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公開日 2024/09/23 06:30
改めて知りたいオーディオ基礎知識解説 Powered by オーディオランド

オーディオ機器ってやっぱり大きい方がいいの? サイズの影響を解説

炭山アキラ
オーディオは実に奥深く、様々な要素が音に影響してくる。だからこそ楽しい趣味なのだが、初心者のうちは分からないことも多く、また熟練したファンであっても、詳しいことは意外と知らないなんてことがあるのではないだろうか。

そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では、改めて知りたい「オーディオ機器におけるサイズの影響」について紹介しよう。

■オーディオ機器におけるサイズの影響とは?



長年オーディオへ取り組んできた我々にとって、オーディオ機器といえば420〜480mmくらいの横幅を持つ箱型の筐体がすぐ思い浮かぶ。しかし、オーディオ全盛期の1970年代にも、テクニクスの「コンサイスコンポ」をはじめとする「LPジャケットサイズ」の製品群がいくつかの社から登場していたし、CD時代には「ハイコンポ」と呼ばれる横幅270〜200mm程度の小型コンポーネントが存在した。その流れは、現在も細々ながら続いている。


また、21世紀に入ってから手のひらへ乗るような超小型の、俗にいう「デジタルアンプ」が増えてきた。横幅400mm台の、いわゆるフルコンポサイズ製品に比べると心細くなってしまうような小ささだが、ああ見えて意外と大型スピーカーでもガンガン鳴らす製品が多く、結構侮れないジャンルである。

実際問題として、例えばCDプレーヤーやネットワークプレーヤーも、手のひらサイズのデジタルアンプと寸法をそろえた製品を作ることは、今の技術では全然難しいことではない。それではなぜ、私たちは大きく重いフルコンポサイズのアンプやプレーヤーを愛用してしまうのか。

大きなコンポーネントに有利な点は、いうまでもなく筐体の内容積に余裕があることだ。アンプを一例として挙げると、前にも解説したが、電源部は雄大豪壮な再現を求めるとどうしても大きなものが必要になる。余裕をもって大出力を発揮するには、電源トランスやコンデンサーが巨大になってしまうことが避けられない。同時に、出力素子も大型のものを採用し、数も増やさねばならず、そうなれば放熱も大変で、巨大なヒートシンクを装着せねばならない。本格派を極めようとすればするほど、絶対的な内容積が必要になるのはオーディオの宿命といってもよいだろう。

その道筋の終局近くに存在する、モンスター的な製品を紹介しよう。究極のスピーカー駆動能力を獲得するため、テクニカルブレーンという社のパワーアンプ「TBP-Zero/EX2」は、モノラル型を2台並べると横幅は700mm近く、高さは250mm、奥行きも600mmという怪物となってしまっている。手のひらデジタルアンプと、一体何という存在感の違いであることか。

「TBP-Zero/EX2」

また、大ぶりのパーツ類をギリギリの内容積へ収めると、音質に問題が出る可能性が高い。パーツ類が隣接して配置されると、それぞれの輻射や振動で相互干渉が起こって音を濁す可能性があるし、あまりパーツ同士のすき間が狭いと放熱の効率も悪くなってしまう。さらに、内部配線の最短化・合理化を進めるなら、やはり余裕を持った合理的なパーツ配置が必要になり、結果としてより筐体の余裕を要求する、というわけだ。

それでは、大きな筐体でなければ高品位のアンプを作ることはできないのか。答えは「NO」だ。最も極端な例を挙げると、四十七研究所のパワーアンプModel4706c「ゲインカード」は、横幅170mm、奥行き100mm、そして高さは何と40mmという、極小のシャシーから25W+25W(8Ω)の出力を発揮する。可能な限り回路をシンプル化してパーツの数を削減するとともに、内部配線の長さをギリギリまで短くすること、またNFBのループも最短で接続することで、ハッとするような生々しさと人肌の温かみを表現することに成功した、47研の創業社長にして天才エンジニア・木村準二氏の傑作である。ただし電源部は別体式で、本体よりも遥かに大きなModel4700「パワー・ハンプティ」を用いなければならないが。

Model4706c「ゲインカード」

それでは大きいのと小さいの、機器はどっちがいいのか。実もフタもないいい方をするなら、大きさに必然性のあるものがいい機器だ、といってしまってよいだろう。ゲインカードがあの大きさに収まっているのは、25W+25Wという小出力を良しとしたから、という側面も見逃せないし、筐体が小型化するということは、同じ部材を用いて構成しても、相対的な強度は大幅に向上することとなる。

一方、大出力かつ高品位のアンプを作ろうとするなら、巨大化した電源部やヒートシンクの鳴きを抑えるため、シャシーも頑丈なものを用意してやらねばならず、それでまた大きく重くなるというわけだ。アキュフェーズやラックスマンなどの高級機に見られる分厚いアルミ製の筐体は、ただのコスメティックではなく、高音質を支えるためになくてはならないものなのである。

また、例えば前述の小型デジタルアンプなどでも、しっかりオーディオ用に設計・製作された大型のACアダプターを組み合わせてやれば、音質が劇的に向上することがある。そういう意味からすると、やはり高音質に大型化はある程度避けられないものなのか、という結論へたどり着かざるを得ない。

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(提供:オーディオランド)

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