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スピーカーはどれほど重要なのか? 黒崎政男氏と島田裕巳氏が語る

オーディオ哲学宗教談義 Season3「私たちは何を聴いてきたか」<第2回>

公開日 2020/01/23 10:59 季刊analog編集部
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音楽を聴くスピーカーとしてのEXAKT AKUDORIK

左がEXAKT AKUBARIK、右がEXAKT AKUDORIK

島田 そういう目で、もう一回スピーカーのあり方とか選び方とか、それから鳴らし方っていうものをもう一回考えてみましょうよ、と思うのです。

黒崎 なるほど。高ければいいとか、レンジが広ければいいということでなく。

島田 鳴らし方によって70万のスピーカーがこれだけの音を出すということですよ。ワーグナーまでかけられる。果たして大きいのを選ぶことが賢いやり方なのかなと。

哲学者・黒崎政男氏

黒崎 分かりました(笑)。私はどちらかいうとヴィンテージスピーカーをずっと追求してきたし、おそらくこれからもそうです。私は、かつて生み出された最高のものを愛でて、そこに戻ることに価値を見出すけど、島田さんの考え方はアグレッシブで大変前向きですね。

島田 ヴィンテージの方向には、僕は行けないんじゃないかと思います。現代のスピーカーを追求していると。

人の話ですけど、600万級のものを買おうとして最新の人気モデルを比較して、ついでにオートグラフを聴いたら、やっぱりオートグラフに揺らいだという話を聞きました。

黒崎 オートグラフに勝てない。

島田 それはひとつの完成した世界だと思うんですよ。700万とか2,000万のスピーカーを作っていってもオートグラフに勝てないんです。

黒崎 なるほど。

島田 例えば仏像って、鎌倉時代以降、国宝に指定されたのは一個もない。そういう技術っていうのは実はもうそこで終わっている。

黒崎 それを理解したうえで、島田さんはこの最先端のスピーカーを追いかけているという。

島田 聴く音楽によって違うと思う。黒崎さんみたいに、ある曲を心境含めて全部魂を込めて聴くっていう聴き方と、僕みたいな音楽の世界の全体を知りたいっていう、そういう聴き方とは、選ぶものって変わってくると思う。

黒崎 じゃあ、島田さんはヴィンテージに行く可能性はない?

島田 多分ね。ないと思います。本が100万部とか売れて、お金が余って余ってしょうがないって日が来たら、ちょっとやってみよかなって思うかもしれない(笑)。

黒崎 だけどこの前までクラシック全然分からなかったのに、好きになったよね?

島田 分かってないわけじゃないんだよね。

一同 (笑)

島田 家でクラシック音楽がよく聴こえる環境が初めて整ったからだと、そういう風に理解しています。

黒崎 なるほど。嫌いだったわけでもなくて。

島田 だってヒラリー・ハーンのコンサートも行ったし。オペラも聴いたことあるし。

黒崎 だんだん何か歴史が書き換えられていますね。

一同 (笑)

黒崎 ということで、今日は……なんだかリンの宣伝のような回となりましたが。

島田 だいたいリンしかそういうアプローチしてないから〜!(エキサイト気味)

宗教学者・島田裕巳氏

黒崎 最後に締めようと思ってちょっと言ってみただけ(笑)。とっても面白かったです。
どうもありがとうございました。
(Season3 第2回目終わり)

SOUND CREATE LOUNGE
〒104-0061東京都中央区銀座2-3-5三木ビル本館5階 フリーダイヤル 0120-62-8166




黒崎政男Profile
1954年仙台生まれ。哲学者。東京女子大学教授。
東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。
専門はカント哲学。人工知能、電子メディア、カオス、生命倫理などの現代的諸問題を哲学の観点から解明している。
「サイエンスZERO」「熱中時間〜忙中趣味あり」「午後のまりやーじゅ」などNHKのTV、ラジオにレギュラー出演するなど、テレビ、新聞、雑誌など幅広いメディアで活躍。
蓄音器とSPレコードコレクターとしても知られ、2013年から蓄音器とSPレコードを生放送で紹介する「教授の休日」(NHKラジオ第一、不定期)も今年で10回を数えた。
オーディオ歴50年。
著書に『哲学者クロサキの哲学する骨董』『哲学者クロサキの哲学超入門』『カント「純粋理性批判」入門』など多数。



島田裕巳Profile
1953年東京生まれ。宗教学者、作家。
東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。
専門は宗教学、宗教史。新宗教を中心に、宗教と社会・文化との関係について論じる書物を数多く刊行してきた。

かつてはNHKの「ナイトジャーナル」という番組で隔週「ジャズ評」をしていた。戯曲も書いており、『五人の帰れない男たち』と『水の味』は堺雅人主演で上演された。映画を通過儀礼の観点から分析した『映画は父を殺すためにある』といった著作もある。

『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)は30万部のベストセラーとなった。他に『宗教消滅』『反知性主義と新宗教』『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』『スマホが神になる』『戦後日本の宗教史』『日本人の死生観と葬儀』『日本宗教美術史』『自然葬のススメ』など多数。
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