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公開日 2017/05/13 14:30
「日本発、世界へ」
<OTOTEN>Spotify玉木社長が基調講演。ストリーミングの可能性強調、日本発の製品に期待
編集部:風間雄介
一般社団法人 日本オーディオ協会が開催する「 OTOTEN 2017」が、5月13日(土)、14日(日)の2日間、有楽町の東京国際フォーラムで開催されている。
本項では13日午前に行われた、スポティファイジャパン(株)社長の玉木一郎氏による基調講演「ストリーミングで広がるオーディオの新たな可能性」の内容を紹介しよう。
■玉木社長はオーディオ少年だった
玉木社長はまず自らを「オーディオ世代真っ只中で育った」と紹介した。
「父親がなぜか短波放送を受信できるラジオを買ってきて、チューニングがすごくシビアなので、それで鍛えられた。その後は『いつかはサンスイの907』と憧れたり、CDが出て来たら『いつかはソニーのES』とステップアップを願う少年だった。ずっとサンスイの907に憧れ続けたのだが、やはり高すぎて、大きすぎて買えない。それで607を買ったのだが、これがまったく壊れなければノイズも出ず、買い換える必要がない(笑)。日本のものづくりはすごいな、と感じた」。
「その後は海外メーカーにも手を出して、イタリアの田舎町のメーカーが手作りしているアンプを手に入れたり、デンマークのスピーカーを買ったりしてオーディオを楽しんでいる」と玉木氏は語り、「仕事だからというわけではなく、仕事の枠を超えてオーディオに強い興味がある」とオーディオファンとしての自身を紹介した。
■フィロソフィーは「誰でも」「いつでも」「音楽の発見」
続いて玉木氏は、音楽ストリーミングの現状について紹介。すでに様々なメディアで報道されているが、米国では2016年、音楽市場の51%をストリーミングが占めるまでに至った。さらに玉木氏は、米国の音楽市場が、ストリーミングの牽引により1998年以来最大の成長を記録したことも強調。ほかのサービスがストリーミングに置き換わっているわけではなく、全体の成長のコアになっていると説明した。
そのうえで玉木氏は、自身が運営に携わるSpotifyについて紹介。2008年にサービス開始し、現在では1億人以上のユーザー数がいて、うち約半数の5,000万人以上が有料ユーザーであることなどをあらためて語った。
Spotifyのフィロソフィーは、おおきく「誰でも」「いつでも」「音楽の発見」の3点に集約される。
まず「誰でも」の分野では、持続可能なフリーミアムサービスであることを強調。「海外だけでなく国内でも、音楽の違法アプリがいまだにある。創業者はサービスを作るときに『自分たちの手で、違法ではない、合法なサービスを作ればいい。さらに便利にすれば、ユーザーには喜んでもらえるだろう』と考え、これを実践した」(玉木氏)。
さらに「無料サービスであっても、再生されたらきちんとアーティストにお金が入るようなシステムを作った。具体的には広告でマネタイズしている」と付け加え、しっかりとアーティストに還元するシステムを構築していることが持続可能性に結びついていると指摘した。
有料サービスについては「320kbpsという、一般的にはそれ以上になるとあまり差が分からなくなるハイビットレートで配信している。ここにいらっしゃる方は良い耳をお持ちだと思うので、そうとは限らないかもしれないが」と紹介。ほかにダウンロードでの音楽再生が行えたり、様々なオーディオ機器との連携が行えるのも有料サービスのメリットと語った。
■新しい音楽との出会いを演出
さて、Spotifyがもう一つ重視しているのが「新しい音楽との出会い」だ。
玉木氏は「若い頃はいろんな音楽を探して刺激を受けていたのに、年を取るに従って、いつの間にか自分が好きな名盤ばかりを聴くようになっていませんか?」と聴衆に問いかけ、「Spotifyでは、ビッグデータを使ったレコメンドとキュレーターによるレコメンドの両方を用意している」と続けた。
「私もレコメンド機能をすごく重宝していて、名前の読み方も分からないようなアーティストなのに、再生を開始して10秒で『あ、これは好きだな』と感じることがある。世界中の数千万曲の中から、まだ気づいていないお気に入り楽曲を探してきてくれる」。
