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公開日 2022/06/08 06:31
【特別企画】魂を揺さぶるサウンドに刮目

Meze Audio初の密閉型平面駆動ヘッドホン「LIRIC」レビュー。創業者が語る開発の苦難とこだわり

草野 晃輔

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熱心なファンに支えられ、着実に成熟が進んでいるポータブルオーディオ。とりわけ、各ブランドが持てる技術とアイデアを注ぎ込むプレミアムマーケットは、音やスペックが良いのは当たり前。そこに、高級機にふさわしい質感や造形美などが加わった、個性溢れる製品が増えている。このカテゴリーで大注目のアイテムが、ルーマニア生まれのハイブランド、Meze Audio(メゼ・オーディオ)から登場した密閉型平面磁界ヘッドホン「LIRIC」である。

「LIRIC」¥OPEN(予想実売価格:税込264,000円前後)

目を見張るような美しい造形に新技術を満載しており、スペックからは分からない魅力に溢れている。この製品の特長を深く知りたくなり、Meze Audioの創業者であり企画・設計を担当したアントニオ・メゼ氏にメールでインタビューした。そのコメントを交えつつ、本機の魅力に迫っていきたい。

■構想から8年、最高峰の密閉型ヘッドホンを目指して「LIRIC」の開発は始まる



まずは、ブランドの成り立ちについて触れておきたい。Meze Audioは、様々なジャンルで工業デザイナーとして活躍してきたアントニオ・メゼ氏が2009年に創業した。

エレキギターを愛好し演奏するメゼ氏は、ギターと同じように感性に訴え、愛着を持てるヘッドホンがないことに疑問を感じ、「自分で作ろう」とブランドを立ち上げた。この「感性」を刺激するプロダクトを作ることこそ、Meze Audioのブランド・アイデンティティーとなっている。

「LIRIC」の開発が始まったのは、実質的に2013年のこと。当時からMeze Audioはポータブルタイプの密閉型ハイエンドヘッドホンに着手しており、「77 DECO」と呼ばれる最初のコンセプトはプロトタイプまで開発されたそうだ。しかしこのプロトタイプは、2015年発売の密閉型ヘッドホン「99 Classics」の開発に集中するため、中止を余儀なくされる。

2015年に登場し、現在もなお販売され続けるロングセラーモデル「99 Classics」

その後も順調にブランドは成長を遂げ、2018年にはRinaro Isodynamics社(以下、Rinaro社)と共同で、世界で初めて「等磁力ハイブリッド配列型ドライバー」を搭載した開放型ヘッドホン「EMPYREAN」を発売する。このモデルが、世界中で高い評価を得たのは、ポータブルオーディオファンには周知の通りだ。

この成功を受けたことで、メゼ氏は「オーディオファイル向けにポータブルタイプの密閉型平面駆動ヘッドホンを再考するのはいましかない」と強く考えるようになったという。この時、「ドライバーのダウンサイジング」や「開放型のEMPYREANと対をなす、最高峰の密閉型ヘッドホンを作りたい」といったコンセプトも定まっていった。LIRICの完成に向け、時が再び動き出したのだ。

こだわりぬいて生まれた、美しさと着け心地

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