公開日 2023/10/16 06:30
【特別企画】2筐体式「Gシリーズ」から期待の中堅機
オーディオ・ノート、真空管プリ&フォノEQ「G-700」「GE-7」登場。深みある音色で音楽の喜びに満ちる
林 正儀
日本を代表する真空管アンプブランド、オーディオ・ノート。同社のラインナップに、プリアンプの「G-700」とフォノイコライザーアンプの「GE-7」が加わった。同社のGシリーズの中核となるモデルである。開発陣の情熱がこもった渾身の“実力機”を、同社の新試聴室にて体験した。
オーディオ・ノートの新試聴室で待っていたのは、最新プリアンプの「G-700」とフォノイコライザーの「GE-7」。Gシリーズの中堅クラスとなる2製品だ。同社のプリアンプはこれまでフラグシップの「G-1000」と、スタンダードクラスの「G-70」の2択であったのだが、その間を埋める待望の実力機が新たに登場したことになる。
ペアとなるフォノアンプについても「GE-10」と「GE-1」の間に「GE-7」が加わり、松竹梅のラインナップが揃った。10年前に導入されたスタンダードラインのG-70とGE-1にはじまり、当初予定していた3シリーズがようやく揃った形だ。
まずはプリアンプのG-700から見ていこう。入力5系統、出力3系統のラインプリアンプで、物量的には上位モデルであるG-1000の電源部だけを1/2にしたようなイメージでスマートになった。別筐体の電源を横に並べてもオーディオラックの1段に収まるサイズに仕上げたのが今回の特徴だ。ミドルグレードとはいえG-1000にかなり近い内容で、贅を尽くした仕上がりとなった。
特徴的なポイントをお伝えすると、同社にはもうひとつ「M7 Heritage」という新世代のフォノ付きプリアンプがあるが、そのライン基板をほぼそのまま使い、電源をより強化した形だ。基板についてはまた後ほど。
次にボリューム部分。プリアンプで肝になる音量調整であるが、特筆すべきは新開発の50接点アッテネーターユニットを搭載した点だ。試聴を重ねた結果MELF(メルフ)型の抵抗器を採用し、これを高音質ロータリースイッチにマウントし銅ケースに収めることで、卓越した情報量と静寂感を得たという。ロータリースイッチはG-1000と同じものだ。なお、MELF型の抵抗器は面実装に使われる高性能タイプで、車載や医療用にも使われているとのこと。
回路は従来から採用してきたパラレルカソードフォロアの出力回路(6072真空管)を採用。並列動作によって出力インピーダンスを下げ、低インピーダンスなパワーアンプも容易にドライブできるようにした。
増幅基板はラインアンプ部のモジュール化と、デカップリングコンデンサを左右独立で配置してシグナルループを極小化するという伝統の手法。パーツではオリジナル配線材のSSWに加え、新たに開発した銀箔コンデンサ、ジルコニア真空管ソケット、大容量電源トランスの搭載などが目についた。
銀箔コンデンサには、芯棒の材質をアレンジして、セラミック系のジルコニアを採用したそうだ。これによって振動をコントロール。音質的には酸化アルミナよりも人肌感のある有機的なタッチを目指したという。オープンな方向の音になるような対策だ。
さらに最高峰モノラルパワーアンプ「Kagra2」の開発で得られた、銀パラジウムメッキを施したRCAジャックも採用している。またG-1000と同様にシャント型ヒーター電源回路を採用したことも注目で、これはヒーター回路に制御素子がないためヒーター電圧のゆらぎがなく、余裕のある音場再生が可能。安定したDC6.3V点火が可能というものだ。
フォノイコライザーのGE-7も同じく電源部は別筐体としながら、ラックの一段に収まるサイズなのが好ましい。すっきりした外観で高級アナログ製品の雰囲気を醸し出す感じだ。トップモデルのGE-10がCR型であるのに対して、このGE-7はGE-1と同様にNF型イコライザーを採用している点もポイントである。
このNF型フォノアンプユニットはモジュール化され、真空管6本と大型の銀箔コンデンサを搭載しつつ、コンパクトにまとめあげているのが特徴だ。初段にはSRPP回路(ECC803S)を採用。パラレルカソードフォロア出力回路(6072)により、出力インピーダンスを低くした結果、音源の忠実な再現性を確保している。
