公開日 2017/05/15 09:40
単なる“人気モデルのLightning版”で片付けられない
AKG初のLightningイヤホン「N20LT」の実力は?「N20」と比較レビュー!
折原一也
AKG「Nシリーズ」に遂に登場したLightningモデル
人気ブランド・AKGの製品のなかでも「Nシリーズ」はコンシューマーヘッドホン/イヤホンのプレミアム機に位置づけられる。2015年8月に第一弾として登場した「N20」は、鮮烈なサウンドで新シリーズの方向性を決定付けた名機だ。
そして今年4月、この「N20」のバリエーションモデルとして、Lightning端子を採用した「N20LT」が発売された。ヘッドホン端子が廃止されたiPhone 7でも利用できるタイプの登場だ。
Bluetoothモデルを活用する手もあるが、敢えてLightningイヤホンを選ぶメリットとはなにか。それは「使い勝手」と「音の良さ」にある。
まず「使い勝手」。Bluetoothのペアリングは簡単さがウリだが、毎回ペアリングするのが面倒とか、バッテリー消費が気になるとかいう声も聞こえてくる。また、これまでのイヤホンと同じようにサッと挿すだけで使えるものが欲しいとお思いの方もおられるはず。そんな方にはLightningイヤホンがうってつけだ。有線接続なので遅延がないのも魅力。スマホでゲームなどを楽しむ際もストレスなしでプレイできる。
そして「音の良さ」。通常のイヤホンは3.5mmステレオミニ端子からアナログで信号を取り出す。Bluetoothは基本的に信号を圧縮して伝送する。しかしLightningイヤホンは、Lightning端子からデジタルで信号を取り出し、Lightningイヤホン側のDACを使って48kHz/24bitで信号処理を行う。それゆえ普通のイヤホンのような使い勝手を備えながら、いい音も実現できてしまうのだ。
今回は、Lightningイヤホン「N20LT」について、ベースとなった「N20」と比較しつつレビューしていこう。
既存の「N20」と仕様はほぼ共通
「N20LT」は「N20」とイヤホン部の設計は基本的に共通だ。アルマイト処理が施されたアルミニウム合金の筐体は耐久性を高めて振動を抑えた設計はもちろん、女性の耳孔にも収まるコンパクトさ。搭載ドライバーも「N20」の高性能7mm径ドライバーを継承し、振動板の振幅時に発生する背圧を最適化する「ベンチレーション・システム」も搭載している。
なので「N20LT」最大の特徴は、型番の“LT”も示すとおりLightningコネクタを搭載したこと。「N20」「N20LT」のケーブル部分を並べて比較してみると、いずれも布製被覆ケーブルだが僅かに「N20LT」の方が径があるタイプ。もっとも「N20LT」も、Lightning端子の信号を伝送していると考えると驚くほど十分細く柔軟性に優れている。iOS端末対応3ボタンリモコン部は「N20」と比較すると一回り大きいが、これはDACが収められているため。ケーブル長は1.2mなので外出先のポケットなど一般的な使い方では十分な長さを確保している。
躍動感たっぷりで空間表現に優れるサウンドを聴かせる
ベースとなった「N20」は洗練された素材とデザイン、AKGの音響技術を融合させたプレミアムモデル。それゆえ「N20LT」も、他メーカーのLightningイヤホンと比べて価格は上の部類に入る。しかしそれに見合う質感の高いデザインと優れた音質を兼ね備えているのだ。ここからは実際に「N20LT」のサウンドを体験してみよう。
冒頭でも書いたとおり「N20LT」の一番のターゲットはヘッドホン端子を廃止したiPhone 7だが、今回はベースモデルの「N20」と比較することもあり、ヘッドホン端子とLightning端子両方の揃うiPhone 6で聴き比べた。
まず「N20LT」をLightning端子に接続してRADWIMPSの『前前前世 (movie ver.) 」を試聴。そのサウンドはダイナミックなレンジ表現と、空間を生み出す躍動感溢れるものだ。エレキギターは空間的な広がりを持たせて音情報を鳴らし分けるし、男性ボーカルの声もきれいにセパレーションされクリア。シンバルの金属音も繊細かつ存在感を持って鳴らし、ワイドレンジな音再現が効いている。そして重低音はベースラインを存在感たっぷりに鳴らしてくれるので、ロックを聴くのにベストバランス。気持ちよく大音量で音楽を聴かせてくれるモデルだ。
