公開日 2022/02/01 07:00
「LPを持っているけれど、針を降ろしたことはありません」という方に
25歳から始めるアナログオーディオ。「レコード再生に必要な機材」編
福田雅光/編集部・松永達矢
「コレクションアイテムとしてLPを持っているけれど、針を降ろしたことはありません」、そんな若い人たちにアナログレコードを実際に再生してその良さを知ってほしい。そんな思いを込めて、季刊analog誌にて展開したアナログ入門企画をファイルウェブでも掲載する。
今回は講師にオーディオ評論家・福田雅光氏を迎え、レコード再生に必要な機材とその役割について解説する。
若い入門者のみならず、レコード再生をしばらくお休みしていたけれど、もう一度始めたい、というリターナーの皆さんにも、ぜひ基礎の確認のためにお読みいただければ幸いだ。
■フォノイコライザーという特殊な増幅装置を用いて増幅
――レコード再生に興味を持ち、勉強している最中なのですが、LPを再生するにはどのような装置が必要なのでしょうか?
福田 オーディオシステムはスピーカーと駆動するアンプ、そしてプレーヤーが基本構成となります。CDの再生ではCDプレーヤーをアンプに接続するように、LPレコードを再生するにはアナログプレーヤーが必要になります。
――アナログプレーヤーの出力ケーブルは、プリメインアンプのCD入力と同じように、ライン入力端子に接続すればいいのでしょうか?
福田 いや、そこが違うのです。「PHONO入力」という端子に入力します。
アナログプレーヤーからの出力信号(カートリッジの出力信号)は、ある種特殊な信号で、CDとはまるで違うものです。専用の機能を持つ増幅回路が必要なんです。
――特殊な信号というのは、レコードの音溝から拾った信号のことですか?
福田 そうです。アナログ盤の音溝に機械的な振幅となって記録されているため、巧みな処理をしているんです。これをしないと困るのは、重低音から中低音の信号です。大太鼓やコントラバスなどの音ですね。それら低い音の信号は振り幅が大きく、そのまま溝を刻むと溝の間隔を大きくしなければならないのです。すると、レコード盤は長時間の記録ができません。そこで、レコードに一定振幅で記録をするために、低い音の音量を思い切って下げるようにしたのです。一方、高音は溝が細かくてノイズに弱くなる。このため、高音側は大きな信号にして記録しているのです。
――高域を大きい音として、低域を小さい音として記録することで、レコードは一定振幅記録になったんですね。
福田 はい。それによってレコードは性能と記録時間を大きく進化させることができました。
――先程お話していた「増幅回路」とは、このことが関係するのでしょうか。
福田 そうです。その回路を持つアンプを、フォノイコライザー(EQ)といいます。EQは等化回路のこと。小さい音にしていた低音を大きく増幅し、逆に大きい音にしていた高音は、減衰させる特性にするという「イコライザーカーブ」を通して、「もとのバランスに戻す増幅回路」です。プレーヤーからの出力は、この回路を通してから、ライン入力経路に向かいます。
――なるほど、フォノイコライザーを、プレーヤーとアンプの間に介在させればいいのですね。
福田 フォノイコラザーアンプは、プリメインアンプに内蔵されていることがよくあります。内蔵されている場合は、別途購入する必要はありません。ただし、内蔵フォノイコはMMカートリッジのみにしか対応していないことがままあります。内蔵していない場合は、外部に単売されているフォノイコライザーアンプを使います。
■MM、MCによってさらに増幅回路が異なる
――MM対応などの話が出ましたが、アナログプレーヤーで使うカートリッジについて教えてください。
福田 レコード盤の音溝に刻まれた機械的な信号を電気信号に変換するのがカートリッジです。精密な仕組みで作られた、音の源流です。いくつか種類がありますが、主にMM型とMC型が現在の主流です。
――今回用意したプレーヤーに付属していたのはMM型カートリッジでした。普通、どちらのカートリッジを選べばいいのでしょうか?
福田 2種類のカートリッジは振動電圧変換構造の違いで、マグネットとコイルという関係を使っています。振動を直接コイルで拾い出力するのがMC型、振動をマグネットに伝え、固定したコイルで信号発生するのがMM型です。後者の方がコイルをたくさん巻くことができるため出力電圧が大きく得られます。一般には、価格が手頃で、針交換も安く簡単にできるなど、初めてのシステムを組むという観点では、MM型のメリットが大きいでしょう。
――MC型もいいかもな、となったらカートリッジを交換して使うこともできるのでしょうか?
福田 そうですね。ところが、MC型はMM型とは別世界で、信号出力はMM型の 10分の1しかありません。MM型は約5mV、MC型は約0.3mVです。したがって、MC型カートリッジを使うには、信号出力を10〜20倍増幅する必要があります。
そのために「ヘッドアンプ」(電子回路方式)や、「昇圧トランス」(ステップアップ・トランス/MCトランス)などをプラスする必要があります。昇圧トランスをMM対応のフォノイコライザーの前に接続して使います。
また、中級プリメインアンプにはMC昇圧の機能を内蔵しているものもあります。最近の製品で一例を挙げるとデノンのPMA-A110がこれにあたりますね。
前述したように単体のフォノイコライザーを使うのであれば、大抵がMMとMC両方に対応していますので、カートリッジのタイプに合わせて切り替えて使うことができます。
――レコード再生に関する理解がより深まりました! この度はありがとうございました!
