公開日 2024/11/28 06:30
単に上下の差に収まらない関係性に注目
オーディオテクニカの開放型ヘッドホン徹底比較!「ATH-ADX3000」「ATH-ADX5000」の差に迫る
鴻池賢三
2017年に発売され、国産開放型ヘッドホンの究極ともいえる高い評価を得て来た「ATH-ADX5000」。その “開放” へのあくなき拘りと隅々まで行き渡る工夫は実に潔く、オーディオマニアの心に刺さるプロダクトであることは疑いの余地が無い。
それから時を経ること7年。2024年11月に、ATH-ADX5000の多くを踏襲しつつ、コストを抑えてより多くのユーザーに届けようと開発された「ATH-ADX3000」が登場した。
本稿では、ATH-ADX5000とATH-ADX3000の両モデルを比較しつつ、それぞれの魅力を探る。ATH-ADX3000は単なるコストダウンモデルなのか、あるいはコストパフォーマンスを増してATH-ADX5000を凌駕する一面を持つのか。隅々まで徹底検証する。
まずは、両モデルの違いを押さえつつ、その概要を紹介したい。重複するが、基本は両モデルとも開放型であるが、特徴は一般的に開放型と呼ばれる製品の中でも高い開口率を意識していることにある。写真を見ると一目瞭然だが、ハウジングは「網」のように穴が大きく、振動板がほぼ丸見えという状態である。
ATH-ADX5000はハウジングの大半がアルミ削り出しという豪華仕様。開口部とリングとも言えるハウジングが一体構造となっている。部品を減らすことで軽量化に加え、音に影響する要素を減らすことができる。メッシュ部は極薄で加工難易度が高そうだが、日本の優れた職人技で実現しているという。量産品の概念を超える手間とコストの掛けようから、同ブランドがフラッグシップモデルに託す威信を感じる。
対するATH-ADX3000は、樹脂製のハウジングにパンチングメタルの組み合わせと実利を優先した構成。ATH-ADX5000と比べると比較的ノーマルな仕様だが、開発者によると開口率を高く保ち、樹脂素材の活用は軽量化にも活かされているという。ハウジングの違いだけではないが、本体重量はATH-ADX5000が270gなのに対しATH-ADX3000は257gと軽量。僅か13gの差だが、この軽量クラスで約5%の違いは体感できるもので、実際に触れるとATH-ADX3000の軽量性は明らか。
余談だが、両モデルとも共通して、ヘッドバンドやハウジングに繋がるステーなどが、一般的なヘッドホンと比較してシンプルな構造となっている。これらの要素も「軽量化」を突き詰めた結果と考えると大いに納得でき、むしろ一点集中のこだわりとして好ましく感じる。
二番目になったが、ヘッドホンとして最も重要といえるドライバーは両モデルでほぼ同等と言える内容。オーディオテクニカはドライバーの開発から手掛ける数少ないメーカーであり、同社がすべての設計開発の中心と位置付ける重要なコンポーネントだけに、ATH-ADX3000への意気込みが感じられる。価格を抑えるために、ヨークの素材がパーメンジュールから純鉄に置き換えられているが、タングステンコーティング振動板を備えた58mm径ドライバーやバッフル構造はほぼそのまま踏襲する。
相違点としては、より様々な環境で鳴らしやすくするため、ATH-ADX5000はインピーダンス420Ωであるところ、ATH-ADX3000は50Ωへと変更。これに伴ってボイスコイルも新設計品に置き換えられている。質の違いというよりは、リスニング時に組み合わせるアンプのパワーやグレードの差が表れる部分で、ATH-ADX3000が健闘するシチュエーションも想像できる。
ほか、オーディオテクニカ独自の、耳からハウジングまでの音響空間を2分の1に仕切るポジションにボイスコイルを配置する「コアマウントテクノロジー」は、ATH-ADX5000と同様にATH-ADX3000でも採用。思想が踏襲されている。
付属ケーブルにも違いがある。ATH-ADX5000は6N-OFCとOFCを組み合わせたハイブリッド導体で被覆がファブリック地なほか、プラグ部のスリーブがステンレス素材と贅沢。ATH-ADX3000はコストを意識して素材こそ一般的なものと思われるが、独自のA2DCコネクター採用は同じでプラグ部のスリーブもアルミと思われる金属素材で仕上げも高品位。ケーブルの被覆はファブリック地で覆われていないが、これはコストダウンというよりもタッチノイズの少なさを意識した仕様だという。ほか、携行用のケースに差があり、ATH-ADX3000はコンパクトなアルミ製が付属する。