玉木氏はまた、レコメンドによって起きている事例の一つとして、ONE OK ROCKの再生数が1億回を超えたことを紹介。これは日本人アーティストとして初の快挙だが、日本だけじゃなく米国や台湾など世界中で再生されているのだという。「日本だけじゃなく世界へ音楽を届ける道具として、Spotifyを使ってもらえる土台ができてきている」と評価した。
■「日本発、世界へ」に期待
ここから玉木氏は、Spotifyという一サービスを超えた、より大きなテーマで聴衆に語り始めた。
一つは「テクノロジーによって音楽の消費はどう変化しているのか」というテーマ。玉木氏は「世界では、オーディオはライフスタイルにも溶け込むようなデザインのものが増えている。これが世界の潮流であり、日本もその流れと無縁ではいられない」とコメント。旧態依然としたスタイルのオーディオシステムから発想を変える必要があると指摘した。
また玉木氏はスマホとオーディオの関係についても、自身の考えを紹介。「スマホはどんどん便利になっているが、一般ユーザーは、すぐにその便利さを当然のもの、所与のものとして捉える。だからスマホのようにかんたんに操作できることがオーディオ機器にも求められる」と述べ、その利便性や簡便性を体現するものとして、同社のSpotify Connectを紹介した。Spotify Connect製品は増え続けており、すでに80以上のブランド、300以上の対応製品が存在するという。
さらに最近の動向として、米国ではAmazon Echo、Google Homeなど音声アシスタントスピーカーが急激に普及していることも紹介。あるデータでは米国ですでに3,000万台が普及しているという。「○○を再生して、と言ったらすぐに再生がはじまる。ものすごく便利で、これもスマホと同じように、一度使ったら離れられなくなる」とした。
こういった背景の中、玉木氏は主に国内メーカーに対して、ストリーミングが新たな可能性をもたらすことを強調した。
日本だけでなく世界で製品を販売する国内メーカーは、上記のような世界のトレンドを視野に入れざるを得ない。また新しいサービスや新しいスタイルの製品が登場している現在の状況は、ターゲット層を拡大するにはうってつけだ。さらに、日本ならではのユニークな製品開発を行える可能性も存分にある。
玉木氏は「日本発、世界へ」という流れがさらに加速し、「ひょっとするとどんどん出てくるかもしれない。そういった状況を期待したい」と述べ、基調講演を締めくくった。
本項では13日午前に行われた、スポティファイジャパン(株)社長の玉木一郎氏による基調講演「ストリーミングで広がるオーディオの新たな可能性」の内容を紹介しよう。
■玉木社長はオーディオ少年だった
玉木社長はまず自らを「オーディオ世代真っ只中で育った」と紹介した。
「父親がなぜか短波放送を受信できるラジオを買ってきて、チューニングがすごくシビアなので、それで鍛えられた。その後は『いつかはサンスイの907』と憧れたり、CDが出て来たら『いつかはソニーのES』とステップアップを願う少年だった。ずっとサンスイの907に憧れ続けたのだが、やはり高すぎて、大きすぎて買えない。それで607を買ったのだが、これがまったく壊れなければノイズも出ず、買い換える必要がない(笑)。日本のものづくりはすごいな、と感じた」。
「その後は海外メーカーにも手を出して、イタリアの田舎町のメーカーが手作りしているアンプを手に入れたり、デンマークのスピーカーを買ったりしてオーディオを楽しんでいる」と玉木氏は語り、「仕事だからというわけではなく、仕事の枠を超えてオーディオに強い興味がある」とオーディオファンとしての自身を紹介した。
■フィロソフィーは「誰でも」「いつでも」「音楽の発見」
続いて玉木氏は、音楽ストリーミングの現状について紹介。すでに様々なメディアで報道されているが、米国では2016年、音楽市場の51%をストリーミングが占めるまでに至った。さらに玉木氏は、米国の音楽市場が、ストリーミングの牽引により1998年以来最大の成長を記録したことも強調。ほかのサービスがストリーミングに置き換わっているわけではなく、全体の成長のコアになっていると説明した。
そのうえで玉木氏は、自身が運営に携わるSpotifyについて紹介。2008年にサービス開始し、現在では1億人以上のユーザー数がいて、うち約半数の5,000万人以上が有料ユーザーであることなどをあらためて語った。
Spotifyのフィロソフィーは、おおきく「誰でも」「いつでも」「音楽の発見」の3点に集約される。
