ノイズキャンセリング・マスターに訊く、ボーズ“ノイキャン史”と新モデル「QC35」の強さ

■ノイキャンのマスターが語る、ボーズのノイズキャンセリング史

ゲイジャー氏：　ヘッドホンでノイズキャンセリングを実現するためのアイデアは、創業者であるアマー・G・ボーズ博士が1978年に考案したものです。「特に長時間のフライト時などに、周りのノイズを気にせず音楽を楽しめるようにしたい」という思いから生まれました。

ですが、当時のボーズは業務用スピーカーを作っているだけの小さなカンパニーでした。当時の技術ですぐにノイズキャンセリング・ヘッドホンを実現するのは難しかったのです。そこで我々は、様々なノウハウを溜めるところからスタートしました。

そして1989年、ついに初のノイズキャンセリング対応ヘッドセットを世に送り出します。これは航空機のパイロット向けでした。実は最初、このノイズキャンセリングというアイデアは、コンシューマーにそれほど受け入れられるとは考えていなかったのです。あくまでプロフェッショナルユースを想定していました。

−−　最初はそうだったのですね。それから10年という時間を経て、初のコンシューマー向けノイズキャンセリング・ヘッドホン「QuietComfort」初代モデルを発表することになるわけですね。

ゲイジャー氏：　ええ。それは私たちにとって、大きなターニングポイントでした。むしろ「ノイズキャンセリング」の利点をコンシューマーにアピールすることが、とても価値のあることだと気付いたのです。「静寂を作り出すことの価値」を見出したわけですね。

このとき既に、低域の再現性を高めてリスニングの質を上げる「Triportテクノロジー」も開発しています。QuietComfort初代モデルは、最初はBtoBで1999年にアメリカン航空に納入して、2000年に一般消費者に直接販売しました。それからQCシリーズは、この16年間で様々な進化を繰り返し、今に至るというわけです。

−−　第一号機のQuietComfortが日本で展開されたのは、2001年でしたね。私個人も、初めてQuietComfortを聴いた当時、ノイズキャンセリングのクオリティが素晴らしくて本当に驚いたのを覚えています。続いては、そこから始まったQCシリーズの進化を振り返っていきたいと思います。