公開日 2024/01/25 06:30
ウーファーも改良した大規模なブラッシュアップ
熟練された「JET6」搭載のELAC「ELEGANT BS 312.2」、25年を超える歴史を刻み一瞬で魅了する再生音
山之内 正
世代交代を重ねながら価値を高め、時代を超えて愛され続ける製品。オーディオ機器にもそんな息の長い名機が存在する。第一号機から25年を超える歴史を刻んできたELAC(エラック)の「300シリーズ」もそのひとつだ。
なかでも「CL310JET」から「BS312」に至るモデル群は特別な存在で、小型スピーカーの常識を覆すワイドレンジで緻密な再生音は現代のリスナーをも一瞬で魅了する。その最新世代となるブックシェルフ型スピーカー「ELEGANT BS312.2」が登場したので、早速聴いてみることにした。
ELEGANT BS312.2という型名から前作の改良モデルと想像できるが、“.2”という控えめな型名変更とは裏腹に今回のモデルチェンジはキャビネット以外をほぼ一新する大規模なもので、特に高域を受け持つJETトゥイーターに最新世代の「JET6」を投入していることに重要な意味がある。
JETはハイルドライバーの進化形のひとつで、近年急速に採用例が増えているAMT(エア・モーション・トランスフォーマー)に分類されるが、エラックは従来から独自設計のドライバーを自社工場で生産してきた。今回も熟練を要求するハンドメイドで生産されるが、ノウハウを積み重ねることで以前に比べると生産効率は向上しているという。このJET6は「VELAシリーズ」など、今後登場する他のシリーズにも導入が決まっている。
アルミ電極を配置したカプトンをプリーツ状に折りたたむ構造はどの世代も共通だが、電極の形状や折りたたむ幅を最適化することで振動板面積を確保しつつ歪や共振を抑える工夫を凝らしていることが新しい。具体的には2kHzや12kHzの高調波歪を大幅に低減し、さらに30kHz以上の超高域でのリニアリティも向上しているという。基音と倍音それぞれ重要な音域で改善なので音色やトランジェントの改善が期待できそうだ。
折りたたみ方法が複雑になったことでフレームの開口部から見える振動板形状が前世代の「JET5」とは微妙に異なり、開口パターンの数も5個に増えている。振動板の構造が変われば放射特性も変化する。最適な特性を得るために何度も試作を繰り返してこの形状に追い込んだようだ。
11.5cm口径の「AS XRコーンウーファー」にも小規模ながら変更を加えており、レスポンス改善のために磁気回路を強化しつつ、耐入力改善を狙ってボイスコイル径を拡大したとされる。また、前作のBS312でシングルワイヤリングに変更していた入力端子を今回は再びバイワイヤリング仕様に戻していることにも注目しておきたい。
グリルがオプションになってメタルの「METAL MESH GRILLE」とファブリックの「FABRIC GRILLE BS 312」という選択肢を提供したり、ラックや家具に載せる用途を想定した専用ベース「BASE BS 312.2」やスピーカースタンド「LS 60」を用意するなど、アクセサリー類のラインナップを充実させたことも新しいニュース。特にファブリックとアルミを組み合わせた新設計のグリルは仕上げが美しく、ELEGANT BS312.2の精密な仕上げと見事に調和する。
キャビネット形状を踏襲しているので、これらのアクセサリーはBS310やBS312など従来機にも使用できるという。既存モデルのオーナーにもグレードアップのチャンスを提供するのは持続性を重視するドイツのメーカーらしいアプローチだと思う。
なかでも「CL310JET」から「BS312」に至るモデル群は特別な存在で、小型スピーカーの常識を覆すワイドレンジで緻密な再生音は現代のリスナーをも一瞬で魅了する。その最新世代となるブックシェルフ型スピーカー「ELEGANT BS312.2」が登場したので、早速聴いてみることにした。
■JET6で高調波歪の低減とリニアリティの向上を実現
ELEGANT BS312.2という型名から前作の改良モデルと想像できるが、“.2”という控えめな型名変更とは裏腹に今回のモデルチェンジはキャビネット以外をほぼ一新する大規模なもので、特に高域を受け持つJETトゥイーターに最新世代の「JET6」を投入していることに重要な意味がある。
JETはハイルドライバーの進化形のひとつで、近年急速に採用例が増えているAMT(エア・モーション・トランスフォーマー)に分類されるが、エラックは従来から独自設計のドライバーを自社工場で生産してきた。今回も熟練を要求するハンドメイドで生産されるが、ノウハウを積み重ねることで以前に比べると生産効率は向上しているという。このJET6は「VELAシリーズ」など、今後登場する他のシリーズにも導入が決まっている。
アルミ電極を配置したカプトンをプリーツ状に折りたたむ構造はどの世代も共通だが、電極の形状や折りたたむ幅を最適化することで振動板面積を確保しつつ歪や共振を抑える工夫を凝らしていることが新しい。具体的には2kHzや12kHzの高調波歪を大幅に低減し、さらに30kHz以上の超高域でのリニアリティも向上しているという。基音と倍音それぞれ重要な音域で改善なので音色やトランジェントの改善が期待できそうだ。
折りたたみ方法が複雑になったことでフレームの開口部から見える振動板形状が前世代の「JET5」とは微妙に異なり、開口パターンの数も5個に増えている。振動板の構造が変われば放射特性も変化する。最適な特性を得るために何度も試作を繰り返してこの形状に追い込んだようだ。
■ウーファーのボイルコイルから端子も改良
11.5cm口径の「AS XRコーンウーファー」にも小規模ながら変更を加えており、レスポンス改善のために磁気回路を強化しつつ、耐入力改善を狙ってボイスコイル径を拡大したとされる。また、前作のBS312でシングルワイヤリングに変更していた入力端子を今回は再びバイワイヤリング仕様に戻していることにも注目しておきたい。
グリルがオプションになってメタルの「METAL MESH GRILLE」とファブリックの「FABRIC GRILLE BS 312」という選択肢を提供したり、ラックや家具に載せる用途を想定した専用ベース「BASE BS 312.2」やスピーカースタンド「LS 60」を用意するなど、アクセサリー類のラインナップを充実させたことも新しいニュース。特にファブリックとアルミを組み合わせた新設計のグリルは仕上げが美しく、ELEGANT BS312.2の精密な仕上げと見事に調和する。
キャビネット形状を踏襲しているので、これらのアクセサリーはBS310やBS312など従来機にも使用できるという。既存モデルのオーナーにもグレードアップのチャンスを提供するのは持続性を重視するドイツのメーカーらしいアプローチだと思う。