映画『ラ・ラ・ランド』のサントラからジャズの音源「アナザー・デイ・オブ・サン」を聴いても、ピアノの音の響き、ウッドベースの存在感ある響きと楽曲全体のサウンドフィールドを気持ちよく展開する。特にコーラスの音の見通しに優れると感じた。電車のなかでも試聴してみたが、ボリュームを上げて聴いた時の音楽への没入感は素晴らしいの一言だ。
単に「N20のLightning版」に留まらない存在
続いてベースモデルの「N20」をヘッドホンジャックに接続して同じ音源を聴いてみると、基本のトーンこそ変わっていないが『前前前世 (movie ver.) 」を聞くと中域の音情報のクリアネス、そして高域の抜けの良さは「N20LT」の方が一枚上手。『アナザー・デイ・オブ・サン』を聴いてもイントロのピアノの音の質感、また中域のS/N感が向上している。また低域は「N20」が量感を押し出すタイプであるのに対して、「N20LT」は量感はそのままにタイトな情報量を持って鳴らすので、音源の情報を引き出すという点で「N20LT」の方が聴きごたえがある。
◇
単に人気イヤホン「N20」のLightning対応モデルと思ってしまいがちな「N20LT」だが、そのサウンドは素直に上位モデルと呼んでもいいほどだと感じた。iPhone側でのDA変換から、Lightning端子経由でデジタル出力することでDA変換をイヤホン側に持つ事になり、AKGがトータルでサウンドチューニングを手がけられるようになった事が音質向上の要因だろう。
「N20LT」はLightningイヤホンとしても音の抜けの良さと音場感、中域のクリアネス、重低音とバランスと、どこを見ても隙がない。これまでのイヤホンと同じ使い勝手で、よりいい音を楽しみたい方におすすめしたいモデルだ。iPhoenと組み合わせる普段使いのイヤホンとして、また音楽にたっぷり浸れる上質なイヤホンとして、新しいAKGのサウンドチューニングの真骨頂を体験してみてほしい。
人気ブランド・AKGの製品のなかでも「Nシリーズ」はコンシューマーヘッドホン/イヤホンのプレミアム機に位置づけられる。2015年8月に第一弾として登場した「N20」は、鮮烈なサウンドで新シリーズの方向性を決定付けた名機だ。
そして今年4月、この「N20」のバリエーションモデルとして、Lightning端子を採用した「N20LT」が発売された。ヘッドホン端子が廃止されたiPhone 7でも利用できるタイプの登場だ。
Bluetoothモデルを活用する手もあるが、敢えてLightningイヤホンを選ぶメリットとはなにか。それは「使い勝手」と「音の良さ」にある。
まず「使い勝手」。Bluetoothのペアリングは簡単さがウリだが、毎回ペアリングするのが面倒とか、バッテリー消費が気になるとかいう声も聞こえてくる。また、これまでのイヤホンと同じようにサッと挿すだけで使えるものが欲しいとお思いの方もおられるはず。そんな方にはLightningイヤホンがうってつけだ。有線接続なので遅延がないのも魅力。スマホでゲームなどを楽しむ際もストレスなしでプレイできる。
そして「音の良さ」。通常のイヤホンは3.5mmステレオミニ端子からアナログで信号を取り出す。Bluetoothは基本的に信号を圧縮して伝送する。しかしLightningイヤホンは、Lightning端子からデジタルで信号を取り出し、Lightningイヤホン側のDACを使って48kHz/24bitで信号処理を行う。それゆえ普通のイヤホンのような使い勝手を備えながら、いい音も実現できてしまうのだ。
今回は、Lightningイヤホン「N20LT」について、ベースとなった「N20」と比較しつつレビューしていこう。
既存の「N20」と仕様はほぼ共通
