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公開日 2024/05/30 10:38
【連載】佐野正弘のITインサイト 第110回

ASUS「ROG Phone 8 Pro」レビュー。抑えたゲーミング色、普段使いのスマホになり得るのか

佐野正弘
ASUSの “ROG Phone” シリーズといえば、ゲームプレイに非常に重点を機能・性能に力を入れたゲーミングスマートフォンとして知られている。だが先日5月15日に発表された「ROG Phone 8」シリーズは、ゲーミングスマートフォンとしての機能・性能は備えながらも、「いかにもゲーミングデバイス」という印象を抑えたデザインに仕上げられている。

そして、ゲーミングスマートフォンで弱みとなることが多いカメラ性能を向上させるなど、普段使いのスマートフォンとしても使いやすい工夫がなされている。そこで本稿では、上位モデルの「ROG Phone 8 Pro」をピックアップし、あえてゲーミングではない日常用のスマートフォンとしての使い勝手を評価してみたい。

■ゲーミングらしさを抑えた外観。背面部には「AniMe Vision」を搭載



まずはサイズ感を確認してみると、ROG Phone 8 Proの外形寸法は76.8W×163.8H×8.9Dmm、本体質量は225g。ゲーミングスマートフォンということもあり、6.78インチの大画面を搭載していることから大ぶりで、重量も200gを超えることから大きさを感じることは確か。だが、240g前後で厚さが1cm近くあった従来のROG Phoneシリーズと比べれば、薄くて軽く、持ちやすくなっている。

「ROG Phone 8 Pro」を手にしたところ。ディスプレイサイズは6.78インチと大型だが、従来機種と比べるとかなり薄く、軽くなっている

また本体デザインも、ゲーミングデバイスらしさを前面に打ち出していた従来のROG Phoneシリーズと比べると大きく変化している。背面にROGシリーズのロゴや、ゲーミングらしさを感じさせるデザイン要素はいくつか備わっているものの、従来モデルよりもかなり小さく抑えられた印象だ。

従来のROG Phoneではゲーミングデバイスらしい派手さに重点が置かれた背面デザインだが、ROG Phone 8 Proはかなり落ち着いたものとなっている

そしてもう1つ、ゲーミングスマートフォンの大きな特徴でもある、ゲームプレイ中などに背面が光る機構に関しても、ROG Phone 8シリーズでは大きな変更が加えられている。中でもROG Phone 8 Proや、その上位モデルとなる「ROG Phone 8 Pro Edition」では、この光る機構が「AniMe Vision」に変更され、非常に落ち着いた仕様になっている。

AniMe Visionは、複数のLEDによってドット調のアニメーション表示を実現する仕組み。設定にバッテリー残量や時間などによってさまざまな要素を表示できるほか、着信やメールの通知などにも活用でき、実用性が高められている。加えてカラーが単色で、なおかつ非表示時にはドットが見えないようデザイン上の工夫もなされていることから、従来のゲーミングデバイスと比べ非常に落ち着いた印象を与えている。

ROG Phone 8 Proの背面が光る機構は、ドット調の単色LEDによるアニメーションが特徴の「AniMe Vision」に変更がなされている

ちなみにAniMe Visionは、カスタマイズして好みの内容を表示することも可能。カスタマイズはゲーミングに関する設定を行う「Armoury Crate」から実施するかたちとなり、好みのテキスト(日本語は不可)や手書きの絵などを表示することも可能だ。

AniMe Visionはゲーミング設定アプリの「Armoury Crate」からカスタマイズ可能。好みの絵や文字を表示することなども可能だ


実際に表示してみたところ。表示領域は広くないので、テキストは横にスクロールして全文が表示される
デザイン面でもう1つ、通常のスマートフォンらしさを意識しているのがフロントカメラだ。従来のROG Phoneシリーズは、ゲームプレイに影響が出ないようあえて上部にベゼルを設け、画面外にフロントカメラを設置していたのだが、ROG Phone 8シリーズでは最近の一般的なスマートフォンと同様に、ディスプレイの一部をくり抜いたパンチホール構造を採用している。

フロントカメラは一般的なスマートフォンと同じパンチホール構造に。ゲーミングには影響が出る仕組みだが、パンチホール部分に映像を表示しないよう設定変更も可能だ

ただこの変更により、ゲームプレイ中にはフロントカメラ部分に映像が表示されない、画面の淵までタッチ判定が入るため誤操作を招きやすいなど、ゲームプレイには少なからず影響が出るようになった。そこで「Armoury Crate」では、ゲームプレイ中はフロントカメラ部分を非表示にするなどして、快適なゲームプレイを維持できるようになっている。

ゲーム中のフロントカメラの表示領域はArmoury Crateから設定できる。

一方で、ゲーミングスマートフォンらしさが残るのが側面のインターフェースだ。横にした状態で下に位置する左側面には、従来のROG Phoneシリーズと同様、充電や周辺機器の接続に用いるUSB Type-C端子が搭載されているほか、底面には3.5mmのイヤホン端子も備わっている。

