公開日 2018/02/21 17:49
欧州最注目ブランドによるコンパクト・ハイエンド・サウンド
M2TECHの最先端、DACプリ&パワーアンプ「YOUNG MkIII」「Crosby」を組み合わせて聴いた
逆木 一
ハイレゾの盛り上がりを経て、めまぐるしい進化を遂げてきたデジタル・オーディオの世界においてM2TECHは、まさにその最先端を担うブランドだ。そんな同社の中でも上位機種に位置するのが、「YOUNG MkIII」と「Crosby」。「ROCKSTERSシリーズ」という名のとおり、音楽への敬意も盛り込んだこの2つの「最先端」は、従来のセパレートアンプの概念を覆すサウンドが秘められている。逆木 一氏がその魅力を解説する。
■M2TECHの誇りを感じさせるセパレート機
ファイル再生に長年取り組んできたオーディオファンなら、M2TECHというブランドを聞いたことがあるものと思う。
ネットオーディオが本格的に萌芽を迎えた当時、USB DACにせよネットワークプレーヤーにせよ、96kHz/24bitまでの対応の製品が多かった。そんななか、M2TECHは他に先駆けて192kHz/24bitに対応するUSB DDCの「HIFACE」をリリースしていた。HIFACEのおかげで、当時最高スペックの音源をフルに聴くことができたというユーザーも一定数いるのではないだろうか。
それからもM2TECHはミニマムなサイズにさまざまな機能を詰め込んだ「EVO」シリーズや、コンパクトなサイズでクオリティを追求した「ROCKSTARS」シリーズを展開し、オーディオの先端を走ってきた。無闇に重厚長大かつ高価格な製品を志向せず、サイズ的にも価格的にも手に取りやすい製品づくりを貫いてきた辺りに、M2TECHのブランドとしての誇りが感じられてならない。
さて、そんなM2TECHのROCKSTARSシリーズは現在世代交代を迎えており、順次新製品が登場している。今回はその中から「YOUNG MkIII」と「Crosby」を試す機会に恵まれた。
YOUNG MkIIIは、まず複数のデジタル入力を持つDACであり、USB入力では最大で384kHz/32bit・DSD11.2MHzまで、加えてMQAのデコードにも対応する。またアナログ入力を備えており、ネットワーク入力やフォノ入力を持たないことを併せて、本機の純粋なDAC/プリアンプとしての立ち位置を鮮明にしている。さらにBluetoothにも対応するため、多様な音楽再生スタイルを実現する。
CrosbyはYOUNG MkIIIとサイズ・デザインを共有するコンパクトなパワーアンプ。クラスDアンプを採用し、ブリッジモードにも対応。両機種共にシンプルなデザインながら、そのぶん筐体は頑健であり、オーディオ機器としての質感は高い。
■余計な付帯感なく音楽を精密に再現する
最初に、YOUNG MkIIIから筆者のシステムに繋げて聴く。一聴して、空間に舞い散る煌びやかな高音が強いイメージを残した。中低音は筋肉質で、余計な響きやにじみは皆無と言っていい。音楽を滑らかに聴かせるというよりは、音源の情報量をぼかすことなく精密に再現することに集中している。最近のDACは分解能だけでなく、中低域のエネルギーを乗せて積極的な押し出しを聴かせる製品が多いと感じるが、本機の音は上から下まで実にすらりとして小気味よい。ローカル、TIDAL MastersのMQA音源の再生も問題なく行えた。
続いて、アンプをCrosbyに変えて聴く。まずは一台で、ステレオモードを試した。それにしても静かなアンプである。スピーカーに耳を近づけても残留ノイズはほとんどなく、ここまで残留ノイズの少ないクラスDアンプは初めてだ。出てくる音はやはり静寂感に富み、細やかな中高音と引き締まった低音が特徴。女性ボーカルでは厚みよりも清潔感が先行する表現となる。少々硬質な鳴り方であり、切れ込みの良い音で分解能・駆動力共に十分ながら、ふくよかな表現とは方向が異なる。響きの豊かさや空間の広がりも控えめだ。音の傾向としてはYOUNG MkIIIと共通であり、精緻な箱庭的空間が構築される。
本機を知人宅に持ち込み、ソナス・ファベールの「Venere Signature」を鳴らしてみた時も、スピーカーに音がまとわりつくことのない駆動力を確認できた。
続いてCrosbyを二台使い、ブリッジモードで聴いた。駆動力に大きな向上が感じられ、筆者宅のディナウディオ「Sapphire」が俊敏に鳴る。とにかく曖昧さのない音で、音楽の彫りを深々と描くという印象を受ける。ステレオモードに比べて空間性の向上も感じられる。よほどの難物でもない限り、本機のブリッジモードで駆動するスピーカーから鈍重な音が出てくることはないだろう。
