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公開日 2024/02/28 16:00
ミドル帯の筐体に11chアンプを搭載
デノン、“モンスター”を凌駕する11.4chプレミアムAVアンプ「AVC-X6800H」。旗艦機のノウハウを投入
編集部:杉山康介
デノンは、11.4chプレミアムAVアンプ「AVC-X6800H」を3月中旬より発売する。価格は528,000円(税込)。
2020年に発売された「AVC-X6700H」の後継となるモデル。同社9.4ch機「AVR-X3800H」などのミドル帯と同じ筐体サイズで11chパワーアンプ搭載を搭載した「世界最小の11ch AVアンプ」だという。
開発においては、現行フラグシップ機「AVC-A1H」開発ノウハウをフィードバック。コンパクトな筐体サイズのまま、“モンスター”と称した旧フラグシップ機「AVC-X8500H」を超えることを目標に掲げ、機能面からサウンド面まで「AVC-X8500Hを凌駕するものに仕上がった」としている。
11chのパワーアンプは全て同一クオリティのディスクリート構成で、それぞれを独立させたモノリス・コンストラクションで搭載する。パワーアンプ回路にはA1Hと同様の差動1段AB級リニアパワーアンプ回路を採用。シンプルで素直な特性から様々なスピーカーに対して優れた駆動性を有する反面、設計の難易度が高いものの、デノンのノウハウや技術力をもって実装させたという。
また、パワートランジスタも4年もの期間を経て共同開発されたカスタムモデルを新採用。同社の田中氏は「これからのデノンを担うパワートランジスタになると思う」と語っていた。
さらにパワートランジスタとヒートシンクの間には1mm厚の銅板を追加。これはA1HやX8500Hでも用いられている手法で、放熱効率をさらに高め、大音量再生時でも安定性の高いスピーカー駆動を実現するとのこと。実用最大出力は250W(6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動時)。
上述の銅板に加え、ヒートシンク自体も大型のものを採用しているため、アンプブロックは前モデルと比べても大型、かつ重いものとなっており、これを筐体内に収めるためにビデオ基板を6層基板で一新。
前モデルの時よりもパーツ類の性能が進化し、シンプルな設計にしやすくなったこともあるが、何よりA1Hの開発・製造を経てエンジニア陣や白河工場スタッフ陣がレベルアップしたことによって、本機のコンセプトでもある「モンスターを超える性能をミドル帯と同じ筐体に収める」ことができたと述べていた。
DACも一新し、Hi-Fiグレードの32bit対応DACチップを搭載。A1Hと同じ電流出力型のDACで、アクティブI/V変換回路を用いることで独自の音作りを可能にしたほか、映像回路やネットワーク回路から独立した専用基板にマウントすることにより、周辺回路との相互干渉を排除し、理想的な信号ラインや電源ラインのレイアウトを実現したとする。
各DACチップに1基の超低位相雑音クロック発振器でクロックを供給し、正確な同期を図る構造を用いているが、このクロックの近くにジッターリデューサーを配置し、低歪みで原音に忠実な再生を追求したという。
アナログ基板も経路がより最適化されたほか、音質のためプリ部とパワー部の接続にはシールド線を使用。アナログ回路で150以上のパーツを交換し、サウンドマスター・山内慎一氏の名を冠する「SYコンデンサー」も投入、ワイヤーツイストまでチューニングを実施するなど、高音質化のための施策が行われている。
電源部もパワーアップされており、本機専用に開発したEIコアトランスや、本機専用にチューニングされた15,000μFカスタムコンデンサー2個を搭載。トランスは質量5.3kgにもなるため、1.2mmのメインシャーシに1.2mmのサブシャーシを追加した2層構造シャーシを用いる。
DSPには最新のハイパフォーマンスオーディオDSPを2個搭載。13.4chのプリアウトが可能で、プリアンプモードでは各chを個別でオン/オフすることもできる。
立体音響のフォーマットはDolby AtmosやDTS:X、Auro-3D、MPEG-4 AAC、MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)に対応。バーチャル3DテクノロジーのDolby Atmos Height Virtualizer/DTS Virtual:Xを搭載するほか、IMAX Enhancedにも対応する。
