公開日 2024/11/26 06:30
【Qobuzを楽しむシステムプラン】
LINN×Qobuzで広がるハイクオリティなストリーミングの世界。最新SELEKTシリーズ「Classic Hub」の音質に迫る
山之内 正
ネットワークオーディオの歴史において、スコットランド・LINN(リン)の存在をなくして語ることはできない。「ハイレゾストリーミングサービス」の時代が到来することをいち早く予見し、そのための高品位なネットワークプレーヤーを世に送り出してきた。
この秋、ついにQobuz(コバズ)が日本でも正式スタートした。LINNが夢見た理想の音楽スタイルを、ようやっと日本でも存分に味わえる時代が到来したのだ。こここでは、LINNのSELEKTシリーズから登場した最新ユニット「Classic Hub」をベースに、Qobuzのサウンドを体験してみた。
QobuzかTIDALが使えるようになったら本腰を入れてネットオーディオに取り組みたい。そう考える音楽ファンは少なくない。アップルミュージックやアマゾンミュージックが使えるネットワークプレーヤーの数が限られていることが主な理由だ。
そんななか、この秋、ついにその時が訪れた。Qobuzが10月下旬に国内ローンチを果たし、オーディオファン待望のロスレス・ハイレゾストリーミングを存分に楽しめるようになったのだ。
そして、まるでタイミングを見計らったかのように、リンの “SELEKT DSMシリーズ” に新しい「Classic Hub」ラインが登場。DACやアンプなど複数のモジュールを自由に組み合わせて自分だけのプレーヤーを作れるSELEKT DSMには、「Edition Hub」との「Classic Hub」という2つのグレードがあるのだが、今回は標準グレードの後者が新世代に生まれ変わった。
あらかじめモジュールの組み合わせを吟味したClassic Hubの製品構成自体は従来と変わらないが、呼び方が微妙に変わったので整理しておこう。DACのグレードの違いでKatalyst(K)とStandard(S)があり、どちらもプリ出力またはスピーカー出力のどちらか一方を選べる。後者は末尾に「A」が付くプリメイン内蔵モデル、「A」が付かないモデルはライン/プリ出力専用機ということになる。ちなみにスピーカー出力を持つプリメイン仕様を選んでも価格は変わらないが、DACに上位のKatalystを選ぶと税別25万円が上乗せされる。
なお、この4機種以外にモジュール非搭載の「SELEKT DSM:Classic Hub」という製品があるが、これはDACとアンプを内蔵するEXAKTスピーカーとの組み合わせを想定したモデルだ。
Classic Hubを構成するこれら5製品がすべて新世代に更新されたが、今回はライン/プリ出力モジュールを積むSELEKT DSM-CK、SELEKT DSM-CSの2機種を試聴した。
従来機からの変更は中身と外装の両方に及ぶ。音質改善に寄与する最大の変更は、メイン基板を上位のEdition Hubと共通化したことで、回路構成や機能がアップグレードされ、サブウーファー出力とヘッドホン出力が新たに追加された。ヘッドホン出力は専用のDACとアンプを組み込んだ本格的な内容で、Edition Hubとは異なり出力端子は正面左下にそなわる。
正面のディスプレイは約2倍に拡大されてKLIMAX DSMと同じサイズになり、表示される情報量が一気に増えた。シャーシ上部を覆う精密な曲げ加工のスリーブは手前まで伸び、厚みも増して剛性を強化している。従来のブラックに加えてシルバーも選べるようになったことも嬉しいポイントだ。
Edition Hubのシャーシは削り出しアルミプレートで組んでいるので、重量と質感は別格なのだが、少なくとも外観上は上位機種に肉薄した感がある。そのほか上部のダイヤルは天面がフラットになり、アーティストやプレイリストなどのお気に入りを最大6つまで登録できるPINボタンも操作感を改善するなど、きめ細かいアップグレードが行われている。
