公開日 2024/12/27 06:30
3シリーズ6スピーカーを徹底比較
人気のPolk Audio製ブックシェルフ・スピーカー6機種を比較試聴! どう選ぶ? 完全攻略ガイド
林 正儀
「学生でも購入できる最高のスピーカー」を目指し、50年以上にわたり良心的な価格で高品質なスピーカーを届けている人気のPolk Audio(ポークオーディオ)。今回は、「ポークの豊富なラインナップから、どのように選ぶべきか……」といった方々に向けて、オーディオ評論家の林 正儀氏がブックシェルフ6モデルを徹底比較で検証を実施。ぜひ購入の参考にしてほしい。
「良い音を学生でも買えるリーズナブルな価格で楽しめる」。それが米国ポークオーディオのポリシーだ。50年を越える長いキャリアを誇り、ここ日本でも豊富なラインナップを揃えて高い人気を集めている。
ところで私は専門学校の講師としても活動しており、学生から「安くていいスピーカーはないでしょうか?」「メーカーはどこがお薦めですか?」などの相談に乗ることが多い。そのため、若者が求める音楽やサウンドも熟知しているつもりだ。そこで今回は、ポークオーディオの全3シリーズから、ブックシェルフの2モデルずつを用意して各モデルのポイントを探った。学生はもちろん、ポークオーディオが気になっていた方やこれからオーディオを始めたい方、新たにシステムを組みたいベテランまで、ぜひ参考にしてほしい。
まず日本で展開している3シリーズを紹介すると、エントリーの「Monitor XT」シリーズ、ミドルクラスの「Signature Elite」シリーズ、そして最上位の「Reserve」シリーズとなる。いずれも価格は良心的で、最上位のReserveシリーズのトップモデル「R200」でもペアで約10万円。この物価上昇時代に驚きのプライスだ。
また、ポークオーディオが長い歴史の中で培ってきた基幹技術は、ひとつひとつに大事な意味がある。トゥイーターは共通してハイレゾ領域をカバーする40kHzに対応。そして、ウーファーやバスレフは、それぞれのシリーズで独自の技術を採用している。
ではさっそく、個々のモデルを紹介しつつ出音を聴くことにしよう。アンプはハイレゾ・ストリーミングに対応したマランツの「MODEL M1」を用意した。試聴は、マランツのネットワーク再生用アプリHEOSからハイレゾ対応のストリーミングサービスAmazon Music HDで再生する。
ジャズ・ヴォーカルはノラ・ジョーンズのデビュー作から「アイヴ・ガッタ・シー・ユー・アゲイン」。クラシックはアンネ=ゾフィー・ムターが参加したジョン・ウィリアムズの『ライヴ・イン・ウィーン』から「悪魔のダンス」、ポップスはビリー・アイリッシュのデビュー作から「バッド・ガイ」だ。
一番手は、エントリーとなるMonitor XTシリーズの「MXT15」。テリレンという合成繊維を用いたドーム型のトゥイーターと、130mmの樹脂系コンポジットウーファーとのコンビは、クセのない音作りが特徴だ。一般的なリアバスレフのシンプルな作りではあるが、バランスの良い鳴りっぷりで、シリーズ名の通りややモニター的なサウンド。ヴァイオリンがきりっとクリアに響き、ビリーのウィスパーボイスがよく通る。このサイズながら電子ドラムの低音も力強く、品のある音色を奏でる。
上位の「MXT20」は、ウーファーが165mmにサイズアップされ、ひとまわり大きい。そのため、中低音はリッチでスケール感や音の実在感が増す。ソロヴァイオリンのアタックが強く、臨場感も十分。スモーキーなノラの発声が若々しく伸びやかで、ピアノやドラムにも響きのニュアンスがMXT15よりも出てくる。トータルとしては、表現力豊かでどの音楽ジャンルにも相性がよく、ビギナーには最適と言えるだろう。
マットなブラックのデザインも、さまざまなシーンに馴染む印象で、特に響きのニュアンスに優れたMTX20はリビングオーディオにもお薦めだ。ニアフィールドでも良い鳴りっぷりだったMTX15は、デスクトップオーディオとしても活躍するだろう。
Signature Eliteシリーズは、美しいラウンド形状が特徴的。カラーバリエーションは、ブラウン、ブラック、ホワイトの3色を用意。トゥイーターはMonitor XTシリーズと同じテリレン・ドームを採用する一方で、ウーファーはマイカ強化のポリプロピレンを搭載。背面には、放熱板を備えたパワーポートを搭載していることがポイントだ。特殊なフレア形状が乱流を抑え、通常よりも3dB出力アップしている。