まず「誰でも」の分野では、持続可能なフリーミアムサービスであることを強調。「海外だけでなく国内でも、音楽の違法アプリがいまだにある。創業者はサービスを作るときに『自分たちの手で、違法ではない、合法なサービスを作ればいい。さらに便利にすれば、ユーザーには喜んでもらえるだろう』と考え、これを実践した」(玉木氏)。
さらに「無料サービスであっても、再生されたらきちんとアーティストにお金が入るようなシステムを作った。具体的には広告でマネタイズしている」と付け加え、しっかりとアーティストに還元するシステムを構築していることが持続可能性に結びついていると指摘した。
有料サービスについては「320kbpsという、一般的にはそれ以上になるとあまり差が分からなくなるハイビットレートで配信している。ここにいらっしゃる方は良い耳をお持ちだと思うので、そうとは限らないかもしれないが」と紹介。ほかにダウンロードでの音楽再生が行えたり、様々なオーディオ機器との連携が行えるのも有料サービスのメリットと語った。
■新しい音楽との出会いを演出
さて、Spotifyがもう一つ重視しているのが「新しい音楽との出会い」だ。
玉木氏は「若い頃はいろんな音楽を探して刺激を受けていたのに、年を取るに従って、いつの間にか自分が好きな名盤ばかりを聴くようになっていませんか?」と聴衆に問いかけ、「Spotifyでは、ビッグデータを使ったレコメンドとキュレーターによるレコメンドの両方を用意している」と続けた。
「私もレコメンド機能をすごく重宝していて、名前の読み方も分からないようなアーティストなのに、再生を開始して10秒で『あ、これは好きだな』と感じることがある。世界中の数千万曲の中から、まだ気づいていないお気に入り楽曲を探してきてくれる」。
玉木氏はまた、レコメンドによって起きている事例の一つとして、ONE OK ROCKの再生数が1億回を超えたことを紹介。これは日本人アーティストとして初の快挙だが、日本だけじゃなく米国や台湾など世界中で再生されているのだという。「日本だけじゃなく世界へ音楽を届ける道具として、Spotifyを使ってもらえる土台ができてきている」と評価した。
■「日本発、世界へ」に期待
ここから玉木氏は、Spotifyという一サービスを超えた、より大きなテーマで聴衆に語り始めた。
一つは「テクノロジーによって音楽の消費はどう変化しているのか」というテーマ。玉木氏は「世界では、オーディオはライフスタイルにも溶け込むようなデザインのものが増えている。これが世界の潮流であり、日本もその流れと無縁ではいられない」とコメント。旧態依然としたスタイルのオーディオシステムから発想を変える必要があると指摘した。
また玉木氏はスマホとオーディオの関係についても、自身の考えを紹介。「スマホはどんどん便利になっているが、一般ユーザーは、すぐにその便利さを当然のもの、所与のものとして捉える。だからスマホのようにかんたんに操作できることがオーディオ機器にも求められる」と述べ、その利便性や簡便性を体現するものとして、同社のSpotify Connectを紹介した。Spotify Connect製品は増え続けており、すでに80以上のブランド、300以上の対応製品が存在するという。
さらに最近の動向として、米国ではAmazon Echo、Google Homeなど音声アシスタントスピーカーが急激に普及していることも紹介。あるデータでは米国ですでに3,000万台が普及しているという。「○○を再生して、と言ったらすぐに再生がはじまる。ものすごく便利で、これもスマホと同じように、一度使ったら離れられなくなる」とした。
こういった背景の中、玉木氏は主に国内メーカーに対して、ストリーミングが新たな可能性をもたらすことを強調した。
日本だけでなく世界で製品を販売する国内メーカーは、上記のような世界のトレンドを視野に入れざるを得ない。また新しいサービスや新しいスタイルの製品が登場している現在の状況は、ターゲット層を拡大するにはうってつけだ。さらに、日本ならではのユニークな製品開発を行える可能性も存分にある。
玉木氏は「日本発、世界へ」という流れがさらに加速し、「ひょっとするとどんどん出てくるかもしれない。そういった状況を期待したい」と述べ、基調講演を締めくくった。
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