25タイトルが順次発売!
ユニバーサル「ハイレゾCD」にオフコースとイージー・リスニングの名盤達が登場。愛聴盤がもう1枚欲しくなる“ハイレゾの旨味”を聴いた
■フルデコードで聴けるハイレゾの旨味
それではまず、MQAデコードに対応したCD再生対応ミュージックサーバー、カクテルオーディオの「X45」で、このオフコースのハイレゾCD達を聴いていこう。
1作目の『僕の贈りもの』は1973年発売。いわゆるフォーク全盛の時代だけに、アコースティック・ギターを中心にベース、ドラムス、そしてエレクトリック・キーボードとストリングスを基本編成とした、シンプルでクリーンなアレンジの楽曲が並ぶ。
1曲目のタイトルトラック「僕の贈りもの」から聴き始めたが、小田の澄み切った高域と鈴木の艶やかな中域は、後年の全盛期よりもずいぶん優しめの歌唱に聴こえる。楽器の1本ずつがくっきりと引き立ち、しかしヴォーカルを一切邪魔しない。それぞれに、すごい実在感である。楽曲ごとに、ヴォーカルの表情を録音で微妙に変えているように聴こえてくるのも面白い。
ここで、試しに自宅で愛用しているMQAデコード非対応のディスクプレーヤーで聴いてみた。73年に発売された新人バンドのアルバムとしては絶対的にかなりの高音質なことに加えて、MQAに関してはエンコード処理をするだけで、例え一般的なCDプレーヤーで再生しても音質面に優位性があるとされている。ただし、先に聴いたMQAデコードを行った上でのサウンドと比べると、空間表現に大きな違いが出てきた。これはやはり、ハイレゾの旨味そのものにノックアウトされた、ということなのであろう。
2作目『この道をゆけば』以降は、カクテルオーディオのX45のみを用いて聴いていこう。どのアルバムも音がきれいに収録されており、「あぁ、スタッフは本当にこのアーティストたちを大切にしてきたんだな」と思わせてくれる。率直な意見として言えば初期のアルバムに限ってはそう凝った録音ができているとは思えないが、声に雑みが乗らず、歌の持ち味が実によく収められているという印象だ。
それにオフコースが5人体制になる前、小田と鈴木の2人だった頃はギターに大村憲司、ドラムに高橋幸宏、村上“ポンタ”秀一などそうそうたるミュージシャンが音を寄せており、そんな彼らの音がしっかり収録されている印象だ。やはり元のマスターが良くなければ、新たなマスタリングで「お化粧」できる範囲も限定される、というものだ。そうした元のマスターのていねいな作りに加え、21世紀のデジタル・リマスタリング技術、そしてMQAという技術が、この優れた音質を引き出しているのである。
『この道をゆけば』に続いてリリースされたのは、早くも初のライブアルバム『秋ゆく街で オフ・コース・ライヴ・イン・コンサート』。中野サンプラザホールの響き、ステージのバンド編成と2人の歌唱、そして観客席の拍手やざわめきが克明に収められていて、これには少々驚いた。しかも、それでいて声が遠くなったり、空気容量が多い場所で往々にして起こる音場が埃っぽくなったり、という現象は微塵もなく、歌と演奏をかなり近い距離で味わうことができる。声のダイナミックレンジの大きさにも、ハッとさせるものがある。出来の良いライヴ音源の醍醐味というべきサウンドだ。
スタジオ作品としては3作目となる『ワインの匂い』から、彼らのサウンドは変わり始める。まだギターは大半がアコースティックで、バックにストリングスを入れるという点はデビュー当時からのスタイルだが、本作からはよりオンマイクになり、ある種ポップスの王道的な録音となった感がある。言い換えれば、それだけ彼らが音楽界で大きな存在になってきていた、ということなのであろう。このアルバムから後に西城秀樹にもカバーされたヒット曲「眠れぬ夜」が登場しているのも、象徴しているような気がする。