超コンパクトな「ES10」は、その見た目に反する厚みのある低音だ。このポートに負うところが大きいが、小音量時の再生音も持ち味であるようだ。クラシックはレンジが広いため音量には敏感であるが、逆に帯域が限られたポップスの場合は「ドーン・ドーン」といったバス音や、ヴォーカル帯域を気持ち良く鳴らせるかがポイントである。つまり、好みのジャンルにはまればES10の表現力が引き出せる。
MXT20とは価格は近いが、ややモニターっぽいサウンドを求めるならMXT20、流行りの音楽を気持ち良く鳴らせたいならES10、といったように好みで選び分けるのも手だろう。
次は165mmウーファー搭載の「ES20」だ。ES10に対して、かなり大型となり、奥行も長いためキャパ(容積)がある。そのサウンドも力強い太筆書きのタッチで大柄な音ではあるが、ES10よりもレンジが伸びて空間的なダイナミックさも向上している。ES10ではやや細味だったムターのヴァイオリン独奏が、堂々としたコンチェルト(協奏曲)になった。地につく低音表現でジャズ、ポップスも相性が良い。スピードのあるリズムパターンを得意とし、思わず体が動きそう。ノラの哀愁あるスモーキーボイスは何度も聴きたいと思わせる。デザイン性も含めて、Signature Eliteは芸術性を感じさせるシリーズである。
最後はReserveシリーズを聴こう。最上位に相応しい精悍な面構えで、リングトゥイーターとタービンコーンがシリーズの2枚看板となる。タービンコーンは、フォーム材を射出成型技術とタービン形状を組み合わせたもので、日本未導入の最上位「レジェンド」シリーズのために開発したそうだ。そして、砲弾型のXポートを背面に搭載する。
「R100」は低音たっぷりなES20に対して、クラシックもポップスも中低域からローエンドがすっきりと過不足がない。ポートはチューニングされた低音(エフゼロ)さえ出てくれば良いわけだが、Xポートの効果でヴォーカル帯域まで混濁が一切なく、ピュア感が最高だ。晴れ晴れとしたリアルな低音である。Signature Eliteはもう少し熱い情熱(パッション)を感じたのだが、対極ともいえそうなReserveシリーズの広帯域で整ったスクエアなサウンドも魅力的だ。
「R200」のS/NのスペックはR100と同じ86dBだが、体感能率は大柄なR200の方が高い。というか余裕の鳴り方で、静かに端正に音楽を奏でる。冷静なのに心に響いてくる。ムターは弓のアタックと離れぎわの複雑な動きをリアルに再現し、ジャズはクッキリと芯がある。R100同様に雑味を抑えた低音再生によってレスポンスが良く、キックドラムや明瞭なベースサウンドを堪能させてくれる。ビリーのハスキーかつ滑らかなヴォーカルは、健やかな余韻でフェードアウトし「そこまで描写するのか!」と感嘆した。王道のハイファイサウンドで、ベテランオーディオファイルにもぜひ聴いてもらいたいサウンドだ。
今回の試聴を通して、3シリーズ6モデルいずれも、さまざまなニーズに応えて入念に音づくりされていることが分かった。いろいろな音源をハイレゾストリーミングで堪能するなら、やはりReserveシリーズが音質的に最も魅力的だった。一方、入門クラスのMonitor XTシリーズは、ネットワークプレーヤーやCDプレーヤーにアンプと組み合わせた初めてのオーディオシステムに最適と言えるだろう。
個人的に好みのサウンドだったSignature Eliteシリーズは、レコードのウォームなサウンドをくつろぎながら堪能したいと思わせてくれた。超小型モデルもありバリエーションも豊富なので、セカンドシステムにもお薦めだ。
今回、試聴に使用したマランツのMODEL M1もポークのスピーカーと相性抜群だった。HDMI搭載でテレビとの接続にも対応するし、コンパクトでデスクトップにも使える。それぞれのスピーカーの描き分けも的確で、これからオーディオを楽しみたい人にもベストマッチングなアンプではないだろうか。
各スピーカーそれぞれの特徴や音の傾向も違い、相性の良い音楽ジャンルもある。サイズやデザイン含め、どんなシーンにマッチするのかもスピーカー選びでは重要なポイントである。そういう意味では、ポークオーディオのスピーカー群は、まさに学生が求めていた答になるんじゃないだろうか。
