「ハイレゾロゴ」認定にも変化か
各社バラバラに計測「ヘッドホンのハイレゾ測定法」がついに統一? JEITAの新規格を聞く
■ヘッドホン・イヤホンを測るための「自由音場補正周波数特性」とは?
ヘッドホンやイヤホンでも、スピーカーと同じように「自由音場特性」を基準とした評価値を得られないか? 原氏たちのグループは検討を重ね、ある手法に辿り着いた。
その手法とは、まずダミーヘッドに装着されたヘッドホンまたはイヤホンに測定信号を入力し、この周波数特性をダミーヘッドのマイクで計測。これを「ダミーヘッド特性」としてデータ化する。
ただしこれだけでは、外耳道や耳殻の形状に起因する共振などにより、測定した周波数特性が、グラフの見え方としてガタついてしまう。
そこでダミーヘッドに起因する特性のガタつきを打ち消すため、あらかじめ測定したダミーヘッドの自由音場特性の “逆特性” フィルターをかけ、「自由音場補正」を行うことで、実際の聴感に近い周波数特性データを導き出す。JEITAではこれを「自由音場補正周波数特性」と定義し、規定した。
なお「ダミーヘッドの自由音場特性」には、マイクの特性も含まれている。これらをすべて含めた逆特性フィルターをかけるので、同じマイクを使う限り、マイクの特性を考慮する必要はない。
■ダミーヘッド規定も策定。規格に沿ったダミーヘッドを作っているメーカーも
今回、ダミーヘッドに関する規定も策定された。それには下記の3点が定められている。
・国際規格で規定された疑似耳と同等の疑似耳を有すること
・被測定イヤホン、またはヘッドホンの定格周波数範囲以上の有効周波数帯域を有する圧力形マイクロホンを有すること
・100Hzから10kHzの帯域においてはIEC 60318-7に規定されたダミーヘッドの自由音場レスポンス(0度方向)を満足すること
JEITAによる新たな測定方法では、メーカーが「自由音場補正周波数特性」とともに、使用したダミーヘッドの自由音場特性、またはヘッドホン/イヤホンの自由音場補正を行う前の周波数特性のどちらか、あるいは両方を示すことが求められている。
なお、現在メーカーが使っているダミーヘッドには多くの場合、自由音場特性データが添付されているが、そこには20kHz以上のデータは含まれていないのでハイレゾ帯域には使えない。
また、これまでヘッドホン・イヤホンの測定に使われていたダミーヘッドは、もともと補聴器やカーAVなど、ヘッドホンやイヤホンほどシビアな音質測定が必要とされない機器向けに開発されたものだ。
このため、例えば耳穴の形状が単純な丸型をしていたり、形が相当デフォルメされている。これを人間の体に合わせてリアルなものにブラッシュアップすることも必要と原氏は説く。
またダミーヘッドや疑似耳のメーカーに、ハイレゾ対応を呼びかけていくことも必要だ。これについては、すでにJEITA規格に沿ったダミーヘッドを開発しているメーカーがあるようだ。