【特別企画】QCシリーズの進化を語る濃密インタビュー
ノイズキャンセリング・マスターに訊く、ボーズ“ノイキャン史”と新モデル「QC35」の強さ
■初の一般向けNCヘッドホン QuietComfort初代機の衝撃と、その後のイノベーション
−− QuietComfort初代モデルの登場時、米国のコンシューマーの反応はどうだったのでしょうか? また、「QuietComfort 2(QC2)」「QuietComfort 3(QC3)」へ続く流れもお聞かせ下さい。
ゲイジャー氏: QuietComfort初代モデルが出た当初は、それほど大きな反響でもなかったんですよ。ですが、一度使うと誰もが気に入ってくれました。そういうポジティブな感想がどんどん積み上がっていって、2年後にQC2を出したときには、ものすごく大きな反応を頂いたんです。
そしてその次のQC3で、我々は小さくてポータブル性の高い「オンイヤーヘッドホン」という形態にチャレンジしました。我々はこのQC3で、密閉度とノイズキャンセリングの関係について様々な知見を得たのです。
ノイズキャンセリング技術というのは、低域をアクティブノイズキャンセリング、高域をパッシブノイズキャンセリングで消します。パッシブノイズキャンセリング能力を高めるために密閉度を上げると、当然ながら快適性が犠牲になります。ですが、ある程度密閉度を高めなければ、高域ノイズは消せません。そのバランスがとても重要になるのです。オンイヤー型でこれを実現するのは苦労しましたが、そのおかげで様々な知見を得ることができました。
■「QC15」「QC20」と立て続けにノイキャン・イノベーションを実現
−− そして、次の製品は「QuietComfort 15(QC15)」ですね。まだお使いのユーザーさんも多いヘッドホンかもしれません。
ゲイジャー氏: QC15でも大きなイノベーションが起きました。それまでのボーズのノイズキャンセリング・ヘッドホンは、すべてヘッドホンの内側に搭載するマイクを使ったノイズキャンセリング技術「フィードバックテクノロジー」がベースとなっていました。QC15では、これに加えて外側にもマイクを搭載する「フィードフォワードテクノロジー」を採用しました。フィードバックテクノロジーとフィードフォワードテクノロジーを組み合わせることで、ノイズキャンセリング能力をそれまでのおよそ倍とすることに成功したのです。
−− QC15はボーズの歴史の中でも大きなイノベーションになったわけですね。
ゲイジャー氏: ええ。そして次のイノベーションは、ボーズ初のインイヤー型ノイズキャンセリング・ヘッドホン(イヤホン)「QuietComfort 20(QC20)」で実現しました。内部がデジタル処理になったこと、これが我々にとって大きな挑戦だったのです。ヘッドホンの場合、内部のユニットと耳の間には多少の距離があります。しかし、イヤホンではこの距離が短くなります。これによって、より細かな単位でノイズキャンセリングを調整しなくてはならないので、デジタル技術を活用しました。デジタル技術がノイズキャンセリングを進化させたというわけです。
そして、ここでデジタル技術を確立したことが、今回QC35と同時発表された新イヤホン「QuietControl 30(QC30)」のノイズキャンセリングコントロール機能に繋がっているんです。その意味でもとても重要な出来事でした。
−− 最新のモデルにも脈々と受け継がれてきているわけですね。ではここからはいよいよ、2016年の新製品QC35をメインに伺っていきたいと思います。