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公開日 2024/02/14 06:30
オーディオテクニカ「AT-ER500」レビュー

もうイヤホンを落とさない!体温で変化するイヤーピースでフィット感が劇的改善した

編集部:松永達矢
ケーブルなしで接続できる完全ワイヤレスイヤホンは、その使いやすさで人気を集めている。ただ一方で、「落としてしまう」という声をよく耳にする。ケーブルがないためと思われがちだが、実は自身にあった装着ができていないことが理由のことも多い。本稿ではそんな落下トラブルを解決、しかも付け心地もアップするアイテムを紹介したい。

オーディオテクニカ「AT-ER500」(2ペア4個入で2,970円/税込)

■今や落とし物の代表格!完全ワイヤレスイヤホンを落とさないためにはどうすれば?



目覚ましい技術の進歩で日に日にサイズを小さくしていく完全ワイヤレスイヤホンだが、それだけに耳からポロリと「落としてしまう」トラブルが増えてきた。テレビのニュース番組などでも「鉄道会社の忘れ物センターには月100個ものワイヤレスイヤホンが届けられている」と報じられるくらいだ。

耳につけた完全ワイヤレスイヤホンがなぜ落ちてしまうのか、その理由の一つとして考えられるのが「間違った付け方をしている」こと。完全ワイヤレスイヤホンはだいぶ普及したが、街なかで正しくない装着方法をしている人とすれ違うケースは、意外なほど多い。

間違った付け方の一例としては

◯ステム(うどん) 部分が「すごい真横」
◯イヤーウィングが耳に収まっていない
◯耳穴にしっかり入っておらず、筐体が耳から浮き出ている

ステム(うどん) 部分が「すごい真横」の例。電車やバスなど街中でよく見かける

などが挙げられ、これらは実際に目にしたことがある。しっかりとフィットしていないことには、ふとした拍子に落ちてしまう可能性が高まる。モデルごとに形状は異なるため、正しい付け方や角度も一律ではないが、どのモデルでも「自然な付け心地が得られる」=「付けていて違和感がない」付け方があるものだ。また正しい付け方をしていると、見た目もキレイに収まるようになる。説明書や公式サイトの装着写真などを参考にしながら、一度ちゃんと装着できているか鏡でチェックしてみてほしい。

さて、正しい付け方ができているはずなのに、どうもフィットしていないと感じることがあるかもしれない。そうするとイヤホンをつい触ってしまい、また落ちる原因となってしまう。さらに、しっかりフィットしていないのであれば、イヤホンそのものがポテンシャルを発揮できていないはずだ。それだけ、「装着感」はイヤホンにとって大事な要素となる。

そんな装着感を改善する上で、最もお手軽かつ効果的なアイテムが「イヤーピース」だ。耳にジャストフィットするイヤーピースを選び、装着感を向上させれば、イヤホンの落下を防げるだけでなく、外からの音をシャットアウトしてくれたり、気になりがちな音漏れも少なくなるなど良いことずくめ。適切なイヤーピース選びは、完全ワイヤレスイヤホンを快適に使うための重要なポイントなのだ。

だが、耳の穴の形状は人それぞれ。標準付属品のイヤーピースではサイズ感が微妙に合わなかったり、肌触りが気になって長く付けられない、なんてことは珍しくない。

そんな事情もあって、様々なメーカーからイヤーピースが別売りアクセサリーとして発売されている。今回は抜群のフィット感を提供するオーディオテクニカのイヤーピース「AT-ER500」をオススメしたい。

■まるでカスタムメイド! 「耳穴」ピッタリに変形する優れモノ



様々あるイヤーピースから、なぜAT-ER500がオススメなのか。それは、イヤーピースの素材として世界初採用の三井化学製*「アブソートマー」を使用していることが大きい。(*アブソートマー®は三井化学株式会社の登録商標です)

オーディオテクニカのイヤーピース「AT-ER500」は抜群のフィット感。その秘密は「素材」にアリ

アブソートマーは、室温付近の温度では硬さをキープするが、体温で温められると柔らかく変形する物性を持つ。つまり、耳の中に入れることで真円状のイヤーピースが耳穴の形状へと変化する。十人十色の耳穴の形状に合ったイヤーピースになるというわけだ。

