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公開日 2017/05/23 12:56
'18年度以降も継続した成長を
ソニーは “KANDO会社” 。平井CEOが経営方針を説明、「営業利益5,000億円は通過点に過ぎない」
編集部:風間雄介
ソニー(株)は本日、経営方針説明会を開催。2017年度を最終年度とする現在の中期経営計画の進捗や、来期以降の成長に関する取り組みについて説明を行った。
説明会には代表執行役 社長 兼 CEOの平井一夫氏が登壇。質疑応答には平井CEOのほか、代表執行役 副社長 兼 CFOの吉田憲一郎氏、執行役 副社長の鈴木智之氏も出席した。
■「営業利益5,000億円は通過点に過ぎない」
2015年2月に発表された中期経営計画では、それまでの構造改革を中心とした経営から、「利益創出と成長への投資」をテーマとする新たなフェーズへ移行すると宣言。また「ソニーグループ連結でROE10%以上、営業利益5,000億円以上」という数値目標も掲げていた。
平井氏はこの達成のため、様々な施策に取り組んできたと述べ、2017年度の連結業績見通しについて、計画通りの営業利益5,000億円を見込んでいることを紹介。「これはソニーにとって20年ぶりの利益水準。(社長に就任してから)5年間の努力の成果だ」と強調した。
そのうえで平井氏は「5,000億円という利益は通過点に過ぎない」とも述べ、今年特に重要となるのは「来年度以降も持続的な成長を行うための施策をしっかり行うこと」と宣言した。そのテーマは、後ほど詳述する「KANDO@ラストワンインチ」「リカーリング型ビジネスモデルの強化」「多様性と新しい事業への挑戦」の3点だ。
2018年度以降の事業展望について平井氏は「5,000億円規模の利益を複数年にわたって実現したことは、ソニーの71年の歴史で一度も無い。現状維持ではなく、新しい事業への取り組みを行う」と述べた。
また平井氏は説明会の中で、多種多様な事業の複合体であるソニーを「一言で言えばKANDO(感動)会社」と説明。「KANDOを届けるのが一番の上位概念としてある」とし、それをコンシューマーエレクトロニクスやデバイス、金融などで実現するのがソニーであると定義づけた。
■テレビ事業は「シェア取るべきとこでは取っていく」
社長就任以来5年、平井氏は「社員が目を輝かせ、新しいことにチャレンジする元気なソニーが戻ってきた」と評価。そしてこの背景には「コンシューマーエレクトロニクスが再生し、安定した利益が期待できる事業になったことが大きい」と語った。
平井氏はテレビ事業を例に、コンシューマーエレクトロニクスが復活した背景、行ってきた施策を改めて紹介した。
「社長就任時、コンシューマー事業を再生させることに疑問の声もあった。だが私は、この分野にイノベーションを起こす余地はまだある、一歩も引かないと決意した。そのために『規模は追わず、違いを追う』と決め、同時にソニーの原点に立ち返った。そして『変えることは勇気をもって変える』ことを決断してきた」(平井氏)。
平井氏は社長就任前、副社長の時代に、当時最大の経営課題であったテレビ事業を担当することになった。社長就任後も赤字は止まらず、2004年度から累積で8,000億円以上の赤字を出し続けていた。そして2014年度、経営上の大きな判断を行う。「それまでの量を追う姿勢を改め、事業規模は半分以下でも収益を均衡させるという方針に改めた」(平井氏)。
液晶パネル生産会社への出資を解消してパネルを外部調達に切り替える一方、他社との違いを生むため、画質と音質に徹底的にこだわるという姿勢を堅持。その結果テレビの平均単価が上がり、2014年度の57,000円から、今年度は67,000円まで上昇する見通しだという。同時に昨年度は営業利益率5%まで改善し、しっかり“儲かる事業”に変わった。
同事業について「相当に筋肉質な体質になった」とし、利益体質になっていることを評価。同時に「シェアを取りに行くべきところは取りに行く」とも述べ、アジア市場、特にインドなどではSONYブランドが強いこともあり、積極的にシェア拡大を図ることをアナウンスした。