HDMIは7入力/2出力を搭載し、全てが8K/60Hz、4K/120Hzに対応。HDRフォーマットはHDR10/HDR10+/Dynamic HDR/Dolby Vision/HLGに対応、ALLM/VRR/QFTといったHDMI 2.1の機能にも対応する。
サウンドチューニングはデノンのサウンドマスター・山内氏が担当。同氏のフィロソフィーである「Vivid & Spacious」に基づいたチューニングが行われている。外形寸法は434W×167H×389Dmm(アンテナを寝かせた場合)で、質量は15.6kg。
今回、いち早くAVC-X6800Hを試聴する機会を得たので、簡単ではあるがインプレッションを記したい。
まずは開発において目標とされていた“モンスター”AVC-X8500Hとの聴き比べを、Auro-3Dの7.1.4ch作品で実施。元フラグシップ機なだけあってX8500Hも非常にレベルが高いのだが、X6800Hに切り替えると、一気に音場が広くなる。特にハイト方向の広がり方が顕著で、スピーカーが実際よりも高いところにある、ともすれば存在しないかのようにも感じられる。
音自体の質感も滑らか、かつ柔らかくなりつつ、アタックの歯切れの良さも獲得。S/Nも明確に上がっている。一言で表すなら「よりナチュラルな音」になっている印象だ。
続いて映画『グレイテストショーマン』を観たが、演者の衣擦れの音や、森の中での鳥の囀りなどが非常にナチュラルで、自分も映画の中にいるかのようなリアリティを感じられる。
さらに『地獄の黙示録』では、鳥の声や木の葉の揺れといった静かな音はもちろん、ヘリコプター、銃撃などの爆音まで余裕を持って鳴らす。ヘリが頭上を通り過ぎる様や、ヘリと自分との距離感の描写も実に滑らかで、サラウンドアンプとしての地力の高さをしっかりと見せてくれた。
驚くべきは、このサイズ感でこれだけのパフォーマンスを実現しているところだろう。現行のAVC-A1Hは、それはもう素晴らしいAVアンプではあるが、全高195mm×奥行498mm、質量32kgとサイズも超弩級で、ひとりでの設置作業や置き場所も制限されてくる。
その点、AVC-X6800Hは一般的なアンプ機器の範疇に収まるサイズ感なため、取り回しもしやすい。A1Hがロマン溢れる夢のAVアンプだとしたら、X6800Hはクオリティを追求しつつ、使いやすさもしっかり考慮した“現実的”なAVアンプ、という印象を受けた。
■“モンスター超え”を目指して開発された「世界最小の11ch AVアンプ」
2020年に発売された「AVC-X6700H」の後継となるモデル。同社9.4ch機「AVR-X3800H」などのミドル帯と同じ筐体サイズで11chパワーアンプ搭載を搭載した「世界最小の11ch AVアンプ」だという。
開発においては、現行フラグシップ機「AVC-A1H」開発ノウハウをフィードバック。コンパクトな筐体サイズのまま、“モンスター”と称した旧フラグシップ機「AVC-X8500H」を超えることを目標に掲げ、機能面からサウンド面まで「AVC-X8500Hを凌駕するものに仕上がった」としている。
11chのパワーアンプは全て同一クオリティのディスクリート構成で、それぞれを独立させたモノリス・コンストラクションで搭載する。パワーアンプ回路にはA1Hと同様の差動1段AB級リニアパワーアンプ回路を採用。シンプルで素直な特性から様々なスピーカーに対して優れた駆動性を有する反面、設計の難易度が高いものの、デノンのノウハウや技術力をもって実装させたという。
また、パワートランジスタも4年もの期間を経て共同開発されたカスタムモデルを新採用。同社の田中氏は「これからのデノンを担うパワートランジスタになると思う」と語っていた。
さらにパワートランジスタとヒートシンクの間には1mm厚の銅板を追加。これはA1HやX8500Hでも用いられている手法で、放熱効率をさらに高め、大音量再生時でも安定性の高いスピーカー駆動を実現するとのこと。実用最大出力は250W(6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動時)。
上述の銅板に加え、ヒートシンク自体も大型のものを採用しているため、アンプブロックは前モデルと比べても大型、かつ重いものとなっており、これを筐体内に収めるためにビデオ基板を6層基板で一新。
前モデルの時よりもパーツ類の性能が進化し、シンプルな設計にしやすくなったこともあるが、何よりA1Hの開発・製造を経てエンジニア陣や白河工場スタッフ陣がレベルアップしたことによって、本機のコンセプトでもある「モンスターを超える性能をミドル帯と同じ筐体に収める」ことができたと述べていた。
