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公開日 2023/11/24 10:26
【連載】佐野正弘のITインサイト 第84回
FeliCaだけじゃない、「motorola razr 40」の値段が大幅に上がった理由
佐野正弘
2023年、多くのスマートフォンメーカーが厳しい状況に追い込まれる日本市場の中にあって、攻めの姿勢を貫いたのがモトローラ・モビリティである。
ソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドに向け、エントリースマートフォン「moto g53y 5G」を投入したのを皮切りに、ミドルハイクラスでFeliCaにも対応させた「motorola edge 40」や、折り畳みスマートフォンの最上位モデル「motorola razr 40 ultra」など、新機種を積極的に相次いで投入。その結果、同社の日本におけるスマートフォン出荷台数は、前年対比で94%増と倍近い伸びを示している。
だが、その攻めの姿勢はまだ終わりではなかったようだ。同社は11月20日に発表会を実施し、新機種「motorola razr 40」を発表している。これはその名前の通り、既に発売されているmotorola razr 40 ultraと同様、6.9インチのディスプレイを縦に折り畳むことでコンパクトに持ち歩くことができる、折り畳みスマートフォンの最新モデル。ただ、motorola razr 40 ultraの下位モデルと位置付けられていることから、いくつか違いもある。
大きな違いの1つは、背面のディスプレイである。motorola razr 40 ultraは背面に約3.6インチのディスプレイを搭載しており、通常のAndroidアプリを動かすことも可能だが、motorola razr 40の背面ディスプレイは1.5インチと小さく、用途は通知の確認や一部機能の操作などに限られる。
2つ目の違いは性能で、motorola razr 40 ultraはクアルコム製のハイエンド向けチップセット「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載しているのに対し、motorola razr 40は1つ下のクラスとなる「Snapdragon 7 Gen 1」を搭載。性能的にはミドルハイクラスとなり、ゲーミングなどの性能ではultraに譲る部分がある。
一方で、motorola razr 40の方が優れている部分もいくつかあり、1つはバッテリー容量が4,200mAhと、motorola razr 40 ultra(3,800mAh)に比べて大きいこと。そしてもう1つ、ある意味最大の優位点となるのがFeliCaの搭載だ。
従来モトローラ・モビリティのrazrシリーズには、FeliCaが搭載されてこなかったが、motorola razr 40では初めてハード的に国内向けのカスタマイズが施され、FeliCaを搭載することで「おサイフケータイ」などが利用できるようになった。発表・発売時期がmotorola razr 40 ultraより遅くなったのには、そのカスタマイズに時間がかかったことが影響しているようだ。
なぜ、razrシリーズへのFeliCa搭載に踏み切ったのかといえば、そこに大きく影響しているのはソフトバンクの存在だろう。motorola razr 40はオープン市場、そしてMVNOではインターネットイニシアティブの「IIJmio」が独占販売する一方、携帯電話会社としてはソフトバンクが独占販売するという。
それゆえmotorola razr 40には、moto g53j 5Gの時と同じようにソフトバンク向けの兄弟モデル「motorola razr 40s」が用意される。こちらは、ハード面での性能に違いはないものの、カラーが1色増えて3色展開となるほか、ソフトバンク関連のアプリがプリインストールされて販売されるとのことだ。
moto g53y 5Gの好調さが示しているように、多くの顧客を抱える携帯電話会社から端末販売がなされれば多くの販売が見込めるが、一方で携帯各社はメーカー側に、ユーザーニーズが高いFeliCaの搭載を求める傾向が強い。携帯電話会社から販売されていないmotorola razr 40 ultraは、FeliCa対応がなされていないだけに、motorola razr 40でFeliCa対応が進められたのには、ソフトバンク側の要望に応える狙いが強いといえよう。
