷放送センターにて2月26日(日)〜28日(火)の3日間にわたって開催した。
会場では、4K/8Kコンテンツ制作のための最新技術・機材を紹介する「スーパーハイビジョン」や、より高精度な防災・減災報道実現のための「緊急報道」、データを活用したスポーツ中継を可能にする技術を紹介する「スポーツ」、その他番組制作の運用性改善や品質向上のための取り組みである「番組制作」「放送の品質確保」という、5つの分野に分けて展示が行われた。
■2018年の4K/8K実用放送へ向けた技術が多数出展
平昌冬季オリンピックや2020年の東京オリンピック開催、また、2018年予定の4K/8K実用放送開始に向け、NHKではさらなる機材充実とコンテンツ制作に力を入れていくとのこと。それらを実現するための最新放送機材が、一堂に展示された。
制作現場での機動性/利便性の向上のために、技術局と放送技術研究所は共同で、8Kカメラやモニターなどの小型化を図っている。低コスト化も目指す。
8Kカメラは現用機が約5kgなのに対して、新開発された小型機は約1.5kgと軽量化を実現。収録部はカメラと一体になっており、専用のSSDで約60分(1/10圧縮時)の収録が可能。生中継には対応していないが、小型/軽量化で持ち運びしやすく、海外ロケなどでの機動性向上が期待される。
8K小型液晶モニターはジャパンディスプレイ社製で、サイズは17インチ。ドットバイドットによる8K映像表示が可能だ。厚みは15cmと家庭向けの液晶テレビよりは分厚いが、制作現場で多く使用される19インチの機材ラックに収まるサイズで、中継車などに持ち込んでロケ現場での使用などが想定される。
会場入り口には、リオ五輪において8K映像+22.2ch立体音響の制作に現地で使用された、8Kスーパーハイビジョン中継車「SHC-2」を展示。片側拡幅型の車両に広く確保された制作室には、55インチ8Kモニターを搭載。実際に放送される8K画質の映像をその場で確認できる。音声モニター環境は5.1chで、限られた現場の制作環境でもマルチチャンネル音響による番組制作が可能とのこと。
映像配信への取り組みについては、リオ五輪でも活用された「4Kストリーミングサービス」を紹介。8Kで撮影された映像を4K画質にダウンコンバートし、ハイブリットキャスト対応の4Kテレビ向けに、インターネットを通してライブ配信や見逃し配信サービスを実施した。2018年開始予定の実用放送と合わせて、今後も配信サービスの向上を図っていきたいとのこと。
興味深い試みの1つとして、「8K TIME MACHINE」の展示を挙げておきたい。NHKのおよそ70年分・1,300本の番組(白黒〜8K)を探索できるシステムで、タッチパネルの大型ディスプレイに表示された「自分の生まれた年」と「戻ってみたい年齢」を選択して、当時放送されていた音楽やNHKのテレビ番組を見ることができる。番組の選択画面では、各番組が64分割でサムネイル表示される。
8K TIME MACHINEの試作機がNHK渋谷放送センターにあるスタジオパーク内に常設展示されており、シニア層から子供までがタイムスリップ気分を味わうことができる。今春からの新番組では、スタジオ内演出にも応用展開する予定とのこと。
他にも、4K/8K撮影時においてより精細なフォーカシングを実現する「フォーカスリモート」システムや、高精細な8K映像表現を実現する「PLマウント8K箱型ズームレンズ」など、様々な面から8Kコンテンツ制作のための技術・機材開発が進んでいる。
■VR活用を想定した全方位カメラによる報道向け技術も
オリンピック中継などスポーツ映像の充実を図る技術として開発された「データライブ解析」は、撮影方向やズームなどのカメラ情報を含まないスポーツの中継や配信映像から、選手の走る速度や加速度、歩幅などをリアルタイムで解析できるシステム。スポーツ映像のほか、自然界の動物の映像などからも速度測定が可能とのこと。
タッチパネル式のディスプレイに映し出された映像から測定したい選手を選択すると、前後のフレームで移動した画素数と、独自の特許技術で算出したカメラと対象までの距離を元に、実際に走った距離を算出して各情報を測定することができる。本技術は技術局と仙台放送局が共同で開発。東北地震による津波災害から、到達時間を測定する技術を確立することで被害を最小限に抑えることができるのではという考えから開発が始まったという。
