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公開日 2020/01/29 11:55
「天気の子」が140憶円で作品ナンバーワン
2019年の国内映画市場は2,611億円。興行収入・入場者数ともに過去最高を記録
永井光晴
1月29日、一般社団法人 日本映画製作者連盟が「新年記者発表会」を開催し、2019年度の全国映画概況を発表した。連盟加盟法人である各映画製作会社のトップが登壇し、昨年の映画市場を振り返った。
令和元年(2019年)の全国の映画館の入場者数は、1億9,491万人(前年比115.2%)。興行収入は2,611億8,000万円(前年比117.4%)と、いずれも前年度を大きく上回り、2016年度の記録(2,355億円)を超える過去最高を記録*(注1)した。入場者数は悲願の2億人にわずかに届かず、目標は持ち越された。
*(注1)2000年から興行収入による(配給収入発表なし)集計方法に変わってから。以前の映画館の入場者数は完全入替制ではないこともあり、単純比較できない。
興行収入のうち作品構成比は、邦画が54.4%(1421億9200万円)、洋画が45.6%(1,189億8800万円)。平均入場料金は1,340円(前年比101.9%)だった。
平均入場料金の上昇は、6月以降の一部映画館値上げも若干影響しているが、4Dやドルビーアトモス、IMAXなどのプレミアムシアターによる付加価値上映の増加によるもの。入場料金の値上げは、消費増税や人件費等のコスト上昇を理由にしているが、本来集客にハードルとなりうる要素でありながら、入場者数で前年比117.4%と伸ばした。直近2年続けて前年度割れであった映画業界において、大きな意味のある数字である。背景には、魅力ある公開作品の多さや、各映画館のサービス向上など、さまざまな努力に支えられているといえる。
公開作品数は全部で1,278本。この公開本数も過去最多記録を更新(7年連続1,000本以上になっている)。うち邦画が689本、洋画が589本。上映スクリーン数は3,583(前年3,561)で、7連続で増加している。98.2%がデジタル上映シアター、34.3%が3D上映可能になっている。
興業収入が10億円を超えたヒット作品は、邦画40作品(1,047億8,000万円)、洋画25本(961億円)。さらに50億円以上の大ヒット作品も邦画5本(昨年3本)、洋画は7本(昨年5本)と増えている。
邦画は『天気の子』が140億円を超える圧倒的なナンバーワン。続いて『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』(93.7憶円)、『キングダム』(57.3憶円)と続く。洋画は『アナと雪の女王2』(127.9億円)、『アラジン』(121.6億円)、『トイ・ストーリー4』(100.9億円)、『ライオン・キング』(66.7億円)と、ウォルト・ディズニー作品がトップ4を独占した。7位の『ジョーカー』までが50億円を超えた。
ちなみに日本映画製作者連盟では、映画館で最初に公開される作品を「映画」と規定している。近年はネット配信作品や、音楽コンサート、演劇、やスポーツ中継、オリジナルビデオアニメ、映画館以外のために作られた作品をスクリーン公開する「ODS」(Other Digital Stuff=映画以外のコンテンツ)が急速に増えており、ライブ中継以外のコンテンツの興行収入も2012年から集計に算入している。2019年度は246億2400万円(前年比147%)である。ただしODSはあくまでも「映画」ではないという立場だ。
では、映画コンテンツのソフト販売はどうだろうか。(一社)日本映像ソフト協会統計調査報告書によると、劇場映画のビデオソフトによる販売は、メーカー売上934億円(前年比94.5%)、小売り店舗売上(前年比92.7%)となっている。ソフトによる映画鑑賞人口は2億3150万人(前年比82.2%)と、Blu-ray、DVDなどで観ているユーザーはいずれも減少している。これにはネット配信などによる定額配信動画サービスの拡大が影響しているといえる。
