公開日 2023/04/14 06:35
【特別企画】アナロググランプリ2023・ゴールドアワード受賞
トライオード30周年記念の真空管アンプはさすがの“説得力”。ウェスタンエレクトリック300Bの美点も光る
小原由夫
「EVOLUTION 300 30th Anniversary」は、2023年に創業30周年を迎えるトライオードの記念モデルである。ウェスタンエレクトリックの300Bを標準で採用し、初段とドライバー管には、貴重なヴィンテージ球が使用されている。全世界100台限定となるこのアンプに込めたこだわり、そしてサウンドを探った。
管球アンプメーカーのトライオードが2024年に創業30周年を迎える。同社は古典的な回路に依らず、カラーリングや意匠面でもチャレンジングな試みをし、真空管アンプを決してノスタルジックな範疇に止めておくようなことをしなかった希有な国内真空管アンプメーカーである。
そのアニバーサリーを祝してリリースされるのが、復活した米ウェスタンエレクトリック製の直熱三極管WE300Bをシングル駆動とした「EVOLUTION 300 30th Anniversary」だ。生産数は100台限定。既発のMUSASHI等と同様、ネット販売を行なわず、同社が規定する一定条件を満たした販売店「トライオードプレミアムショップ」のみでの取り扱いとなる。
管球アンプメーカーの中には、プリント基板等を使わずに直接部品間をハンダ付けで組み立てているところもあるが、トライオードは積極的にプリント基板を採用している点が興味深いところ。それにはシグナルパスを極力短く配線し、回路規模も小さくすることでノイズ等の抑止効果を狙っている節がある。
これは生産性を考えてのことでもあるし、あえてヴィンテージに固執せず、最新のデバイスを積極的に採用していることからも至極真っ当なアプローチと私は思う。結果的にそれはコストダウンにもつながり、同社が掲げる安定した性能の高品質な製品を広く普く提供したいというポリシーにも沿っているのである。
本機に採用された300Bは、18年から米国ジョージア州で生産され、昨年から日本国内にも輸入販売が開始されたもの。固定バイアス/A2級シングル出力にて12W×2(8Ω)をギャランティーしている。これと組み合わさる初段管12AU7やドライバー管12AX7には、内外のヴィンテージ球を厳選して採用しているとのことだ(銘柄の指定は不可)。
使用パーツについても高品位なものが贅沢に投入されている。出力トランスはオリエントコアの無酸素銅線巻き。日本製AMRG高品質オーディオ用カーボン抵抗器や米国製マルチキャップポリプロピレンコンデンサーなど、定評のあるCR類が厳選された。また300B用の真空管ソケットは、トライオード・オリジナルの金メッキタイプのUX-4が奢られた。電源ケーブルも同社の最高級品で、ディップフォーミング無酸素銅線を採用したTR-PS2である。
EVOLUTIONと命名された所以は、既発モデルと同様の斬新なフィーチャーにある。
具体的には
(1)リモコンでの電源オン/オフだけでなく、音量調整やミュート、入力切替えやディマー調整などに対応、リモコンはアルミ削り出しの高品位なもの
(2)MUSES製高音質電子ボリューム採用
(3)視認性の高い大型ディスプレイを本体前面に装備。音量値と入力ポジションを表示
(4)シャーシ天面のバイアスメータとバイアス調整ボリュームにより、簡単にバイアス調整が可能
といったところである。
また、リアパネルのメインインスイッチの切り替えで、入力セレクターとボリュームをバイパスしたパワーアンプ・モードとなり、前述のディスプレイは「POWER」表示に変わる。入力端子はラインレベル4系統で、スピーカー端子は1系統だ(4〜8Ω対応)。
ブラック光沢仕上げのトランスカバーは見るからに精悍で、ボンネットカバーも付属するが、個人的にはそれを被せず、造形が美しいWE300Bの優美なガラスフォルムを目で直接愛でたいものである。新たに装備された真空管ソケットのイルミネーションを楽しむという点からも、そうした方がいいはずだ。
