公開日 2024/12/27 06:30
オーディオ銘機賞2025 銀賞 受賞機を聴く
マランツの小型 “最強” コンポ「MODEL M1」レビュー!Amazon Music×HEOS/Qobuz×Roon聴き比べてみた
生形三郎
2024年に登場したコンポーネントの中でも、新時代のオーディオコンポーネントとして特に注目を集めたマランツのワイヤレス・ストリーミング・アンプ「MODEL M1」。この度、アップデートによりRoon Ready対応が発表された。そこで今回は、独自のネットワーク機能HEOSとRoonを用いて、オーディオ銘機賞2025にて銀賞を受賞したその実力を改めて検証した。
オーディオ銘機賞で並み居る強豪を退けて銀賞を獲得したマランツ「MODEL M1」は、斬新な筐体デザインとマランツならではの高音質なネットワーク再生、そして、この約10年間マランツが積み上げてきたクラスDアンプ技術が搭載された、アンプ内蔵のコンパクト・ネットワークストリーマーである。
ネットワーク再生プラットフォーム「HEOS」によるストリーミング再生を主眼とし、フルサイズコンポに匹敵するハイクオリティなサウンドを、幅220mmという小型ボディで追求。これからの時代を見据えたマランツの意欲作である。
注目なのは、オランダのAxign社と新規開発した、専用のクラスDアンプだ。マランツのCDプレーヤーでも採用されるオリジナル・デジタルフィルターを組み合わせた心臓部をBTL接続駆動することによって、4Ωで120Wもの出力を確保するほか、プリメインアンプ「AMP-10」で採用のLC回路用高品位コイルをダウンサイジングして搭載したり、専用のスイッチング電源を新規開発したりと、小型ながらも着実なスピーカー駆動を希求する。
ユニークな天板デザインも印象的で、一般的な機器のように天板部分を密封することはせずに、非磁性体のステンレスを用いた多重メッシュ構造とすることで、開放感ある空間表現を目指すという斬新な設計だ。ほかに、HDMI入力にも対応するバーサタイルな機能性はもちろんのこと、筐体の要となるシャーシには4mm厚のアルミ製ベースプレートを採用するほか、全てを国内工場「白河オーディオワークス」でアセンブリするなど、新たなオーディオコンポのカタチに、如何にマランツが力を込めて取り組んでいるのかが分かる内容となっている。
今回の試聴では、その魅力を存分に引き出すために、MODEL M1にぴったりなサイズのダリの小型ブックシェルフ・スピーカー「MENUET SE」と組み合わせて実施した。互いのコンパクトさを活かす、実際的なペアリングで、MODEL M1の可能性を検証する。試聴ソースは、HEOSを用いたAmazon Music HD音源を中心に、Roonを使用したQobuzによるロスレス・ストリーミング音源も試聴した。
専用のアプリを使用したHEOSによる試聴では、ジャズのピアノトリオ音源は、明瞭かつ軽快なピアノの打鍵の指さばきを楽しめつつも、温もりあるしっとりとした音色感が心地よい。女性ジャズヴォーカルソースのKeiko Lee『Fragile』の音源は、歌声はやはり明瞭な輪郭を持ちながらも、歌声のボトムに適度なふくよかさが伴い、楽曲や演奏の持つ陰りのある世界観を心地よく描いていく。
推察するに、MENUETのウッドファイバーコーンの持ち味である仄かにオーガニックな中低音の旨味が活きているのだろう。MODEL M1による再生では、適度なメリハリと温かみを持った描き出しで、決してストイック一辺倒な、解像力重視な方向性に陥らず、気軽に音楽と接することができる。
今回の組み合わせで特に相性の良さを感じたのはバロックオーケストラ、バッハ・コレギウムジャパンによるJ.S.バッハ『モテット全集』の再生だ。オルガンの木質な響きには楽器の音色に潤いや柔らかみが引き出されつつ、小編成の混声コーラスの各声部を色彩感に富む音色で描く様が見事であった。左右の掛け合いや演奏家ごとのブレスやフレージングも、明晰かつ快適な質感で奏でるさまが美しい。
なお、本機は小型化を実現した意味でもクラスDアンプ技術がクローズアップされることも多いが、やはりHEOSモジュールをはじめとした、マランツがこれまで培ってきた高音質かつ安定度の高いネットワーク再生能力があってこそ、MODEL M1という新機軸のコンポーネントが成立するのだと痛感する。
続いてRoonによる再生でもチェックする。Roonは、パソコンやサーバー上にソフトを起動させたRoon Coreと呼ばれる端末を核に、NASなどのミュージックライブラリーや各種ストリーミング・サービスの音源を、クラウド上の膨大なRoonメタデータと連携させ、ローカルとクラウドの境目なく縦横無尽なアクセスが可能な一つの大きなライブラリーとして取り扱い再生することができるプラットフォームである。
MODEL M1はアップデートによってRoon Readyと呼ばれる認証を獲得しているため、Roonの再生端末として使用することができる。それによって、Roonを経由してMODEL M1からQobuzも再生することができるのだ。