SELEKT DSM-CKをつなぎ、リンが提供するLINNアプリでQobuzにログインした。LINNアプリは外見こそシンプルだが、使いやすさでは群を抜く存在だ。Kinsky、Kazooと世代を重ねるごとにユーザーインターフェースが洗練され、選曲や基本操作に迷う余地がないほど使いやすく進化しているのだ。
使いやすいと感じる最大の理由は、複数のストリーミングサービスやローカルのNAS(サーバー)などメディアの違いを意識することなく横断して選曲し、プレイリストに登録できることにある。「探検する」のトップ画面上部の検索ウィンドウにアーティスト名などキーワードを入力すると、利用できるすべてのサービスとメディアを対象に検索を実行し、サービスやメディアごとに結果を表示する。結果一覧はアルバム、アーティスト、作曲家、楽曲などで分類でき、インターネットラジオも対象に含まれるので、探している曲と出会える確率は非常に高い。なお、未契約のサービスはトップ画面に表示しないように設定できるので、画面が煩雑にならない良さもある。
取材した10月末の時点ではアーティスト名をカタカナで入力したときにQobuzは高い確率で適切な結果が出てくるが、TIDALでは「アイテムが見つかりません」となり、日本語対応を果たしたQobuzの使いやすさが鮮明になる場面にも遭遇した。リンはQobuzとパートナー関係を結んで音質や使い勝手の検証を進めてきた経緯があるので、LINNアプリでの選曲しやすさには納得がいく。
LINNアプリで「部屋」のタブを選ぶと、入力一覧に加えて登録済みのPINの内容がまとめて表示される。良く聴くアルバムやお気に入りのアーティストを登録しておけば、アプリからも本体からも最短経路で呼び出せる便利な機能だ。検索で表示されたアルバムやアーティストごとに表示されるPINアイコンを操作するだけで新規の登録や入れ替えができ、使いこなしも難しくない。たとえばQobuzの「クラシック−新譜」を登録しておけば、1クリックの操作だけで、その時点でQobuzが推奨するクラシックの新譜がすぐに呼び出せるのだ。
Katalyst DACを積むSELEKT DSM-CKの再生音は空間情報が豊富で音場が立体感に富み、特にアコースティック情報を豊富に含む音源との相性が良い。ドゥヴィエルが歌うモーツァルトの歌曲は抑揚が繊細で、余韻にソプラノの高音が柔らかくブレンドする描写が格別だ。ロトのマーラー第4番では調弦を変えた独奏ヴァイオリンの浸透力の強い音色を正確に再現してみせた。
アネッテ・アスクヴィクのヴォーカルは声のイメージに3次元の立体感があり、サックスのエコーもスピーカーの外側に大きく広がって奥行きの深いステージを再現する。加藤訓子「アリーナのために」はクロテイルの純度の高い音色と静寂表現からハイレゾならではの精妙な表現が伝わる。音程が異なるクロテイルが定位する位置を数センチ単位で特定できるほど空間情報を精度高く再現していることにも感心させられた。
DACが標準グレードとなるSELEKT DSM-CSに切り替えると、音場空間の広がりは若干狭く感じられるものの、音像定位の精度の高さはほぼ同等の水準。カンデ・ブアッソがベースを弾きながら歌う「サマータイム」では、ブレのない安定したベースが力強いリズムを刻み、ピアノの澄んだ音色とハスキーな歌声のコントラストが鮮やかだ。
ピアノとオーケストラがサポートするモーツァルトのアリアでは、ドゥヴィエルの澄み切ったソプラノが澄み切った空間に柔らかく浸透し、ピアノとオーケストラが溶け合う一体感のある響きを引き出す。ソプラノとピアノの掛け合いは親密な会話のようにスムーズで、強調や力みをいっさい感じさせない。硬さのない素直な音はSELEKT DSMに共通する美点の一つだ。
SELEKT DSMとQobuzの組み合わせで聴く声やソロ楽器の質感の高さには強い印象を受けた。サーバーで再生した同一フォーマットのファイル音源と比べても遜色ないクオリティを確保しているし、ハイレゾならではのなめらかさや柔らかい感触も実感できる。音楽ファンの多くが、このクオリティで毎日好きなだけ音楽に浸ることができる日をどれだけ待ち望んでいたことか。面倒な設定や使いにくい検索機能から解放されて、音楽に集中できる極上の環境がようやく手に入った。
