公開日 2024/10/21 06:30
改めて知りたいオーディオ基礎知識解説 Powered by オーディオランド
流行りの「アナログレコード」、CDやサブスクでは味わえない魅力とは?
炭山アキラ
オーディオは実に奥深く、様々な要素が音に影響してくる。だからこそ楽しい趣味なのだが、初心者のうちは分からないことも多く、また熟練したファンであっても、詳しいことは意外と知らないなんてことがあるのではないだろうか。
そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では、改めて知りたい「アナログレコード」について紹介しよう。
もうこの10年ほどにもなろうか、アナログが復権し、オーディオのメインソースとなってきた感が強い。若い人たちの間では、レコードというより「ヴァイナル」といった方が通りが良いだろうか。
それではなぜ、この21世紀にアナログなのか。一つには、ネット配信やサブスクに押されてCDやSACDなどの物理ディスクが退潮気味で、相対的にレコードの存在感が高まってきたという側面は否めない。
しかし、レコードは世界で売れ行きを大きく伸ばしており、日本では未だCDもある程度の数が売れているが、多くの国ではCDを完全に圧倒し、レコードがどんどん売れ続けている。ただCDが売れなくなったから、というだけではない理由が、そこには潜んでいそうである。
今はデジタル技術で何でも物事が進んでいる感がある。曖昧な部分を排して効率を上げることにかけて、デジタルは本当に優れており、この流れは速まることこそあれ、下火になることはないだろう。そんな曖昧さのなくなったご時世に、いささか住みづらさを感じている人は、そう少なくないのではないか。デジタル・デトックス(デジタルの解毒)なんて言葉が出てくる世の中だ。
そういう人たちにとって、アナログレコードが奏でるサウンドは、絶妙の癒やしとなるのではないか。曖昧といえば何だか悪いことのように感じられるかもしれないが、それを「細かなディテール」と読み替えれば、まさにアナログサウンドそのものを指しているようにすら感じられるものだ。
しっかりと整備されたアナログの再生装置で聴くと、まさに音楽のディテールが濃厚に立ち昇る。それに対して一般的なデジタル音源は、同じ曲を聴いてもきちんとまとまってはいるが、どこか抑揚などに一歩足りないものを感じたりしがちである。
もっとも、デジタルだってしっかりと再生すればどんどんディテールが豊かになり、色鮮やかな音楽になっていくものではあるから、あくまで程度問題ともいえるのだが……。それに、サブスクはもちろんCDだって、昨今は円盤が回っているところが見えるプレーヤーなどほとんど見かけない。一方アナログのレコードプレーヤーは、プラッターへ乗った盤が粛々と回り、トーンアームが目では分からないくらいゆっくりと、外周から内周へ歩を進める。音楽再生中のそんな佇まいを見ているだけでも、俗にいうASMR的な効果があるのではないだろうか。
一方、2000年に亡くなられたオーディオ評論家の長岡鉄男氏は、「アナログはデジタルなど及びもつかない、ハードでシャープでダイナミックな音が再現できる」と提唱されていた。確かに、「長岡A級外盤」と呼ばれるレコードの一部では、目にも止まらぬ居合抜きの太刀さばき、巨大なフライパンで後頭部を引っ叩かれるような超ハイスピードのアタック、頭蓋骨を開いて脳髄を引っ掻き回されるような音の洪水、空気の固い塊が胸板を直撃するような低域のパルスなどなど、ちょっと普通では考えられないような音楽体験をもたらしてくれたものである。
それらA級外盤の一部はCD化されたが、ごく限られたタイトルを除き、長岡氏のシアタールーム「方舟」での再生では、レコードにどうしても及ばなかった。こんな音を再現するには、長岡氏が生涯愛されたバックロードホーンや共鳴管など、フルレンジ・スピーカーをベースとした自作スピーカーと、それらを万全にドライブするアンプ、そして何よりA級外盤の魅力を存分に発揮させるプレーヤーとトーンアーム、カートリッジがそろわなければならない。ある意味とても特殊なアナログの世界だが、それでも長岡ソフトのより好ましい再現を目指して、自らの装置を磨き続けているファンは決して少なくない。
流れ出す音楽とともに、ゆっくりと過ぎる時間を楽しむためのアナログ、音が出ていなくてもその佇まいだけで人を癒やすアナログ、そしてデジタルではたどり着けない高みへ昇るための「究極のオーディオソフト」としてのアナログ。煎じ詰めれば、アナログとは「自分の気に入った世界観を構築するための、ノリシロが大きなオーディオの世界」といってよいのではないか。
私もアナログにこだわり始めてもう40年以上が経過したが、ノウハウが蓄積するに連れ、同じ機材からどんどん良い音が再生できるようになってくる。自分の腕前を振るうことで、自分好みの音へより近づけやすいという意味においては、オーディオマニア冥利に尽きるジャンルといってよかろう。
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そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では、改めて知りたい「アナログレコード」について紹介しよう。
■改めて知りたい、「アナログレコード」の魅力とは?
