「感性価値」の重要性を強調
ソニー、'13年度経営方針を説明 − 平井社長「スマホがカギ。テレビは黒字化必達」
■「心を動かす感性価値」を提供する必要性実感
平井社長は社長就任以来、ソニーグループの現状やポテンシャルを正しく認識するため、世界中を飛び回ってきたことを紹介。「私の持っている時間の4分の1近くを使って世界中のソニーグループを回った。16カ国、45箇所を回って、積極的に直接会って意見交換を行ってきた。もちろんグループ企業だけではなく、販売店やパートナー会社、エンドユーザーであるお客様とも会って、直接話してきた」。
その結果、課題の明確化ができたとともに、将来的な成長のカギが見えてきたと平井氏は説明。ソニーらしくあるためにはどうすべきか、ソニーが提供すべき価値とは何かを絶えず自問自答した結果、「心を動かす感性価値」を提供する必要性を強く実感したのだという。「ソニーの製品は『機能価値』を満たしてはいるが、『感性価値』をもつ商品は、私からみると十分ではない。ただし、昨年からのいくつかの商品にはその兆しがある」とし、「これからのソニーは機能価値と感性価値の両方を提供する会社でなければならない」と語気を強めた。
会見では、一部メディアで報道されている「追い出し部屋」についての質問も出た。
朝日新聞の記者が平井氏へ、以下のように質問した。「他社を含めて『追い出し部屋』を作り、キャリア開発室などという名称の部署を作って、退職勧奨することが行われているようだ。御社の社員でも、何人からも話を聞いている。今後もこういった、イジメのようなことをやっていくのか。私は18年ソニーをウォッチしているが、上に甘く下に厳しい企業風土になっているのではないのか。現場から怨嗟の声を聞くことが多いが、それについてどう思うか」。
この質問を受け、まずキャリア開発室について平井氏は「他社さんのことについては言うべき立場にない。弊社のキャリア開発室については、厚生労働省から問い合わせを受けて、実際に出向き説明した」と述べ、また「いまイジメという表現を使われたが、そういった事実はないということを説明し、ご納得いただけたと考えている」と説明した。「今後もキャリア開発室を続けていくのか」という質問には「キャリア開発室は追い出し部屋ではない。社員が次のキャリアを見つけるための部屋と認識しているし、重要な場所だ。これからも続けていく」と述べた。
企業風土についての質問についても平井氏は反論。「トップマネジメントから率先垂範している。エレキ事業の黒字化ができなかったということもあり、幹部はボーナスを返上した。またベースのサラリーも下げている。また昨年、2名以外はトップマネジメントを変えるなど、厳しく対処してきたつもりだ」とした。
ソニーが5月8日に発表した、新たな取締役候補者13名(関連ニュース)についても、報道陣から選考の背景などについて質問が出た。
新たに社外取締役となる予定の、米マサチューセッツ工科大学 メディアラボ所長の伊藤穰一氏について平井氏は、「何と言ってもMITメディアラボの所長なので、色々なイノベーティブな分野の人脈や経験、知見をお持ちだ」と説明。同じく社外取締役に就任予定である、日本マクドナルドホールディングスCEO、原田泳幸氏については「アップルやIT業界で活躍してきた知見に加え、ユーザーと直に接するビジネスを行っている方であることに注目した。取締役のメンバーを見ると、ユーザーと触れあう会社をマネジメントしている方に来ていただきたかった。またマクドナルドはブランドマネジメントを巧みに行っており、その知見もぜひ採り入れたい」と述べた。
またSony Network Entertainment International LLC 元プレジデントのティム・シャーフ氏については、新たに社内取締役に就任する位置づけとなるが、「SENでネットワークビジネスをゼロから築き上げてきた。IT業界の人脈や深い知見がある」と評価した。