公開日 2023/12/13 06:30
ホームシアター級の映像再現能力
この画質、“ゲーミング”だけにはもったいない。BenQ「X500i」はオールマイティなプロジェクターだ
折原一也
BenQのゲーミングプロジェクターシリーズ “Gaming Projector X” の新モデルが、東京ゲームショウ2023で発表された。新たに登場するのはすべて4K対応の「X3100i」「X500i」「X300G」の3機種だ。
振り返ってみれば、BenQが “ゲーミングプロジェクター” というジャンルを2020年に国内展開し始めた際、高輝度と低遅延を打ち出したプロジェクターは、AVファンからはユニークなコンセプトとして捉えられていた。
しかし、そんな雰囲気は昨年BenQが投入したGaming Projector X Series第1弾「X3000i」で一変する。BenQはX3000iを “高輝度&低遅延” というゲーミング向けの性能のみならず、CinematicColorの色再現、そして4Kプロジェクターに相応しい描写力を備えた機種として送り出す。ゲーミングプロジェクターのX3000iが、同社のホームプロジェクターとしても上位モデルとなっていた。
そして今回、新たにシリーズに加わったX3100i、X500i、X300Gは、それぞれ利用シーン別に輝度スペックや設置に関わる焦点距離やズーム、台形補正の機能などで差別化されている。
本記事レビューするX500iは、そのなかでも「スペースの限られた空間でも4Kの大画面を映し出せる短焦点の設置性と高輝度をカバーしたモデル」で、ミドルクラスのバランス型のはずなのだが……今回、音元出版の視聴室で実機をテストしてみると、「ゲーミングだけではなく、ホームシアターに導入してもいいのでは!?」と思える画質性能を備えていることが分かった。
「X500i」公式サイト/Amazon/楽天
X500iは4K LED光源採用の短焦点ゲーミングプロジェクターだ。本体は366×118×244mmという一般的なプロジェクターらしい横長スタイル。外周部はホワイトで前面のみブラック、そしてレンズ周りにオレンジの縁取りをプラスしたデザインは、ややゲーミング感が加えられていて格好良い。
早速セットアップを済ませたX500iの電源を入れると、ひと目見て分かるほど明るくクッキリとした映像でAndroid TVのホーム画面が映し出される。本機は型番の “i” が意味するネット接続スティック一体型モデルなので、Netflixを含むサブスク動画配信もワンボディでアクセス可能だ。
プロジェクターとしての性能面を紹介しておくと、4K(3840×2160)表示対応の0.65インチ単板式DLPデバイスに、4LED方式による2,200ANSIルーメン。高輝度はゲーミングのみならずホームシアターにも通底するテーマであり、映像を投写するプロジェクターにとっては “部屋の照明を付けたまま” の利用シーンにも直結するスペックだ。
そして、100インチを最短1.5メートルで投写可能という短焦点とともに、1.2倍光学ズームを搭載しているところも珍しい。
さらに細かく見ると、X500iが “リビングやプライベートルームで多方面の大画面エンタメを楽しむ” ために、節々にゲーミングとホームシアターのガチスペックを備えていることが垣間見える。
ゲーミング向けには応答速度4.16msの低遅延で、RPGモード、SPG(スポーツゲーム)モード、FPSモードも搭載。独自の「SettingXchange」によって、画質設定はゲームタイトルごとに記憶、さらに仲間と共有、インポートする機能まで用意している。
そしてホームシアター向けには鮮やかな色再現を目指す「CinematicColor技術」により、高輝度とあわせてRec.709カバー率95%という色域再現も備える。
本体に5W×2のスピーカーを搭載するとともに、2系統あるHDMI端子のうち1系統はARC接続対応、S/PDIFおよびアナログ音声出力、USB-C DP接続対応と接続性も網羅する。
実際にX500iの画質をチェックしてみた。まずは、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。主人公ピーターがドクター・ストレンジの屋敷を訪ねるシーンでは、屋敷の部屋が雪に覆われているが、その白の中の階調感、そしてピーターとストレンジの肌色の再現性も丁寧かつ4K/HDRらしい解像感を維持。地下室に向かう下りでは暗がりの階調まで安定していて、4LED光源による画質性能もよく分かる。さらに、魔術の暴走によるマルチバースの世界と繋がるシーンは、背景の暗がりと特殊効果のコントラストをHDRを駆使して再現する。プロジェクターでも “眩しさ” を再現する性能が徹底している。