「すべての地域でシェア拡大を狙うのではなく、あくまで選択と集中が大事。また、地域によって最適な戦略を組むことも重要で、ラインナップが多い方が有利なところ、ハイエンドのものを選んでもらうべきところなどを判断して攻めていきたい」(平井氏)。
■選択と集中はデジタルイメージングでも体現してきた
こういった選択と集中は、デジタルイメージング事業などでも実現できていると平井氏は説明。事業規模がかつての2,350万台から、いまでは450万台へと縮小するなか、製品の差別化で戦ってきたと振り返る。
なお平井氏は自身がカメラ好きということもあり、「ユーザー視点で直接指示を出してきた」という。
たとえばRX100シリーズは、平井自ら「新製品で機能をバージョンアップしても、デザインを変えるのはダメだ、前のモデルも販売を継続すべし」と指示。「こういった強いこだわりが重要。そのこだわりが製品の力を増す」とした。
選択と集中に関しては、3年前にPC事業を売却したことについても振り返った。「非常に難しい決断だった。だがテレビは違いで勝負できるが、PCではそれが難しいと判断した」。
■モバイル事業の安定化が課題。グループCSOに十時氏
一方で課題として挙げたのはモバイルコミュニケーション事業だ。昨年度は目標としていた黒字化を達成したが、「商品力、オペレーション力向上の向上など、まだまだ改善の余地はある。お客様とのラストワンインチを担う事業で、他社との違いを出しうる事業」との認識を示した。
今後はモバイル事業の安定化が課題で、それを実現するには、ここでも「集中と選択が非常に重要になる」と説明。「確実に利益が出る市場にしっかり入っていく。そうでないところは縮小する。スマホだけに頼るだけでなく、IoTデバイスとの組み合わせが重要」とした。
あわせて、モバイルコミュニケーション事業を統括している十時裕樹氏をCSO(Chief Strategy Officer)とする人事も発表。モバイル事業だけでなく、グループ全体の戦略立案を行い、新規事業も統括するという。
十時氏を指名した理由について平井氏は「コンシューマーエレクトロニクスだけでなく、金融も含め、多彩な事業のマネジメントをしてきた人間。ソニーが抱えるいろいろな事業会社間の連携、またエレキとそれ以外の事業との連携を考えたときに適任と考えた」と説明した。
■ゲームが金融に並ぶ稼ぎ頭に。「ソニーにとってのマイルストーン」
平井氏は続いて、第二次中期経営計画を達成するためには、上記のコンシューマ向け事業が安定的に収益貢献することに加え、「ゲーム&ネットワークサービス分野の収益拡大」「モバイル向けイメージセンサーの復活」「音楽・金融分野の継続的な収益貢献」の3点が必要と説明した。
なかでもソニーが、金融と並ぶ今後の収益の柱として位置づけているのは、ゲーム&ネットワークサービス分野だ。
PS4は今期1,800万台の出荷を予定し、年度末の累計出荷台数は7,800万台を予定する。「プラットフォームが収穫期を迎える中、多彩なネットワークサービスを展開する」とし、MAUが7,000万人を超えているPSNをベースに、今後は有料課金サービス「PS Plus」を拡充するなどして、さらにネットワークサービスの収益拡大を行うとした。
PS VRについても、新たな収益拡大を狙える商材と説明。「品薄が続いてきたが、2月から増産をして状況改善に努めている。ゲームはもちろんノンゲームにも期待している」とした。
平井氏はゲーム&ネットワークサービス事業について「これまでソニーは金融がグループ最大の収益貢献をしていたが、今期はゲームが金融と同程度になる見通しだ。1993年に誕生した事業がここまで成長したのは、ソニーにとっての一つのマイルストーンとなる」と評価した。
今後の事業展開については「次のプラットフォームの話をするのはまだ時期が早い」としながらも、「これまでのハードを振り返ると、売れ方にアップダウン、振れ幅があった。このボラティリティーをネットワークサービスやノンゲーム分野でいかに吸収していくかが重要と捉えている」とした。