また国産映画作品の海外輸出も好調だ。2019年の映画輸出実績は、3億2778万7,000ドル(約400億円)。前年比115%とこちらも7年連続の増加となっている。この数字には日本映画関連の配給権、上映権、リメイク権、海外放送権のほか、キャラクター商品化権も含まれている。
東宝の島谷社長は、「ゴジラとピカチュウは、グローバルプロジェクト。ハリウッド映画への企画参加、配給参加をした。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の世界興行収入は424億円、『名探偵ピカチュウ』は475億円と実績をあげた。『天気の子』は海外だけで70億円を超えている。またゴジラはキャラクター商品の小売りが海外で90億円となっている。さらに今年はハリウッド作品『ゴジラVSコング』の公開が控えており、新作公開そのものがキャラクタービジネスの大きな宣伝になる。2020年は、新たなアイデア満載のチャレンジングな年にしたい。」と述べた。
映画館で映画を観ることが、「ライブ的な」存在に
松竹の迫本社長は、「昨年は映画界にとっていい年だった。松竹作品も8本が10億円を超えた。ネット配信が活発になるなかで、大きなスクリーンでライブ感ある魅力をつたえていくことができた」とコメント。連盟各社のトップは口をそろえて「映画のライブ感」と発言する。
「ネット配信で革命がおこった。生産者と消費者が直結してスピードアップしている(※NETFLIXやAmazonプライムビデオを指している)。配信と物販は盛況。一方でネットではできないこととして、映画館で共感して大きなスクリーンで感動する時代になった。」と迫本社長は続けた。
東映の多田社長は、映画館の好調について「ひとつは有料映像に抵抗感がなくなった。BS、CS、映像ネット配信など動画を観る機会が増えた。映画が“ライブ”として観られるようになった。音楽コンテンツのパッケージソフトと、ライブ会場との関係と同じく、映画館が同じ空間で同じ作品を共有するライブのような存在になった」。
KADOKAWAの井上副社長は、「ユーザーの映像に接する時間が飛躍的に伸びている。(そんな中で)映画の魅力が認識。映画はイベントのような晴れの場になった。(KADOKAWAでは)電子書籍が伸びている。コミックをはじめとした電子書籍がスマホで読まれるようになったが、そのあとに、大切な作品を本で買うことがイベントになっている」と述べた。
また東宝の島谷社長は「20代の方が増えているのは事実で、2000年頃、シネコンが日本で広がりはじめておよそ20年。20年でちょうど社会に出て、スマホで予約をし決済し、スマホで一日の計画を立てるライフスタイルができあがった。映画を楽しむ方は、けっして20代の方ばかりではないが、宣伝はSNS、動画広告などネットを活用しており、若い世代を意識しながらやっていく。」とコメントした。
日本映画製作者連盟の岡田会長は「確かにシネコンから出てから映画が復活してきた。2000年から興行収入による集計になり、シネコンは20年で定着しはじめた。時代が変わってきた。いい作品にはお金を払ってくれる。タダで観るだけでなく、映画館にもお金をかける世代交代がはじまった。」
オリンピックイヤーは映画にとって敵ではない。ネット配信とも共存していく
近年、NETFLIXオリジナル映画やAmazon映画などが米アカデミー賞を受賞するようになり、本年も映画館向けでない作品が複数ノミネートされている。
「映像配信の会社に関して脅威を感じるか」に対しては、「(もちろん)感じています。ただネット配信コンテンツが当たるなら、それを映画館にかけるのも興行会社の自由。配信向けコンテンツを拒否しているわけではない。映画館は画面が大きいので、映像をどこで観ていただくかだけ。お客様は面白いものを見るだけなのでノーマルな競争。楽観しているわけではないが共存していけると考えている」。実際、NETFLIX映画は、一部映画館でネット配信との同時上映が行われている。
「今年はさらに記録を塗り替えられるか」の質問に、岡田会長は冗談めかして答えた。「2憶人には悲願だけれど、今年は難しいかな。いい作品がそろった年には成績を上げられるけれど。(各社から発表されているラインナップに)目玉作品が少ないので、これから作らなきゃならない」