体温で真円状のイヤーピースが耳穴の形状へと変化

自分の耳穴の形状に変形してくれる高いフィット感から、耳から外れにくく、落下の心配もなく安心して使える。この形状変化には持続性があり、耳から外したあともある程度かたちが保たれるため、次回の装着時に「前回フィットした付け方」を再現しやすいのも面白いポイント。

変化した形状がキープされるのもAT-ER500の特徴の1つ

S/M/Lの3サイズを用意する

さらにメーカーの説明するところによると、「素材の特性により、不要な振動を抑制。余計な余韻を残さないため、輪郭がくっきりとした明瞭な高域、締まりのある低域を表現」と、音質の向上まで楽しめてしまう。まさに一石二鳥のアイテムだ。至れり尽くせりである。

■オーディオテクニカ製品以外にもAT-ER500は使える



オーディオテクニカは数多くの完全ワイヤレスイヤホンをラインナップしており、最新モデルの「ATH-TWX7」にも当たり前の話だが形状的にジャストフィット。AT-ER500の商品公式ページでも「オーディオテクニカがこれまで販売した、すべての完全ワイヤレスイヤホンに取り付けることができます」と互換性がアナウンスされている。

「ATH-TWX7」を始めとする、オーディオテクニカ製イヤホンにはジャストフィット

そうするとなんとなく、AE-ER500はオーディオテクニカの完全ワイヤレスイヤホン専用、と勘違いしてしまいそうだが、そんなことはまったくない。

AT-ER500はS/M/Lどのサイズであってもイヤホン取付部の穴径は共通して4mmで、イヤーピースの高さは5.5mm。つまり、これに適合する完全ワイヤレスイヤホンであればブランドを問わず装着可能だし、逆にサイズがあわないアップル「AirPods Pro」などには取り付けられないということになる。

AT-ER500のサイズイメージ

取り付け部の形状が大きく異なる「AirPods Pro」には装着が叶わず…

いくつかのモデルについて編集部で検証した結果をリストにまとめて掲載するので、参考にしていただけたら幸いだ。可否で「△」としたモデルは、イヤホンへの取り付けがやや窮屈だった。またあくまで取り付けができるかどうかのリストであり、ノイズキャンセリング性能やF特性能などを検証したものではない。


ここからは、ファイルウェブ編集部員が様々なモデルとAT-ER500の組み合わせを試したインプレッションをお伝えしていく。

編集部員A:圧迫感ではなく、密度感。ANCや音質の向上に寄与(ソニー:WF-1000XM4)



「WF-1000XM4」×「AT-ER500」
付属の純正イヤーピースがフォームタイプの「WF-1000XM4」。自身の耳との相性から、シリコンタイプでなければということもあり、普段から他メーカーのイヤーピースを装着して使用している。AT-ER500はアブソートマーを採用しているが、装着感はある程度のコシがあり、どちらかといえばシリコン寄りだと感じた。装着時の違和感が少なく、スッと付けられるのは非常に良い。

体温に応じて形状を変えるという特性から装着時の安定感もアップ。圧迫されるような感じではなく、密度感。ぴったりとした付け心地を提供してくれる。隙間なく自身の耳穴の形状にフィットすることで、パッシブなノイキャンの効きも向上。その効果は会社のオフィスから参加したリモート会議でも発揮され、イヤホンのANCと併せて喧騒がこれまで以上に気にならなくなる。

音の変化については、装着の密度感によって「抜けていた音を拾ってくれる」という印象。音数の多い打ち込み系楽曲の裏で掻き鳴らされるベースギターは輪郭を強め、ボーカルは程よいバランスで存在感を際立たせてくれた。

編集部員B:吸い付くようなフィット感、音が鼓膜をダイレクトに震わせる(ゼンハイザー:MOMENTUM True Wireless 3)



「MOMENTUM True Wireless 3」×「AT-ER500」
自分の耳の場合、イヤーピースは「Sサイズだと小さいが、Mサイズだと圧迫感がある」ため、落ちるよりはマシだろうと妥協してMサイズを使っている。ただ、それほど長時間でなくとも、装着しているとなんだか気持ち悪くなってくるのが困りものだ。