■デバイスはモバイル向け画像センサー復活が不可欠
デバイス事業については、モバイル向けイメージセンサーの復活が必要と説明。同社はカメラモジュール事業を大幅に縮小するなど、強みであるCMOSイメージセンサー事業へのシフトをさらに強めている。現在のスマホのトレンドは「複眼化の加速」「フロントカメラの高画質化」「動画性能の重視」だが、平井氏は「これらはソニーが強みを発揮できる分野で、今期は大幅な収益拡大が見込める」と述べた。
イメージセンサーについては「世界一の技術を持っているが、まだまだ改善の余地はある。さらなる高収益事業への変革を目指す」とした。
■映画事業の早期回復のため新CEOを起用
また音楽分野については「アデルやビヨンセのヒットに代表されるようにヒットの創出ができている。今後もアーティストの発掘と育成を行い、リカーリング型ビジネスも強化する」と今後の事業展開について説明した。
さらに金融事業については「お客様と直接触れあう、ラストワンインチを体現する事業を、SONYブランドを活用して行っていく。大変重要な事業」と説明するにとどめた。
一方で平井氏が「大変重く受け止めている」としたのは、映画事業(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)だ。「昨年度は営業権の減損を行い、2017年度の利益水準も、当初掲げていた目標とは乖離している」とし、この事業を打開するため、新しいCEOとしてアンソニー・ヴィンシクエラ氏が就任予定であることを改めて紹介した。
平井氏は「トニー(ヴィンシクエラ氏の愛称)は技術の変化にもくわしく、何よりチームビジネスに精通している」と同氏を選んだ理由を説明。今後はヒット映画の創出やコスト削減、既存IPの活用を行うなどの施策で収益を向上させることはもちろん、ソニーの他事業との連携推進にも期待しているとした。
■「事業のダイナミックレンジが広い、世界でも希有な企業」
一通り各事業の概況、課題について説明した平井氏は、あらためて同氏が考える「ソニーのミッション」について紹介した。
平井氏はソニーのミッションを「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続けること」と定義。そのうえでソニーについて「エンタテインメント、エレクトロニクス、金融など事業のダイナミックレンジが広い、世界でも希有な企業」と位置づけ、これらの多彩な事業を「エスオーエヌワイ(SONY)という共通の価値観で運営することが今後も求められる」と述べた。
■2018年度以降の3つの経営課題
2018年度以降の経営課題については、記事の前半で記したとおりだが、5,000億円以上の利益を今後も継続して実現し、成長し続けることを課題として掲げる。
そのためのキーワードが「KANDO@ラストワンインチ」だ。KANDO(感動)は、平井氏がこの数年使い続けているキーワードだが、人の感情を動かすモノづくりのため、「機能はもちろんデザインや使い勝手にもこだわっていく」と紹介。「KANDO体験のインターフェースとなる製品を作り続ける。Xperiaやα、CLEDISなどがラストワンインチを体現する」とした。
もう一つの課題がリカーリング型事業のさらなる強化だ。売上の中に占めるリカーリング型事業の割合は、2015年度は35%だったが、今年度は40%に達する見通し。「サブスクリプション、追加購入、コンテンツなどのリカーリング事業のうち、今後はサブスクリプションなど、お客様と直接触れあう事業の重要性がさらに高くなる」とし、この分野の施策を強化するという。
最後に掲げた課題は「多様性と新しい事業への挑戦」だ。平井氏は「人のやらないことをやる。それがソニーのDNAだ」としながら、「とはいえ、新規事業の創出といっても、まったくゼロから立ち上げるのは難しい。ソニーの歴史を振り返ると、自社の強みと他社との組み合わせで新規事業を生んできた」と紹介し、最近の例としてオリンパスと協業している医療用4Kカメラなどの実績を挙げた。
