トップページへ戻る

レビュー

HOME > レビュー > レビュー記事一覧

公開日 2018/04/09 14:26
70年代に人気を誇ったHPDシリーズが進化して復活

TANNOY「LEGACY」シリーズをレビュー。最新技術により進化して蘇った“銘機”

石原 俊

前のページ 1 2 次のページ

1970年代、TANNOY(タンノイ)が世に送り出したモニタースピーカー「HPDシリーズ」は、多くのファンに愛されるハイファイ・スピーカーの定番機種の一つになった。このHPDシリーズの素性と外観を生かしながら、最新技術で性能向上したドライバーユニットとパーツ類を投入して、最新ソースにも対応できるようレベルアップさせた待望の「LEGACY(レガシー)シリーズ」が誕生した。英国王立デザイナー協会ジャック・ハウによるクラシカルなデザインを忠実に再現したデザインとその高いクオリティが評価され、オーディオ銘機賞2018の「銀賞」を受賞。単なる復刻ではなく、新たな銘機「レガシーシリーズ」3モデルの魅力を徹底的に紹介する。

TANNOY スピーカーシステム「ARDEN」¥600,000(1台/税抜・写真左)、TANNOY スピーカーシステム「CHEVIOT」¥500,000(1台/税抜・写真中)、TANNOY スピーカーシステム「EATON」¥400,000(1台/税抜・写真右)

本機誕生の背景
レガシーシリーズの原点は、タンノイの危機を救った「HPDシリーズ」

タンノイがレガシーシリーズをリリースした。レガシーシリーズの原点は、1970年代に一世を風靡したHPDシリーズに遡る。HPDは“High Performance Dual”の頭文字をとったもので、タンノイのお家芸である同軸2ウェイ・ドライバーユニットの高性能ぶりをアピールしていたことが窺い知れる。

HPDシリーズは従来のタンノイのスピーカーとは趣を異にしていた。それまでのタンノイのスピーカーは家具調の重厚なスタイルであったのに対して、HPDシリーズには一種の軽快さがある。設計を担当したのはイギリス王立デザイナー協会に所属するジャック・ハウ。彼は自分の才能の全てをこのスピーカーで世に問う、といった内容の発言をしていたように記憶している。

実はこの頃、タンノイ社は危機に瀕していた。工場が焼失したのに加え、社主のガイ・R・ファウンテンが心臓発作に倒れ、ファウンテンの持ち株が売却されるという事態に陥っていたのだ。その危難を救ったのがHPDシリーズの成功だった。1970年代の時流に乗ったライトでキュービックなエクステリアデザインに加えて、精度の高い音質と高度なパワーハンドリング性能を有するHPDシリーズは、録音スタジオやオーディオ愛好家のリスニングルームに好意を持って招き入れられたのだ。タンノイ社は後に売却された株式を買い戻し自主経営権を回復しているが、その背景にはHPDシリーズの成功があったのである。

そんなHPDシリーズをモチーフにしているのが、今回紹介するレガシーシリーズだ。このたび発売されたモデルは3機種で、いずれもHPDシリーズでも使用された名称が与えられている。

エンクロージャーはオリジナルのデザインを踏襲しつつ、新たな高密度素材を採用。堅牢な造りで低域のコントロール特性に優れ、DMT採用の入念なブレーシング加工を施す。バスレフポートは全機種前面に配置しているが、位置や数が異なる

3モデルの概要
外観もモデル名も同じだが、キャビネットも進化を遂げた

「EATON(イートン)」はレガシーシリーズ唯一のブックシェルフ型だ。ブックシェルフとはいってもエンクロージャーの内容積は30Lもあり、なかなかコワモテな面構えをしている。バスレフダクトはドライバーユニットの上部に2基マウントされている。これはクロスオーバーネットワーク回路とロックアップ式の高域レベルコントロールとの場所的な兼ね合いなのだが、1970年代のスタジオモニター機めいた姿がオーナーの自負心をくすぐる。同軸2ウェイ・ドライバーユニットのウーファーの口径は25mm。トゥイーターの口径は33mmで、これはシリーズに共通している。

EATONはレガシーシリーズ唯一のブックシェルフ型

「CHEVIOT(チェビオット)」はシリーズ中堅のフロア型だが、現代のフロア型としては異例ともいえるほどエンクロージャーの奥行きがなく、リビングルームにも無理なくセッティングできるだろう。バスレフダクトはドライバーユニットの直下に2基マウントされており、ウーファーの口径は300mm。サランネットは二分割方式になっている。これはサランネット全体を外さずに高域レベルコントロールを操作するための配慮で、かつてのHPDシリーズでも採用されていた。

フロア型ながらエンクロージャーの奥行きはなく、リビングにも設置しやすい

「ARDEN(アーデン)」はシリーズの頂点に君臨するモデルだ。正面から見ると堂々たる体躯なのだが、CHEVIOTと同様に奥行きは少ない。ウーファーの口径は380mm。バスレフダクトはフロントバッフルのボトム側に3基マウントされている。サランネットは三分割方式だ。これまたCHEVIOTと同様、高域レベルコントロールとの兼ね合いなのだが、このサランネットの分割こそが、HPD/レガシーシリーズのエクステリアデザインのアイデンティティであり、奥行きの少なさと相まって1970年代的な雰囲気を醸成していると筆者は解釈している。

ARDENはシリーズ最大モデル。堂々たる体躯なものの、こちらも奥行きは少ない

単なる復刻ではない、最先端技術で優れた音像表現力を獲得

前のページ 1 2 次のページ

関連リンク

新着クローズアップ

クローズアップ

アクセスランキング RANKING
1 「オーディオのオンキヨー」復活へ。新スピーカーとセパレートシステムを年明けのCESで発表
2 【完全ワイヤレスイヤホン特集 PART.10】音のプロが選ぶベストバイは?
3 CD再生とファイル再生の架け橋に!Shanlingからリッピング機能付きトランスポート「CR60」が登場
4 今こそ「ミニコンポ」が面白い! デノン/マランツ/B&Wの令和ライフにマッチする厳選5モデルレビュー
5 水月雨、『崩壊:スターレイル』とのコラボ完全ワイヤレス。ダイナミック+環状平面駆動の同軸ドライバー搭載
6 【ミニレビュー】空き電源コンセントに挿入するだけ。オーディオみじんこ「SILVER HARMONIZER AC-ADVANCE」
7 モニターオーディオ「GOLDシリーズ」レビュー。ユニット大幅刷新の第6世代機は「ハイスピードで焦点の明確な音調」
8 AVIOT、『らんま1/2』コラボ完全ワイヤレスイヤホン。完全新録ボイス240種類以上搭載
9 Nothing、スマホ/イヤホンが最大30%オフ価格になるウィンターキャンペーン。先着順で靴下もらえる
10 要注目の新興ブランド、ラトビア「アレタイ」スピーカー試聴レビュー!広大な空間描写力が魅力
12/20 10:05 更新

WEB