<山本敦のAV進化論 第69回>
Ultra HD Blu-rayで「技術資産をフル活用」。パナソニック製プレーヤーの開発状況を聞く
■ハイクオリティな「パッケージ」とカジュアルな「オンライン配信」
続いて、Ultra HD Blu-rayのライセンシングが始まってからの手応えを小塚氏と森氏に訊ねた。小塚氏は、今年の1月に映画スタジオやエレクトロニクスメーカーなど12社により、4K(UHD)関連のコンテンツや製品の普及を促進させるためのプラットフォームとして「UHD Alliance」が立ち上がってから、優良な4Kコンテンツを制作し消費者に届け、エコシステムを確立するために参加各社が一枚岩になって取り組んでいることを強調する。
「映像コンテンツを収録するパッケージがVHSテープからDVDになった当時は、ユーザーに画質の変化や利便性の向上をわかりやすく伝えられたこともあって市場は大きく成長しました。その後、DVDからBDになり、画質が良くなったとはいえ、ディスクというフォーマットは同じだったため、穏やかな勢いで普及していきました」
「最近では映像コンテンツのオンライン配信、タブレットやスマートフォンで便利に再生できるスタイルも広がり、インターネット経由のOTT(Over The Top)サービスが伸びています。パッケージと配信は対立軸として捉えられる向きもありますが、私たちとしては『クオリティのUltra HD Blu-ray”、カジュアルに楽しめる配信』という位置づけでそれぞれを棲み分けながらの楽しみ方を提案したいと考えています」
「もともと両者は対立する関係性にはなく、スタジオからみれば同じコンテンツはコンテンツであり、受けるテレビの側はどちらも等しく高画質に再現することがミッションなので、区別することには本来あまり意味はありません。全体としてディスクも配信もフォーマットの仕組みをできるだけ揃えて、便利に使っていただけるエコシステムを作りたいと考えています」
Blu-rayディスクの普及は各地域によって深度が異なり、アメリカではいまや配信にトレンドが傾きつつあるという。一方日本ではパッケージメディアの売上が好調であり、今後Ultra HD Blu-rayの普及が広がる地域としてパナソニックは期待を寄せている。
「今回はBlu-rayの系統に沿った正当進化になりますが、4Kになって解像度が上がるだけでなく、HDRや新しいHEVEC/10bitの圧縮コーデックへの対応、BT.709からBT.2020への色空間拡大などにより画質はかなりレベルアップするはずです」と小塚氏は期待を寄せる。
解像度が4Kになるだけでなく、圧縮技術にHEVC(10bit)を導入することで、およそ4割以上の圧縮効率向上が見込まれる。また色空間は従来のBT.709からBT.2020に拡張されることで、従来に比べて約2倍の領域をカバーできるようになる。特に深い紅色や青色、緑色のナチュラルな再現力がいっそう高まることが特徴として現れてくる。
「カメラ側のスペックが向上したことにより、人間の視覚にも迫るほどワイドなダイナミックレンジが記録できるようになっています。これを実際に放送で送信する際、これまではBT.709の制約により、最高輝度100nit程度の情報に圧縮していましたが、HDRでは可能な限り限界値を伸ばして記録できるので、繊細な明暗表現が可能になります」
「最も差が出るのは映画のように作り込んだ映像よりも、自然の風景やスタジアムで開催されるスポーツ、シアターやコンサートなど明暗の表現力の高さが求められるコンテンツだと考えています。HDRならこれらの難しいコンテンツも明暗をつぶさずに再現できます」(小塚氏)