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公開日 2022/12/03 15:37
アクティビジョンのセクハラ騒ぎで一部中止か

米陸軍も若者の採用に苦戦。「CoD」などに大規模広告計画

多根清史
米国では新型コロナ禍からの急回復のなか、深刻な人手不足が続いている。それは米軍も例外ではなく、どの部門も2022年度の新兵採用目標を達成するのに苦労しているとの報道もあった。

そんななか、2021年に米陸軍がZ世代(10代後半〜20代前半)、特に女性や黒人、ヒスパニック系の若者にアピールするため、eスポーツのトーナメントや「Call of Duty」(以下、「CoD」)ストリーマー、Twitchイベントのスポンサーとして数百万ドルの支出を計画していたことが明らかとなった。

米MOTHERBOARDが情報公開法(FOIA)を通じて入手した文書は、「視聴者:Z世代の展望(18歳〜24歳)」と題されたものだ。その一節には「女性、黒人&ヒスパニック層の成長に焦点を当てる」と書かれているという。

そこには資料として、陸軍が様々なプラットフォームやイベント、ストリーマーに費やす予定の資金の一覧が添付されている。一番上にあるのは、Twitch とeスポーツリーグの1つ「 HBCU Showdown」だ。ちなみにHBCUとは、古くからアフリカ系アメリカ人学生の教育を目的としていた高等教育機関の総称のことだ。

このeスポーツリーグは、過去にはMadden(アメフト)と NBA(バスケットボール) の試合が行われていた。米陸軍はこのイベントのスポンサー料として、100万ドルを費やす予定だったとのことだ。

また文書からは、米陸軍はゲーム、特にCoDをブランディングや勧誘に役立つ可能性のある手段と考えていたことが分かる。例えばTwitchのインフルエンサーを利用して「陸軍が提供する幅広いスキルセット(職場や役職において必要とされる知識や能力、経験の組み合わせ)を紹介するオリジナル動画の作成」や、「陸軍の価値やチャンスについて(彼らの)ファンに親しんでもらう」ことを提案している、という具合だ。

そして「兵士とゲーム界のトップ・ネーム」をフィーチャーしたトーナメントの開催までも予定されていた。その目的の1つは、陸軍の「好感度」を上げることだった。

またeスポーツ支出の一覧表には、「Call of Duty League Esports」の公式トーナメントおよびストリーミングサービスParamount+での「HALO」TVシリーズと合わせて75万ドルを支出するつもりだったと記されている。「HALO」もCoDと同じくFPS(一人称視点シューティング)であり、近未来を舞台としながらも同じく「戦争」をテーマとするゲームである。

ほか、モバイル版CoDのスポンサーとして20万ドル(陸軍のビデオ広告を見たプレイヤーにはゲーム内通貨を提供)の支出も予定されており、スマートフォンユーザーも視野に入れられていたことが分かる。

そうした企業向けスポンサーに加えて、個人ストリーマーやeスポーツチームといったゲーマー側にも気前よく支出が計画されていたようだ。

たとえば『Call of Duty: Warzone』(XboxやPlayStation、PC向けのF2Pバトルロイヤルゲーム)の人気ストリーマー、Stonemountain64氏には15万ドルを割り当て。また266万人の登録者を持つYouTuberのSwagg氏らにも言及されているが、いずれのストリーマーとその代理人もコメントの要請に応じていない。

そのほか、eスポーツチーム「OpTic Chicag」にも30万ドルを割り当てると書き加えられている。同チームは以前から陸軍と協力関係にあり、チームのメンバーはスナイパーライフルの試射に招待されていた。

もっとも、文書に含まれる2021年8月のメールには「現時点では、アクティビジョン(CoDのパブリッシャー)の職場における深刻なセクハラ疑惑のため、同社とは直ちに“全ての活動を一時停止“する予定」だと述べられている。「ブランドの評判に問題あるため、注意を喚起する」とも付け加えられている次第だ。

つまり、これらのスポンサー支出の一部、ないし全ては、計画のまま終わった可能性もある。実際にどれだけの額が、どのストリーマーや企業に支払われたのかは不明である。

アクティビジョンやParamount社はコメント要請に応じながらも、最終的には声明を出していない。かたやTwitchは、同社の広告部門Twitch Adsが、上記の項目について米軍からスポンサー料を受け取っていないと回答している。

米陸軍の広報担当者はMotherboardに対して「スポンサーシップに関する陸軍マーケティングの目標は、陸軍の採用活動を支援するため特定の市場にリーチする、ほかのすべての広告購入と近い」との声明を寄せている。そして広告記憶と好感度はスポンサーシップにおいて重要な尺度であり、陸軍のマーケティングにおいては「オンラインにいる若者」に届ける必要がある、との趣旨が語られている。

SF小説やエンターテイメントでは「ゲームが上手いプレイヤーを戦士としてスカウト」が定番の1つとなっているが、米軍はそうしたトップアスリートの引き抜き以前に、新兵の不足に悩まされているわけだ。手強い“敵“となっているのが、「若者の軍隊に対する認識の変化や健康状態、タトゥー、過去の薬物使用に関する高い基準」といった事情も伝えられており、その厳しい戦いは今後も続くようだ。

Source: MOTHERBOARD

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