AT-ER500のMサイズは違った。通常のイヤーピースが「耳に入れている感覚」だとすれば、AT-ER500は「耳に吸い付いている感覚」が得られる。内側から押し付けるようにしてフィットさせるのではなく、肌に沿うように隙間なくピッタリくっつき圧迫感がない。

ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 3」に装着すると、もともと中域に厚みのあるサウンドだが、その厚みを一切削ぐことなく鼓膜にダイレクトに届けてくれるようになる印象だ。音がシャープかつクリアに感じるのは、耳の中での余計な反響が減ったからだろうか。雑味がなくなることで各楽器の存在感が増し、ノリの良い楽曲はより楽しく、オーケストレーションはより壮大に、バラードはより情緒的に感じられる。AE-ER500がイヤホンの長所をさらに伸ばしてくれた。

編集部員C:耳全体でイヤホンの装着感と密着感を変えてくれる可能性を秘めたイヤーピース(ヤマハ:TW-E7B)



「TW-E7B」×「AT-ER500」
体温で柔らかくなることで耳穴の微妙な凹凸になじみ、程よい摩擦でズレにくいイヤーピース、AT-ER500。私の場合、大柄な完全ワイヤレスイヤホンでこのイヤーピースの便利さを実感している。

例えば私がよく使っているヤマハ「TW-E7B」は、耳の凹凸を圧迫しないよう溝をつけた楕円形のハウジングで、耳のくぼみへ無理なく収まるようなデザイン。ハウジングと耳とが強すぎず弱すぎず、ちょうどよい力加減で接触していると、安定して快適に装着していられる。

純正イヤーピースを使っていても十分満足のいくフィット感だが、AT-ER500に変えてみると、純正イヤーピースよりも耳の入口に近く浅い部分にフタをするようなイメージで、隙間なく密着。音を漏らさず、それでいて着け心地はより軽い。

それにイヤーピースの位置が浅くなったことで、ハウジングと耳が触れ合う面積も広がり、着けている最中の安定感はバツグン。耳穴だけに限らず、耳全体でイヤホンの装着感と密着感を変えてくれる可能性を秘めたイヤーピースがAT-ER500だ。

編集部員D:イヤホンと過ごす時間が楽しくなるような「大きな変化」を感じられる(テクニクス:EAH-AZ40)



「EAH-AZ40」×「AT-ER500」
新品のAT-ER500を手に取ると、ちょっと硬めの質感で、表面はさらっとしている。本当に体温で柔らかくなる?と不思議に思ったが、実際使ってみると、じんわり自分の耳にフィットして、ぴたっと密着してくれることに驚いた。

私の場合、耳穴のサイズが左右で若干差があり、今回イヤーピースは左に「S」、右は「M」を使っている。イヤホン本体を支える外耳部分もあまり大きくなく、特に左側は、フィットしていないと落としそうになることもあるが、小型なイヤホンと、サイズを合わせたイヤーピースの組み合わせで、まったく不安感なく使えた。

密着度が高まることで、ANCオフでも必要十分な遮音性が得られる。また、AT-ER500は不要な振動を抑える効果もあり、音質はより輪郭がくっきりとして耳に届く。いつも聴いているサム・スミスの声が、なんだかいつもより近く感じられて嬉しい。一緒に口ずさんだりしてもずれにくいので安心だ。

イヤーピースだけで?と思うかもしれないが、きっとイヤホンと過ごす時間がもっと楽しくなる、そんな大きな変化を感じられるはずだ。




イヤホンの装着感というのは、様々な要因から個人差が表れるもの。個人で異なる「耳穴の形状」というのはまさに大きな要因の一つだ。今回4名の編集部員がAT-ER500の装着感を試したが、 “体温で形を変える” 特性にいずれも好印象だった。

イヤーピースの見直しで装着感が向上すれば、抜けによる落下防止の予防となり、イヤホンの再生パフォーマンスを引き出すこともできる。いま使用されている完全ワイヤレスイヤホンの装着感にお悩みの方は、ぜひAT-ER500を検討してみてほしい。

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