公開日 2017/09/19 10:59
オーディオにおけるDACって何?
今こそ知っておきたい「DAC」の基礎知識(前編) ー その役割や関連用語を解説
山之内 正
昨今のオーディオにおいて、「DAC(ダック)」という言葉が当たり前のように使われるようになりました。DACとはD/Aコンバーターを意味する言葉ですが、そもそもDACとはオーディオにおいていったいどんな役割をしているものなのでしょうか。
オーディオ評論家の山之内正氏が前・後編の2回にわたり、「DACとは何か」を基本からやさしくレクチャーしていきます。後編はこちら
<DACのことが丸わかり Q&A一覧>
【前編のテーマ】
Q1、そもそもDACの役割って何?
Q2、なぜDACで音が変わるの? オーディオにおいてDACが重要な理由
Q3、「DAC」というコンポーネントが増えた理由は?
Q4、デジタルフィルターの役割とは?
Q5、マルチビットDACと1ビットDACのちがいは?
【後編のテーマ】>>山之内正のDAC解説講座(後編)
Q6、ΔΣ変調の役割とは?
Q7、汎用DACチップと、オーディオメーカーによるオリジナルDACのちがいは?
Q8、汎用DACチップとオリジナルDACのメリット/デメリットは?
Q9、オリジナルDACを搭載した製品が増えているのはなぜ?
Q10、各社のオリジナルDACの特徴は?
※Q6〜10は後編にて掲載
【Q1】そもそもDACはどんな役割を行っているの?
DACは「Digital Analog Converter」の略で、「D/Aコンバーター」とも表記されます。文字通り、デジタル信号をアナログ信号に変換する回路またはコンポーネントを意味します。
音声の記録・再生では、記録を行うマイクも、最終的な再生を行うスピーカーも基本的にアナログです。ですからCDやハイレゾなどデジタル音源を楽しむためには、録音時にはアナログからデジタルへ、再生時にはデジタルからアナログへ変換することががそれぞれ不可欠です。
その後者の役割、デジタルからアナログへの変換を担うのがDACです。CDプレーヤーやネットワークプレーヤーにはオーディオ回路の一部として、DACが組み込まれています。
オーディオ・コンポーネントとしてのDACは、ソース機器からデジタル信号を受け取り、内部でアナログに変換した出力信号をアンプへ受け渡す役割を担いますが、基本的な機能はプレーヤーの内蔵回路と変わりません。
そしてプレーヤーか単体コンポーネントかを問わず、D/A変換機能をLSIなどの集積回路に集約したDACチップを中心に回路を構成する例が、大半を占めています。DACチップの製造には微細な加工プロセスが不可欠で、一般的なホームオーディオ製品に搭載されるDACの場合は、技術とノウハウを持つ半導体メーカーが主導権を握っていると言っていいでしょう。
デバイスとしてのDACチップは数ミリ角の小さなLSIですが、内蔵する機能は多岐にわたります。代表的なものとしてオーバーサンプリング、デジタルフィルター、ΔΣ変調、ノイズシェーピング、ローパスフィルターなど、複数の機能があります。
さらに、1個のチップで複数チャンネルの信号を処理するマルチチャンネル対応のDACも珍しくありません。そうした多機能なDACは、クロック回路や電源回路を組み合わせることで、D/A変換回路の基本的な機能の多くを実現することができます。
音質に独自のこだわりを持つハイエンドオーディオメーカーは、既存のDACチップの機能をすべて使わず、一部の回路を独自に設計することがあります。また、一部またはすべての回路を独自に開発し、個別部品を組み合わせるディスクリート構成のD/A変換回路を採用する例も増えてきました。
【Q2】なぜDACで音が変わるの? オーディオにおけるDACの重要度は?
デジタル録音は、マイクがとらえたアナログの電気信号を離散的なデジタル波形に置き換えることで、複製や伝送による劣化を回避している点に特徴があります。
DACは、そのデジタル信号をアナログ信号に戻すための回路ですが、一連の変換プロセスの精度を高めることはできても、元のアナログ信号とまったく同じ波形を完璧に復元することはできません。連続的な波形を離散的な数値に置き換える以上、そこで生じる誤差がノイズを発生するなど、デジタル処理固有の音質劣化が避けられないからです。
現代のデジタル技術は、アナログ波形を非常に高い精度で近似することができますが、現実には原信号と再生信号を完全に一致させることはできないのです。
一方、アナログの記録再生にはアナログ固有の音質劣化要因があり、デジタル以上に音質の変化や劣化が発生します。録音装置や再生機器の設計者は音質の変化をできるだけ小さくするためにさまざまな技術やノウハウを駆使しますが、その内容によって再生機器の音質は大きく左右されます。
デジタルの記録再生でも、デジタル固有の音質劣化を抑えるためにさまざまな技術を活用します。アナログとは劣化の要因が異なり、劣化を抑えるための手法も異なりますが、デジタルでも音質が変わるさまざまな要素が存在することは事実です。
そのため、DACのメーカーごとの違いだけでなく、同じDACチップを使っていても、その使いこなしの違いによって、オーディオ機器のメーカーごとに少なからぬ音の違いが存在します。
また、DACチップ以降はローパスフィルターをはじめとしてアナログ回路で構成される部分が多く、そこではアナログ的な要因でも音質が変わります。つまり、DACはデジタルとアナログ両方の要因で音が変わるため、最終的な音には意外に大きな違いが生まれるのです。
オーディオ評論家の山之内正氏が前・後編の2回にわたり、「DACとは何か」を基本からやさしくレクチャーしていきます。後編はこちら
<DACのことが丸わかり Q&A一覧>
【前編のテーマ】
Q1、そもそもDACの役割って何?