早速、Roon経由でQobuzから先ほどと同じ楽曲を再生すると、音を出した瞬間に、さきほど試聴したAmazon Music HDとは趣のことなるサウンドが描き出される。ナチュラルな音色傾向を持つQobuzの再生音がしっかりと引き出されており、ストリーミングサービスや再生プラットフォームによる音の違いを描き分けるMODEL M1の確かな基礎能力を実感することができた。
藤田真央による『バッハ・トランスクリプション』は、肉厚で温もりあるピアノの音色やアタック表現、ブリリアントかつ優美な高音弦の音色が美しい。やはり、繊細なタッチも確かに拾い上げられ、フレーズの切れ目や打鍵の強弱が自然に伝わってくる。
一転して、コーネリアス「Night Heron」の再生では、散りばめられた一つ一つの音要素のタイトな余韻が一層引き締められた、コントラスト豊かな音の図と地が展開。先のクラシックとは真逆な性質の音楽ソースのキャラクターを、魅力豊かに楽しませてくれた。
以上のように、MODEL M1は、接続するスピーカーが持つ魅力はもちろん、HEOSによるスムーズでシンプルな操作性を実現したネットワーク再生、そして、Roonを使用したロスレス・ストリーミングサービスの持ち味までをも、しっかりと描き出してくれた。
斬新なデザインやストリーミング時代に即した幅広いソース対応と、マランツならではの優美かつラグジュアリーなサウンドをコンパクトなワンボディで堪能させる。その実力は、価格が遥かに上回る強豪を退けてオーディオ銘機賞銀賞を獲得するに相応しい存在であるということを、改めて認識させてくれたのである。
●定格出力(8Ω):100W+100W(8Ω、20Hz - 20kHz、T.H.D. 0.05%) ●定格出力(4Ω):125W+125W(4Ω、1kHz、T.H.D. 0.05%) ●周波数レスポンス:20Hz - 20kHz(±1dB) ●適合インピーダンス:4 - 16Ω ●デジタル入力:HDMI(eARC)、光デジタル ●アナログ入力:RCA(L/R) ●サブウーファー出力:RCA(モノラル)●対応音声フォーマット(ステレオ、HEOS/USB):PCM(最大192kHz/24bit)、DSD(最大5.6MHz) ●外形寸法:217W×84H×239Dmm ●質量:2.2kg ●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス
(提供:ディーアンドエムホールディングス株式会社)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です
新たなオーディオのカタチに力を込めているのかが分かる
オーディオ銘機賞で並み居る強豪を退けて銀賞を獲得したマランツ「MODEL M1」は、斬新な筐体デザインとマランツならではの高音質なネットワーク再生、そして、この約10年間マランツが積み上げてきたクラスDアンプ技術が搭載された、アンプ内蔵のコンパクト・ネットワークストリーマーである。
ネットワーク再生プラットフォーム「HEOS」によるストリーミング再生を主眼とし、フルサイズコンポに匹敵するハイクオリティなサウンドを、幅220mmという小型ボディで追求。これからの時代を見据えたマランツの意欲作である。
注目なのは、オランダのAxign社と新規開発した、専用のクラスDアンプだ。マランツのCDプレーヤーでも採用されるオリジナル・デジタルフィルターを組み合わせた心臓部をBTL接続駆動することによって、4Ωで120Wもの出力を確保するほか、プリメインアンプ「AMP-10」で採用のLC回路用高品位コイルをダウンサイジングして搭載したり、専用のスイッチング電源を新規開発したりと、小型ながらも着実なスピーカー駆動を希求する。
ユニークな天板デザインも印象的で、一般的な機器のように天板部分を密封することはせずに、非磁性体のステンレスを用いた多重メッシュ構造とすることで、開放感ある空間表現を目指すという斬新な設計だ。ほかに、HDMI入力にも対応するバーサタイルな機能性はもちろんのこと、筐体の要となるシャーシには4mm厚のアルミ製ベースプレートを採用するほか、全てを国内工場「白河オーディオワークス」でアセンブリするなど、新たなオーディオコンポのカタチに、如何にマランツが力を込めて取り組んでいるのかが分かる内容となっている。
今回の試聴では、その魅力を存分に引き出すために、MODEL M1にぴったりなサイズのダリの小型ブックシェルフ・スピーカー「MENUET SE」と組み合わせて実施した。互いのコンパクトさを活かす、実際的なペアリングで、MODEL M1の可能性を検証する。試聴ソースは、HEOSを用いたAmazon Music HD音源を中心に、Roonを使用したQobuzによるロスレス・ストリーミング音源も試聴した。
