公開日 2023/11/27 06:30
【特別企画】国内でも人気沸騰中
オーディオ評論家が“推し”のモデルを選んだ! マイベスト POLK AUDIO
岩井 喬/生形三郎/大橋伸太郎/土方久明
現在、国内で3シリーズを展開するPOLK AUDIO(ポークオーディオ)は、それぞれにブックシェルフやフロア型スピーカーなど豊富なラインナップを揃えており、いずれも高いコストパフォーマンスを実現している。今回は、各ラインナップを熟知したオーディオ評論家4名が、それぞれ“推し”のモデルをご紹介。ぜひ、お気に入りのモデルを見つけてほしい。
コストパフォーマンスの高さで人気のポークオーディオのスピーカー達。僕は最もベーシックなMONITOR XTシリーズに属し、ペアで定価4万円を下回る信じられない価格を実現した2ウェイ・ブックシェルフスピーカー、「MXT20」を推薦したい。
音質だけで選定するなら最上位のRESERVEシリーズとなるが、それじゃ面白くないでしょう。キャビネットサイズは191W×330H×280Dmm、重量は5.5kg(1本)。さらに小型のMXT15というモデルもあるけど、MXT20のスピーカーサイズは余裕があり、質感表現や低音域の壮大さを実現する。
コストを左右するキャビネットの表面仕上げは、流石に天然木を使うことができないものの、直球勝負のマットブラック仕上げは視覚的な迫力がある。ドライブユニットに25mmのテリレン・ドーム・トゥイーターと165mmのバイラミネートコンポジットウーファーで、周波数特性は38Hz〜40kHzと高域限界が広いのは嬉しい。
インピーダンス/能率はそれぞれ4Ω/87dbなので、組み合わせるアンプは駆動力の高いD級アンプか大型のトランスを積むトライオード社のような真空管アンプをお薦めしたい。リアに備わるバスレフポートを利用して、壁とスピーカーの距離を調整、トゥイーターとウーファーのスピードを合わせるのがセッティングのコツだ。
その状態で聴くMXT20は、基本性能の高さと音楽的に破綻しないバランスの良さが聴き取れる。価格対比の完成度は抜群に高いが、その理由は「学生でも買える良いスピーカーを作ろう」とした創業当時の理念が現在も受け継がれていること。そして、50年ものノウハウが蓄積されたコストパフォーマンスだ。
その結果が最も表れているのがMXT20だと思っている。ハイトスピーカーなどラインナップも豊富で、ステレオの音楽再生からビジュアル環境まで様々なシチュエーションで愛用してほしい。
ポークオーディオの優れたサウンドを目の当たりにした、その契機となったのが「R200」である。創業50周年を記念した「R200AE」のベースとなっており、シリーズの中でも格別に高い売り上げを誇るという人気モデルだ。
ハイレゾ対応のピナクル・リング・トゥイーターと、独自形状のフォームコア振動板を用いた165mmタービンコーン・ウーファーからなる、シンプルな2ウェイ構成で、中低域〜中域の歪みを取り除く、固有音フィルターを備えた独自のX-Portバスレフポートを備えている。特に気に入った理由としては、高音圧なロックやポピュラー音源でも破綻なく、バランスの良いサウンドを聴かせてくれること。そしてディストーションギターの音色の良さ、表現力の高さに驚かされたことだ。
高域の共振が少ないピナクル・リング・トゥイーターと、キャビネット内に留まる過剰な中域エナジーを解消するX-Portの効果もあり、高音圧な音源も歪みっぽさがなく、スムーズで耳当たり良いサウンドとしてくれる。
クラシックやジャズなど、アコースティックな音源においても、その広がり豊かな空間性と自然な楽器のニュアンスを丁寧にトレース。低域方向の音伸びも深く、サイズ感を超える豊かな鳴りっぷりも魅力の一つだ。ホーンセクションやピアノの響きも澄み切っており、音離れも良い。
しかし、先に述べたようにポピュラーな音源への親和性の高さが本機最大の魅力ともいえ、ディストーションギターを前面に押し出すハードロックとの相性は抜群だ。ギターサウンドの骨格となる中低域の密度感が高く、パワーコードのミュートの力強さ、歯切れの良さ、ねばりのある響きに繋がっている。一方でピッキングは軽快な粒立ちを見せ、重くなりすぎない。コンプレッションをきかせたヴォーカルも詰まり感を解消した滑らかで伸びのある音色として聴かせてくれ、混濁のない見通し良い音場感によって、微細なリヴァーブ表現も鮮明である。