横画面で充電しながらゲームプレイをしても操作に影響を及ぼさないよう、左側面にもUSB Type-C端子が備わっている

■普段使い向けに強化されたカメラ。日本仕様の機能もサポート



普段使いを強化するため、デザインと同様従来のROG Phoneシリーズと大きく変わったのがカメラである。ROG Phone 8シリーズは5000万画素/F値1.9の広角カメラと、1300万画素/F値2.2の超広角カメラ、3200万画素/F値2.4の望遠カメラという3眼構成で、フロントカメラは3200万画素/F値2.05。広角だけでなく望遠にも力を入れる傾向が強い、最近のハイエンドスマートフォンとしてはスタンダードな構成といえるだろう。

カメラは広角・超広角・望遠の3眼構成。前機種「ROG Phone 7」シリーズと比べると、マクロカメラが望遠カメラに置き換わり全体的な強化が図られている


ROG Phone 7の広角カメラで撮影した写真
中でも性能強化が著しいのは広角カメラだ。新たにソニー製イメージセンサー「IMX890」を採用したのに加え、「Zenfone 10」などの大きな特徴となっていた、6軸ジンバルセンサーも搭載。従来ROG Phoneシリーズのカメラの弱点となっていた、手ブレ補正が大幅に改善されているのだ。

同じ場所から超広角カメラで撮影した写真


同じ場所から望遠カメラで撮影した写真。光学3倍ズーム相当での撮影が可能だ
これによって、暗い場所でもブレなく撮影しやすくなったほか、動画撮影時もZenfone 10と同様、ブレをリアルタイムに検知して最適な画角に自動調整する、非常に強力な手ブレ補正機能「HyperSteady」が利用できるようになった。

だが何より恩恵が大きいのが、同社製カメラの特徴の1つとなっている、長時間露光による撮影が簡単にできる「ライトトレイル」モードが格段に使いやすくなったことだろう。ライトトレイルは暗めの場所ほど印象的な写真を撮影しやすいが、従来のROG Phoneシリーズは手ブレに弱く、綺麗に撮影するのが難しかっただけに、Zenfone譲りの強力な手ブレ補正機能を備えたことは非常に大きな意味を持つ。

「ライトトレイル」モード(人の往来)で撮影した写真。長時間露光が必要なことから手ブレの影響を受けやすいだけに、手ブレ補正の大幅な強化で手ブレによる失敗が起きづらくなった

もう1つ、普段使いを強化するため強化がなされているのが、いわゆる “日本仕様” への対応である。ROG Phone 8シリーズはIP65/IP68の防水防塵に対応したのに加え、FeliCaにも対応し「おサイフケータイ」などが利用できるようになった。

こうした機能は日常使いで役立つものだけに、ゲーミングに特化してきた従来のROG Phoneシリーズでは対応が進められていなかった。そうした機能にあえて積極対応するようになったことからも、ROG Phone 8シリーズが大きく変化したことをうかがわせる。

それ以外の性能を確認すると、チップセットにはクアルコム製のハイエンド向け最新チップ「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載しており、RAMとストレージはROG Phone 8 Proの場合それぞれ16GB、512GBとなる。ゲーミングには不足のない非常に高い性能を備えており、ゲーミングスマートフォンならではの機能も多く備わっていることから、もちろんゲームプレイ時の満足感は高い。

「PUBG Mobile」をプレイしているところ。非常に高い性能を備えているので、AAAクラスのゲームでグラフィックを最高画質にしても快適にプレイできる

バッテリーは5500mAhと、こちらも長時間のゲームプレイを意識してか、一般的なスマートフォンより大容量のものを搭載している。その分重量が重いという弱みもあるのだが、普段使いには十分な容量であることは確かだ。

通信に関しては、従来同様5Gに対応しており、NTTドコモの4.5GHz帯(n79)もしっかりカバーしている。だが、最近のスタンダードとなっている物理SIM(ナノSIM)とeSIMのデュアルSIM対応ではなく、ナノSIM×2でeSIMには対応していない。それゆえ、サブ回線などにeSIMを使っている人が機種変更する場合、物理SIMの発行が必要になり手数料がかかる可能性があることに注意したい。

SIMは物理SIM(ナノSIM)×2。最近のスマートフォンとしては珍しく、eSIMには対応していない

◇◇◇


一連の内容を見ると、ROG Phone 8 Proはゲーミングらしさを意識しているとはいえ、スタンダードなスマートフォンとして普段使いをしても高い満足感が得られると感じる。とりわけROG Phone 8 Proは、カラーがファントムブラックで落ち着いた色合いとなっており、AniMe Visionも単色で派手さはないことから、日常のシーンでも違和感なく活用しやすくなったといえる。

ただ、ゲーミングに重要な機能・性能も備えているだけあって、やはり通常のスマートフォンと比べると大きさと重さがあるのは確かである。加えて、ゲーミングに多くの付加価値を備えている上に、カメラ性能の強化が図られていることもあって、値段もROG Phone 8 Proで17万9,800円と、決して安いとは言えない額だ。それだけにやはり、ゲーミングに重きを置く人が普段使いとしても利用しやすいスマートフォン、という位置付けが妥当なのではないだろうか。

Source: ASUS

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