新規事業への挑戦では、Lifestyle UXやSAPなどの取り組みを紹介。「一つ一つの事業規模は大きくないが、新しいことに取り組む若手の育成につながっている」と述べた。今後の持続的な成長を支えるためにも、これらの取り組みをしっかりと行うことが重要と強調した。
説明会には代表執行役 社長 兼 CEOの平井一夫氏が登壇。質疑応答には平井CEOのほか、代表執行役 副社長 兼 CFOの吉田憲一郎氏、執行役 副社長の鈴木智之氏も出席した。
■「営業利益5,000億円は通過点に過ぎない」
2015年2月に発表された中期経営計画では、それまでの構造改革を中心とした経営から、「利益創出と成長への投資」をテーマとする新たなフェーズへ移行すると宣言。また「ソニーグループ連結でROE10%以上、営業利益5,000億円以上」という数値目標も掲げていた。
平井氏はこの達成のため、様々な施策に取り組んできたと述べ、2017年度の連結業績見通しについて、計画通りの営業利益5,000億円を見込んでいることを紹介。「これはソニーにとって20年ぶりの利益水準。(社長に就任してから)5年間の努力の成果だ」と強調した。
そのうえで平井氏は「5,000億円という利益は通過点に過ぎない」とも述べ、今年特に重要となるのは「来年度以降も持続的な成長を行うための施策をしっかり行うこと」と宣言した。そのテーマは、後ほど詳述する「KANDO@ラストワンインチ」「リカーリング型ビジネスモデルの強化」「多様性と新しい事業への挑戦」の3点だ。
2018年度以降の事業展望について平井氏は「5,000億円規模の利益を複数年にわたって実現したことは、ソニーの71年の歴史で一度も無い。現状維持ではなく、新しい事業への取り組みを行う」と述べた。
また平井氏は説明会の中で、多種多様な事業の複合体であるソニーを「一言で言えばKANDO(感動)会社」と説明。「KANDOを届けるのが一番の上位概念としてある」とし、それをコンシューマーエレクトロニクスやデバイス、金融などで実現するのがソニーであると定義づけた。
■テレビ事業は「シェア取るべきとこでは取っていく」
社長就任以来5年、平井氏は「社員が目を輝かせ、新しいことにチャレンジする元気なソニーが戻ってきた」と評価。そしてこの背景には「コンシューマーエレクトロニクスが再生し、安定した利益が期待できる事業になったことが大きい」と語った。
平井氏はテレビ事業を例に、コンシューマーエレクトロニクスが復活した背景、行ってきた施策を改めて紹介した。
「社長就任時、コンシューマー事業を再生させることに疑問の声もあった。だが私は、この分野にイノベーションを起こす余地はまだある、一歩も引かないと決意した。そのために『規模は追わず、違いを追う』と決め、同時にソニーの原点に立ち返った。そして『変えることは勇気をもって変える』ことを決断してきた」(平井氏)。
平井氏は社長就任前、副社長の時代に、当時最大の経営課題であったテレビ事業を担当することになった。社長就任後も赤字は止まらず、2004年度から累積で8,000億円以上の赤字を出し続けていた。そして2014年度、経営上の大きな判断を行う。「それまでの量を追う姿勢を改め、事業規模は半分以下でも収益を均衡させるという方針に改めた」(平井氏)。
液晶パネル生産会社への出資を解消してパネルを外部調達に切り替える一方、他社との違いを生むため、画質と音質に徹底的にこだわるという姿勢を堅持。その結果テレビの平均単価が上がり、2014年度の57,000円から、今年度は67,000円まで上昇する見通しだという。同時に昨年度は営業利益率5%まで改善し、しっかり“儲かる事業”に変わった。
同事業について「相当に筋肉質な体質になった」とし、利益体質になっていることを評価。同時に「シェアを取りに行くべきところは取りに行く」とも述べ、アジア市場、特にインドなどではSONYブランドが強いこともあり、積極的にシェア拡大を図ることをアナウンスした。
「すべての地域でシェア拡大を狙うのではなく、あくまで選択と集中が大事。また、地域によって最適な戦略を組むことも重要で、ラインナップが多い方が有利なところ、ハイエンドのものを選んでもらうべきところなどを判断して攻めていきたい」(平井氏)。