試聴はCD/SACD、LPを用いた。なお本機はフォノイコライザーアンプを内蔵していないので、アキュフェーズ「C-47」を用意し、テクニクス「SL-1000R」、フェーズメーション「PP-2000」を組み合わせた。
まずはCD/SACDから。ヴォーカルの再生には大層うっとりさせられた。グラマラス過ぎない音像フォルムは、ウォームな温度感と湿り気を伴って立体的に生々しく浮かび上がる。ステレオイメージの雰囲気は、透明というよりも適度な温もりを感じさせる雰囲気だ。
ラトルの『春の祭典』では、奥行き感の再現が確かである。さすがに打楽器のエネルギーを大音量で再現するのは厳しいが、響きが深く沈むあたりは立派。スタッカートでリズムを刻む弦も鋭敏に響かせる。
レコードでは、ジャズコンボの再生におけるソロとアンサンブルの対比、距離感の再現が的確であった。音色自体もナチュラルそのもの。MFSL盤のマゼール指揮/クリーブランド管『レスピーギ/ローマの松』の第一楽章では、オーケストレーションのきらびやかさとグラデーションが素晴らしい。ハーモニーの中の楽器の細かなニュアンスや役割がよく分かる再生音だ。
さすがの説得力を持っているというのが、EVOLUTION 300を聴いた私の率直な印象。オーディオ再生に「優美さ」を求める方ならば、聴いておいて損のないモデルといえる。
2023年トライオードは、お陰様で創業30周年を迎えます。これを記念しまして限定100台のプレミアムモデルを発売します。トライオード=三極管であり、1年前に輸入発売を開始しましたアメリカのウェスタン・エレクトリックの300Bを標準装備し、随所に高品質パーツを投入し妥協のない製品に仕上げました。またコントロール回路は、EVOLUTIONと同じロジック回路を採用しております。
最大の特徴は、300Bの場合A級8W+8Wというのが標準的出力になっていますが、EVOLUTION 300 30th Aniversaryではさらなる可能性を求め、出力トランスをTRV-A300XRの1.5倍のコアを使用し、トライオード初のA級12W+12Wをギャランティーします。今までの300B真空管の概念を超越したサウンドを是非体験してください。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・アナログ vol.78』からの転載です。
チャレンジを続けて30年。WE300Bを採用するトライオードの新たな提案
管球アンプメーカーのトライオードが2024年に創業30周年を迎える。同社は古典的な回路に依らず、カラーリングや意匠面でもチャレンジングな試みをし、真空管アンプを決してノスタルジックな範疇に止めておくようなことをしなかった希有な国内真空管アンプメーカーである。
そのアニバーサリーを祝してリリースされるのが、復活した米ウェスタンエレクトリック製の直熱三極管WE300Bをシングル駆動とした「EVOLUTION 300 30th Anniversary」だ。生産数は100台限定。既発のMUSASHI等と同様、ネット販売を行なわず、同社が規定する一定条件を満たした販売店「トライオードプレミアムショップ」のみでの取り扱いとなる。
管球アンプメーカーの中には、プリント基板等を使わずに直接部品間をハンダ付けで組み立てているところもあるが、トライオードは積極的にプリント基板を採用している点が興味深いところ。それにはシグナルパスを極力短く配線し、回路規模も小さくすることでノイズ等の抑止効果を狙っている節がある。
これは生産性を考えてのことでもあるし、あえてヴィンテージに固執せず、最新のデバイスを積極的に採用していることからも至極真っ当なアプローチと私は思う。結果的にそれはコストダウンにもつながり、同社が掲げる安定した性能の高品質な製品を広く普く提供したいというポリシーにも沿っているのである。
本機に採用された300Bは、18年から米国ジョージア州で生産され、昨年から日本国内にも輸入販売が開始されたもの。固定バイアス/A2級シングル出力にて12W×2(8Ω)をギャランティーしている。これと組み合わさる初段管12AU7やドライバー管12AX7には、内外のヴィンテージ球を厳選して採用しているとのことだ(銘柄の指定は不可)。