高品質なアコースティック音源と、高音圧なロック&ポップスを気持ち良く聴きたいリスナーにはうってつけの製品だ。
同社を知ったのは、1980年代中頃のことで筆者は20代、いちオーディオファンであった。アメリカのニューウェーブスピーカーの登場は、オーディオ専門誌の誌面をおおいに賑わし、「どんな音を聴かせるのだろう……」と想像を逞しくしたファンは筆者だけでないはずだ。しかし、ほどなく日本への販売から撤退、その音を確かめることはできなかった。
それから30数年が経ち、2020年に輸入が再開された。その間の2012年にはポークオーディオは北米でトップシェアとなり、筆者もオーディオ業界人の端くれのひとりとなっていた。30年越しに晴れて聴くポークオーディオのスピーカー。それは心残りを残したままの音の宿題のような存在だったのである。日本に導入された3シリーズ中、筆者はミドルラインのSignature Eliteシリーズを推す。
スピーカーサイエンスから生まれる高音質と、コストパフォーマンスの両立という同社の社是が端的にあらわれているのがこのラインなのである。内容的にはテリレン・ドーム・トゥイーター、ポリプロピレンにマイカ(雲母)を加えた中低域ユニット、質量共に低音を改善するパワーポート構造をベースモデルのSignatureから引き継ぎ、ダイナミック・バランス・ドライバー設計プロセスでウーファーの動特性を解析し再設計したグレードアップ版である。
他の2シリーズ同様に、シアターへの発展も考慮されている。Signature Eliteシリーズ中抜群のコストパフォーマンスを誇るのは「ES50」だが、ここでは上位の165mmウーファー3基搭載の「ES60」を推したい。
同じフロア型のES50/55のダブルウーファーがスタガー駆動であるのに対し、ES60は3基をカスケードドライブする。パワーポートの魅力に低音の出方が挙げられる。単に量感が豊かなだけでなく、自然で力まず流れ出て聴き手を包み込むことが特徴だが、ES60でそれが端的に発揮されているのだ。音楽の土台についてのポークオーディオの一貫した追求がうかがえるスピーカーだ。
ポークオーディオの魅力はなんといっても、ブランド設立当初からの製品開発理念である、「学生でも買える価格の実現」と「ライヴサウンド」の追求にあるだろう。日本とは桁違いの市場規模であるアメリカでの圧倒的なシェアを武器に、手頃な価格と、その価格レンジを凌駕する高いパフォーマンスを備える。
筆者は中でも、優れた描写力を廉価なプライスで実現するSignature Eliteシリーズとともに、やはり日本上陸モデルとして最上位ラインに位置するRESERVEシリーズにもっとも心惹かれた。
十二分な熟成期間を経たワインだけに冠される「レゼルバ」グレードにちなんで名付けられたシリーズ名通りに、実に味わい深いサウンドが堪能できるからだ。同シリーズは、ピナクル・リングラジエーターやタービンコーン、そしてパワーポートなど、同社ならではのテクノロジーがふんだんに詰まっていることからもその濃密なサウンドを想像することができる。
シリーズの各モデルを横並びで試聴すると、それぞれに持たせられた世界観やキャラクター的な位置付けを如実に感じ取ることができる。中でも「R700」は、ある意味で別格的なインパクトに圧倒されたことを今でも鮮明に覚えている。シリーズ中で唯一、純然たる3ウェイ構成で組み上げられるとともに、その下支えに200mm径のアルミ/ポリプロピレン・コーン製ダブルウーファーを搭載。そこから繰り出される3ウェイならではの音楽解像力と低音が圧巻なのだ。
先述のように、同社が目指すサウンド理念に「ライヴサウンド」があるが、まさにこのスピーカーから繰り出される音は、身体全体で受け止めるライヴの迫力を存分に堪能することができるのである。ポークオーディオが本シリーズで叶えたかった音楽世界の頂を体感した思いであった。
この規模のスピーカーを十全に鳴らすには、それなりのエアボリュームを持ったリスニング環境を用意するのが望ましいだろう。その上で、やはりロックやローエンドが濃密豊富なポップスやエレクトロ・ポップなどの音楽ソースを快活に鳴らして楽しみたいモデルである。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です
