クロックなどSA-10から進化も
マランツ、オリジナルDAC搭載で30万円のSACDプレーヤー「SA-12」
DSD信号については、オーバーサンプリング/デジタルフィルターとΔΣモジュレーターの処理をパスして、MMM-StreamでD/A変換される。SACDを含む2.8MHz DSD、5.6MHz・11.2MHz DSDは、それぞれオーバーサンプリングされずに処理されることになる。
MMM-Streamは、アナログデバイセズ製のDSP「SHARC」を2基(L/Rに1基ずつ)とCPLD(Complex Programmable Logic Device)を1基の合計3つのデバイスで構成。MMM-Conversionは、出力抵抗やコンデンサーでアナログFIRフィルターを構成されている。
プレゼンでは、このオリジナルDAC開発を手がけたマランツのライナー・フィンク氏についても言及。同氏はフィリップスにおいてビットストリームDACを手がけた人物で、フィリップスがHi-Fiオーディオから撤退した後にマランツに移籍。これまでもマランツのSACDプレーヤーにおける独自のデジタルフィルターなどを手がけてきた。SA-10におけるオリジナルDAC開発も同氏が発案したのだという。
■コンプリート・アイソレーションシステムをはじめ徹底されたノイズ対策
MMM-ConversionとMMM-Streamの間には、コンプリート・アイソレーションシステムを配置。高速デジタルアイソレーターによって、デジタル基板からアナログ基板への高周波ノイズの流入をシャットアウトする。また、全ソースに対してD/A変換の直前でデジタル・アイソレーションを行うことで、その効果を最大化できるという。
SA-10ではUSB入力に対しても高速デジタルアイソレーターが配置されていたが、こちらはSA-12では省略。一方で、DSPやUSB コントローラーICそれぞれの電源ラインに導電性ポリマーコンデンサーを挿入するなど、個別にノイズ対策が施されている。
デジタル入力部およびMMA-Streamはを含むデジタルオーディオ基板全体は表面をシールドで覆うことで、高周波ノイズの輻射による音質への悪影響を抑えている。SA-10で基板自体を銅メッキシールドケースに封入して輻射を抑えているのと比較すると簡易な対策になるが、4層基板の採用や電源対策などによりSA-12においても高いシールド効果を発揮できるとのことだった。
■最新世代の超低位相雑音クリスタルを搭載
SA-10で開発された様々な技術を継承するSA-12だが、開発がより直近ということで、SA-10より進化を果たした点もある。それがこの最新世代の超低位相雑音クリスタルの搭載だ。SA-10に搭載されたクリスタルと比較して15dBもの位相雑音の改善を実現しており、D/A変換の精度をさらに高めることが可能になるという。
なお、本機もSA-10と同様に、44.1kHz系と48kHz系で1基ずつ専用クロックを搭載している。
■最新世代オリジナル・メカエンジン「SACDM-3」を搭載
ディスク再生を担うメカエンジンには、SA-10で開発された「SACDM-3」を搭載。これはマランツ7世代目となるオリジナル・メカエンジンだ。トレイのローディングメカ、およびデコーダーはSA-10とまったく同じものを採用。高剛性スチールシャーシ、アルミダイキャストトレー、アルミ押し出しトレーカバーなども共通だ。
ベース部については、SA-10が10mm厚の押し出し材を用いていたのに対して、SA-12は2mm厚のスチール鋼板を用いている。また、トレイの先端はSA-10が彫り込み処理だったが、SA-12は印刷処理となる。
■HDAMを用いたフルディスクリート構成のアナログオーディオ回路を搭載
上述の通り、SA-10がフルバランス構成のアナログ回路を搭載しているのに対して、本機はシングルエンド構成のアナログ回路を搭載。マランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA3」を採用したフルディスクリート構成のオーディオ回路とした点は同様だ。
DACからのディファレンシャル出力を受ける初段は、FET入力のHDAM-SA3バッファーアンプ(兼、1次ローパスフィルター)として、2段目をHDAM-SA3 電流帰還型差動アンプ(兼、2次ローパスフィルター)で構成する。
また回路の改良により、安全規格上の理由で従来は使用せざるを得なかった不燃抵抗を排除して、代わりに高音質タイプの抵抗を採用することが可能になった。これにより、さらなる音のクリアネスが実現できたという。
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