デカップリングコンデンサや高純度なシグナルループの形成、トランジスタアンプをはじめとした他社のアンプとの接続も考慮して、プリアンプの入力インピーダンスは20kΩまで対応している。整流管の6CA4やシャント型ヒーター電源など、プリアンプのG-700と共通する技術が多用されているが、中でも注目は負荷抵抗の切り替えによるシンプルなローカットフィルターだ。
これは独自の方式で、通常のサブソニックフィルターよりも緩やかにローカットするもの。音質劣化のない20Hzの3dB落ちだ。プリアンプの入力インピーダンスの違いによって、100k/50k/20kHzの3つのポジションがあり、背面のトグルスイッチにて選択できる。
今回の試聴では上位モデルのG-1000+G-10、新登場のミドルクラスG-700+GE-7、スタンダードなG-70+GE-1の松竹梅の組み合わせを聴き比べる、という贅沢な試聴である。ウィリアムス浩子の盤をそれぞれ再生してみると、当然ながら音質のクオリティや表現が異なる。オーディオ・ノートらしい高い水準を満たしたうえで、スタンダードなG-70+GE-1はややカジュアルな感じ。音楽により親しむ感じの再現性である。
その対極にあるのが最高峰のG-1000+G-10だ。緻密かつ広大な音場と究極の描写力を併せ持つ。どっしりと構えた王様というべきか……。
そしてその世界観をもう少し現実味のある形で楽しむべく登場したのが今回のG-700+GE-7であると聴いた。そのサウンドは極めてオープンかつ有機的で肌ざわりがよく、プレゼンス(実在感)がグングン増す印象だ。ボディ感を持った肉声感にハッとさせられた。歌とギターを濃厚で熟成された深みのある音色で楽しませ、音楽の喜びに満たされた。
クラシックの管弦楽ものはマゼール指揮の「展覧会の絵」などを試聴。金管打が炸裂する “キエフの大門” は圧巻で、テラーク盤のナチュラルなホール感や空間のスケールが清々しく再現された。
エントリーの親しみやすさとハイエンドの美味しいところをうまく吸収した期待の中堅機シリーズである。
(提供:オーディオ・ノート)
本記事は『季刊・アナログ vol.81』からの転載です
「Gシリーズ」の松竹梅3シリーズが出揃う
オーディオ・ノートの新試聴室で待っていたのは、最新プリアンプの「G-700」とフォノイコライザーの「GE-7」。Gシリーズの中堅クラスとなる2製品だ。同社のプリアンプはこれまでフラグシップの「G-1000」と、スタンダードクラスの「G-70」の2択であったのだが、その間を埋める待望の実力機が新たに登場したことになる。
ペアとなるフォノアンプについても「GE-10」と「GE-1」の間に「GE-7」が加わり、松竹梅のラインナップが揃った。10年前に導入されたスタンダードラインのG-70とGE-1にはじまり、当初予定していた3シリーズがようやく揃った形だ。
プリアンプ「G-700」 -電源を強化し贅を尽くした構成を実現
まずはプリアンプのG-700から見ていこう。入力5系統、出力3系統のラインプリアンプで、物量的には上位モデルであるG-1000の電源部だけを1/2にしたようなイメージでスマートになった。別筐体の電源を横に並べてもオーディオラックの1段に収まるサイズに仕上げたのが今回の特徴だ。ミドルグレードとはいえG-1000にかなり近い内容で、贅を尽くした仕上がりとなった。
特徴的なポイントをお伝えすると、同社にはもうひとつ「M7 Heritage」という新世代のフォノ付きプリアンプがあるが、そのライン基板をほぼそのまま使い、電源をより強化した形だ。基板についてはまた後ほど。
次にボリューム部分。プリアンプで肝になる音量調整であるが、特筆すべきは新開発の50接点アッテネーターユニットを搭載した点だ。試聴を重ねた結果MELF(メルフ)型の抵抗器を採用し、これを高音質ロータリースイッチにマウントし銅ケースに収めることで、卓越した情報量と静寂感を得たという。ロータリースイッチはG-1000と同じものだ。なお、MELF型の抵抗器は面実装に使われる高性能タイプで、車載や医療用にも使われているとのこと。