東京オリンピック開催の影響については、「データを見ると前回東京オリンピックの昭和39年は、映画は落ちずに上がっている。例えば『愛と死をみつめて』(1964)が大ヒットしている。オリンピックあるから映画が入らないということはないし、もちろん東京オリンピックは成功してほしい。喧嘩するつもりもない」と述べた。
令和元年(2019年)の全国の映画館の入場者数は、1億9,491万人(前年比115.2%)。興行収入は2,611億8,000万円(前年比117.4%)と、いずれも前年度を大きく上回り、2016年度の記録(2,355億円)を超える過去最高を記録*(注1)した。入場者数は悲願の2億人にわずかに届かず、目標は持ち越された。
*(注1)2000年から興行収入による(配給収入発表なし)集計方法に変わってから。以前の映画館の入場者数は完全入替制ではないこともあり、単純比較できない。
興行収入のうち作品構成比は、邦画が54.4%(1421億9200万円)、洋画が45.6%(1,189億8800万円)。平均入場料金は1,340円(前年比101.9%)だった。
平均入場料金の上昇は、6月以降の一部映画館値上げも若干影響しているが、4Dやドルビーアトモス、IMAXなどのプレミアムシアターによる付加価値上映の増加によるもの。入場料金の値上げは、消費増税や人件費等のコスト上昇を理由にしているが、本来集客にハードルとなりうる要素でありながら、入場者数で前年比117.4%と伸ばした。直近2年続けて前年度割れであった映画業界において、大きな意味のある数字である。背景には、魅力ある公開作品の多さや、各映画館のサービス向上など、さまざまな努力に支えられているといえる。
公開作品数は全部で1,278本。この公開本数も過去最多記録を更新(7年連続1,000本以上になっている)。うち邦画が689本、洋画が589本。上映スクリーン数は3,583(前年3,561)で、7連続で増加している。98.2%がデジタル上映シアター、34.3%が3D上映可能になっている。
興業収入が10億円を超えたヒット作品は、邦画40作品(1,047億8,000万円)、洋画25本(961億円)。さらに50億円以上の大ヒット作品も邦画5本(昨年3本)、洋画は7本(昨年5本)と増えている。
邦画は『天気の子』が140億円を超える圧倒的なナンバーワン。続いて『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』(93.7憶円)、『キングダム』(57.3憶円)と続く。洋画は『アナと雪の女王2』(127.9億円)、『アラジン』(121.6億円)、『トイ・ストーリー4』(100.9億円)、『ライオン・キング』(66.7億円)と、ウォルト・ディズニー作品がトップ4を独占した。7位の『ジョーカー』までが50億円を超えた。
ちなみに日本映画製作者連盟では、映画館で最初に公開される作品を「映画」と規定している。近年はネット配信作品や、音楽コンサート、演劇、やスポーツ中継、オリジナルビデオアニメ、映画館以外のために作られた作品をスクリーン公開する「ODS」(Other Digital Stuff=映画以外のコンテンツ)が急速に増えており、ライブ中継以外のコンテンツの興行収入も2012年から集計に算入している。2019年度は246億2400万円(前年比147%)である。ただしODSはあくまでも「映画」ではないという立場だ。
では、映画コンテンツのソフト販売はどうだろうか。(一社)日本映像ソフト協会統計調査報告書によると、劇場映画のビデオソフトによる販売は、メーカー売上934億円(前年比94.5%)、小売り店舗売上(前年比92.7%)となっている。ソフトによる映画鑑賞人口は2億3150万人(前年比82.2%)と、Blu-ray、DVDなどで観ているユーザーはいずれも減少している。これにはネット配信などによる定額配信動画サービスの拡大が影響しているといえる。
また国産映画作品の海外輸出も好調だ。2019年の映画輸出実績は、3億2778万7,000ドル(約400億円)。前年比115%とこちらも7年連続の増加となっている。この数字には日本映画関連の配給権、上映権、リメイク権、海外放送権のほか、キャラクター商品化権も含まれている。