Netflixで配信中の『ワンピース』(実写版)では、道化師姿のバギーの、暗がりのなかで動くビビッドな色を精細に再現。画面全体のフォーカスも極めて安定しているところからも、 “カジュアルなプロジェクター” の粋を超えた画質性能であることが分かる。
またNetflixで配信されているアニメ『葬送のフリーレン』はSDR/HD画質だが、X500iの描写の丁寧さ、フラットな画質チューニング、持ち前の輝度のお陰で、描写の安定感がとても良い。このアニメを超大画面スクリーンへと映し出す体験は、他の大画面デバイスではなかなか得られないものだ。
ここまでの視聴で気づいたポイントとして、本体内蔵の5W×2スピーカーのチューニングがとても優秀だ。技術的にはCinematicSound技術とMAXXAudio DPSによる動的なサウンド調整によるもので、スクリーンの位置から自然と空間が広がるため、映像と音が自然にマッチ。セリフも適度にクリアで聴きやすく、エンタメをオールイワンで扱えるプロジェクターとしても良く作り込まれている。
PS5で『エルデンリング』をプレイしてみると、X500iの実力がはっきりと分かる。本作はとにかく画面内に暗がりの多いゲームだが、最序盤の漂着墓地では暗闇を黒浮きさせることなく再現した上で、黒色を沈めながら階調感もキープ。コントラストの高さのみに振り切ったわけではなく、正確さも重視した機種であるということがポイントだ。
ゲーミングでは、ゲームプレイを有利に進める上で “暗がりを明るくして見たい” という需要があることも事実。ゲームモードでは、HDR10の映像信号に対しても、HDR-RPG/HDR-SPG/HDR-FPSと切り替えることができる。これらは意味合いとしてはプリセットに近く、サウンドモードも連動している。例えば『エルデンリング』では、画質としては映画と同じく忠実指向のHDR-RPGを選んだ上で、必要に応じてピクチャーモードのなかにあるディテール調整、ブラックイコライザーを調整すると良い。
FPSの『エーペックスレジェンズ』では、やはり超大画面の見通しの良さと色バランスの良さが冴える。プレイにおいても映像の遅延を感じることなく快適に楽しめることを確認できた。FPSプレイ用のセッティングとしては特にサウンドをFPSに切り替えることが重要で(PS5ではHDR-FPSの設定を利用可能)、これにより低音をカットして足音の位置と、音の定位をはっきりと認識しやすくする。本格的なゲームプレイ向けに活用して欲しい機能だ。
またNintendo Switchで『ピクミン4』もプレイ。HD画質でありガチプレイするようなゲームタイトルでもないのだが……超大画面で、ピクミンの可愛らしい独特の世界観の映像が広がるところは、ファミリーで遊ぶような用途にいい。また『ピクミン4』のアコースティックな癒し系の音楽も空間にゆったりと広がり心地よい。これ以外にも、オープンワールド系タイトルとの相性の良さが窺えた。なお、こちらもプレイにあたって遅延が気にならなかったことも報告しておこう。
今回X500iによるホームシアターとしての動画視聴、ゲームプレイを体験して分かったことは、そのオールマイティさ。4K画質に4LED方式による2,200ANSIルーメンの高輝度を備え、さらに色再現性にも正確さにも優れているので、忠実な映像再現はもちろん、好みにカスタマイズした画質にも自由に振り切れる。短焦点かつ光学ズーム対応という設置性もカバーしているところはさすが。
リビングやプライベートルームで超大画面を揃えたい人には、X500iは真っ先に選ぶべき1台だ。
「X500i」公式サイト/Amazon/楽天
シリーズのフラグシップ「X3100i」にも注目
Gaming Projector Xが気になった方は、シリーズにおけるフラグシップモデル「X3100i」にも注目だ。4K/4LEDの仕様はX500iと同じだが、輝度は3,300ANSIルーメンとさらなる明るさを実現。色域はDCI-P3を100%カバーする。短焦点タイプではないものの、垂直レンズシフト機能を備え設置のしやすさも確保している。
加えて、ゲームモードに「レーシングモード」を搭載。こちらは赤色・黄色を鮮明に表現するとともに、エンジン音や歓声を臨場感あるサウンドで再生するモードとなっている。X3100iもAndroid OS内蔵で、本体のみで映像配信サービスを再生できる。エンタメコンテンツを高品質に大画面で楽しむなら、こちらも選択肢に入れておきたい。