一方でソフトバンク側としても、折り畳みスマートフォンの市場が拡大する中にあって、折り畳みスマートフォンに強みを持つサムスン電子と長年取引がないことから、調達に課題を抱えていたのは確かだ。XiaomiやOPPOなども海外で折り畳みスマートフォンを提供してはいるが、日本への投入は消極的なだけに、日本市場に積極的な姿勢を見せるモトローラ・モビリティに、白羽の矢が立ったのではないだろうか。
そうしたことからmotorola razr 40は、投入時期こそ遅くなったものの国内向けの機能と販路をしっかり整え、周到に準備した上で販売がなされようとしていることが分かる。ただ1つ気になるのが、価格面だ。
motorola razr 40は、性能を引き下げている分海外でも比較的安く販売されており、米国での同一モデル「Motorola Razr(2023)」の価格は699.99ドル(約10万3,000円)、国によっては10万円を切るところもいくつか見られる。だが、日本におけるモトローラ・モビリティの公式オンラインストア価格は12万5,800円となっており、motorola razr 40 ultraとの価格差がおよそ3万円しかない。
昨今の円安に加え、FeliCa対応というカスタマイズを加えていることを考えれば、ある程度値段が高くなることは理解できるのだが、それでも海外と比べれば明らかに割高だ。もちろん、ソフトバンクやIIJmioによる値引き施策が用意されており、それらを適用すれば10万円を切る価格で購入可能なのだが、期間限定のキャンペーンであったり、番号ポータビリティでの転入や指定プランへの加入などが求められたりするなど、一定の制約が存在するのも確かだ。
一体なぜ、それほど高額になってしまったのか。モトローラ・モビリティの日本法人であるモトローラ・モビリティ・ジャパンの代表取締役社長・松原丈太氏によると、その理由は国内向けのカスタマイズに加え、日本の携帯電話会社が求める品質の水準が高いことから、それに対応するための試験などに時間とコストがかかっていると説明している。
折り畳みスマートフォンはその構造上、故障に対する不安も大きいだけに、とりわけ端末に高い品質を求める日本の携帯各社のニーズに応えるには、一層品質にコストをかける必要があったのかもしれない。松原氏も、「価格設定は10万円を切りたいというのが当初からあったが、ああいった形に収まった」と話しており、できれば10万円は切りたかったというのが本音のようだ。
円安などで環境的に厳しい部分もあるのは確かだが、折り畳みスマートフォンがベースの価格で10万円を切ったとなれば、そのインパクトは非常に大きく、日本の折り畳みスマートフォン普及に大きく弾みがつく可能性もあっただけに、とても残念だといえる。
■折り畳みスマートフォン最新モデル「motorola razr 40」を発表
ソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドに向け、エントリースマートフォン「moto g53y 5G」を投入したのを皮切りに、ミドルハイクラスでFeliCaにも対応させた「motorola edge 40」や、折り畳みスマートフォンの最上位モデル「motorola razr 40 ultra」など、新機種を積極的に相次いで投入。その結果、同社の日本におけるスマートフォン出荷台数は、前年対比で94%増と倍近い伸びを示している。
だが、その攻めの姿勢はまだ終わりではなかったようだ。同社は11月20日に発表会を実施し、新機種「motorola razr 40」を発表している。これはその名前の通り、既に発売されているmotorola razr 40 ultraと同様、6.9インチのディスプレイを縦に折り畳むことでコンパクトに持ち歩くことができる、折り畳みスマートフォンの最新モデル。ただ、motorola razr 40 ultraの下位モデルと位置付けられていることから、いくつか違いもある。
大きな違いの1つは、背面のディスプレイである。motorola razr 40 ultraは背面に約3.6インチのディスプレイを搭載しており、通常のAndroidアプリを動かすことも可能だが、motorola razr 40の背面ディスプレイは1.5インチと小さく、用途は通知の確認や一部機能の操作などに限られる。
2つ目の違いは性能で、motorola razr 40 ultraはクアルコム製のハイエンド向けチップセット「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載しているのに対し、motorola razr 40は1つ下のクラスとなる「Snapdragon 7 Gen 1」を搭載。性能的にはミドルハイクラスとなり、ゲーミングなどの性能ではultraに譲る部分がある。
■優位点となったFeliCa搭載。一方気になる価格面も