■選択と集中はデジタルイメージングでも体現してきた
こういった選択と集中は、デジタルイメージング事業などでも実現できていると平井氏は説明。事業規模がかつての2,350万台から、いまでは450万台へと縮小するなか、製品の差別化で戦ってきたと振り返る。
なお平井氏は自身がカメラ好きということもあり、「ユーザー視点で直接指示を出してきた」という。
たとえばRX100シリーズは、平井自ら「新製品で機能をバージョンアップしても、デザインを変えるのはダメだ、前のモデルも販売を継続すべし」と指示。「こういった強いこだわりが重要。そのこだわりが製品の力を増す」とした。
選択と集中に関しては、3年前にPC事業を売却したことについても振り返った。「非常に難しい決断だった。だがテレビは違いで勝負できるが、PCではそれが難しいと判断した」。
■モバイル事業の安定化が課題。グループCSOに十時氏
一方で課題として挙げたのはモバイルコミュニケーション事業だ。昨年度は目標としていた黒字化を達成したが、「商品力、オペレーション力向上の向上など、まだまだ改善の余地はある。お客様とのラストワンインチを担う事業で、他社との違いを出しうる事業」との認識を示した。
今後はモバイル事業の安定化が課題で、それを実現するには、ここでも「集中と選択が非常に重要になる」と説明。「確実に利益が出る市場にしっかり入っていく。そうでないところは縮小する。スマホだけに頼るだけでなく、IoTデバイスとの組み合わせが重要」とした。
あわせて、モバイルコミュニケーション事業を統括している十時裕樹氏をCSO(Chief Strategy Officer)とする人事も発表。モバイル事業だけでなく、グループ全体の戦略立案を行い、新規事業も統括するという。
十時氏を指名した理由について平井氏は「コンシューマーエレクトロニクスだけでなく、金融も含め、多彩な事業のマネジメントをしてきた人間。ソニーが抱えるいろいろな事業会社間の連携、またエレキとそれ以外の事業との連携を考えたときに適任と考えた」と説明した。
■ゲームが金融に並ぶ稼ぎ頭に。「ソニーにとってのマイルストーン」
平井氏は続いて、第二次中期経営計画を達成するためには、上記のコンシューマ向け事業が安定的に収益貢献することに加え、「ゲーム&ネットワークサービス分野の収益拡大」「モバイル向けイメージセンサーの復活」「音楽・金融分野の継続的な収益貢献」の3点が必要と説明した。
なかでもソニーが、金融と並ぶ今後の収益の柱として位置づけているのは、ゲーム&ネットワークサービス分野だ。
PS4は今期1,800万台の出荷を予定し、年度末の累計出荷台数は7,800万台を予定する。「プラットフォームが収穫期を迎える中、多彩なネットワークサービスを展開する」とし、MAUが7,000万人を超えているPSNをベースに、今後は有料課金サービス「PS Plus」を拡充するなどして、さらにネットワークサービスの収益拡大を行うとした。
PS VRについても、新たな収益拡大を狙える商材と説明。「品薄が続いてきたが、2月から増産をして状況改善に努めている。ゲームはもちろんノンゲームにも期待している」とした。
平井氏はゲーム&ネットワークサービス事業について「これまでソニーは金融がグループ最大の収益貢献をしていたが、今期はゲームが金融と同程度になる見通しだ。1993年に誕生した事業がここまで成長したのは、ソニーにとっての一つのマイルストーンとなる」と評価した。
今後の事業展開については「次のプラットフォームの話をするのはまだ時期が早い」としながらも、「これまでのハードを振り返ると、売れ方にアップダウン、振れ幅があった。このボラティリティーをネットワークサービスやノンゲーム分野でいかに吸収していくかが重要と捉えている」とした。
■デバイスはモバイル向け画像センサー復活が不可欠