これまで培ってきたからこそM1という新機軸が成立する
専用のアプリを使用したHEOSによる試聴では、ジャズのピアノトリオ音源は、明瞭かつ軽快なピアノの打鍵の指さばきを楽しめつつも、温もりあるしっとりとした音色感が心地よい。女性ジャズヴォーカルソースのKeiko Lee『Fragile』の音源は、歌声はやはり明瞭な輪郭を持ちながらも、歌声のボトムに適度なふくよかさが伴い、楽曲や演奏の持つ陰りのある世界観を心地よく描いていく。
推察するに、MENUETのウッドファイバーコーンの持ち味である仄かにオーガニックな中低音の旨味が活きているのだろう。MODEL M1による再生では、適度なメリハリと温かみを持った描き出しで、決してストイック一辺倒な、解像力重視な方向性に陥らず、気軽に音楽と接することができる。
今回の組み合わせで特に相性の良さを感じたのはバロックオーケストラ、バッハ・コレギウムジャパンによるJ.S.バッハ『モテット全集』の再生だ。オルガンの木質な響きには楽器の音色に潤いや柔らかみが引き出されつつ、小編成の混声コーラスの各声部を色彩感に富む音色で描く様が見事であった。左右の掛け合いや演奏家ごとのブレスやフレージングも、明晰かつ快適な質感で奏でるさまが美しい。
なお、本機は小型化を実現した意味でもクラスDアンプ技術がクローズアップされることも多いが、やはりHEOSモジュールをはじめとした、マランツがこれまで培ってきた高音質かつ安定度の高いネットワーク再生能力があってこそ、MODEL M1という新機軸のコンポーネントが成立するのだと痛感する。
続いてRoonによる再生でもチェックする。Roonは、パソコンやサーバー上にソフトを起動させたRoon Coreと呼ばれる端末を核に、NASなどのミュージックライブラリーや各種ストリーミング・サービスの音源を、クラウド上の膨大なRoonメタデータと連携させ、ローカルとクラウドの境目なく縦横無尽なアクセスが可能な一つの大きなライブラリーとして取り扱い再生することができるプラットフォームである。
MODEL M1はアップデートによってRoon Readyと呼ばれる認証を獲得しているため、Roonの再生端末として使用することができる。それによって、Roonを経由してMODEL M1からQobuzも再生することができるのだ。
早速、Roon経由でQobuzから先ほどと同じ楽曲を再生すると、音を出した瞬間に、さきほど試聴したAmazon Music HDとは趣のことなるサウンドが描き出される。ナチュラルな音色傾向を持つQobuzの再生音がしっかりと引き出されており、ストリーミングサービスや再生プラットフォームによる音の違いを描き分けるMODEL M1の確かな基礎能力を実感することができた。
藤田真央による『バッハ・トランスクリプション』は、肉厚で温もりあるピアノの音色やアタック表現、ブリリアントかつ優美な高音弦の音色が美しい。やはり、繊細なタッチも確かに拾い上げられ、フレーズの切れ目や打鍵の強弱が自然に伝わってくる。
一転して、コーネリアス「Night Heron」の再生では、散りばめられた一つ一つの音要素のタイトな余韻が一層引き締められた、コントラスト豊かな音の図と地が展開。先のクラシックとは真逆な性質の音楽ソースのキャラクターを、魅力豊かに楽しませてくれた。
以上のように、MODEL M1は、接続するスピーカーが持つ魅力はもちろん、HEOSによるスムーズでシンプルな操作性を実現したネットワーク再生、そして、Roonを使用したロスレス・ストリーミングサービスの持ち味までをも、しっかりと描き出してくれた。
斬新なデザインやストリーミング時代に即した幅広いソース対応と、マランツならではの優美かつラグジュアリーなサウンドをコンパクトなワンボディで堪能させる。その実力は、価格が遥かに上回る強豪を退けてオーディオ銘機賞銀賞を獲得するに相応しい存在であるということを、改めて認識させてくれたのである。
【MODEL M1スペック】
●定格出力(8Ω):100W+100W(8Ω、20Hz - 20kHz、T.H.D. 0.05%) ●定格出力(4Ω):125W+125W(4Ω、1kHz、T.H.D. 0.05%) ●周波数レスポンス:20Hz - 20kHz(±1dB) ●適合インピーダンス:4 - 16Ω ●デジタル入力:HDMI(eARC)、光デジタル ●アナログ入力:RCA(L/R) ●サブウーファー出力:RCA(モノラル)●対応音声フォーマット(ステレオ、HEOS/USB):PCM(最大192kHz/24bit)、DSD(最大5.6MHz) ●外形寸法:217W×84H×239Dmm ●質量:2.2kg ●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス
(提供:ディーアンドエムホールディングス株式会社)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です