「X3100i」公式サイト/Amazon/楽天
(提供:ベンキュージャパン株式会社)
振り返ってみれば、BenQが “ゲーミングプロジェクター” というジャンルを2020年に国内展開し始めた際、高輝度と低遅延を打ち出したプロジェクターは、AVファンからはユニークなコンセプトとして捉えられていた。
しかし、そんな雰囲気は昨年BenQが投入したGaming Projector X Series第1弾「X3000i」で一変する。BenQはX3000iを “高輝度&低遅延” というゲーミング向けの性能のみならず、CinematicColorの色再現、そして4Kプロジェクターに相応しい描写力を備えた機種として送り出す。ゲーミングプロジェクターのX3000iが、同社のホームプロジェクターとしても上位モデルとなっていた。
そして今回、新たにシリーズに加わったX3100i、X500i、X300Gは、それぞれ利用シーン別に輝度スペックや設置に関わる焦点距離やズーム、台形補正の機能などで差別化されている。
本記事レビューするX500iは、そのなかでも「スペースの限られた空間でも4Kの大画面を映し出せる短焦点の設置性と高輝度をカバーしたモデル」で、ミドルクラスのバランス型のはずなのだが……今回、音元出版の視聴室で実機をテストしてみると、「ゲーミングだけではなく、ホームシアターに導入してもいいのでは!?」と思える画質性能を備えていることが分かった。
X500iの機能性:今どきの高画質の必須条件、4K/高輝度を満たす強力スペック。設置性も優秀
X500iは4K LED光源採用の短焦点ゲーミングプロジェクターだ。本体は366×118×244mmという一般的なプロジェクターらしい横長スタイル。外周部はホワイトで前面のみブラック、そしてレンズ周りにオレンジの縁取りをプラスしたデザインは、ややゲーミング感が加えられていて格好良い。
早速セットアップを済ませたX500iの電源を入れると、ひと目見て分かるほど明るくクッキリとした映像でAndroid TVのホーム画面が映し出される。本機は型番の “i” が意味するネット接続スティック一体型モデルなので、Netflixを含むサブスク動画配信もワンボディでアクセス可能だ。
プロジェクターとしての性能面を紹介しておくと、4K(3840×2160)表示対応の0.65インチ単板式DLPデバイスに、4LED方式による2,200ANSIルーメン。高輝度はゲーミングのみならずホームシアターにも通底するテーマであり、映像を投写するプロジェクターにとっては “部屋の照明を付けたまま” の利用シーンにも直結するスペックだ。
そして、100インチを最短1.5メートルで投写可能という短焦点とともに、1.2倍光学ズームを搭載しているところも珍しい。
さらに細かく見ると、X500iが “リビングやプライベートルームで多方面の大画面エンタメを楽しむ” ために、節々にゲーミングとホームシアターのガチスペックを備えていることが垣間見える。
ゲーミング向けには応答速度4.16msの低遅延で、RPGモード、SPG(スポーツゲーム)モード、FPSモードも搭載。独自の「SettingXchange」によって、画質設定はゲームタイトルごとに記憶、さらに仲間と共有、インポートする機能まで用意している。
そしてホームシアター向けには鮮やかな色再現を目指す「CinematicColor技術」により、高輝度とあわせてRec.709カバー率95%という色域再現も備える。
本体に5W×2のスピーカーを搭載するとともに、2系統あるHDMI端子のうち1系統はARC接続対応、S/PDIFおよびアナログ音声出力、USB-C DP接続対応と接続性も網羅する。
X500iの画質:4Kらしい描写力。コントラストも色再現もホームシアター級
実際にX500iの画質をチェックしてみた。まずは、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。主人公ピーターがドクター・ストレンジの屋敷を訪ねるシーンでは、屋敷の部屋が雪に覆われているが、その白の中の階調感、そしてピーターとストレンジの肌色の再現性も丁寧かつ4K/HDRらしい解像感を維持。地下室に向かう下りでは暗がりの階調まで安定していて、4LED光源による画質性能もよく分かる。さらに、魔術の暴走によるマルチバースの世界と繋がるシーンは、背景の暗がりと特殊効果のコントラストをHDRを駆使して再現する。プロジェクターでも “眩しさ” を再現する性能が徹底している。
