<山本敦のAV進化論 第48回>MWCで発表された新モデルの背景
“画と音が良いタブレット”「Xperia Z4 Tablet」開発者インタビュー
「ソニーが国内で展開するモバイル端末はすべて防水仕様としていますが、静電容量方式のタッチパネルを採用しているので、濡れていると水に反応してしまい使いにくくなるという声もいただいていました。Z4 Tabletから新しいコントローラーICを搭載したことで、水濡れに対する操作性がZ2 Tabletよりも数段アップしています」(ファン氏)。
今回はパネルにスプレーで水を吹き付け、ドローイングアプリを立ち上げて指で描画する実験も行った。これまでは濡れている手で何かを書くと途切れ途切れになったり、描画のエラーが発生して不便に感じられることもあったが、なるほど確かに誤動作がなく、反応も機敏だ。図形が正確に描けるし、もたつく感じもない。
ファン氏の説明によると、パネルは「無操作状態/指が触れている状態/水がかかっている状態/濡れている指で触っている状態」の4種類のステータスを自動判別して、正確な操作を実現できるよう設計されているという。ファン氏は「過去最強のタッチパネルの精度を実現した」と自信をみせる。
「本機のデザインがスタートした頃から、タッチパネルのセンサー技術を主に扱うパートナー企業と一緒にチューニングを検証してきました。2Kの高精細ディスプレイなので、タッチ精度を上げると、そのぶんシビアなノイズ対策が求められます。LTEセルラーモデルになると、さらにタッチセンサーにとってノイズ源にもなる通信モジュールとの距離も近いので、余計に苦労が増しました」(ファン氏)。一般的に有機ELパネルの場合はタッチセンサーに対するノイズ対策を行いやすいが、液晶で同等の性能を実現するには並大抵でない苦労があったとファン氏は打ち明ける。
これらの努力により、タッチ操作へのレスポンスはスマートフォンの「Xperia Z2」に比べて約2倍に向上しているそうだ。さらにタブレットの場合、パネル自体が大きくなるので、これに伴って抵抗値が高くなり、感度が下がることから、精度をキープしたり、または高めることが難しくなる。Z4 Tabletの場合、10.1型の大画面サイズで5インチスマートフォンに迫る精度を実現したと言葉で聞いてもいまひとつピンと来ないと思うので、日本発売が決定したらぜひ実機で体験することをおすすめしたい。画面が濡れていることを意識させないほどのタッチ精度だ。
いくら本体が防水仕様のタブレットとは言え、本体の画面が濡れている状態はノーマルではない。なぜそこまでソニーのエンジニアはこだわるのだろうか? 「これまでのXperiaシリーズのユーザーから集めた声を聞くと、タブレットを風呂場で使いたいという反響が多くありました。子供と一緒にお風呂に入るときに動画やゲームを見せながら遊ばせたり、雑誌を読んだり、ワンセグでテレビを楽しんだりと、バスタイムのお供にタブレットを活用するユーザーは多くいらっしゃいます。ユーザーの方々のライフスタイルに寄り添いながら、使い勝手を高めていくことを何とか実現したいと考えました」とファン氏は答える。
■iPadに対する勝算は? 数々の高機能は「One Sony」の中でこそ活きてくる
MWC 2015の会場でソニーモバイルコミュニケーションズが日本人記者向けに開催したグループインタビューでは(関連ニュース)、Z4 Tabletの商品企画を担当した伊藤博史氏が、10型クラスのAndroidタブレット市場全般の展望について「今後急に落ちることはなく、ユーザーのレンジが広がっているから伸びも期待できる」とコメントした。ソニーとしてもプレミアムクラスのタブレットとしてZ4 Tabletを位置づけながら、世界の中で地域を限定しながら本機を展開していく考えだ。
だが実際のところXperiaタブレットに限らず、10型クラス前後のAndroidタブレットがiPadと対向したときに勝算はあるのだろうか? 同市場は既にアップルの一人勝ちと評価する向きもある。
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