それから時を経ること7年。2024年11月に、ATH-ADX5000の多くを踏襲しつつ、コストを抑えてより多くのユーザーに届けようと開発された「ATH-ADX3000」が登場した。
本稿では、ATH-ADX5000とATH-ADX3000の両モデルを比較しつつ、それぞれの魅力を探る。ATH-ADX3000は単なるコストダウンモデルなのか、あるいはコストパフォーマンスを増してATH-ADX5000を凌駕する一面を持つのか。隅々まで徹底検証する。
■設計と理念を同じくする両モデルの差異とは
まずは、両モデルの違いを押さえつつ、その概要を紹介したい。重複するが、基本は両モデルとも開放型であるが、特徴は一般的に開放型と呼ばれる製品の中でも高い開口率を意識していることにある。写真を見ると一目瞭然だが、ハウジングは「網」のように穴が大きく、振動板がほぼ丸見えという状態である。
ATH-ADX5000はハウジングの大半がアルミ削り出しという豪華仕様。開口部とリングとも言えるハウジングが一体構造となっている。部品を減らすことで軽量化に加え、音に影響する要素を減らすことができる。メッシュ部は極薄で加工難易度が高そうだが、日本の優れた職人技で実現しているという。量産品の概念を超える手間とコストの掛けようから、同ブランドがフラッグシップモデルに託す威信を感じる。
対するATH-ADX3000は、樹脂製のハウジングにパンチングメタルの組み合わせと実利を優先した構成。ATH-ADX5000と比べると比較的ノーマルな仕様だが、開発者によると開口率を高く保ち、樹脂素材の活用は軽量化にも活かされているという。ハウジングの違いだけではないが、本体重量はATH-ADX5000が270gなのに対しATH-ADX3000は257gと軽量。僅か13gの差だが、この軽量クラスで約5%の違いは体感できるもので、実際に触れるとATH-ADX3000の軽量性は明らか。
余談だが、両モデルとも共通して、ヘッドバンドやハウジングに繋がるステーなどが、一般的なヘッドホンと比較してシンプルな構造となっている。これらの要素も「軽量化」を突き詰めた結果と考えると大いに納得でき、むしろ一点集中のこだわりとして好ましく感じる。
二番目になったが、ヘッドホンとして最も重要といえるドライバーは両モデルでほぼ同等と言える内容。オーディオテクニカはドライバーの開発から手掛ける数少ないメーカーであり、同社がすべての設計開発の中心と位置付ける重要なコンポーネントだけに、ATH-ADX3000への意気込みが感じられる。価格を抑えるために、ヨークの素材がパーメンジュールから純鉄に置き換えられているが、タングステンコーティング振動板を備えた58mm径ドライバーやバッフル構造はほぼそのまま踏襲する。
相違点としては、より様々な環境で鳴らしやすくするため、ATH-ADX5000はインピーダンス420Ωであるところ、ATH-ADX3000は50Ωへと変更。これに伴ってボイスコイルも新設計品に置き換えられている。質の違いというよりは、リスニング時に組み合わせるアンプのパワーやグレードの差が表れる部分で、ATH-ADX3000が健闘するシチュエーションも想像できる。
ほか、オーディオテクニカ独自の、耳からハウジングまでの音響空間を2分の1に仕切るポジションにボイスコイルを配置する「コアマウントテクノロジー」は、ATH-ADX5000と同様にATH-ADX3000でも採用。思想が踏襲されている。
付属ケーブルにも違いがある。ATH-ADX5000は6N-OFCとOFCを組み合わせたハイブリッド導体で被覆がファブリック地なほか、プラグ部のスリーブがステンレス素材と贅沢。ATH-ADX3000はコストを意識して素材こそ一般的なものと思われるが、独自のA2DCコネクター採用は同じでプラグ部のスリーブもアルミと思われる金属素材で仕上げも高品位。ケーブルの被覆はファブリック地で覆われていないが、これはコストダウンというよりもタッチノイズの少なさを意識した仕様だという。ほか、携行用のケースに差があり、ATH-ADX3000はコンパクトなアルミ製が付属する。
注目のサウンド比較。「ATH-ADX3000」の実力が光るシチュエーションとは
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