DACも一新し、Hi-Fiグレードの32bit対応DACチップを搭載。A1Hと同じ電流出力型のDACで、アクティブI/V変換回路を用いることで独自の音作りを可能にしたほか、映像回路やネットワーク回路から独立した専用基板にマウントすることにより、周辺回路との相互干渉を排除し、理想的な信号ラインや電源ラインのレイアウトを実現したとする。
各DACチップに1基の超低位相雑音クロック発振器でクロックを供給し、正確な同期を図る構造を用いているが、このクロックの近くにジッターリデューサーを配置し、低歪みで原音に忠実な再生を追求したという。
アナログ基板も経路がより最適化されたほか、音質のためプリ部とパワー部の接続にはシールド線を使用。アナログ回路で150以上のパーツを交換し、サウンドマスター・山内慎一氏の名を冠する「SYコンデンサー」も投入、ワイヤーツイストまでチューニングを実施するなど、高音質化のための施策が行われている。
電源部もパワーアップされており、本機専用に開発したEIコアトランスや、本機専用にチューニングされた15,000μFカスタムコンデンサー2個を搭載。トランスは質量5.3kgにもなるため、1.2mmのメインシャーシに1.2mmのサブシャーシを追加した2層構造シャーシを用いる。
■Dolby Atmos/8Kなど最新フォーマットもサポート
DSPには最新のハイパフォーマンスオーディオDSPを2個搭載。13.4chのプリアウトが可能で、プリアンプモードでは各chを個別でオン/オフすることもできる。
立体音響のフォーマットはDolby AtmosやDTS:X、Auro-3D、MPEG-4 AAC、MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)に対応。バーチャル3DテクノロジーのDolby Atmos Height Virtualizer/DTS Virtual:Xを搭載するほか、IMAX Enhancedにも対応する。
HDMIは7入力/2出力を搭載し、全てが8K/60Hz、4K/120Hzに対応。HDRフォーマットはHDR10/HDR10+/Dynamic HDR/Dolby Vision/HLGに対応、ALLM/VRR/QFTといったHDMI 2.1の機能にも対応する。
サウンドチューニングはデノンのサウンドマスター・山内氏が担当。同氏のフィロソフィーである「Vivid & Spacious」に基づいたチューニングが行われている。外形寸法は434W×167H×389Dmm(アンテナを寝かせた場合)で、質量は15.6kg。
■編集部インプレッション
今回、いち早くAVC-X6800Hを試聴する機会を得たので、簡単ではあるがインプレッションを記したい。
まずは開発において目標とされていた“モンスター”AVC-X8500Hとの聴き比べを、Auro-3Dの7.1.4ch作品で実施。元フラグシップ機なだけあってX8500Hも非常にレベルが高いのだが、X6800Hに切り替えると、一気に音場が広くなる。特にハイト方向の広がり方が顕著で、スピーカーが実際よりも高いところにある、ともすれば存在しないかのようにも感じられる。
音自体の質感も滑らか、かつ柔らかくなりつつ、アタックの歯切れの良さも獲得。S/Nも明確に上がっている。一言で表すなら「よりナチュラルな音」になっている印象だ。
続いて映画『グレイテストショーマン』を観たが、演者の衣擦れの音や、森の中での鳥の囀りなどが非常にナチュラルで、自分も映画の中にいるかのようなリアリティを感じられる。
さらに『地獄の黙示録』では、鳥の声や木の葉の揺れといった静かな音はもちろん、ヘリコプター、銃撃などの爆音まで余裕を持って鳴らす。ヘリが頭上を通り過ぎる様や、ヘリと自分との距離感の描写も実に滑らかで、サラウンドアンプとしての地力の高さをしっかりと見せてくれた。
驚くべきは、このサイズ感でこれだけのパフォーマンスを実現しているところだろう。現行のAVC-A1Hは、それはもう素晴らしいAVアンプではあるが、全高195mm×奥行498mm、質量32kgとサイズも超弩級で、ひとりでの設置作業や置き場所も制限されてくる。
その点、AVC-X6800Hは一般的なアンプ機器の範疇に収まるサイズ感なため、取り回しもしやすい。A1Hがロマン溢れる夢のAVアンプだとしたら、X6800Hはクオリティを追求しつつ、使いやすさもしっかり考慮した“現実的”なAVアンプ、という印象を受けた。