「N20LT」は「N20」とイヤホン部の設計は基本的に共通だ。アルマイト処理が施されたアルミニウム合金の筐体は耐久性を高めて振動を抑えた設計はもちろん、女性の耳孔にも収まるコンパクトさ。搭載ドライバーも「N20」の高性能7mm径ドライバーを継承し、振動板の振幅時に発生する背圧を最適化する「ベンチレーション・システム」も搭載している。
なので「N20LT」最大の特徴は、型番の“LT”も示すとおりLightningコネクタを搭載したこと。「N20」「N20LT」のケーブル部分を並べて比較してみると、いずれも布製被覆ケーブルだが僅かに「N20LT」の方が径があるタイプ。もっとも「N20LT」も、Lightning端子の信号を伝送していると考えると驚くほど十分細く柔軟性に優れている。iOS端末対応3ボタンリモコン部は「N20」と比較すると一回り大きいが、これはDACが収められているため。ケーブル長は1.2mなので外出先のポケットなど一般的な使い方では十分な長さを確保している。
躍動感たっぷりで空間表現に優れるサウンドを聴かせる
ベースとなった「N20」は洗練された素材とデザイン、AKGの音響技術を融合させたプレミアムモデル。それゆえ「N20LT」も、他メーカーのLightningイヤホンと比べて価格は上の部類に入る。しかしそれに見合う質感の高いデザインと優れた音質を兼ね備えているのだ。ここからは実際に「N20LT」のサウンドを体験してみよう。
冒頭でも書いたとおり「N20LT」の一番のターゲットはヘッドホン端子を廃止したiPhone 7だが、今回はベースモデルの「N20」と比較することもあり、ヘッドホン端子とLightning端子両方の揃うiPhone 6で聴き比べた。
まず「N20LT」をLightning端子に接続してRADWIMPSの『前前前世 (movie ver.) 」を試聴。そのサウンドはダイナミックなレンジ表現と、空間を生み出す躍動感溢れるものだ。エレキギターは空間的な広がりを持たせて音情報を鳴らし分けるし、男性ボーカルの声もきれいにセパレーションされクリア。シンバルの金属音も繊細かつ存在感を持って鳴らし、ワイドレンジな音再現が効いている。そして重低音はベースラインを存在感たっぷりに鳴らしてくれるので、ロックを聴くのにベストバランス。気持ちよく大音量で音楽を聴かせてくれるモデルだ。
映画『ラ・ラ・ランド』のサントラからジャズの音源「アナザー・デイ・オブ・サン」を聴いても、ピアノの音の響き、ウッドベースの存在感ある響きと楽曲全体のサウンドフィールドを気持ちよく展開する。特にコーラスの音の見通しに優れると感じた。電車のなかでも試聴してみたが、ボリュームを上げて聴いた時の音楽への没入感は素晴らしいの一言だ。
単に「N20のLightning版」に留まらない存在
続いてベースモデルの「N20」をヘッドホンジャックに接続して同じ音源を聴いてみると、基本のトーンこそ変わっていないが『前前前世 (movie ver.) 」を聞くと中域の音情報のクリアネス、そして高域の抜けの良さは「N20LT」の方が一枚上手。『アナザー・デイ・オブ・サン』を聴いてもイントロのピアノの音の質感、また中域のS/N感が向上している。また低域は「N20」が量感を押し出すタイプであるのに対して、「N20LT」は量感はそのままにタイトな情報量を持って鳴らすので、音源の情報を引き出すという点で「N20LT」の方が聴きごたえがある。
単に人気イヤホン「N20」のLightning対応モデルと思ってしまいがちな「N20LT」だが、そのサウンドは素直に上位モデルと呼んでもいいほどだと感じた。iPhone側でのDA変換から、Lightning端子経由でデジタル出力することでDA変換をイヤホン側に持つ事になり、AKGがトータルでサウンドチューニングを手がけられるようになった事が音質向上の要因だろう。
「N20LT」はLightningイヤホンとしても音の抜けの良さと音場感、中域のクリアネス、重低音とバランスと、どこを見ても隙がない。これまでのイヤホンと同じ使い勝手で、よりいい音を楽しみたい方におすすめしたいモデルだ。iPhoenと組み合わせる普段使いのイヤホンとして、また音楽にたっぷり浸れる上質なイヤホンとして、新しいAKGのサウンドチューニングの真骨頂を体験してみてほしい。