Netflixで配信中の『ワンピース』(実写版)では、道化師姿のバギーの、暗がりのなかで動くビビッドな色を精細に再現。画面全体のフォーカスも極めて安定しているところからも、 “カジュアルなプロジェクター” の粋を超えた画質性能であることが分かる。
またNetflixで配信されているアニメ『葬送のフリーレン』はSDR/HD画質だが、X500iの描写の丁寧さ、フラットな画質チューニング、持ち前の輝度のお陰で、描写の安定感がとても良い。このアニメを超大画面スクリーンへと映し出す体験は、他の大画面デバイスではなかなか得られないものだ。
ここまでの視聴で気づいたポイントとして、本体内蔵の5W×2スピーカーのチューニングがとても優秀だ。技術的にはCinematicSound技術とMAXXAudio DPSによる動的なサウンド調整によるもので、スクリーンの位置から自然と空間が広がるため、映像と音が自然にマッチ。セリフも適度にクリアで聴きやすく、エンタメをオールイワンで扱えるプロジェクターとしても良く作り込まれている。
X500iのゲーム体験:安定した描写力とカスタマイズ機能、低遅延性能も十分
PS5で『エルデンリング』をプレイしてみると、X500iの実力がはっきりと分かる。本作はとにかく画面内に暗がりの多いゲームだが、最序盤の漂着墓地では暗闇を黒浮きさせることなく再現した上で、黒色を沈めながら階調感もキープ。コントラストの高さのみに振り切ったわけではなく、正確さも重視した機種であるということがポイントだ。
ゲーミングでは、ゲームプレイを有利に進める上で “暗がりを明るくして見たい” という需要があることも事実。ゲームモードでは、HDR10の映像信号に対しても、HDR-RPG/HDR-SPG/HDR-FPSと切り替えることができる。これらは意味合いとしてはプリセットに近く、サウンドモードも連動している。例えば『エルデンリング』では、画質としては映画と同じく忠実指向のHDR-RPGを選んだ上で、必要に応じてピクチャーモードのなかにあるディテール調整、ブラックイコライザーを調整すると良い。
FPSの『エーペックスレジェンズ』では、やはり超大画面の見通しの良さと色バランスの良さが冴える。プレイにおいても映像の遅延を感じることなく快適に楽しめることを確認できた。FPSプレイ用のセッティングとしては特にサウンドをFPSに切り替えることが重要で(PS5ではHDR-FPSの設定を利用可能)、これにより低音をカットして足音の位置と、音の定位をはっきりと認識しやすくする。本格的なゲームプレイ向けに活用して欲しい機能だ。
またNintendo Switchで『ピクミン4』もプレイ。HD画質でありガチプレイするようなゲームタイトルでもないのだが……超大画面で、ピクミンの可愛らしい独特の世界観の映像が広がるところは、ファミリーで遊ぶような用途にいい。また『ピクミン4』のアコースティックな癒し系の音楽も空間にゆったりと広がり心地よい。これ以外にも、オープンワールド系タイトルとの相性の良さが窺えた。なお、こちらもプレイにあたって遅延が気にならなかったことも報告しておこう。
X500iの総括:オールマイティにハイスペックな1台
今回X500iによるホームシアターとしての動画視聴、ゲームプレイを体験して分かったことは、そのオールマイティさ。4K画質に4LED方式による2,200ANSIルーメンの高輝度を備え、さらに色再現性にも正確さにも優れているので、忠実な映像再現はもちろん、好みにカスタマイズした画質にも自由に振り切れる。短焦点かつ光学ズーム対応という設置性もカバーしているところはさすが。
リビングやプライベートルームで超大画面を揃えたい人には、X500iは真っ先に選ぶべき1台だ。
Gaming Projector Xが気になった方は、シリーズにおけるフラグシップモデル「X3100i」にも注目だ。4K/4LEDの仕様はX500iと同じだが、輝度は3,300ANSIルーメンとさらなる明るさを実現。色域はDCI-P3を100%カバーする。短焦点タイプではないものの、垂直レンズシフト機能を備え設置のしやすさも確保している。
加えて、ゲームモードに「レーシングモード」を搭載。こちらは赤色・黄色を鮮明に表現するとともに、エンジン音や歓声を臨場感あるサウンドで再生するモードとなっている。X3100iもAndroid OS内蔵で、本体のみで映像配信サービスを再生できる。エンタメコンテンツを高品質に大画面で楽しむなら、こちらも選択肢に入れておきたい。
(提供:ベンキュージャパン株式会社)
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