基本性能が高く破綻せずバランス良く聴き取れる(土方久明)
コストパフォーマンスの高さで人気のポークオーディオのスピーカー達。僕は最もベーシックなMONITOR XTシリーズに属し、ペアで定価4万円を下回る信じられない価格を実現した2ウェイ・ブックシェルフスピーカー、「MXT20」を推薦したい。
音質だけで選定するなら最上位のRESERVEシリーズとなるが、それじゃ面白くないでしょう。キャビネットサイズは191W×330H×280Dmm、重量は5.5kg(1本)。さらに小型のMXT15というモデルもあるけど、MXT20のスピーカーサイズは余裕があり、質感表現や低音域の壮大さを実現する。
コストを左右するキャビネットの表面仕上げは、流石に天然木を使うことができないものの、直球勝負のマットブラック仕上げは視覚的な迫力がある。ドライブユニットに25mmのテリレン・ドーム・トゥイーターと165mmのバイラミネートコンポジットウーファーで、周波数特性は38Hz〜40kHzと高域限界が広いのは嬉しい。
インピーダンス/能率はそれぞれ4Ω/87dbなので、組み合わせるアンプは駆動力の高いD級アンプか大型のトランスを積むトライオード社のような真空管アンプをお薦めしたい。リアに備わるバスレフポートを利用して、壁とスピーカーの距離を調整、トゥイーターとウーファーのスピードを合わせるのがセッティングのコツだ。
その状態で聴くMXT20は、基本性能の高さと音楽的に破綻しないバランスの良さが聴き取れる。価格対比の完成度は抜群に高いが、その理由は「学生でも買える良いスピーカーを作ろう」とした創業当時の理念が現在も受け継がれていること。そして、50年ものノウハウが蓄積されたコストパフォーマンスだ。
その結果が最も表れているのがMXT20だと思っている。ハイトスピーカーなどラインナップも豊富で、ステレオの音楽再生からビジュアル環境まで様々なシチュエーションで愛用してほしい。
高音圧なロックでも破綻がなくポピュラー音源への親和性が高い(岩井 喬)
ポークオーディオの優れたサウンドを目の当たりにした、その契機となったのが「R200」である。創業50周年を記念した「R200AE」のベースとなっており、シリーズの中でも格別に高い売り上げを誇るという人気モデルだ。
ハイレゾ対応のピナクル・リング・トゥイーターと、独自形状のフォームコア振動板を用いた165mmタービンコーン・ウーファーからなる、シンプルな2ウェイ構成で、中低域〜中域の歪みを取り除く、固有音フィルターを備えた独自のX-Portバスレフポートを備えている。特に気に入った理由としては、高音圧なロックやポピュラー音源でも破綻なく、バランスの良いサウンドを聴かせてくれること。そしてディストーションギターの音色の良さ、表現力の高さに驚かされたことだ。
高域の共振が少ないピナクル・リング・トゥイーターと、キャビネット内に留まる過剰な中域エナジーを解消するX-Portの効果もあり、高音圧な音源も歪みっぽさがなく、スムーズで耳当たり良いサウンドとしてくれる。
クラシックやジャズなど、アコースティックな音源においても、その広がり豊かな空間性と自然な楽器のニュアンスを丁寧にトレース。低域方向の音伸びも深く、サイズ感を超える豊かな鳴りっぷりも魅力の一つだ。ホーンセクションやピアノの響きも澄み切っており、音離れも良い。
しかし、先に述べたようにポピュラーな音源への親和性の高さが本機最大の魅力ともいえ、ディストーションギターを前面に押し出すハードロックとの相性は抜群だ。ギターサウンドの骨格となる中低域の密度感が高く、パワーコードのミュートの力強さ、歯切れの良さ、ねばりのある響きに繋がっている。一方でピッキングは軽快な粒立ちを見せ、重くなりすぎない。コンプレッションをきかせたヴォーカルも詰まり感を解消した滑らかで伸びのある音色として聴かせてくれ、混濁のない見通し良い音場感によって、微細なリヴァーブ表現も鮮明である。
高品質なアコースティック音源と、高音圧なロック&ポップスを気持ち良く聴きたいリスナーにはうってつけの製品だ。
単に量感が豊かなだけでなく自然で力まず聴き手を包み込む(大橋伸太郎)