Q2、なぜDACで音が変わるの? オーディオにおいてDACが重要な理由
Q3、「DAC」というコンポーネントが増えた理由は?
Q4、デジタルフィルターの役割とは?
Q5、マルチビットDACと1ビットDACのちがいは?
【後編のテーマ】>>山之内正のDAC解説講座(後編)
Q6、ΔΣ変調の役割とは?
Q7、汎用DACチップと、オーディオメーカーによるオリジナルDACのちがいは?
Q8、汎用DACチップとオリジナルDACのメリット/デメリットは?
Q9、オリジナルDACを搭載した製品が増えているのはなぜ?
Q10、各社のオリジナルDACの特徴は?
※Q6〜10は後編にて掲載
【Q1】そもそもDACはどんな役割を行っているの?
DACは「Digital Analog Converter」の略で、「D/Aコンバーター」とも表記されます。文字通り、デジタル信号をアナログ信号に変換する回路またはコンポーネントを意味します。
音声の記録・再生では、記録を行うマイクも、最終的な再生を行うスピーカーも基本的にアナログです。ですからCDやハイレゾなどデジタル音源を楽しむためには、録音時にはアナログからデジタルへ、再生時にはデジタルからアナログへ変換することががそれぞれ不可欠です。
その後者の役割、デジタルからアナログへの変換を担うのがDACです。CDプレーヤーやネットワークプレーヤーにはオーディオ回路の一部として、DACが組み込まれています。
オーディオ・コンポーネントとしてのDACは、ソース機器からデジタル信号を受け取り、内部でアナログに変換した出力信号をアンプへ受け渡す役割を担いますが、基本的な機能はプレーヤーの内蔵回路と変わりません。
そしてプレーヤーか単体コンポーネントかを問わず、D/A変換機能をLSIなどの集積回路に集約したDACチップを中心に回路を構成する例が、大半を占めています。DACチップの製造には微細な加工プロセスが不可欠で、一般的なホームオーディオ製品に搭載されるDACの場合は、技術とノウハウを持つ半導体メーカーが主導権を握っていると言っていいでしょう。
デバイスとしてのDACチップは数ミリ角の小さなLSIですが、内蔵する機能は多岐にわたります。代表的なものとしてオーバーサンプリング、デジタルフィルター、ΔΣ変調、ノイズシェーピング、ローパスフィルターなど、複数の機能があります。
さらに、1個のチップで複数チャンネルの信号を処理するマルチチャンネル対応のDACも珍しくありません。そうした多機能なDACは、クロック回路や電源回路を組み合わせることで、D/A変換回路の基本的な機能の多くを実現することができます。
音質に独自のこだわりを持つハイエンドオーディオメーカーは、既存のDACチップの機能をすべて使わず、一部の回路を独自に設計することがあります。また、一部またはすべての回路を独自に開発し、個別部品を組み合わせるディスクリート構成のD/A変換回路を採用する例も増えてきました。
【Q2】なぜDACで音が変わるの? オーディオにおけるDACの重要度は?
デジタル録音は、マイクがとらえたアナログの電気信号を離散的なデジタル波形に置き換えることで、複製や伝送による劣化を回避している点に特徴があります。
DACは、そのデジタル信号をアナログ信号に戻すための回路ですが、一連の変換プロセスの精度を高めることはできても、元のアナログ信号とまったく同じ波形を完璧に復元することはできません。連続的な波形を離散的な数値に置き換える以上、そこで生じる誤差がノイズを発生するなど、デジタル処理固有の音質劣化が避けられないからです。
現代のデジタル技術は、アナログ波形を非常に高い精度で近似することができますが、現実には原信号と再生信号を完全に一致させることはできないのです。
一方、アナログの記録再生にはアナログ固有の音質劣化要因があり、デジタル以上に音質の変化や劣化が発生します。録音装置や再生機器の設計者は音質の変化をできるだけ小さくするためにさまざまな技術やノウハウを駆使しますが、その内容によって再生機器の音質は大きく左右されます。
デジタルの記録再生でも、デジタル固有の音質劣化を抑えるためにさまざまな技術を活用します。アナログとは劣化の要因が異なり、劣化を抑えるための手法も異なりますが、デジタルでも音質が変わるさまざまな要素が存在することは事実です。
そのため、DACのメーカーごとの違いだけでなく、同じDACチップを使っていても、その使いこなしの違いによって、オーディオ機器のメーカーごとに少なからぬ音の違いが存在します。
また、DACチップ以降はローパスフィルターをはじめとしてアナログ回路で構成される部分が多く、そこではアナログ的な要因でも音質が変わります。つまり、DACはデジタルとアナログ両方の要因で音が変わるため、最終的な音には意外に大きな違いが生まれるのです。
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