もうこの10年ほどにもなろうか、アナログが復権し、オーディオのメインソースとなってきた感が強い。若い人たちの間では、レコードというより「ヴァイナル」といった方が通りが良いだろうか。
それではなぜ、この21世紀にアナログなのか。一つには、ネット配信やサブスクに押されてCDやSACDなどの物理ディスクが退潮気味で、相対的にレコードの存在感が高まってきたという側面は否めない。
しかし、レコードは世界で売れ行きを大きく伸ばしており、日本では未だCDもある程度の数が売れているが、多くの国ではCDを完全に圧倒し、レコードがどんどん売れ続けている。ただCDが売れなくなったから、というだけではない理由が、そこには潜んでいそうである。
今はデジタル技術で何でも物事が進んでいる感がある。曖昧な部分を排して効率を上げることにかけて、デジタルは本当に優れており、この流れは速まることこそあれ、下火になることはないだろう。そんな曖昧さのなくなったご時世に、いささか住みづらさを感じている人は、そう少なくないのではないか。デジタル・デトックス(デジタルの解毒)なんて言葉が出てくる世の中だ。
そういう人たちにとって、アナログレコードが奏でるサウンドは、絶妙の癒やしとなるのではないか。曖昧といえば何だか悪いことのように感じられるかもしれないが、それを「細かなディテール」と読み替えれば、まさにアナログサウンドそのものを指しているようにすら感じられるものだ。
しっかりと整備されたアナログの再生装置で聴くと、まさに音楽のディテールが濃厚に立ち昇る。それに対して一般的なデジタル音源は、同じ曲を聴いてもきちんとまとまってはいるが、どこか抑揚などに一歩足りないものを感じたりしがちである。
もっとも、デジタルだってしっかりと再生すればどんどんディテールが豊かになり、色鮮やかな音楽になっていくものではあるから、あくまで程度問題ともいえるのだが……。それに、サブスクはもちろんCDだって、昨今は円盤が回っているところが見えるプレーヤーなどほとんど見かけない。一方アナログのレコードプレーヤーは、プラッターへ乗った盤が粛々と回り、トーンアームが目では分からないくらいゆっくりと、外周から内周へ歩を進める。音楽再生中のそんな佇まいを見ているだけでも、俗にいうASMR的な効果があるのではないだろうか。
一方、2000年に亡くなられたオーディオ評論家の長岡鉄男氏は、「アナログはデジタルなど及びもつかない、ハードでシャープでダイナミックな音が再現できる」と提唱されていた。確かに、「長岡A級外盤」と呼ばれるレコードの一部では、目にも止まらぬ居合抜きの太刀さばき、巨大なフライパンで後頭部を引っ叩かれるような超ハイスピードのアタック、頭蓋骨を開いて脳髄を引っ掻き回されるような音の洪水、空気の固い塊が胸板を直撃するような低域のパルスなどなど、ちょっと普通では考えられないような音楽体験をもたらしてくれたものである。
それらA級外盤の一部はCD化されたが、ごく限られたタイトルを除き、長岡氏のシアタールーム「方舟」での再生では、レコードにどうしても及ばなかった。こんな音を再現するには、長岡氏が生涯愛されたバックロードホーンや共鳴管など、フルレンジ・スピーカーをベースとした自作スピーカーと、それらを万全にドライブするアンプ、そして何よりA級外盤の魅力を存分に発揮させるプレーヤーとトーンアーム、カートリッジがそろわなければならない。ある意味とても特殊なアナログの世界だが、それでも長岡ソフトのより好ましい再現を目指して、自らの装置を磨き続けているファンは決して少なくない。
流れ出す音楽とともに、ゆっくりと過ぎる時間を楽しむためのアナログ、音が出ていなくてもその佇まいだけで人を癒やすアナログ、そしてデジタルではたどり着けない高みへ昇るための「究極のオーディオソフト」としてのアナログ。煎じ詰めれば、アナログとは「自分の気に入った世界観を構築するための、ノリシロが大きなオーディオの世界」といってよいのではないか。
私もアナログにこだわり始めてもう40年以上が経過したが、ノウハウが蓄積するに連れ、同じ機材からどんどん良い音が再生できるようになってくる。自分の腕前を振るうことで、自分好みの音へより近づけやすいという意味においては、オーディオマニア冥利に尽きるジャンルといってよかろう。
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