同社を知ったのは、1980年代中頃のことで筆者は20代、いちオーディオファンであった。アメリカのニューウェーブスピーカーの登場は、オーディオ専門誌の誌面をおおいに賑わし、「どんな音を聴かせるのだろう……」と想像を逞しくしたファンは筆者だけでないはずだ。しかし、ほどなく日本への販売から撤退、その音を確かめることはできなかった。
それから30数年が経ち、2020年に輸入が再開された。その間の2012年にはポークオーディオは北米でトップシェアとなり、筆者もオーディオ業界人の端くれのひとりとなっていた。30年越しに晴れて聴くポークオーディオのスピーカー。それは心残りを残したままの音の宿題のような存在だったのである。日本に導入された3シリーズ中、筆者はミドルラインのSignature Eliteシリーズを推す。
スピーカーサイエンスから生まれる高音質と、コストパフォーマンスの両立という同社の社是が端的にあらわれているのがこのラインなのである。内容的にはテリレン・ドーム・トゥイーター、ポリプロピレンにマイカ(雲母)を加えた中低域ユニット、質量共に低音を改善するパワーポート構造をベースモデルのSignatureから引き継ぎ、ダイナミック・バランス・ドライバー設計プロセスでウーファーの動特性を解析し再設計したグレードアップ版である。
他の2シリーズ同様に、シアターへの発展も考慮されている。Signature Eliteシリーズ中抜群のコストパフォーマンスを誇るのは「ES50」だが、ここでは上位の165mmウーファー3基搭載の「ES60」を推したい。
同じフロア型のES50/55のダブルウーファーがスタガー駆動であるのに対し、ES60は3基をカスケードドライブする。パワーポートの魅力に低音の出方が挙げられる。単に量感が豊かなだけでなく、自然で力まず流れ出て聴き手を包み込むことが特徴だが、ES60でそれが端的に発揮されているのだ。音楽の土台についてのポークオーディオの一貫した追求がうかがえるスピーカーだ。
身体全体で受け止めるライヴの迫力を存分に堪能することができる(生形三郎)
ポークオーディオの魅力はなんといっても、ブランド設立当初からの製品開発理念である、「学生でも買える価格の実現」と「ライヴサウンド」の追求にあるだろう。日本とは桁違いの市場規模であるアメリカでの圧倒的なシェアを武器に、手頃な価格と、その価格レンジを凌駕する高いパフォーマンスを備える。
筆者は中でも、優れた描写力を廉価なプライスで実現するSignature Eliteシリーズとともに、やはり日本上陸モデルとして最上位ラインに位置するRESERVEシリーズにもっとも心惹かれた。
十二分な熟成期間を経たワインだけに冠される「レゼルバ」グレードにちなんで名付けられたシリーズ名通りに、実に味わい深いサウンドが堪能できるからだ。同シリーズは、ピナクル・リングラジエーターやタービンコーン、そしてパワーポートなど、同社ならではのテクノロジーがふんだんに詰まっていることからもその濃密なサウンドを想像することができる。
シリーズの各モデルを横並びで試聴すると、それぞれに持たせられた世界観やキャラクター的な位置付けを如実に感じ取ることができる。中でも「R700」は、ある意味で別格的なインパクトに圧倒されたことを今でも鮮明に覚えている。シリーズ中で唯一、純然たる3ウェイ構成で組み上げられるとともに、その下支えに200mm径のアルミ/ポリプロピレン・コーン製ダブルウーファーを搭載。そこから繰り出される3ウェイならではの音楽解像力と低音が圧巻なのだ。
先述のように、同社が目指すサウンド理念に「ライヴサウンド」があるが、まさにこのスピーカーから繰り出される音は、身体全体で受け止めるライヴの迫力を存分に堪能することができるのである。ポークオーディオが本シリーズで叶えたかった音楽世界の頂を体感した思いであった。
この規模のスピーカーを十全に鳴らすには、それなりのエアボリュームを持ったリスニング環境を用意するのが望ましいだろう。その上で、やはりロックやローエンドが濃密豊富なポップスやエレクトロ・ポップなどの音楽ソースを快活に鳴らして楽しみたいモデルである。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です
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