一方で、motorola razr 40の方が優れている部分もいくつかあり、1つはバッテリー容量が4,200mAhと、motorola razr 40 ultra(3,800mAh)に比べて大きいこと。そしてもう1つ、ある意味最大の優位点となるのがFeliCaの搭載だ。
従来モトローラ・モビリティのrazrシリーズには、FeliCaが搭載されてこなかったが、motorola razr 40では初めてハード的に国内向けのカスタマイズが施され、FeliCaを搭載することで「おサイフケータイ」などが利用できるようになった。発表・発売時期がmotorola razr 40 ultraより遅くなったのには、そのカスタマイズに時間がかかったことが影響しているようだ。
なぜ、razrシリーズへのFeliCa搭載に踏み切ったのかといえば、そこに大きく影響しているのはソフトバンクの存在だろう。motorola razr 40はオープン市場、そしてMVNOではインターネットイニシアティブの「IIJmio」が独占販売する一方、携帯電話会社としてはソフトバンクが独占販売するという。
それゆえmotorola razr 40には、moto g53j 5Gの時と同じようにソフトバンク向けの兄弟モデル「motorola razr 40s」が用意される。こちらは、ハード面での性能に違いはないものの、カラーが1色増えて3色展開となるほか、ソフトバンク関連のアプリがプリインストールされて販売されるとのことだ。
moto g53y 5Gの好調さが示しているように、多くの顧客を抱える携帯電話会社から端末販売がなされれば多くの販売が見込めるが、一方で携帯各社はメーカー側に、ユーザーニーズが高いFeliCaの搭載を求める傾向が強い。携帯電話会社から販売されていないmotorola razr 40 ultraは、FeliCa対応がなされていないだけに、motorola razr 40でFeliCa対応が進められたのには、ソフトバンク側の要望に応える狙いが強いといえよう。
一方でソフトバンク側としても、折り畳みスマートフォンの市場が拡大する中にあって、折り畳みスマートフォンに強みを持つサムスン電子と長年取引がないことから、調達に課題を抱えていたのは確かだ。XiaomiやOPPOなども海外で折り畳みスマートフォンを提供してはいるが、日本への投入は消極的なだけに、日本市場に積極的な姿勢を見せるモトローラ・モビリティに、白羽の矢が立ったのではないだろうか。
そうしたことからmotorola razr 40は、投入時期こそ遅くなったものの国内向けの機能と販路をしっかり整え、周到に準備した上で販売がなされようとしていることが分かる。ただ1つ気になるのが、価格面だ。
motorola razr 40は、性能を引き下げている分海外でも比較的安く販売されており、米国での同一モデル「Motorola Razr(2023)」の価格は699.99ドル(約10万3,000円)、国によっては10万円を切るところもいくつか見られる。だが、日本におけるモトローラ・モビリティの公式オンラインストア価格は12万5,800円となっており、motorola razr 40 ultraとの価格差がおよそ3万円しかない。
昨今の円安に加え、FeliCa対応というカスタマイズを加えていることを考えれば、ある程度値段が高くなることは理解できるのだが、それでも海外と比べれば明らかに割高だ。もちろん、ソフトバンクやIIJmioによる値引き施策が用意されており、それらを適用すれば10万円を切る価格で購入可能なのだが、期間限定のキャンペーンであったり、番号ポータビリティでの転入や指定プランへの加入などが求められたりするなど、一定の制約が存在するのも確かだ。
一体なぜ、それほど高額になってしまったのか。モトローラ・モビリティの日本法人であるモトローラ・モビリティ・ジャパンの代表取締役社長・松原丈太氏によると、その理由は国内向けのカスタマイズに加え、日本の携帯電話会社が求める品質の水準が高いことから、それに対応するための試験などに時間とコストがかかっていると説明している。
折り畳みスマートフォンはその構造上、故障に対する不安も大きいだけに、とりわけ端末に高い品質を求める日本の携帯各社のニーズに応えるには、一層品質にコストをかける必要があったのかもしれない。松原氏も、「価格設定は10万円を切りたいというのが当初からあったが、ああいった形に収まった」と話しており、できれば10万円は切りたかったというのが本音のようだ。
円安などで環境的に厳しい部分もあるのは確かだが、折り畳みスマートフォンがベースの価格で10万円を切ったとなれば、そのインパクトは非常に大きく、日本の折り畳みスマートフォン普及に大きく弾みがつく可能性もあっただけに、とても残念だといえる。