回路は従来から採用してきたパラレルカソードフォロアの出力回路(6072真空管)を採用。並列動作によって出力インピーダンスを下げ、低インピーダンスなパワーアンプも容易にドライブできるようにした。
増幅基板をモジュール化、高音質パーツも多数採用
増幅基板はラインアンプ部のモジュール化と、デカップリングコンデンサを左右独立で配置してシグナルループを極小化するという伝統の手法。パーツではオリジナル配線材のSSWに加え、新たに開発した銀箔コンデンサ、ジルコニア真空管ソケット、大容量電源トランスの搭載などが目についた。
銀箔コンデンサには、芯棒の材質をアレンジして、セラミック系のジルコニアを採用したそうだ。これによって振動をコントロール。音質的には酸化アルミナよりも人肌感のある有機的なタッチを目指したという。オープンな方向の音になるような対策だ。
さらに最高峰モノラルパワーアンプ「Kagra2」の開発で得られた、銀パラジウムメッキを施したRCAジャックも採用している。またG-1000と同様にシャント型ヒーター電源回路を採用したことも注目で、これはヒーター回路に制御素子がないためヒーター電圧のゆらぎがなく、余裕のある音場再生が可能。安定したDC6.3V点火が可能というものだ。
フォノイコライザー「GE-7」 -NF方式を採用し音源を忠実に再現
フォノイコライザーのGE-7も同じく電源部は別筐体としながら、ラックの一段に収まるサイズなのが好ましい。すっきりした外観で高級アナログ製品の雰囲気を醸し出す感じだ。トップモデルのGE-10がCR型であるのに対して、このGE-7はGE-1と同様にNF型イコライザーを採用している点もポイントである。
このNF型フォノアンプユニットはモジュール化され、真空管6本と大型の銀箔コンデンサを搭載しつつ、コンパクトにまとめあげているのが特徴だ。初段にはSRPP回路(ECC803S)を採用。パラレルカソードフォロア出力回路(6072)により、出力インピーダンスを低くした結果、音源の忠実な再現性を確保している。
デカップリングコンデンサや高純度なシグナルループの形成、トランジスタアンプをはじめとした他社のアンプとの接続も考慮して、プリアンプの入力インピーダンスは20kΩまで対応している。整流管の6CA4やシャント型ヒーター電源など、プリアンプのG-700と共通する技術が多用されているが、中でも注目は負荷抵抗の切り替えによるシンプルなローカットフィルターだ。
これは独自の方式で、通常のサブソニックフィルターよりも緩やかにローカットするもの。音質劣化のない20Hzの3dB落ちだ。プリアンプの入力インピーダンスの違いによって、100k/50k/20kHzの3つのポジションがあり、背面のトグルスイッチにて選択できる。
オープンかつ有機的で、音楽の喜びに満たされる
今回の試聴では上位モデルのG-1000+G-10、新登場のミドルクラスG-700+GE-7、スタンダードなG-70+GE-1の松竹梅の組み合わせを聴き比べる、という贅沢な試聴である。ウィリアムス浩子の盤をそれぞれ再生してみると、当然ながら音質のクオリティや表現が異なる。オーディオ・ノートらしい高い水準を満たしたうえで、スタンダードなG-70+GE-1はややカジュアルな感じ。音楽により親しむ感じの再現性である。
その対極にあるのが最高峰のG-1000+G-10だ。緻密かつ広大な音場と究極の描写力を併せ持つ。どっしりと構えた王様というべきか……。
そしてその世界観をもう少し現実味のある形で楽しむべく登場したのが今回のG-700+GE-7であると聴いた。そのサウンドは極めてオープンかつ有機的で肌ざわりがよく、プレゼンス(実在感)がグングン増す印象だ。ボディ感を持った肉声感にハッとさせられた。歌とギターを濃厚で熟成された深みのある音色で楽しませ、音楽の喜びに満たされた。
クラシックの管弦楽ものはマゼール指揮の「展覧会の絵」などを試聴。金管打が炸裂する “キエフの大門” は圧巻で、テラーク盤のナチュラルなホール感や空間のスケールが清々しく再現された。
エントリーの親しみやすさとハイエンドの美味しいところをうまく吸収した期待の中堅機シリーズである。
(提供:オーディオ・ノート)
本記事は『季刊・アナログ vol.81』からの転載です