ゴルフや陸上の投てき競技の飛距離の軌跡を表示する「飛翔体軌跡表示システム」も展示。現状流通しているシステムでは1秒ほど遅れが生じるが、本システムでは1フレーム程度の遅延におさめて、音も映像もほぼ遅れを感じさせずに描くことができるという。
地震や台風など過去に例を見ない規模の災害が多く発生する近年において、より高レベルの防災・減災報道を可能にするため、緊急報道の分野でも各局が様々な取り組み、技術開発を行っていた。
今回の番組技術展での最優秀賞を受賞した「緊急報道サポートナビ」は、札幌放送局が開発。Google Mapを活用して現場までの距離・所要時間・ルート検索、地形や電波データを解析、その時点でデータを転送するのに最適な基地局の選択等を可能にする。これにより、いち早くニュースカーを現場に送ることができ、また複数の中継車への円滑に指示を出して、迅速な情報提供が行えるようになるという。
この分野では「全方位カメラ・ライブトリミング送出システム」「置くだけ天カメ UTOM(アトム)」「全天球映像 動画抽出システム」など、360度映像を活用したシステムも目立った。放送技術局が開発した「全方位カメラ・ライブトリミング送出システム」では、現場には全方位カメラのみを設置、映像処理機能は局内に配置して、任意の場所をトリミングしてライブ放送が可能。VRサービスでの活用も期待される。
UTOMは宇都宮放送局が開発したシステムで、360度カメラで撮影した画像を公衆モバイル回線を利用して放送局に送信。太陽電池を利用しており、フル充電で3日間程度は動作可能となる。カメラのプロセッシングにはRaspberry Piを使用しており低コストに抑えている。展示スペースでは、VRヘッドセットで10分前に撮影された会場外の映像を見ることができた。
また、山形放送局も「全天球映像 動画抽出システム」を開発。任意の位置とサイズで映像の切り出しが可能で、こちらも民生機器を使用することでコストを抑えている。今後は画質と操作性の向上を図るとしている。
ほかにも、LED照明機材における色彩コントロールを無線接続で簡単に操作・作業できる「LEDスマート調色・調光システム」や、紫外域と可視域の映像を1台で撮影できる「ハイビジョン紫外線・可視光一体型カラーカメラ」など、番組制作現場の運用性/品質向上の技術も数多く展示・紹介していた。
会場では、4K/8Kコンテンツ制作のための最新技術・機材を紹介する「スーパーハイビジョン」や、より高精度な防災・減災報道実現のための「緊急報道」、データを活用したスポーツ中継を可能にする技術を紹介する「スポーツ」、その他番組制作の運用性改善や品質向上のための取り組みである「番組制作」「放送の品質確保」という、5つの分野に分けて展示が行われた。
■2018年の4K/8K実用放送へ向けた技術が多数出展
平昌冬季オリンピックや2020年の東京オリンピック開催、また、2018年予定の4K/8K実用放送開始に向け、NHKではさらなる機材充実とコンテンツ制作に力を入れていくとのこと。それらを実現するための最新放送機材が、一堂に展示された。
制作現場での機動性/利便性の向上のために、技術局と放送技術研究所は共同で、8Kカメラやモニターなどの小型化を図っている。低コスト化も目指す。
8Kカメラは現用機が約5kgなのに対して、新開発された小型機は約1.5kgと軽量化を実現。収録部はカメラと一体になっており、専用のSSDで約60分(1/10圧縮時)の収録が可能。生中継には対応していないが、小型/軽量化で持ち運びしやすく、海外ロケなどでの機動性向上が期待される。
8K小型液晶モニターはジャパンディスプレイ社製で、サイズは17インチ。ドットバイドットによる8K映像表示が可能だ。厚みは15cmと家庭向けの液晶テレビよりは分厚いが、制作現場で多く使用される19インチの機材ラックに収まるサイズで、中継車などに持ち込んでロケ現場での使用などが想定される。
会場入り口には、リオ五輪において8K映像+22.2ch立体音響の制作に現地で使用された、8Kスーパーハイビジョン中継車「SHC-2」を展示。片側拡幅型の車両に広く確保された制作室には、55インチ8Kモニターを搭載。実際に放送される8K画質の映像をその場で確認できる。音声モニター環境は5.1chで、限られた現場の制作環境でもマルチチャンネル音響による番組制作が可能とのこと。
