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公開日 2024/09/19 10:53
【連載】佐野正弘のITインサイト 第126回

2024年の「Xperia 5」シリーズ新機種は登場せず。ソニーが厳しい判断を下した背景

佐野正弘
アップルが新しい「iPhone 16」シリーズを発表するなど、秋から冬に向けてまたスマートフォン新機種の投入が相次ぐシーズンとなってきた。だが2024年、その秋冬商戦に定番のスマートフォンを投入しない方針を打ち出したメーカーもある。

それがソニーだ。同社はこの時期、毎年「Xperia 5」シリーズの新機種を投入しているのだが、今年はその新機種を投入せず、現行モデルの「Xperia 5 V」を継続して販売していく方針であることを明らかにしている。

■「Xperia 5 V」後継機の投入を見送った背景



Xperia 5シリーズといえば、従来は同社のフラッグシップモデル「Xperia 1」シリーズの高い機能・性能を、可能な限り維持しながらディスプレイサイズを小さくし、コンパクトなボディを実現した、コンパクト・ハイエンドモデルと位置付けられてきた。だが2023年のXperia 5 Vでその方針を大きく変え、カメラを2眼に減らすなど当時のフラッグシップモデル「Xperia 1 V」から一部機能を減らす一方で、ショート動画を簡単に作成できる「Video Creator」を追加するなど、若い層をターゲットとしたカジュアル路線に大きく転換している。

ソニーは2023年に発売した「Xperia 5 V」で、Xperia 5のコンセプトを大幅に変更。Xperia 1と比べ望遠カメラがカットされ、若い世代を意識したカジュアル路線へと大きく舵を切っている

だがソニーは2024年、その位置付けが変わって間もないXperia 5の後継モデルを投入せず、Xperia 5 Vを継続販売するという判断を下している。同社の説明によると、そこには「Xperia 1 VI」の好調が影響しているようだ。

実際同社によると、Xperia 1 VIは前機種の「Xperia 1 V」を販売していた2023年と比べ、128%の伸びを示すなど好調だという。発売前の評価が大きく分かれた、4Kを止めたディスプレイの大幅変更も、購入者からは比較的好意的に受け止められているようだ。

そして、Xperia 1 VIの販売を伸ばす要因となっているのが、1つに他社メーカーから乗り換えるユーザーの増加。そしてもう1つが、既存のXperia 5ユーザーからの乗り換えが増えていることにあるという。Xperia 1シリーズを購入している人達の絶対数は増えていないながらも、従来Xperia 5シリーズなどで取り込んできた、ライトなクリエイター層などにも評価を受けるようになったことで、Xperia 1 VIの利用者層が広がっているというのが同社の見方のようだ。

ソニーによると、「Xperia 1 VI」の販売好調には他社ユーザーの取り込みだけでなく、Xperia 5シリーズ利用者の取り込みも大きく貢献しているという

以上の通り、Xperia 5シリーズからXperia 1シリーズへのステップアップが進んでいることが明確になったことを受け、Xperia 5 Vの新機種は投入せず継続販売するに至ったと説明している。その一方で、同社では既存のXperiaスマートフォンからXperia 1 VIへの買い替えを促す「Go to 1キャンペーン」を展開。フラグシップモデルのXperia 1 VIの販売に注力する、選択と集中を図る考えのようだ。

ソニーは2024年9月10日より、既存のXperiaスマートフォン利用者に対してXperia 1 VIへの買い替えを促進する「Go to 1キャンペーン」を実施するとしている

正直なところ、Xperia 5の新機種が投入されないことに、あまり驚きはなかったという人も多かったのではないだろうか。理由の1つはスマートフォンのニーズの変化であり、動画視聴などが増えたことで日本でも大画面ニーズが高まっていることから、従来のXperia 5シリーズのコンセプトだったコンパクトさが、むしろデメリットに働くようになってしまっている。

そこでソニーはXperia 5 Vで、Xperia 5シリーズの位置付けを大きく変更するに至ったのだろうが、ミドルクラスの新機種「Xperia 10 VI」にもXperia 5 Vに近いデザインとコンセプトを持たせたことで、現状Xperia 5 Vの位置付けが曖昧になってしまった感は否めない。そこで当面はXperia 1シリーズとXperia 10シリーズにラインナップを集中させ、一度ラインアップを整理したいというのが、ソニーの本音なのではないだろうか。

2024年に発売されたミドルクラスの「Xperia 10 VI」は、カメラを3眼から2眼構成にするなどXperia 5 Vと同様の変更が加えられており、性能はともかくコンセプト的に共通する部分が多い

そしてもう1つ、政府によるスマートフォン値引き規制と円安の影響で国内のスマートフォン市場環境が非常に厳しく、とりわけソニーのように事業規模が小さい国内メーカーが影響を大きく受けていることも、同社の判断には大きく影響したと考えられる。厳しい環境の中でも生き残りを図るため、確実に売れるモデルに開発リソースを集中してコストを削減する狙いも強いだろう。

とはいえ、Xperia 5 Vもその機能・性能とポジション、そして現在の価格を考慮するならば、まだ競争力があるモデルだということも確かだ。実はXperia 5 Vは2024年6月に一度値下げをしており、現在ソニーストアでの販売価格は12万9,800円となっている。

それでいてXperia 5 Vは、広角カメラにXperia 1 VIと同じイメージセンサー「Exmor T for mobile」を搭載しているし、チップセットも1世代前ではあるが、クアルコムのハイエンド向けとなる「Snapdragon 8 Gen 2」を採用している。Xperia 10 VIとXperia 1 VIの中間というべきモデルが存在しないだけに、その穴を埋める存在としては現在も一定の価値を持っている。

ただ新機種が出なかったことで、Xperia 5シリーズの今後に暗雲が立ち込めたことは間違いない。ソニーとしてはXperia 5シリーズは継続する方針としているが、現時点で後継機種の予定は決まっていない様子だ。

あくまで筆者の見立てだが、Xperia 5シリーズの新機種が復活するにはスマートフォン市場の販売回復が大前提だろう。ソニーが主力とする日本市場でのスマートフォン販売が回復しない限り、ラインナップを増やして販売を拡大するという考えには至らないだけに、Xperia 5シリーズの今後は非常に危ういというのが筆者の正直な見方である。

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