デバイス事業については、モバイル向けイメージセンサーの復活が必要と説明。同社はカメラモジュール事業を大幅に縮小するなど、強みであるCMOSイメージセンサー事業へのシフトをさらに強めている。現在のスマホのトレンドは「複眼化の加速」「フロントカメラの高画質化」「動画性能の重視」だが、平井氏は「これらはソニーが強みを発揮できる分野で、今期は大幅な収益拡大が見込める」と述べた。
イメージセンサーについては「世界一の技術を持っているが、まだまだ改善の余地はある。さらなる高収益事業への変革を目指す」とした。
■映画事業の早期回復のため新CEOを起用
また音楽分野については「アデルやビヨンセのヒットに代表されるようにヒットの創出ができている。今後もアーティストの発掘と育成を行い、リカーリング型ビジネスも強化する」と今後の事業展開について説明した。
さらに金融事業については「お客様と直接触れあう、ラストワンインチを体現する事業を、SONYブランドを活用して行っていく。大変重要な事業」と説明するにとどめた。
一方で平井氏が「大変重く受け止めている」としたのは、映画事業(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)だ。「昨年度は営業権の減損を行い、2017年度の利益水準も、当初掲げていた目標とは乖離している」とし、この事業を打開するため、新しいCEOとしてアンソニー・ヴィンシクエラ氏が就任予定であることを改めて紹介した。
平井氏は「トニー(ヴィンシクエラ氏の愛称)は技術の変化にもくわしく、何よりチームビジネスに精通している」と同氏を選んだ理由を説明。今後はヒット映画の創出やコスト削減、既存IPの活用を行うなどの施策で収益を向上させることはもちろん、ソニーの他事業との連携推進にも期待しているとした。
■「事業のダイナミックレンジが広い、世界でも希有な企業」
一通り各事業の概況、課題について説明した平井氏は、あらためて同氏が考える「ソニーのミッション」について紹介した。
平井氏はソニーのミッションを「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続けること」と定義。そのうえでソニーについて「エンタテインメント、エレクトロニクス、金融など事業のダイナミックレンジが広い、世界でも希有な企業」と位置づけ、これらの多彩な事業を「エスオーエヌワイ(SONY)という共通の価値観で運営することが今後も求められる」と述べた。
■2018年度以降の3つの経営課題
2018年度以降の経営課題については、記事の前半で記したとおりだが、5,000億円以上の利益を今後も継続して実現し、成長し続けることを課題として掲げる。
そのためのキーワードが「KANDO@ラストワンインチ」だ。KANDO(感動)は、平井氏がこの数年使い続けているキーワードだが、人の感情を動かすモノづくりのため、「機能はもちろんデザインや使い勝手にもこだわっていく」と紹介。「KANDO体験のインターフェースとなる製品を作り続ける。Xperiaやα、CLEDISなどがラストワンインチを体現する」とした。
もう一つの課題がリカーリング型事業のさらなる強化だ。売上の中に占めるリカーリング型事業の割合は、2015年度は35%だったが、今年度は40%に達する見通し。「サブスクリプション、追加購入、コンテンツなどのリカーリング事業のうち、今後はサブスクリプションなど、お客様と直接触れあう事業の重要性がさらに高くなる」とし、この分野の施策を強化するという。
最後に掲げた課題は「多様性と新しい事業への挑戦」だ。平井氏は「人のやらないことをやる。それがソニーのDNAだ」としながら、「とはいえ、新規事業の創出といっても、まったくゼロから立ち上げるのは難しい。ソニーの歴史を振り返ると、自社の強みと他社との組み合わせで新規事業を生んできた」と紹介し、最近の例としてオリンパスと協業している医療用4Kカメラなどの実績を挙げた。
新規事業への挑戦では、Lifestyle UXやSAPなどの取り組みを紹介。「一つ一つの事業規模は大きくないが、新しいことに取り組む若手の育成につながっている」と述べた。今後の持続的な成長を支えるためにも、これらの取り組みをしっかりと行うことが重要と強調した。