(提供:リンジャパン)
この秋、ついにQobuz(コバズ)が日本でも正式スタートした。LINNが夢見た理想の音楽スタイルを、ようやっと日本でも存分に味わえる時代が到来したのだ。こここでは、LINNのSELEKTシリーズから登場した最新ユニット「Classic Hub」をベースに、Qobuzのサウンドを体験してみた。
■中核SELEKTシリーズのClassic Hubがアップデート
QobuzかTIDALが使えるようになったら本腰を入れてネットオーディオに取り組みたい。そう考える音楽ファンは少なくない。アップルミュージックやアマゾンミュージックが使えるネットワークプレーヤーの数が限られていることが主な理由だ。
そんななか、この秋、ついにその時が訪れた。Qobuzが10月下旬に国内ローンチを果たし、オーディオファン待望のロスレス・ハイレゾストリーミングを存分に楽しめるようになったのだ。
そして、まるでタイミングを見計らったかのように、リンの “SELEKT DSMシリーズ” に新しい「Classic Hub」ラインが登場。DACやアンプなど複数のモジュールを自由に組み合わせて自分だけのプレーヤーを作れるSELEKT DSMには、「Edition Hub」との「Classic Hub」という2つのグレードがあるのだが、今回は標準グレードの後者が新世代に生まれ変わった。
あらかじめモジュールの組み合わせを吟味したClassic Hubの製品構成自体は従来と変わらないが、呼び方が微妙に変わったので整理しておこう。DACのグレードの違いでKatalyst(K)とStandard(S)があり、どちらもプリ出力またはスピーカー出力のどちらか一方を選べる。後者は末尾に「A」が付くプリメイン内蔵モデル、「A」が付かないモデルはライン/プリ出力専用機ということになる。ちなみにスピーカー出力を持つプリメイン仕様を選んでも価格は変わらないが、DACに上位のKatalystを選ぶと税別25万円が上乗せされる。
なお、この4機種以外にモジュール非搭載の「SELEKT DSM:Classic Hub」という製品があるが、これはDACとアンプを内蔵するEXAKTスピーカーとの組み合わせを想定したモデルだ。
Classic Hubを構成するこれら5製品がすべて新世代に更新されたが、今回はライン/プリ出力モジュールを積むSELEKT DSM-CK、SELEKT DSM-CSの2機種を試聴した。
■メイン基板を上位グレードと共通化
従来機からの変更は中身と外装の両方に及ぶ。音質改善に寄与する最大の変更は、メイン基板を上位のEdition Hubと共通化したことで、回路構成や機能がアップグレードされ、サブウーファー出力とヘッドホン出力が新たに追加された。ヘッドホン出力は専用のDACとアンプを組み込んだ本格的な内容で、Edition Hubとは異なり出力端子は正面左下にそなわる。
正面のディスプレイは約2倍に拡大されてKLIMAX DSMと同じサイズになり、表示される情報量が一気に増えた。シャーシ上部を覆う精密な曲げ加工のスリーブは手前まで伸び、厚みも増して剛性を強化している。従来のブラックに加えてシルバーも選べるようになったことも嬉しいポイントだ。
Edition Hubのシャーシは削り出しアルミプレートで組んでいるので、重量と質感は別格なのだが、少なくとも外観上は上位機種に肉薄した感がある。そのほか上部のダイヤルは天面がフラットになり、アーティストやプレイリストなどのお気に入りを最大6つまで登録できるPINボタンも操作感を改善するなど、きめ細かいアップグレードが行われている。
■Qobuz音源も専用アプリから手軽に選曲できる
SELEKT DSM-CKをつなぎ、リンが提供するLINNアプリでQobuzにログインした。LINNアプリは外見こそシンプルだが、使いやすさでは群を抜く存在だ。Kinsky、Kazooと世代を重ねるごとにユーザーインターフェースが洗練され、選曲や基本操作に迷う余地がないほど使いやすく進化しているのだ。