YOUNG MkIIIとCrosbyの組み合わせは、ごくシンプルでありつつ、最先端の機能と優れた再生品質が両立する。そしてコンパクトなサイズのおかげで、デスクトップから本格的なオーディオルームまで、ユーザーの環境を問わず活用可能。ファイル再生を志す全てのオーディオファンに良い音で音楽を楽しんで欲しい。そんな想いを随所に感じる、M2TECHからの贈り物のような製品だ。
■M2TECHの誇りを感じさせるセパレート機
ファイル再生に長年取り組んできたオーディオファンなら、M2TECHというブランドを聞いたことがあるものと思う。
ネットオーディオが本格的に萌芽を迎えた当時、USB DACにせよネットワークプレーヤーにせよ、96kHz/24bitまでの対応の製品が多かった。そんななか、M2TECHは他に先駆けて192kHz/24bitに対応するUSB DDCの「HIFACE」をリリースしていた。HIFACEのおかげで、当時最高スペックの音源をフルに聴くことができたというユーザーも一定数いるのではないだろうか。
それからもM2TECHはミニマムなサイズにさまざまな機能を詰め込んだ「EVO」シリーズや、コンパクトなサイズでクオリティを追求した「ROCKSTARS」シリーズを展開し、オーディオの先端を走ってきた。無闇に重厚長大かつ高価格な製品を志向せず、サイズ的にも価格的にも手に取りやすい製品づくりを貫いてきた辺りに、M2TECHのブランドとしての誇りが感じられてならない。
さて、そんなM2TECHのROCKSTARSシリーズは現在世代交代を迎えており、順次新製品が登場している。今回はその中から「YOUNG MkIII」と「Crosby」を試す機会に恵まれた。
YOUNG MkIIIは、まず複数のデジタル入力を持つDACであり、USB入力では最大で384kHz/32bit・DSD11.2MHzまで、加えてMQAのデコードにも対応する。またアナログ入力を備えており、ネットワーク入力やフォノ入力を持たないことを併せて、本機の純粋なDAC/プリアンプとしての立ち位置を鮮明にしている。さらにBluetoothにも対応するため、多様な音楽再生スタイルを実現する。
CrosbyはYOUNG MkIIIとサイズ・デザインを共有するコンパクトなパワーアンプ。クラスDアンプを採用し、ブリッジモードにも対応。両機種共にシンプルなデザインながら、そのぶん筐体は頑健であり、オーディオ機器としての質感は高い。
■余計な付帯感なく音楽を精密に再現する
最初に、YOUNG MkIIIから筆者のシステムに繋げて聴く。一聴して、空間に舞い散る煌びやかな高音が強いイメージを残した。中低音は筋肉質で、余計な響きやにじみは皆無と言っていい。音楽を滑らかに聴かせるというよりは、音源の情報量をぼかすことなく精密に再現することに集中している。最近のDACは分解能だけでなく、中低域のエネルギーを乗せて積極的な押し出しを聴かせる製品が多いと感じるが、本機の音は上から下まで実にすらりとして小気味よい。ローカル、TIDAL MastersのMQA音源の再生も問題なく行えた。
続いて、アンプをCrosbyに変えて聴く。まずは一台で、ステレオモードを試した。それにしても静かなアンプである。スピーカーに耳を近づけても残留ノイズはほとんどなく、ここまで残留ノイズの少ないクラスDアンプは初めてだ。出てくる音はやはり静寂感に富み、細やかな中高音と引き締まった低音が特徴。女性ボーカルでは厚みよりも清潔感が先行する表現となる。少々硬質な鳴り方であり、切れ込みの良い音で分解能・駆動力共に十分ながら、ふくよかな表現とは方向が異なる。響きの豊かさや空間の広がりも控えめだ。音の傾向としてはYOUNG MkIIIと共通であり、精緻な箱庭的空間が構築される。
本機を知人宅に持ち込み、ソナス・ファベールの「Venere Signature」を鳴らしてみた時も、スピーカーに音がまとわりつくことのない駆動力を確認できた。
続いてCrosbyを二台使い、ブリッジモードで聴いた。駆動力に大きな向上が感じられ、筆者宅のディナウディオ「Sapphire」が俊敏に鳴る。とにかく曖昧さのない音で、音楽の彫りを深々と描くという印象を受ける。ステレオモードに比べて空間性の向上も感じられる。よほどの難物でもない限り、本機のブリッジモードで駆動するスピーカーから鈍重な音が出てくることはないだろう。
YOUNG MkIIIとCrosbyの組み合わせは、ごくシンプルでありつつ、最先端の機能と優れた再生品質が両立する。そしてコンパクトなサイズのおかげで、デスクトップから本格的なオーディオルームまで、ユーザーの環境を問わず活用可能。ファイル再生を志す全てのオーディオファンに良い音で音楽を楽しんで欲しい。そんな想いを随所に感じる、M2TECHからの贈り物のような製品だ。