東宝の島谷社長は、「ゴジラとピカチュウは、グローバルプロジェクト。ハリウッド映画への企画参加、配給参加をした。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の世界興行収入は424億円、『名探偵ピカチュウ』は475億円と実績をあげた。『天気の子』は海外だけで70億円を超えている。またゴジラはキャラクター商品の小売りが海外で90億円となっている。さらに今年はハリウッド作品『ゴジラVSコング』の公開が控えており、新作公開そのものがキャラクタービジネスの大きな宣伝になる。2020年は、新たなアイデア満載のチャレンジングな年にしたい。」と述べた。
映画館で映画を観ることが、「ライブ的な」存在に
松竹の迫本社長は、「昨年は映画界にとっていい年だった。松竹作品も8本が10億円を超えた。ネット配信が活発になるなかで、大きなスクリーンでライブ感ある魅力をつたえていくことができた」とコメント。連盟各社のトップは口をそろえて「映画のライブ感」と発言する。
「ネット配信で革命がおこった。生産者と消費者が直結してスピードアップしている(※NETFLIXやAmazonプライムビデオを指している)。配信と物販は盛況。一方でネットではできないこととして、映画館で共感して大きなスクリーンで感動する時代になった。」と迫本社長は続けた。
東映の多田社長は、映画館の好調について「ひとつは有料映像に抵抗感がなくなった。BS、CS、映像ネット配信など動画を観る機会が増えた。映画が“ライブ”として観られるようになった。音楽コンテンツのパッケージソフトと、ライブ会場との関係と同じく、映画館が同じ空間で同じ作品を共有するライブのような存在になった」。
KADOKAWAの井上副社長は、「ユーザーの映像に接する時間が飛躍的に伸びている。(そんな中で)映画の魅力が認識。映画はイベントのような晴れの場になった。(KADOKAWAでは)電子書籍が伸びている。コミックをはじめとした電子書籍がスマホで読まれるようになったが、そのあとに、大切な作品を本で買うことがイベントになっている」と述べた。
また東宝の島谷社長は「20代の方が増えているのは事実で、2000年頃、シネコンが日本で広がりはじめておよそ20年。20年でちょうど社会に出て、スマホで予約をし決済し、スマホで一日の計画を立てるライフスタイルができあがった。映画を楽しむ方は、けっして20代の方ばかりではないが、宣伝はSNS、動画広告などネットを活用しており、若い世代を意識しながらやっていく。」とコメントした。
日本映画製作者連盟の岡田会長は「確かにシネコンから出てから映画が復活してきた。2000年から興行収入による集計になり、シネコンは20年で定着しはじめた。時代が変わってきた。いい作品にはお金を払ってくれる。タダで観るだけでなく、映画館にもお金をかける世代交代がはじまった。」
オリンピックイヤーは映画にとって敵ではない。ネット配信とも共存していく
近年、NETFLIXオリジナル映画やAmazon映画などが米アカデミー賞を受賞するようになり、本年も映画館向けでない作品が複数ノミネートされている。
「映像配信の会社に関して脅威を感じるか」に対しては、「(もちろん)感じています。ただネット配信コンテンツが当たるなら、それを映画館にかけるのも興行会社の自由。配信向けコンテンツを拒否しているわけではない。映画館は画面が大きいので、映像をどこで観ていただくかだけ。お客様は面白いものを見るだけなのでノーマルな競争。楽観しているわけではないが共存していけると考えている」。実際、NETFLIX映画は、一部映画館でネット配信との同時上映が行われている。
「今年はさらに記録を塗り替えられるか」の質問に、岡田会長は冗談めかして答えた。「2憶人には悲願だけれど、今年は難しいかな。いい作品がそろった年には成績を上げられるけれど。(各社から発表されているラインナップに)目玉作品が少ないので、これから作らなきゃならない」
東京オリンピック開催の影響については、「データを見ると前回東京オリンピックの昭和39年は、映画は落ちずに上がっている。例えば『愛と死をみつめて』(1964)が大ヒットしている。オリンピックあるから映画が入らないということはないし、もちろん東京オリンピックは成功してほしい。喧嘩するつもりもない」と述べた。
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