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公開日 2018/11/07 19:56
12月1日に放送

8K版『2001年宇宙の旅』を一足先に見た! 1年に渡る修復で引き出された70mmフィルムのポテンシャル

編集部:風間雄介
NHKは本日、12月1日(土)に放送する8K版『2001年宇宙の旅』のマスコミ向け試写会を行った。

12月1日は、新4K8K衛星放送が開始される日。8K版『2001年宇宙の旅』は、NHK BS8Kで午後1時10分から放送される。


『2001年宇宙の旅』は1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督のSF映画で、今年が公開50周年にあたる。これを記念して、世界中で70mmフィルム版の上映が行われ、東京でも先日開催された(レポート記事)。

今回の8K放送はNHKが呼びかけたもの。NHKでは数年前から、2018年に『2001年宇宙の旅』が製作50周年を迎えることを把握。70mmフィルムが8K並みの情報量を持つという情報も背景にして、70mm映画を8K化するというアイデアが浮かんだ。またこの作品のファンも多いことから、本作の8K化ができないか、検討や交渉を重ねていたのだという。

説明を行った、NHKチーフプロデューサーの坂本朋彦氏

実際の8K化は、現在作品を管理しているワーナー・ブラザースが、70mmフィルムをもとに、専門の作業チームに修復と8K化を依頼。「フィルムの傷などを丹念に修復し、すべての色彩を検証、細かく補正し、初公開時の映像と音声にできるだけ近づけるようレストアを行った」という。

修復チームは、スタンリー・キューブリックが意図した映像を、「それ以上でもそれ以下でもなく」レストアするよう、細心の注意を払って作業した。たとえばモノリスの色をどうするか、などといった細部にまでこだわり抜いたという。

ワーナーが1年をかけてレストア・8K化

8Kへのデジタイズは、ワーナーが依頼したラボが、オリジナル・カメラネガから8K化用に、新たに作成したフィルムを使って行った。またオリジナルネガを8Kスキャンし、傷や経年の色彩変化などを修復していった。

実際の作業では、70mmフィルムを映写したものを見ながら、同じ色調になるよう、横に置いた4Kや8Kの小型モニターで確認しながら、何度も何度も繰り返し丹念に作業を行ったという。8K化に要した時間は実に1年間というから、その作業の膨大さ、丁寧さがよくわかる。

ワーナーで作成されたファイルは、P2に収められてNHKへ納品された。解像度は8K(7,680×4,320)で、色域はBT.709。HDRではなく、SDRの24pファイルとなる。音声は5.1ch。このテストファイルがワーナーからNHKへ届いたのが今年6月のことで、NHK側で24p→60p変換を行った。8K放送では24pをそのまま放送できないため、60p(規格上は120pも存在する)への変換が必要になる。

なお、この8K化の過程を紹介するドキュメント番組も、11月23日(金)午前4:30-4:59まで、NHK総合で放送される。この番組も、2001年ファンなら必見だ。

8K版を視聴、丁寧なレストアに感嘆

今回の試写は、NHK内の施設で、300インチのスクリーンにプロジェクターで8K投映。JVCのe-Shift対応8Kプロジェクター(HDR非対応のもの)が用いられた。

300インチスクリーンで8K上映が行われた

先日国立映画アーカイブで上映された70mm版は、オリジナル・カメラネガからフォトケミカル工程だけで作成されたものだったので、当然ながら傷があり、フィルム上映ならではのフリッカーも見られた。だが条件の良いシーンではかなりの解像感があり、ポテンシャルの高さを感じていた。

8K版を見た端的な感想は、「70mmフィルムの良いところをそのまま残しながら、傷などを修復することで、最新技術で蘇った」というものだ。

8Kだけあって、解像感は非常に高い。70mmフィルムで時折見られた、とびきり解像感の高い映像が、全編にわたって続くような印象だ。たとえば暴走し始めたHALと語りあうボーマン博士の顔を見ると、被写界深度が浅いため、目にフォーカスが来ている一方、顔のほかの部分はボケていることがわかる。こういったフォーカスの細やかな演出まで見通せる表現力は、70mmフィルム上映時の体験を上回る。

さらに、インターミッション直前の、ポッドの中で密談する二人の口元だけがアップになるシーン。ここは70mmフィルムでも解像感の高さに驚かされたが、今回の8K版では、その精細度がさらに高まっていた。

そのほか、70mmフィルムでは若干ボヤけた印象になっていたシーンも、しっかりと精細感が出ていて、しかもエッジを無理に立てたような「やり過ぎ感」がない。とても丁寧で、誠実なレストアと感じた。

一方で精細感が高いため、結果的に当時の撮影機材や技術の限界を露呈しているシーンも散見された。また、本作は湾曲スクリーンのシネラマ用に制作されたため、周辺部は平面のスクリーンに直すと当然ながらボヤけるのだが、そういったフォーカスの甘さもしっかり感じられる仕上げになっていた。とはいえ、これはネガティブではなく、むしろポジティブな要素だ。もとの素材をなるべくそのままに、しっかり表現して欲しいというのがファン心理だろうが、それを忠実に行っている。オリジナル作品を尊重しながら、現代の技術で蘇らせたという表現がぴったりだ。

NHKでは、当然ながら本作を液晶モニターなどでもチェックしているとのことだが、液晶テレビではさらに精細感が高く感じられるという。ますます12月1日が楽しみになってくる。

色や階調表現はどうか。色については、色域がBT.709ながら、70mmフィルムで堪能したこってりとした色彩を、かなり忠実に表現していると感じた。HALの内部に突入した際の赤色など、もう少し色が深く出てもよいかな、と感じる部分もあったが、これはプロジェクターの特性かもしれない。

また階調表現については、SDRという入れ物に、うまく映像情報を入れ込んでいる印象だった。HDR(HLG)だったらさらに良かったのに、と思ってしまうのは事実だが、ディスカバリー号やスペースポッドの、白い船体の微妙な階調もうまく表現していた。

なお本作は、iTunes Storeで4K/HDR版がすでに販売開始している。これを先行して視聴していたのだが、やはりダイナミックレンジの広さを使った映像表現という面では、4K/HDR版に軍配が上がる。なお4K/HDRでは、今後UHD BDソフトの発売も控えている。

もう一点、宇宙空間の黒が浮いていることも気になってしまったが、これは部屋の非常灯がかなり明るく光っていたことや、プロジェクターの性能によるものだろう。

総じて、何度も繰り返しになってしまうが、70mmフィルムの雰囲気をそのままデジタル化し、さらに美しくした映像という印象だ。素晴らしいものを見られた、と感激した。

今回の放送は、番組名が「8K完全版 2001年宇宙の旅」なのだが、「完全版」と銘打った理由についても触れておこう。これまでの『2001年宇宙の旅』の放映では、冒頭の楽曲が切れていたり、映画の最後の楽曲がフェードアウトで切られていたこともあったという。今回の放送時は、こういった部分もすべて忠実に再現。さすがに途中の15分間の休憩は2分間程度に短縮されているが、基本的にはノーカットで放映する。

さて、放送日の12月1日に8Kテレビが自宅にあり、リビングでこの作品を視聴できるという方はごく少数だろう。また今回のマスターをもとに、4Kや2Kで放送する予定もないとのこと。ただしこの8K版は、来年以降も何度か再放送する予定があるとのことなので、まだチャンスはある。

また、どうしても12月1日にこの作品を視聴したいという場合は、NHKの地方局で視聴することができるので、問い合わせてみよう。また家電量販店でも、当日8K放送をデモする店は多いはず。事前にデモするかどうか確認し、お店に向かうのもよいだろう。

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