今回は講師にオーディオ評論家・福田雅光氏を迎え、レコード再生に必要な機材とその役割について解説する。
若い入門者のみならず、レコード再生をしばらくお休みしていたけれど、もう一度始めたい、というリターナーの皆さんにも、ぜひ基礎の確認のためにお読みいただければ幸いだ。
■フォノイコライザーという特殊な増幅装置を用いて増幅
――レコード再生に興味を持ち、勉強している最中なのですが、LPを再生するにはどのような装置が必要なのでしょうか?
福田 オーディオシステムはスピーカーと駆動するアンプ、そしてプレーヤーが基本構成となります。CDの再生ではCDプレーヤーをアンプに接続するように、LPレコードを再生するにはアナログプレーヤーが必要になります。
――アナログプレーヤーの出力ケーブルは、プリメインアンプのCD入力と同じように、ライン入力端子に接続すればいいのでしょうか?
福田 いや、そこが違うのです。「PHONO入力」という端子に入力します。
アナログプレーヤーからの出力信号(カートリッジの出力信号)は、ある種特殊な信号で、CDとはまるで違うものです。専用の機能を持つ増幅回路が必要なんです。
――特殊な信号というのは、レコードの音溝から拾った信号のことですか?
福田 そうです。アナログ盤の音溝に機械的な振幅となって記録されているため、巧みな処理をしているんです。これをしないと困るのは、重低音から中低音の信号です。大太鼓やコントラバスなどの音ですね。それら低い音の信号は振り幅が大きく、そのまま溝を刻むと溝の間隔を大きくしなければならないのです。すると、レコード盤は長時間の記録ができません。そこで、レコードに一定振幅で記録をするために、低い音の音量を思い切って下げるようにしたのです。一方、高音は溝が細かくてノイズに弱くなる。このため、高音側は大きな信号にして記録しているのです。
――高域を大きい音として、低域を小さい音として記録することで、レコードは一定振幅記録になったんですね。
福田 はい。それによってレコードは性能と記録時間を大きく進化させることができました。
――先程お話していた「増幅回路」とは、このことが関係するのでしょうか。
福田 そうです。その回路を持つアンプを、フォノイコライザー(EQ)といいます。EQは等化回路のこと。小さい音にしていた低音を大きく増幅し、逆に大きい音にしていた高音は、減衰させる特性にするという「イコライザーカーブ」を通して、「もとのバランスに戻す増幅回路」です。プレーヤーからの出力は、この回路を通してから、ライン入力経路に向かいます。
――なるほど、フォノイコライザーを、プレーヤーとアンプの間に介在させればいいのですね。
福田 フォノイコラザーアンプは、プリメインアンプに内蔵されていることがよくあります。内蔵されている場合は、別途購入する必要はありません。ただし、内蔵フォノイコはMMカートリッジのみにしか対応していないことがままあります。内蔵していない場合は、外部に単売されているフォノイコライザーアンプを使います。
■MM、MCによってさらに増幅回路が異なる
――MM対応などの話が出ましたが、アナログプレーヤーで使うカートリッジについて教えてください。
福田 レコード盤の音溝に刻まれた機械的な信号を電気信号に変換するのがカートリッジです。精密な仕組みで作られた、音の源流です。いくつか種類がありますが、主にMM型とMC型が現在の主流です。
――今回用意したプレーヤーに付属していたのはMM型カートリッジでした。普通、どちらのカートリッジを選べばいいのでしょうか?
福田 2種類のカートリッジは振動電圧変換構造の違いで、マグネットとコイルという関係を使っています。振動を直接コイルで拾い出力するのがMC型、振動をマグネットに伝え、固定したコイルで信号発生するのがMM型です。後者の方がコイルをたくさん巻くことができるため出力電圧が大きく得られます。一般には、価格が手頃で、針交換も安く簡単にできるなど、初めてのシステムを組むという観点では、MM型のメリットが大きいでしょう。
――MC型もいいかもな、となったらカートリッジを交換して使うこともできるのでしょうか?
福田 そうですね。ところが、MC型はMM型とは別世界で、信号出力はMM型の 10分の1しかありません。MM型は約5mV、MC型は約0.3mVです。したがって、MC型カートリッジを使うには、信号出力を10〜20倍増幅する必要があります。
そのために「ヘッドアンプ」(電子回路方式)や、「昇圧トランス」(ステップアップ・トランス/MCトランス)などをプラスする必要があります。昇圧トランスをMM対応のフォノイコライザーの前に接続して使います。
また、中級プリメインアンプにはMC昇圧の機能を内蔵しているものもあります。最近の製品で一例を挙げるとデノンのPMA-A110がこれにあたりますね。
前述したように単体のフォノイコライザーを使うのであれば、大抵がMMとMC両方に対応していますので、カートリッジのタイプに合わせて切り替えて使うことができます。
――レコード再生に関する理解がより深まりました! この度はありがとうございました!