映像配信への取り組みについては、リオ五輪でも活用された「4Kストリーミングサービス」を紹介。8Kで撮影された映像を4K画質にダウンコンバートし、ハイブリットキャスト対応の4Kテレビ向けに、インターネットを通してライブ配信や見逃し配信サービスを実施した。2018年開始予定の実用放送と合わせて、今後も配信サービスの向上を図っていきたいとのこと。
興味深い試みの1つとして、「8K TIME MACHINE」の展示を挙げておきたい。NHKのおよそ70年分・1,300本の番組(白黒〜8K)を探索できるシステムで、タッチパネルの大型ディスプレイに表示された「自分の生まれた年」と「戻ってみたい年齢」を選択して、当時放送されていた音楽やNHKのテレビ番組を見ることができる。番組の選択画面では、各番組が64分割でサムネイル表示される。
8K TIME MACHINEの試作機がNHK渋谷放送センターにあるスタジオパーク内に常設展示されており、シニア層から子供までがタイムスリップ気分を味わうことができる。今春からの新番組では、スタジオ内演出にも応用展開する予定とのこと。
他にも、4K/8K撮影時においてより精細なフォーカシングを実現する「フォーカスリモート」システムや、高精細な8K映像表現を実現する「PLマウント8K箱型ズームレンズ」など、様々な面から8Kコンテンツ制作のための技術・機材開発が進んでいる。
■VR活用を想定した全方位カメラによる報道向け技術も
オリンピック中継などスポーツ映像の充実を図る技術として開発された「データライブ解析」は、撮影方向やズームなどのカメラ情報を含まないスポーツの中継や配信映像から、選手の走る速度や加速度、歩幅などをリアルタイムで解析できるシステム。スポーツ映像のほか、自然界の動物の映像などからも速度測定が可能とのこと。
タッチパネル式のディスプレイに映し出された映像から測定したい選手を選択すると、前後のフレームで移動した画素数と、独自の特許技術で算出したカメラと対象までの距離を元に、実際に走った距離を算出して各情報を測定することができる。本技術は技術局と仙台放送局が共同で開発。東北地震による津波災害から、到達時間を測定する技術を確立することで被害を最小限に抑えることができるのではという考えから開発が始まったという。
ゴルフや陸上の投てき競技の飛距離の軌跡を表示する「飛翔体軌跡表示システム」も展示。現状流通しているシステムでは1秒ほど遅れが生じるが、本システムでは1フレーム程度の遅延におさめて、音も映像もほぼ遅れを感じさせずに描くことができるという。
地震や台風など過去に例を見ない規模の災害が多く発生する近年において、より高レベルの防災・減災報道を可能にするため、緊急報道の分野でも各局が様々な取り組み、技術開発を行っていた。
今回の番組技術展での最優秀賞を受賞した「緊急報道サポートナビ」は、札幌放送局が開発。Google Mapを活用して現場までの距離・所要時間・ルート検索、地形や電波データを解析、その時点でデータを転送するのに最適な基地局の選択等を可能にする。これにより、いち早くニュースカーを現場に送ることができ、また複数の中継車への円滑に指示を出して、迅速な情報提供が行えるようになるという。
この分野では「全方位カメラ・ライブトリミング送出システム」「置くだけ天カメ UTOM(アトム)」「全天球映像 動画抽出システム」など、360度映像を活用したシステムも目立った。放送技術局が開発した「全方位カメラ・ライブトリミング送出システム」では、現場には全方位カメラのみを設置、映像処理機能は局内に配置して、任意の場所をトリミングしてライブ放送が可能。VRサービスでの活用も期待される。
UTOMは宇都宮放送局が開発したシステムで、360度カメラで撮影した画像を公衆モバイル回線を利用して放送局に送信。太陽電池を利用しており、フル充電で3日間程度は動作可能となる。カメラのプロセッシングにはRaspberry Piを使用しており低コストに抑えている。展示スペースでは、VRヘッドセットで10分前に撮影された会場外の映像を見ることができた。
また、山形放送局も「全天球映像 動画抽出システム」を開発。任意の位置とサイズで映像の切り出しが可能で、こちらも民生機器を使用することでコストを抑えている。今後は画質と操作性の向上を図るとしている。
ほかにも、LED照明機材における色彩コントロールを無線接続で簡単に操作・作業できる「LEDスマート調色・調光システム」や、紫外域と可視域の映像を1台で撮影できる「ハイビジョン紫外線・可視光一体型カラーカメラ」など、番組制作現場の運用性/品質向上の技術も数多く展示・紹介していた。