使用パーツについても高品位なものが贅沢に投入されている。出力トランスはオリエントコアの無酸素銅線巻き。日本製AMRG高品質オーディオ用カーボン抵抗器や米国製マルチキャップポリプロピレンコンデンサーなど、定評のあるCR類が厳選された。また300B用の真空管ソケットは、トライオード・オリジナルの金メッキタイプのUX-4が奢られた。電源ケーブルも同社の最高級品で、ディップフォーミング無酸素銅線を採用したTR-PS2である。
真空管アンプではありえないさまざまな“革命”を実践
EVOLUTIONと命名された所以は、既発モデルと同様の斬新なフィーチャーにある。
具体的には
(1)リモコンでの電源オン/オフだけでなく、音量調整やミュート、入力切替えやディマー調整などに対応、リモコンはアルミ削り出しの高品位なもの
(2)MUSES製高音質電子ボリューム採用
(3)視認性の高い大型ディスプレイを本体前面に装備。音量値と入力ポジションを表示
(4)シャーシ天面のバイアスメータとバイアス調整ボリュームにより、簡単にバイアス調整が可能
といったところである。
また、リアパネルのメインインスイッチの切り替えで、入力セレクターとボリュームをバイパスしたパワーアンプ・モードとなり、前述のディスプレイは「POWER」表示に変わる。入力端子はラインレベル4系統で、スピーカー端子は1系統だ(4〜8Ω対応)。
ブラック光沢仕上げのトランスカバーは見るからに精悍で、ボンネットカバーも付属するが、個人的にはそれを被せず、造形が美しいWE300Bの優美なガラスフォルムを目で直接愛でたいものである。新たに装備された真空管ソケットのイルミネーションを楽しむという点からも、そうした方がいいはずだ。
適度なぬくもりを感じさせるステレオイメージで、奥行き感の再現も確か
試聴はCD/SACD、LPを用いた。なお本機はフォノイコライザーアンプを内蔵していないので、アキュフェーズ「C-47」を用意し、テクニクス「SL-1000R」、フェーズメーション「PP-2000」を組み合わせた。
まずはCD/SACDから。ヴォーカルの再生には大層うっとりさせられた。グラマラス過ぎない音像フォルムは、ウォームな温度感と湿り気を伴って立体的に生々しく浮かび上がる。ステレオイメージの雰囲気は、透明というよりも適度な温もりを感じさせる雰囲気だ。
ラトルの『春の祭典』では、奥行き感の再現が確かである。さすがに打楽器のエネルギーを大音量で再現するのは厳しいが、響きが深く沈むあたりは立派。スタッカートでリズムを刻む弦も鋭敏に響かせる。
レコードでは、ジャズコンボの再生におけるソロとアンサンブルの対比、距離感の再現が的確であった。音色自体もナチュラルそのもの。MFSL盤のマゼール指揮/クリーブランド管『レスピーギ/ローマの松』の第一楽章では、オーケストレーションのきらびやかさとグラデーションが素晴らしい。ハーモニーの中の楽器の細かなニュアンスや役割がよく分かる再生音だ。
さすがの説得力を持っているというのが、EVOLUTION 300を聴いた私の率直な印象。オーディオ再生に「優美さ」を求める方ならば、聴いておいて損のないモデルといえる。
開発者の声:トライオード代表取締役 山崎順一氏
2023年トライオードは、お陰様で創業30周年を迎えます。これを記念しまして限定100台のプレミアムモデルを発売します。トライオード=三極管であり、1年前に輸入発売を開始しましたアメリカのウェスタン・エレクトリックの300Bを標準装備し、随所に高品質パーツを投入し妥協のない製品に仕上げました。またコントロール回路は、EVOLUTIONと同じロジック回路を採用しております。
最大の特徴は、300Bの場合A級8W+8Wというのが標準的出力になっていますが、EVOLUTION 300 30th Aniversaryではさらなる可能性を求め、出力トランスをTRV-A300XRの1.5倍のコアを使用し、トライオード初のA級12W+12Wをギャランティーします。今までの300B真空管の概念を超越したサウンドを是非体験してください。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・アナログ vol.78』からの転載です。