使いやすいと感じる最大の理由は、複数のストリーミングサービスやローカルのNAS(サーバー)などメディアの違いを意識することなく横断して選曲し、プレイリストに登録できることにある。「探検する」のトップ画面上部の検索ウィンドウにアーティスト名などキーワードを入力すると、利用できるすべてのサービスとメディアを対象に検索を実行し、サービスやメディアごとに結果を表示する。結果一覧はアルバム、アーティスト、作曲家、楽曲などで分類でき、インターネットラジオも対象に含まれるので、探している曲と出会える確率は非常に高い。なお、未契約のサービスはトップ画面に表示しないように設定できるので、画面が煩雑にならない良さもある。
取材した10月末の時点ではアーティスト名をカタカナで入力したときにQobuzは高い確率で適切な結果が出てくるが、TIDALでは「アイテムが見つかりません」となり、日本語対応を果たしたQobuzの使いやすさが鮮明になる場面にも遭遇した。リンはQobuzとパートナー関係を結んで音質や使い勝手の検証を進めてきた経緯があるので、LINNアプリでの選曲しやすさには納得がいく。
LINNアプリで「部屋」のタブを選ぶと、入力一覧に加えて登録済みのPINの内容がまとめて表示される。良く聴くアルバムやお気に入りのアーティストを登録しておけば、アプリからも本体からも最短経路で呼び出せる便利な機能だ。検索で表示されたアルバムやアーティストごとに表示されるPINアイコンを操作するだけで新規の登録や入れ替えができ、使いこなしも難しくない。たとえばQobuzの「クラシック−新譜」を登録しておけば、1クリックの操作だけで、その時点でQobuzが推奨するクラシックの新譜がすぐに呼び出せるのだ。
Katalyst DACを積むSELEKT DSM-CKの再生音は空間情報が豊富で音場が立体感に富み、特にアコースティック情報を豊富に含む音源との相性が良い。ドゥヴィエルが歌うモーツァルトの歌曲は抑揚が繊細で、余韻にソプラノの高音が柔らかくブレンドする描写が格別だ。ロトのマーラー第4番では調弦を変えた独奏ヴァイオリンの浸透力の強い音色を正確に再現してみせた。
アネッテ・アスクヴィクのヴォーカルは声のイメージに3次元の立体感があり、サックスのエコーもスピーカーの外側に大きく広がって奥行きの深いステージを再現する。加藤訓子「アリーナのために」はクロテイルの純度の高い音色と静寂表現からハイレゾならではの精妙な表現が伝わる。音程が異なるクロテイルが定位する位置を数センチ単位で特定できるほど空間情報を精度高く再現していることにも感心させられた。
■ハイレゾならではのなめらかさをストリーミングでも味わえる
DACが標準グレードとなるSELEKT DSM-CSに切り替えると、音場空間の広がりは若干狭く感じられるものの、音像定位の精度の高さはほぼ同等の水準。カンデ・ブアッソがベースを弾きながら歌う「サマータイム」では、ブレのない安定したベースが力強いリズムを刻み、ピアノの澄んだ音色とハスキーな歌声のコントラストが鮮やかだ。
ピアノとオーケストラがサポートするモーツァルトのアリアでは、ドゥヴィエルの澄み切ったソプラノが澄み切った空間に柔らかく浸透し、ピアノとオーケストラが溶け合う一体感のある響きを引き出す。ソプラノとピアノの掛け合いは親密な会話のようにスムーズで、強調や力みをいっさい感じさせない。硬さのない素直な音はSELEKT DSMに共通する美点の一つだ。
SELEKT DSMとQobuzの組み合わせで聴く声やソロ楽器の質感の高さには強い印象を受けた。サーバーで再生した同一フォーマットのファイル音源と比べても遜色ないクオリティを確保しているし、ハイレゾならではのなめらかさや柔らかい感触も実感できる。音楽ファンの多くが、このクオリティで毎日好きなだけ音楽に浸ることができる日をどれだけ待ち望んでいたことか。面倒な設定や使いにくい検索機能から解放されて、音楽に集中できる極上の環境がようやく手に入った。
(提供:リンジャパン)