両社の技術者が最終製品とDACについて語る
「UD-503」はなぜDACに「AK4490」を採用したのか? ティアック × AKM 特別座談会
佐藤:DACの開発においては、-100dBの壁を超えるのが大変難しかったんです。歪み特性の部分ですね。それを乗り越えるのにかなり時間がかかりました。結果的に、最高で-110dB程度まで下げることができました。
ーー -110dBというのはすごい数値ですね。前回のインタビューでも「ここまで下げる必要があるのか、というところまで下げると、音が格段に変わってくる」というお話がありました。
佐藤:そうですね。ただ、我々は数値ももちろん見ますが、結局セットメーカーさんにとっては音がすべてですから。
加藤:確かに、我々から「数値をよくしてください」と言ったことは…。
佐藤:一度もないですね。
加藤:そう、一切無いです。お話しするのは電源の動作の仕方とか、LSIのパターンがどうなっているかとか、時には音の話ですらないときもありますから。「電流の通り道が直角に曲がっていたら、電子が走りにくいですよね、角を丸くしませんか」とか、そういう話を延々としたり。
■「電気の気持ちになって考えてみよう」
加藤:たとえばこのUD-503でも、実際の回路は渡邊が書きますけど、「どうすればまっすぐ電気が通れる? 電気の気持ちになってみようよ」とか(笑)。
ーー 電気の気持ちですか(笑)
加藤:いつもそんなことを話しています。ですから我々としては、DACの内部も、そういう考えで作って欲しいんです。AKMさんも、最初の頃はおそらく「何言ってんだこいつ」という感じだったと思うんですけど、長年にわたっておつきあいさせて頂く中で、こういう考え方をご理解頂いて、お互いに納得できるものが出来てきているのではないかと思います。
ーー 基板上の、DACの置き方でも音がかなり変わったりするものなのでしょうか?
加藤:そうですね。たとえばこのAK4490は、足が40本くらいあります。その分だけいろいろなものを接続しなければならないわけですが、そのつなぎ方の流儀がメーカーさんによって結構違うかもしれませんね。たとえばある足をどこかに近づければ、他の足が遠くなってしまうわけです。そういった制約の中で何をいちばん大事に考えるか、ということについて、設計者なり、あるいは会社なりの思想があり、それが最終的な音質に違いとして表れるわけですね。
佐藤:我々もオーディオは特性の追求ももちろん大事ですが、LSIの中も「音質」にもこだわって開発しています。そういう姿勢が、ティアック様にもご評価頂けているのだと考えています。今後も音質に徹底的にこだわって開発していきます。
ーー ふだんなかなか聞くことの出来ない、DAC開発の裏側を知ることができ、大変有意義でした。今後のティアックさん、AKMさんの展開がますます楽しみになってきました。本日はありがとうございました。