(提供:ディーアンドエムホールディングス株式会社)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です
豊富なラインナップでいずれも価格は良心的である
「良い音を学生でも買えるリーズナブルな価格で楽しめる」。それが米国ポークオーディオのポリシーだ。50年を越える長いキャリアを誇り、ここ日本でも豊富なラインナップを揃えて高い人気を集めている。
ところで私は専門学校の講師としても活動しており、学生から「安くていいスピーカーはないでしょうか?」「メーカーはどこがお薦めですか?」などの相談に乗ることが多い。そのため、若者が求める音楽やサウンドも熟知しているつもりだ。そこで今回は、ポークオーディオの全3シリーズから、ブックシェルフの2モデルずつを用意して各モデルのポイントを探った。学生はもちろん、ポークオーディオが気になっていた方やこれからオーディオを始めたい方、新たにシステムを組みたいベテランまで、ぜひ参考にしてほしい。
まず日本で展開している3シリーズを紹介すると、エントリーの「Monitor XT」シリーズ、ミドルクラスの「Signature Elite」シリーズ、そして最上位の「Reserve」シリーズとなる。いずれも価格は良心的で、最上位のReserveシリーズのトップモデル「R200」でもペアで約10万円。この物価上昇時代に驚きのプライスだ。
また、ポークオーディオが長い歴史の中で培ってきた基幹技術は、ひとつひとつに大事な意味がある。トゥイーターは共通してハイレゾ領域をカバーする40kHzに対応。そして、ウーファーやバスレフは、それぞれのシリーズで独自の技術を採用している。
ではさっそく、個々のモデルを紹介しつつ出音を聴くことにしよう。アンプはハイレゾ・ストリーミングに対応したマランツの「MODEL M1」を用意した。試聴は、マランツのネットワーク再生用アプリHEOSからハイレゾ対応のストリーミングサービスAmazon Music HDで再生する。
ジャズ・ヴォーカルはノラ・ジョーンズのデビュー作から「アイヴ・ガッタ・シー・ユー・アゲイン」。クラシックはアンネ=ゾフィー・ムターが参加したジョン・ウィリアムズの『ライヴ・イン・ウィーン』から「悪魔のダンス」、ポップスはビリー・アイリッシュのデビュー作から「バッド・ガイ」だ。
Monitor XTシリーズ
一番手は、エントリーとなるMonitor XTシリーズの「MXT15」。テリレンという合成繊維を用いたドーム型のトゥイーターと、130mmの樹脂系コンポジットウーファーとのコンビは、クセのない音作りが特徴だ。一般的なリアバスレフのシンプルな作りではあるが、バランスの良い鳴りっぷりで、シリーズ名の通りややモニター的なサウンド。ヴァイオリンがきりっとクリアに響き、ビリーのウィスパーボイスがよく通る。このサイズながら電子ドラムの低音も力強く、品のある音色を奏でる。
上位の「MXT20」は、ウーファーが165mmにサイズアップされ、ひとまわり大きい。そのため、中低音はリッチでスケール感や音の実在感が増す。ソロヴァイオリンのアタックが強く、臨場感も十分。スモーキーなノラの発声が若々しく伸びやかで、ピアノやドラムにも響きのニュアンスがMXT15よりも出てくる。トータルとしては、表現力豊かでどの音楽ジャンルにも相性がよく、ビギナーには最適と言えるだろう。
マットなブラックのデザインも、さまざまなシーンに馴染む印象で、特に響きのニュアンスに優れたMTX20はリビングオーディオにもお薦めだ。ニアフィールドでも良い鳴りっぷりだったMTX15は、デスクトップオーディオとしても活躍するだろう。
Signature Eliteシリーズ
Signature Eliteシリーズは、美しいラウンド形状が特徴的。カラーバリエーションは、ブラウン、ブラック、ホワイトの3色を用意。トゥイーターはMonitor XTシリーズと同じテリレン・ドームを採用する一方で、ウーファーはマイカ強化のポリプロピレンを搭載。背面には、放熱板を備えたパワーポートを搭載していることがポイントだ。特殊なフレア形状が乱流を抑え、通常よりも3dB出力アップしている。
