開発のキーマンに製品の狙いと背景を訊く
【CES】「スマートウェア」は「つけ爪」のようなもの − ソニーモバイル黒住氏に訊く新デバイスの詳細
もうひとつ例を言えば、暑い夏で汗をかいているときに、クーラーの効いた電車に乗った際にも「いいね」などと思ったりすることでしょう。そういう瞬間も「いいね」と覚えておきたいということです。
そこでスマートバンドでは、そうしたときにボタンを押して「いいね」と思ったことをブックマークしておこうと考えました。この「いいね」は自分の内に込めている「いいね」です。寝る前に、「ああ、あれはよかったな」と思うような感じですね。
最近、歳のせいか寝る前に一日にあったことを思い出せなかったりもするんです。私はテストも兼ねて常時スマートバンドをつけていますので、そんなときに「あれ?このとき『いいね』って出てるな。何だったかな?」と考えて、「ああ、あのとき、花を見たんだな」など写真を見返すこともできるわけです。現代の技術を使って、自分の感情のインパクトを自然な形で記録できるんですよ。
■「従来のウェアラブル型商品は、あまりエンターテイメントを意識していなかった」
また、やっぱりソニーですから「エンターテイメント」もポイントですね。エンターテイメントというのは我々の根っこというか、土台にあることだと思ってます。
これまでのウェアラブル型の商品というのは、あまりエンターテイメントを意識していなかったと思います。本体だけで処理しようとすると、エンターテイメントをなかなか実現しにくいので、それも当たり前と言えば当たり前ですよね。
そこで、そこはスマートフォンとの関係で処理しようと考えときに、Xperiaを持つソニーモバイルがスマートウェアを手がける必然性が出てくるわけです。Xperiaの根っこには色々なエクスペリエンスができるということがありますが、そのなかの大きな部分が、人々の生活のコアである「エンターテイメント」なのかな、と。そして、スマートウェアでそれをもう少し延長することができるんじゃないかな、と考えたのです。
そうしたものが合わさった形でライフログアプリケーションというものが成立していて、スマートバンドという端末とアプリの2つが組み合わさることで、スマートウェアエクスペリエンスというものが成立すると考えています。
もちろん、技術というのはどんどん進化するものです。今の世代ではこういう形でしか成立していないものが、将来的にはスマートウェアのような形で通信もできるようになるかもしれません。そのときにはこの端末からダイレクトにクラウドにアクセスする機能を持たせればいいでしょう。ただ、そうした未来がくる前に、どうにかして端末だけで完結させようとしてしまうと、それは人々にとって、常時装着しておくには難しい製品になってしまうでしょう。
■「スマートウェアはソニーの得意分野」
私からするとスマートウェアという考え方というのは、実はソニーがもっとも得意としているところなんじゃないかなと思っているんです。平井もコメントしたように、1つの面白いやりかたというのは、コアというものが存在することによって、変身じゃないけど、いろんな形を実現できるわけです。