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公開日 2024/07/12 09:30
世界初のステレオヘッドホンを開発した老舗ブランドの挑戦

オープンイヤータイプの音質もここまで来た!beyerdynamic「VERIO 200」をレビュー

佐々木喜洋

■プロ機の技術を持つ老舗ブランドからもオープンイヤー型イヤホンが登場



最近の完全ワイヤレスイヤホンの傾向として、耳を塞がない “オープンイヤータイプ” のモデルが登場してきたことが挙げられる。オープンイヤータイプとはこれまでのイヤホンのように耳を塞ぐことなく、耳穴は完全に解放された状態で音を聴くことができるイヤホンだ。そのため音楽と共に周囲の音がそのまま耳に聞こえてくる。

beyerdynamic オープンイヤー型完全ワイヤレスイヤホン「VERIO 200」(市場実売価格:税込39,600円前後)

これはイヤホンの使用環境が変化してきたことによるものだ。在宅勤務やリモート会議の増加などにともなう、長時間のイヤホン着用の不快さを抑えることや、カフェやファミレスなど他人が居るところで使用することが増え、イヤホンを着用しながらも人と会話ができることが求められるようになってきたからだ。

ここへきて、ついに老舗ブランドのbeyerdynamic(ベイヤーダイナミック)からもオープンイヤータイプの新製品が登場した。今回レビューする「VERIO 200」だ。

ベイヤーダイナミックは、世界初のステレオヘッドホンを開発した会社として知られているドイツの老舗ヘッドホンメーカーである。「DT770」、「DT880」、「T1」など、オーディオマニアに愛される名機を数多く生み出してきたメーカーであり、プロのモニターらしい正確さを持ちながらリスニングでも楽しめるサウンドが特徴だ。

最近ではゲーミングの世界でも有名ゲームプレイヤーが愛機として使用したことで知られるようになり、様々な方面でその製品が活躍しているメーカーでもある。

■“特大” 口径の振動板を搭載する本格サウンド



VERIO 200は、ベイヤーダイナミックが発売する初のオープンイヤータイプの完全ワイヤレスイヤホンだ。特徴は16.2mmという “特大” 口径の振動板である。普通イヤホンのドライバーは10mmくらいでも大口径と呼ぶので、16.2mmは特大と言える。このような大型ドライバーを採用しているので、まさに耳のそばにスピーカーがあるような感覚となる。これがオープンイヤータイプを実現させたわけだ。

16.2mmという大口径のドライバーを搭載する

VERIO 200の耳にかける部分のイヤーフックは柔らかいシリコンとメモリーワイヤーで作られていて、片側10.8gと軽量に設計されている。VERIO 200はオープンイヤータイプながらIP54等級の本格的な防水性能があり、水しぶきや汗から保護されている。

イヤホンをケースから取り出したところ

ワイヤレス機能としてはBluetooth 5.3が採用され、高品質コーデックとしてQualcomm aptX Adaptiveに対応している。またSBCとAACにも対応しているのでiPhoneでも使用ができる。マイク性能も高品質で、cVcテクノロジーを搭載しているので、周辺ノイズを抑えながら通話音声をクリアに保ち、リモート会議などでも有効に使うことができる。

操作はタッチパッドをタップすることで、再生、音量調整、通話応答、音声アシスタントの起動などが可能だ。またスマートフォンの「beyerdynamic」アプリからは、タップ操作のカスタマイズやイコライザーの設定ができ、ファームウェアのアップデートもアプリを通じて行うことができる。

専用アプリ「beyerdynamic」でイコライザーやタッチ操作などの設定が行える

連続再生時間はイヤホン単体で最大約8時間、ケースを併用することでさらに27時間再生することができる。ケースの重さは98gだ。カラーはSPORTS(ブラック&オレンジ)、cream(クリーム)、black(ブラック)の3色で展開する。

カラーはblack、cream、SPORTS(ブラック&オレンジ)の3色

■鮮明な中高音域や楽器の歯切れ良さが魅力的



試聴機を借りて、実際にVERIO 200を使用してみた。ケースはやや大柄だがスリムなのでポケットに入れやすい。試聴機はSPORTSモデルで、ブラック&オレンジのデザインがシックで良い。細かいところではケースの手触り感が良く高級感がある。

ケースの手触り感にも高級感がある

イヤホン本体はイヤーフック部分を耳にかけて装着する。振動板の部分は柔軟に稼働するので装着は楽にできる。軽くまったく圧迫感を感じないので、長時間使用したいユーザーには福音となるだろう。

イヤーフックも柔らかく装着しやすい。振動板の外側にはベイヤーダイナミックのロゴを配置

耳側に型番名「VERIO 200」が記されている

ファミレスで使用してみると周囲の会話やBGMなどの環境音はごく普通に耳に入ってくる。突然人に話しかけられても完全に聞き取ることができ、会話に支障はない。耳の圧迫もないのでまったくイヤホンを装着していないのと同じ感覚だ。操作感はタッチ部分の面積が広いので、トリプルタップでもあまり不自由なく操作することができる。

アプリでは電池残量の確認や各種設定、イコライザーの適用ができる。イコライザーはロック、ジャズ、クラシカル、ポップなどのプリセット項目の他に自分でもカスタム設定ができる。

音質の確認はiPhone 15 Pro MAXで行った。オープンイヤータイプという先入観を持っていると、音を聴いてみて普通のイヤホンと同じようなサウンドが普通に出てきたのでちょっと驚いた。

試聴機は未開封の新品で届いてきたが、箱から出したばかりでも十分に音が良い。ボリュームを上げるときちんと音量が得られ、音は高い方から低い方まで全域でバランスが良い。

特に低音が思いの外しっかりと出ている。ベースの弾むような気持ちよさが感じられ、オープンイヤータイプだからと低音が抜けている感じはあまりしない。ジャズのウッドベースを聴いても、多少軽めには感じるが普通のイヤホンとそう遜色がなく、むしろ鳴りの解像感まで表現できている。

特に高音域と中音域は普通のイヤホンと比較しても十分に高音質で、特にヴォーカル再現が良い。高音域は煌めくようなベルの音が再現されていて心地よい。

またVERIO 200の音の特徴として、歯切れがよく、打音に緩い感じがないことに気がついた。マグネットなどドライバー周りはかなり優れているように感じられる。ドラムロールが気持ち良いのでスピード感があるロックやポップでも悪くない。音の広がりがよく、一般的なイヤホンよりも空間的な広がりのよさを楽しめるのもオープンイヤータイプならではと言える。

もちろん、ヘビメタの重低音を大音量で聴くようなイヤホンではないが、オープンイヤータイプという先入観を覆すようなバランスの良いサウンドが楽しめた。中高音域の音の鮮明さや、楽器音の歯切れ良さは普通のイヤホンと並べても高評価ができる。外観も美しいので使用するのが楽しくなるだろう。オープンイヤータイプもここまできたか、という印象を受けた完全ワイヤレスイヤホンだ。

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