超コンパクトな「ES10」は、その見た目に反する厚みのある低音だ。このポートに負うところが大きいが、小音量時の再生音も持ち味であるようだ。クラシックはレンジが広いため音量には敏感であるが、逆に帯域が限られたポップスの場合は「ドーン・ドーン」といったバス音や、ヴォーカル帯域を気持ち良く鳴らせるかがポイントである。つまり、好みのジャンルにはまればES10の表現力が引き出せる。
MXT20とは価格は近いが、ややモニターっぽいサウンドを求めるならMXT20、流行りの音楽を気持ち良く鳴らせたいならES10、といったように好みで選び分けるのも手だろう。
次は165mmウーファー搭載の「ES20」だ。ES10に対して、かなり大型となり、奥行も長いためキャパ(容積)がある。そのサウンドも力強い太筆書きのタッチで大柄な音ではあるが、ES10よりもレンジが伸びて空間的なダイナミックさも向上している。ES10ではやや細味だったムターのヴァイオリン独奏が、堂々としたコンチェルト(協奏曲)になった。地につく低音表現でジャズ、ポップスも相性が良い。スピードのあるリズムパターンを得意とし、思わず体が動きそう。ノラの哀愁あるスモーキーボイスは何度も聴きたいと思わせる。デザイン性も含めて、Signature Eliteは芸術性を感じさせるシリーズである。
Reserveシリーズ
最後はReserveシリーズを聴こう。最上位に相応しい精悍な面構えで、リングトゥイーターとタービンコーンがシリーズの2枚看板となる。タービンコーンは、フォーム材を射出成型技術とタービン形状を組み合わせたもので、日本未導入の最上位「レジェンド」シリーズのために開発したそうだ。そして、砲弾型のXポートを背面に搭載する。
「R100」は低音たっぷりなES20に対して、クラシックもポップスも中低域からローエンドがすっきりと過不足がない。ポートはチューニングされた低音(エフゼロ)さえ出てくれば良いわけだが、Xポートの効果でヴォーカル帯域まで混濁が一切なく、ピュア感が最高だ。晴れ晴れとしたリアルな低音である。Signature Eliteはもう少し熱い情熱(パッション)を感じたのだが、対極ともいえそうなReserveシリーズの広帯域で整ったスクエアなサウンドも魅力的だ。
「R200」のS/NのスペックはR100と同じ86dBだが、体感能率は大柄なR200の方が高い。というか余裕の鳴り方で、静かに端正に音楽を奏でる。冷静なのに心に響いてくる。ムターは弓のアタックと離れぎわの複雑な動きをリアルに再現し、ジャズはクッキリと芯がある。R100同様に雑味を抑えた低音再生によってレスポンスが良く、キックドラムや明瞭なベースサウンドを堪能させてくれる。ビリーのハスキーかつ滑らかなヴォーカルは、健やかな余韻でフェードアウトし「そこまで描写するのか!」と感嘆した。王道のハイファイサウンドで、ベテランオーディオファイルにもぜひ聴いてもらいたいサウンドだ。
どんなシーンにマッチするかもスピーカー選びでは重要である
今回の試聴を通して、3シリーズ6モデルいずれも、さまざまなニーズに応えて入念に音づくりされていることが分かった。いろいろな音源をハイレゾストリーミングで堪能するなら、やはりReserveシリーズが音質的に最も魅力的だった。一方、入門クラスのMonitor XTシリーズは、ネットワークプレーヤーやCDプレーヤーにアンプと組み合わせた初めてのオーディオシステムに最適と言えるだろう。
個人的に好みのサウンドだったSignature Eliteシリーズは、レコードのウォームなサウンドをくつろぎながら堪能したいと思わせてくれた。超小型モデルもありバリエーションも豊富なので、セカンドシステムにもお薦めだ。
今回、試聴に使用したマランツのMODEL M1もポークのスピーカーと相性抜群だった。HDMI搭載でテレビとの接続にも対応するし、コンパクトでデスクトップにも使える。それぞれのスピーカーの描き分けも的確で、これからオーディオを楽しみたい人にもベストマッチングなアンプではないだろうか。
各スピーカーそれぞれの特徴や音の傾向も違い、相性の良い音楽ジャンルもある。サイズやデザイン含め、どんなシーンにマッチするのかもスピーカー選びでは重要なポイントである。そういう意味では、ポークオーディオのスピーカー群は、まさに学生が求めていた答になるんじゃないだろうか。
(提供:ディーアンドエムホールディングス株式会社)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です